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【ジョブ理論 要約】ジョブ理論 フレームワークまとめ

クリステンセン教授の著書「ジョブ理論」の要約・フレームワークまとめと、ジョブ理論を実践で用いた経験を踏まえた内容を紹介します。

■ジョブ理論とは 

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ジョブ理論とは、予測可能で優れたイノベーションを作るために「顧客の片付けたいジョブ(用事・仕事)」に鍵があるとする理論。

「ジョブ理論」が目指すのは、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片付ける解決策と、それに付随する体験を構築すること

 

■ジョブ理論でできること・できないこと

【ジョブ理論が目指すもの】

  1. 顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解する。
  2. そのジョブ(求める進歩)を片付ける解決策を構築する。
  3. それに付随する体験を構築する。

 

【ジョブ理論でできること】

  • 顧客がなぜ特定のプロダクト/サービスを生活の中に引入れるのか、その理由を把握するための方法論を知る。
  • ジョブの見つけ方・把握する方法や、考慮すべき範囲を知れる。
  • マーケティングのセオリーと言われる "セグメンテーション","ターゲティング","ポジショニング"とは異なる思考回路の、顧客に必要とされるものを把握するセオリーを知る。
  • "顧客"ではなく、「"顧客の特定のシーンにおいて発生する「ジョブ」" を中心に据えて、マーケティングを捉えなおす。

ジョブ理論 まとめ

 

【ジョブ理論ではできないこと】 

  • ジョブ理論は、ジョブの見つけ方は説明するが、そのジョブを片付ける解決策(製品/サービス)や体験の作り方は、指南してくれない。
  • この書籍では、既存製品/サービスが「既に存在すること」を与件としているようである。そのため「顧客は誰か」という極めて重要な点に関する言及はない。
  • ジョブの見つけ方5パターンの説明はあるが、ジョブ調査の本当の難しさについて言及がない。

 

顧客のジョブを見つけることは、最初の一歩に過ぎません。また、ジョブ調査が目的になることもあり得ません。
新しい事業開発をするために、伸び悩む既存商品の刷新のために、その最初の一歩として、ジョブ調査は有効です。そこから一連の後続の作業が始まります。

ただ、ジョブ把握は確かに最初の一歩に過ぎないものの、最初の一歩を間違えると、後続の一連の作業が、全て間違ったまま進むことになり、会社に莫大な損害を与えることになります。
新規事業開発を良い形で進める上でも、既存事業の刷新のためにも、ジョブ理論の内容は非常に役に立つ内容です。

 

■ジョブと雇用 

・ある特定のシーン・状況で人が成し遂げたい進歩を「ジョブ」と呼ぶ。
・「顧客」を単位とするのでなく、"顧客の特定のシーンにおいて発生する「ジョブ」" を単位として捉える。(シーン・状況は、片付けるべきジョブ理論の根幹であるが、ほとんどのマネージャーは状況に注意を払わない)

・「ジョブ」は、日々の生活の中で発生する、特定の文脈や状況がジョブ定義の中心に来る。イノベーション創出に不可欠なのは、顧客属性でもプロダクト属性でも新しいテクノロジーでもなく、「状況・シーン」である。

 ・ジョブを解消する手段として、人はある製品やサービスを消費したり、労力を払う。その行為を「雇用する(ハイア)」と呼ぶ。
・何かを雇用する際、ジョブは機能的な側面だけでなく、感情的な面や社会的な面も影響する(むしろ感情的・社会的な面の方が遥かに大きいことも)。

人は、自分の生活のあるシーンに発生する「片付けたい具体的なジョブ(成し遂げたい進歩)」を、解決・成し遂げるために、「何かを雇用する」(例:特定の商品を購入する)。

ジョブ理論 雇用

 

■同じ商品(ミルクシェイク)でも、顧客のジョブは違う

書籍「ジョブ理論」の最初にある有名事例「ミルクシェイク」。

顧客の生活に発生したどんなジョブ(用事)が、彼らを店に向かわせ、ミルクシェイクを雇用させたのか?

