【ジョブ理論 事例】既存ブランドの刷新|クリニカのブランドリニューアル事例
ジョブ理論をベースに、既存ブランド「クリニカ」を刷新し、売上を1.5倍に拡大させた事例です。
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00047/00001/
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00047/00002/
■2014年のクリニカの状態
・1981年生まれのオーラルケアの老舗ブランド。
・小売店では常に安売りされる。
・家族で使う安い日用品というイメージが定着。
・人口減少で、マーケットは減少。
■社会の流れ、時代の流れ
・「治療から予防へ」という社会背景の大きな変化。
政府は医療費削減を目指して予防医療の普及を加速させている。
・クリニカのブランド刷新にあたり、この流れを捉えて一人ひとりのケア意識を高めることができれば、高付加価値商品も受け入れられやすくなり、マウスウォッシュやフロスなど低い使用率の商品の購入にもつなげられると考えた。
■顧客のジョブ
・「予防歯科が重要である」と消費者に認識してもらう。
つまり、世の中に、課題を定義する。
・歯磨きは、自己流の歯磨きに自信が持てない人が大半で、それを改善したいという前向きなインサイトがある。
・子供にちゃんとした歯磨きの習慣付けをしたい。
■ブランドリニューアルのコンセプト
・ブランド刷新時、最重要「決断」が、ブランド再生の旗印に「予防歯科」という社会的意義を掲げたこと。
・「日本を予防歯科の先進国にする」という、クリニカ・マーケティングチームの決意。
■ブランド再生と段階的な新製品投入
・1年目:「予防歯科」を掲げ、全42アイテムを刷新。
・2年目:「予防歯科」習慣の提案をテーマに、歯並びの悪い箇所の磨き残しを集中ケアする「同 デンタルタフト」という“意識高い系”新製品も。
・3年目:定着化をテーマに、高性能シリーズをリニューアル。
・4年目:予防歯科を一歩前に進める「自分事化」をテーマに、「0才からの予防歯科」を掲げ、子供用歯ブラシ「クリニカkid’s ハブラシ」などを投入。「子供との歯磨きの時間を親子の大切なコミュニケーションにしよう」と動画広告なども。
・5年目:デンタルフロスを投入。デンタルフロスは使用率3割、「面倒臭い」という習慣化の壁、「始めるきっかけが少ない」という問題があり、それを突破するコミュニケーションを。
■プロモーションのコンセプト
・予防歯科という社会的意義を打ち出し、世の中に大きなうねりを起こすマーケティング活動。
・新生クリニカでは、メーカーが前面に出るより、社会のムーブメントを起こして消費者のケア意識を高めることを重視。それが結果的に、ブランドに還流する仕組みづくりに本腰を入れた。
ー歯科医師が推奨するセルフケア商品のラインアップを揃え(“受け皿”を整えた)
ー定期健診を含めたオーラルケアの啓発活動を強力に推進
ー直接製品アピールを行わない予防歯科の普及・啓発活動に、毎年億単位のマーケティング費用を投じるという異例の決断。
ー年間1万GRP以上投入するクリニカCMでは、最後に必ず「歯科健診に行きましょう」というメッセージを流す。クリニカのロゴを出すだけで製品に一切触れず、予防歯科の必要性を訴える専用の啓発CMも積極的に打つ。
・独自制作の「予防歯科」啓発冊子を30万部以上、啓発ポスターを全国7万医院、全国の産婦人科でマタニティー冊子を90万部配布。歯科医師会や行政、教育機関といったステークホルダーを巻き込んで、予防歯科を推進するメッセージを世に投げかけた。
→結果、予防歯科の認知率:9割近くに達した。定期健診の受診者:4割未満→5割近くにまで増加。
・予防歯科の普及を推進することで、個々の新製品だけではなく、クリニカのブランド全体の価値が高まる構造に。消費者のケア意識が上がることで、予防歯科の代表ブランドであるクリニカが恩恵を受けるという循環モデルの構築。
■対 関連部門とのコミュニケーション
・社内の営業部門から異論噴出。
・それまでの新製品・価格頼みのビジネスと、社会的意義を打ち出す新しいブランド戦略の“落差”があまりに大きかった。
・新生クリニカの商談資料は、新製品ありきのプレゼンを一切やめた。「なぜ予防歯科が必要なのか」「予防歯科を広めるためにライオンが何をするのか」などのマーケティング・ストーリーが語られる。
・個々の商品は予防歯科を根付かせていくための1つの手段であり、それよりも、予防歯科を推進することで、市場がどれだけ活性化するかを重視。
→新製品や販売価格にしか興味を示さなかった流通・小売も、クリニカが描く戦略に共感し、中長期のブランド成長に期待を寄せるようになった。
■消費者の共感を引き出す仕掛け
・消費者との距離感を意識。メーカーの上から目線ではなく、消費者の隣で寄り添うように。
・CMでは、歯科医師のアドバイスを受けながら、自分のケアが上達していく楽しさを印象付ける。義務的イメージな予防歯科を「自ら進んで実践すべきもの」にうまく価値転換した。
■ブランドリニューアルの結果
・小売チェーンで、年々取り扱い店舗が増加。
・アドバンテージハミガキと、アドバンテージハブラシを併用するユーザーが、以前の2倍以上に増加。オーラルケア意識の向上→アイテム使用率アップ。
・2014年のブランド刷新以降、2年連続で2桁成長。
・2013年→2017年の5年で、売上は1.5倍に。
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