【ジョブ理論 調査方法】既存商品のマーケティングためのジョブ調査方法
クリステンセン教授による、イノベーションの生み出し方のフレームワーク「ジョブ理論」。
顧客が「片付けるジョブ」が何か、それを調べる調査方法をご紹介します。
■ジョブ理論とは
「片付けるべきジョブ」理論は、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片付ける解決策とそれに付随する体験を構築すること。
■ジョブ理論 調査方法
顧客が抱えるジョブ(求める進歩)を片付ける解決策を作り出すために、その前提として、顧客が進歩を求めて苦労している点である「片付けるべきジョブ」を理解する必要があります。
顧客が「片付けるジョブ」が何か、それを調べる調査方法を説明します。
■「既存商品のマーケティング」のためのジョブ調査を説明
一般的な企業では、担当する業務内容・目的により組織が分かれています。
ジョブ理論でいう "顧客が抱えるジョブを片付ける解決策" も、現実的には、担当業務や組織単位によって変わります。
当ブログ記事では「既存商品のマーケティング」のため、既存商品の広告宣伝をより効果的にする目的として、ジョブ調査方法を説明します。
(新規事業や、新商品・新商品カテゴリを作り出すことを目的とするジョブ調査は、当ブログ記事内容とは全く異なりますので、間違いのないようご注意ください。)
■ジョブ調査 5つの観点
1:身近な生活のにあるジョブ
2:無消費に眠る機会
3:間に合わせの対処策(不満足な代替行動)
4:できれば避けたいこと
5:意外な使われ方
既存商品のマーケティングのためのジョブ調査は「3:不満足な代替行動」「5:意外な使われ方」の観点で行います。
意外な使われ方をされた際の、そのシーンや用途、利用時やその前後の顧客の感情を調査します。
そのシーンにて、別の手段を雇用した方に、同様にヒアリングによる調査をします。
■ジョブ理論 具体的な調査方法
①対象商品の意外な使われ方を調べる。
既存商品であれば、実際に販売され、顧客に購入・利用されているはずです。実際の顧客による、意外な使われ方を調べます。
「予想外にも、こういう人が、こういうシーン・目的で、対象商品を購入・使っている」ということを調べます。
調べ方は、商材や販売方法を踏まえて、"調べやすい方法で" 調べてください。
具体的には、店頭販売員に聞く、カスタマサポートに聞く、SNSを見るなど、実際に顧客に接する人や、顧客の発する一次情報に当たりましょう。
このジョブ調査は、網羅的に調べる必要はありません。
「こういう人が、こういうシーンで利用しているんだなんて、全く予想していなかった!」と、商品開発や広告宣伝担当が思うシーンが、複数見つかればOKです。
逆に、絶対にやってはならない調査方法が2つあります。
1つは、あなたが勝手に想像すること。あなたの勝手な想像ほど、最低な調査方法はありません。
もう1つは、アンケートを行うこと。あなたが調査設計する時点で、あなたの勝手な思い込みが満載の、ダメな調査項目ですので、当然、調査結果もダメダメです。
この2つの方法は、"何もしないでおく" より、遥かにダメな方法ですので、くれぐれもご注意ください。
②そのシーン・用途で、過去に対象商品を使った人にヒアリングする。
「予想外にも、こういう人が、こういうシーン・目的で、対象商品を購入・使っている」という、いくつかの、商品の意外な使われ方を洗い出すことができたら、
次は、それぞれのシーンごとに、過去に実際に商品を使った方にヒアリングをします。
(使える時間やリソースにより、シーンを1つ2つに絞るか、複数のシーンの調査を続けるか、判断が必要になるでしょう)
ヒアリングでは、次の点を聞きましょう。
・そのシーンで、以前はどういう対処をしていたか。(以前に雇用していたものの把握)。
・自社商品のどういう点が良さそうに思い、購入/使ったか。(認知されているベネフィットの把握)
・どういうふうに、自社商品を知ったか。(認知経路の把握)
・購入時/使う時に、何かしら躊躇したことはあるか。(心理的障害物の把握)