【平日朝の顧客】
「仕事先まで運転が長く退屈。だから通勤時間に気を紛らわせるもの・空腹を満たせるものが欲しい」というジョブ。(他のダメな選択肢:バナナはすぐ食べ終える・ドーナツは手が汚れる・ベーグルは味がない)

【休日の顧客】
「日頃から子供にNOと言い続けている。自分を寛大な父親と思えるようなYESを言いたい」というジョブ。(ミルクシェイクが欲しいという子供に、YESと言える。)

同じ人でも、状況やシーンが異なると、異なるジョブを抱える。それぞれのジョブの競合相手は全く違い、求められる内容も全く異なる。

 

■ジョブ調査・把握〜雇用されるプロダクトを作る流れ

① ジョブを見つけて、理解し、定義する。
② 顧客の成し遂げたい進歩を可能にし、困難を解消する体験を想定する。
③ 自社が何を提供してどう適合させれれるか考察する。
④ 製品/サービスを開発する。(それまで解決策が存在しなかったジョブ、それまで不満足な解決策しかなかったジョブを片付ける)
⑤ ジョブ解決する上での、プロダクト/サービスに付随する体験を構築する。
⑥ 進歩を阻む障害物を消費者が乗り越える手助けをする。

 

・誰の何を解決するのかわからないまま、消費者に雇用されるものを、どうして作れるだろうか(作れる訳が無い)。
・人に雇用される製品/サービスを作るためには、まず最初に、ジョブ把握が必須である。

 

■ジョブ調査・観察の流れ

ジョブ理論 観察 ヒアリング

ジョブは複雑なため、顧客を観察して得た知見は、分析しやすいデータに落とし込むのが容易ではなく、むしろ不適切である。ジョブから得る知見は、数字ではなく、ストーリーである。属性情報ではない。

  1. その人が成し遂げようとしている進歩は何か(機能的、社会的、感情的側面)。
  2. 苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしている時か。
  3. 進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か。
  4. 不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動を取っていないか。
  5. その人にとって、より良い解決策の品質の定義は。

【上記の端的な例】

  1. 初対面の相手に、良い第一印象を与える笑顔が欲しい。
  2. 年に2回歯医者に通っているが、思ったほど白くならない。
  3. 歯を白くする歯磨き粉を複数試したが、全然効果なく、誇大広告だった。
  4. 自宅ホワイトニングキットを買ったが、毎日の作業負荷が大きい。
  5. 専門歯科医のホワイトニングを受けたい、ただし費用も手間もかけたくない。

 

・顧客が進歩を成し遂げるために苦労している点を見つけたら、片付けるべきジョブの機能面だけでなく、重要だが気づきづらい社会的・感情的側面についても探し出す必要がある。

・ジョブは作り出すのではなく、見つけ出すものである。

・ジョブは長い間変化せず、長らく解決されない・不満足な選択肢しかない状態であっても、技術変化や環境変化により、解決方法の方は新たに開発される・大幅に変化することもある。

 

ジョブ調査の最悪の方法は、会議室に籠って勝手に妄想することです(顧客から話を聞くのではなく)。

ジョブ調査は、顧客を観察し、顧客から話を聞く必要があります。ただ極めて難しいのは、どの範囲を、どの深さまで顧客に話を聞けば良いか、誰もわからないことです。
また、特に感情的な面・社会的な面について、本当のことを言ってくれるか、言ってくれないかもわからず、そこからジョブに関する情報を拾い上げるのが、極めて難しい。

企業側も、自社の製品/サービスがある限り、仮にそれが顧客にとって不満足な選択肢であっても、その方法が正しいと思い込み、既存の企業側の都合を頭から消すことはできません。そのため、顧客が話してくれる内容を、バイアスを除いて聞き取ることは、ほぼ不可能です。

このようなことを理解した上で、顧客を観察する必要があるでしょう。

 

■ジョブの見つけかたの5つのキーワード

1:身近な生活のにあるジョブ
2:無消費に眠る機会
3:間に合わせの対処策(不満足な代替行動)
4:できれば避けたいこと
5:意外な使われ方

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1:身近な生活のにあるジョブ
・「市場調査に頼るのでなく、人々の生活を注意深く観察し、彼らの望みを直観し、それに従って進む」と、ソニー創業者の盛田氏は考えた。
・シーラ・マルセロは、自身が子育て支援の不足で苦労した経験から、育児・高齢者支援・ペット世話などのオンラインサービス ケアドットコムを創業した。

2:無消費に眠る機会
・片付けるべきジョブがあっても、ジョブを満たす解決策がなく、何も雇用しない道を選ぶ「無消費」がある。
・既存データからはそれを知ることはできないため、そうした需要の存在に気づくのは容易でない。無消費は、意識して探さなければ見つけられない。
・無消費は簡単に見つけられないが、無消費には大きな需要の可能性がある。
・ジョブに関する重要な知見は、あなたのプロダクトも、他社のプロダクトも雇用していない無消費者への調査から得られることが多い。

