【ジョブ理論 事例】新規事業開発・既存事業や商品の刷新・キャンペーンプランの刷新
ジョブ理論とは、予測可能で優れたイノベーションを作るために「顧客の片付けたいジョブ(用事・仕事)」に鍵があるとする理論。
書籍「ジョブ理論」では、ジョブを片付ける解決策として、複数の事例が紹介されています。それぞれの事例が、どの領域・範囲の内容やアクションであるかまとめます。(詳細は書籍「ジョブ理論」をご覧ください)
■ジョブ理論 5種類の適用目的
書籍「ジョブ理論」では、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、顧客がなぜ特定のプロダクト/サービスを生活の中に引入れるのか、その理由を把握するための方法論をまとめています。
賢明なあなたのお察しの通り、「顧客の片付けたいジョブがわかる」「顧客がそれを雇用する理由がわかる」だけでは、1円も売上は増えません。何のイノベーションも生み出しません。
ジョブ把握の先に何をしたいのか、もう少し正確に言えば、何をするために、ジョブ把握をするのか。その観点から、書籍「ジョブ理論」で取り上げられる事例をまとめ直します。
売上を増やすために、イノベーションの具現化のために、5つの方向性があります。
- 新規の事業を作る
- 既存事業を作り変え、新しい業務を追加する
- 既存商品の、新カテゴリラインナップを作る
- 既存商品に修正を加える
- 既存商品の見せ方を変え、キャンペーンを変える
1.新規の事業を作る
■BMW(書籍の74p)
・ジョブ:A地点からB地点へ楽に移動したい
・プロダクト内容:ハイブリッドBMW1シリーズの投入。カーシェア試験プログラム開始。
・既存の選択肢:高性能車を売る
・ジョブレンズを通して見た競合:テスラ、Uber、ジップカー、Google自動運転
・その他:ディーラーを最優先顧客と見なしてきたが、誰が顧客かを見直した。
■CVSミニッツクリニック(書籍の133p)
・顧客のシーン:子供が喉が痛いと言う。
・ジョブ:できれば医者に行きたくない(診断されて、咽頭炎と言われることがわかりながら、何時間もかかる)
・プロダクト内容:予約なしの患者を、ナースが簡易診断、日常疾患の薬を処方する。
・既存の選択肢:医者に行くしかない。
・ジョブレンズを通して見た競合:親の我慢(医者に行くしかない)
■アメリカンガールドール(書籍の193p)
・顧客のシーン:母親と娘に幸福な体験を提供する。
・ジョブ:少女にとっては、自分の感情を表に出したり、自らのアイデンティティを確認し、辛いことも乗り越えていけると希望を得るため。親にとっては、何世代にもわたる女性の暮らしぶりや悩み・強さについて、豊かな機会を持つこと。
・プロダクト内容:人形ごとにあるヒストリーブック。
・既存の選択肢:バービー人形。
・雇用を阻む障害物:たくさんの人形とごちゃ混ぜに店頭で並べられること。
・その他:従来の玩具店で販売せず、当初はカタログ販売のみ、後に直営店。
2.既存事業を作り変え、新しい業務を追加する
■サザンニューハンプシャー大学 SNHU(書籍の87p〜)
・顧客:通信課程の学生は平均30歳。高卒18歳とは異なるジョブ。
・ジョブ:仕事と家庭を両立させ、さらに勉学の時間をねじ込もうとしている。
・顧客が求めるもの:利便性、サポート体制、資格取得、短期修了。(キャンパスライフは一切不要)
・プロダクト内容:オンライン通信課程を、30歳に合わせ、ほぼ全てを変えた。
ー問合せには10分以内で電話返信。
ー入学者に個人アドバイザーをつけ、勉強進捗のヘルプをした。生活面での困りごとにも相談に乗った。
・既存の選択肢:国内の地元の大学
・ジョブレンズを通して見た競合:他のオンラインプログラム。手強い競争相手は「無消費」
・雇用を阻む障害物:奨学金の範囲を、数日以内に明確に伝える。(以前は週〜月単位の時間がかかっていた)
■メドロニック社 ペースメーカーのインド展開(書籍の205p〜)
・雇用を阻む障害物:患者の無自覚、適切な診断の欠如、患者が治療の道筋をたどる難しさ、金銭的問題。