・購入した結果/使った結果、どうか。(期待値と結果の乖離の有無の把握)
このヒアリングの結果、当初想定していなかった複数パターンの、顧客のジョブや顧客が期待する進歩など、あなた自身が具体的に把握できるようになっているでしょう。
「こんなシーンで、こんな目的で使っているのか!」という意外な使われ方についてのヒアリングですので、このヒアリングで得られる情報は、あなたの知らないことが多いはずです。
多くの顧客インサイトを得られることでしょう。
③その商品の見せ方を修正する。
予想外の顧客のジョブやシーンがわかった、ではプロモーションに反映しよう!と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
既存の広告宣伝ツールを、次なる調査のために、複数パターンごとに修正を加えます。例えば、自社HPの商品ページ、広告ランディングページ、店頭リーフレットなど。全ての顧客接点を修正する必要はなく、この段階では、あくまで次の調査のための、修正です。
※ この時点で、今回のジョブ調査を、広告宣伝の部門内のみで続けるか、商品企画を担当する部署とも連携するか、確認する価値はあるでしょう。
言い方を変えれば、複数の意外な使われ方に対して、広告宣伝の範囲のみで対応するか、商品でも何かしらの対応をするか(商品パッケージなど商品の見せ方での対応、商品バリエーションやフレーバーの拡大など)の確認と検討です。
(広告宣伝と商品企画部門の距離、予算や組織の連携度合い、時間軸的な制約、組織文化などケースバイケースでしょう)
④そのシーン・用途で、対象商品を使ったことがない人にヒアリングする。
見せ方の修正ができたら、そのシーンごとに、過去に対象商品を使ったことがない方にヒアリングをします。
そのような方は、そのシーンにて、別の代替手段を雇用したか(不満足な代替行動)、我慢したり何も雇用しなかった(無消費)方です。そのような方へのヒアリングを通じて、新たな機会や見せ方の工夫などを見つけ出します。
ヒアリングでは、次の点を聞きましょう。
・そのシーンで、どういう対処をしていたか。(雇用したものの把握)。
・その対処法のどういう点が良さそうに思い、選択したのか。(その選択肢のベネフィットを把握)
・その対処法に、何か不満なことはあったか。(不満足な点の把握)
(修正後の自社商品の広告宣伝ツールを見せて)
・この商品について、どう思うか。
何が良いか、何が嫌か、何がわからないか、何が不安か。
このヒアリングを通じて、それら利用シーンにて、現在どういう選択肢が認知されており、どういう理由や心情で雇用されているか、具体的に把握できるようになっているでしょう。
⑤マーケティングプランに反映させる。
あなたのマーケティング努力は「既存の選択肢を解雇してもらい、あなたの商品を雇用してもらうと」ことに向けられる必要があります。
④のヒアリングにより、そのシーンにて、既存の選択肢が何で、どういう心情的・機能的メリットから雇用されていて、また不満足な点も把握できているでしょう。
②のヒアリングにより、そのシーンにて、自社商品の良さが何で、どういう心理的障害を解消すれば良いか、把握できるようになっているでしょう。
そのジョブ調査の結果を、マーケティングプランに反映させます。
【補足の注意事項】
②と④の調査は、対面ヒアリングが原則です。
ジョブ理論では、機能的な面より、心情的な面や社会的な面をより重要視する必要があります。対面ヒアリングでなければ、相手の微妙な心理的な動き、発する言葉の根底にある心理(特に、抑圧や苦しみなど)は、読み取ることはできないでしょう。
たまに、アンケートで済ませようとしたり、その結果をテキストマイニングなどで処理しようとする輩がいると聞きます。
愚の骨頂ですので、アンケートで済まそうなとど、くれぐれも考えないようにしてくださいね。
しかし、「意外な使われ方を調べる」という、あなたが知らないことを深く知ろうとするときに、あなたが調査設計するアンケートは、最も不適切な調査方法です。)
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