3:間に合わせの対処策(不満足な代替行動)
・現在の解決策ではジョブ対応に満足しておらず、あれこれ工夫して自分なりの解決策を作ろうとする消費者がいる。
・それを見つけて注意深く観察すると、イノベーションの手がかりがある可能性がある。

4:できれば避けたいこと
・できれば避けたいジョブは、進んでやりたいことと同じくらいたくさんある。
・そのようなネガティブジョブは、イノベーションの優れた機会であることが多い。

5:意外な使われ方
・企業が想定していたのとは異なる使われ方がされている場合、非常に参考になる。
・市場の構造を、プロダクトや顧客の属性からではなく、顧客の片付けるジョブの観点から理解すると、市場の潜在的規模が一気に膨れ上がる可能性がある。ありそうもないと思っていたところに、成長の機会が出現する。

 

ジョブを見つけ出し、その人が生活に引き入れたいと望むプロダクト/サービスを目指すなら、顧客が求める進歩の社会的・感情的な側面も深く掘り下げ、ジョブの文脈を深く理解する必要がある。

人が自らのジョブを解決したいと、あるプロダクト/サービスを雇用するかどうか決める時、社会的・感情的側面が大きく影響する。

市場調査によって消費者ニーズを捉え、それに沿ってプロダクトを作る際、往々にして機能面ばかり重視しがちだが、それは間違っている。感情面および社会的な側面への考慮を重視する必要がある。

ジョブ理論 感情的側面 社会的側面

 

■新しいものを雇用してもらうために 

・顧客が何を「雇用」するか、それと同じくらい重要なことは、何を「解雇」するか。
・そのストーリーから、顧客が求める進歩の機能的・社会的・感情的側面と、進歩を妨げる障害物を読み取ることができる。

・消費者は自分の望みを常に明確に説明できると限らず、たとえできたとしても、実施の行動と一致しないこともある。
・例えば、環境に優しい生活を心がけているかと聞かれたら、大半の人はイエスと答える。しかし、現実に何かを生活に引き入れる場面になると、人はその時の状況で自分にとって最も価値が高く、失うものが最も少ない解決策を選択する。

・片付けるジョブは、昔から存在しており、それに応えるプロダクト/サービスは、進化を重ねてきた。新製品のアイデアがどれだけ素晴らしいものであっても、新しい解決策を雇用してもらうには、顧客は当然、既存の振る舞いや雇用している方策を、解雇する必要がある(「何もしない」「諦めている」という無消費の解雇も含まれる)。

 

「当社の商品が雇用されるために、既存の何を解雇させる必要があるか」を、企業は充分に考えていないが、この点を具体的に考えなければならない。
新しい解決策のスペースを空けるために、解雇してもらう既存の方法を理解しなければならない。

■新しい解決策に乗り換えようとする力

・顧客が解決したい問題への不満は、顧客に新しいアクションを取りたいと思わせるほど、強い必要がある。(単に面白くない、気に入らない程度では不十分)
・新しい製品/サービスの引きつける力も、充分に強い必要がある。顧客の片付けるべきジョブにとって、新しい解決策は、彼らが進歩を手に入れ、生活をより良く・より素敵にできるものでなければならない。

■変化に反対する力

・"現行の習慣"は、現状に満足はしていなくとも、少なくとも今のやり方や状態に慣れているという、問題の所在になれた状態。
・もう一つは、変わることや新しいことへの不安、面倒くささである。

 

人の生活に起こる、悪戦苦闘の瞬間や、もっといいものと取り換えたくてイライラする瞬間、不満足な体験、ストレスの中に、ヒントがある。ヒアリングを通じてそれらを聞き、ストーリーボードの形で記述することにより、ジョブの理解を深めることができる。(会議室で勝手に妄想するのではない。)

無消費と競争する。 
世の中に不満足な選択肢しかない場合、ジョブを不満足に片付けるより、何も雇用しない方選ぶ人「無消費者」もいる。無消費に眠る好機は、企業にとって巨大。

 

 

【再掲:ジョブ理論ではできないこと】 

  • ジョブ理論は、ジョブの見つけ方は説明するが、そのジョブを片付ける解決策(製品/サービス)や体験の作り方は、指南してくれない。
  • この書籍では、既存製品/サービスが「既に存在すること」を与件としているようである。そのため「顧客は誰か」という極めて重要な点に関する言及はない。
  • ジョブの見つけ方5パターンの説明はあるが、ジョブ調査の本当の難しさについて言及がない。

 

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