・ジョブレンズを通して見た競合:最大の競合は、患者が何もしない「無消費」。上記の数多の障害による。
・プロダクト内容:地域の心臓専門医と協力して、心臓人間ドックをあちこちに整備。無料で検診。治療資金のつなぎローンを提供、書類を減らし、2日で承認、担保資産も不要に。地域の病院と協力して、患者カウンセラーを設置。
・既存の選択肢:なし
・その他:製品だけでなく、インドにおける心臓疾患診断プログラム自体を作り上げた。
■メイヨークリニック(書籍の233p〜)
・顧客のシーン:体調不良で、医者も原因がわかってない。
・ジョブ:たらい回しされず、スムーズに原因を特定し、治したい。
・プロダクト内容:患者ひとりにの診察全行程に担当者がつき、どの医師にどういう順番で診てもらうか調整し、その日に全員診てもらえるよう予約してくれる。
・既存の選択肢:医師一人ずつ順番に、診てもらう(たらい回し)。
3.既存商品の、新カテゴリラインナップを作る
■キンバリークラーク 成人用おむつ(書籍の127p〜)
・顧客:大人の女性の3人に1人は失禁に関して何らか悩みがある。
・ジョブ:失禁の悩みを減らし、楽しい生活を取り戻す。
・プロダクト内容:おむつとは見た目もつけ心地も違う新製品。素材も製法も違う、一般肌着とパッケージ外観を似せ、透明窓をつけて普通の肌着そっくりであることが、買う前にわかるようにした。
・既存の選択肢:見るからに紙おむつっぽい、成人用おむつ。
・ジョブレンズを通して見た競合:購入するくらいなら、我慢する「無消費層」。生理用品で間に合わせ。外で恥ずかしい思いをするより、家にいる。
・雇用を阻む障害物:店で紙おむつを買う恥ずかしさ。購入者の尊厳の回復に注力した。
・その他:観念して買うまでに2年ほど悩む期間がある。
4.既存商品に修正を加える
■インテュイット クイックブックス(書籍の106p〜)
・顧客のシーン:誰も洗練された会計ソフトを望んでいなかった。
・ジョブ:何をするかではなく、何をしたくないか(請求書送付、現金回収など)。
・プロダクト内容:自社の金銭処理が滞りなく機能することに限定したソフト。
・既存の選択肢:他社の高度な会計ソフト
・ジョブレンズを通して見た競合:帳簿担当者の採用、事務作業のための残業、エクセルで面倒な作業。
■引っ越しコンサル ボブモエスタ
・顧客のシーン
・ジョブ
・プロダクト内容
・既存の選択肢
・ジョブレンズを通して見た競合:
・雇用を阻む障害物
・その他
5.既存商品の見せ方を変え、キャンペーンを変える
■P&G 中国市場で紙おむつ販売(書籍の142p〜)
当初、十分に安い値段でオムツを製造できれば、すぐに市場を拡大できると考えていた。欧米のオムツより品質は低くても、安ければ中国の親たちは買うだろうと。
が、そうではなかった。
・顧客:赤ちゃんを育てるママ
・ジョブ:赤ちゃんには、夜よく眠ってほしい。
・プロダクト内容:プロダクトは変更なし。プロモーションメッセージを刷新。
・ジョブレンズを通して見た競合:おむつの機能面ばかりに囚われていた、自分たちの思い込み。
・その他:パンパースと寝付きの相関研究。睡眠と認知能力発達の相関。
■ジョブ理論|ゼロから立上げる新規事業開発事例
【事例】ゼロから立ち上げる新規事業|マイシェフクイック事例
ジョブ理論ベースの新規事業創出。無消費&問題発見から需要と顧客の創造|新事業企画,立上げ支援コンサル
■ジョブ理論|既存事業資産を活かす新規事業開発事例
【事例】既存事業資産を活かす新規事業|Amazonダッシュボタン事例
■ジョブ理論|既存商品・ブランドの刷新事例
【事例】既存ブランドの刷新|クリニカのブランドリニューアル事例
【事例】既存商品の新価値軸商品の開発|クリニカの新歯ブラシ事例
【ジョブ理論 調査方法】既存商品のマーケティングためのジョブ調査方法
■ジョブ理論|オーブンイノベーション・共創事例
【事例】抑圧による無消費を捉えた共創|ジョブ理論ベース ママ従業員の飲み会 事例
http://smasa0810.hatenablog.com/entry/innovators_dilemma_summary