出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

個人向け出張レストラン・出張料理 "マイシェフクイック" の社長のブログです

【パラダイムの魔力 要約】イノベーションとパラダイムシフトの関係性

イノベーションには欠かせない「パラダイム
パラダイム・シフトはいつ起こるのか、また誰が起こすのか、どうすればパラダイム・シフトを起こせるのか。

将来を予見する必要ある人、新規事業開発や新技術開発を担う人が、認識しておくべき「パラダイム」と「パラダイムシフト」。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41TB3P0DN5L.jpg

 

■時計市場のパラダイムシフトとイノベーション

時計のパラダイムシフト

・スイスは、長年にわたり世界の時計市場を支配し、時計技術と品質をリードし、世界最高の時計を作っていた。
・1968年と1980年の腕時計市場のシェア。
 ー1968年:販売個数65%以上、利益80%以上
 ー1980年:販売個数10%以下、利益20%以下

・スイスは、腕時計作りのルールが根本から変わってしまうパラダイムシフトに直面し、対応を誤った。時計職人6.2万人のうち、5万人が職を失った。
・一方、成功したのが日本。1968年の日本のシェアは1%未満だったが、クオーツ時計をセイコーが採用し、日本のシェアは33%を占めるまで急成長した。

・クオーツ研究は、スイス人が成果を上げていた。しかし1967年、この革命的アイデアを、自国のスイス時計メーカーに持ち込んだ時、相手にされなかった。
・その技術に飛びついたのが、日本のセイコーだった。

・将来を正確に予測することはできないが、努力すれば、おおよその方向は見えてくる。「パラダイム」の概念を理解できれば、将来を見通す能力は大きく高まる。

 

パラダイムとは何か

パラダイムとな何か

パラダイムとは
 ーパラダイムは、我々が世界を認識する方法。
  広く共有された一連の仮説(パラダイム)に基づき、現実を捉え、将来予測している。
 ー現実のある見方に基づいて、認識し、考え、評価し、行動する基本的な行動。
  支配的パラダイムは、声高に論じられることはまずない。
  その文化の中で、疑う余地のない暗黙の了解として存在する。
 ールールと規範であり、その教会内でどう振る舞えばよいか教えてくれるもの。

パラダイムシフトとは、パラダイムがガラッと変わり、新しいゲームに移行すること、そのゲームのルールがすっかり変わってしまうこと。

・時計の歴史を見れば、1968年時点では歯車やベアリングなどを精巧に作る技術・職人が重要だった。しかしクオーツは、歯車もゼンマイもなく、電池を入れれば良い電子時計。パラダイムがシフトし、1980年には、腕時計のゲームのルールはすっかり変わっていた。

・将来を予見する能力を高めたい場合、トレンドが目に見えて変わるまで待ってはいけない。ルールをいじり始めた人に、注意しなければならない。それが大きな変化の最初の兆候だからである。

パラダイムについて考察する4つの点。
 1新しいパラダイムはいつ現れるのか?
 2どんな人がパラダイムを変えるのか?
 3パラダイムを変える人の後を、最初に追うのは誰で、なぜそうするのか?
 4パラダイムシフトは、その渦中にいる人にどんな影響を与えるか?

 

■新しいパラダイムはいつ現れるか

・新しいパラダイムは、必要とされる前から現れる。求められてもないのに、新しいパラダイムが現れる、とも言える。
・新しいパラダイムが現れた時、典型的は反応は、拒絶反応である。それまでのパラダイムに習熟した人・成功している人は、新しいパラダイムを受け入れられない。スイス人が、クオーツを相手にしなかったように。

・「自分の専門分野で、同僚の誰もが解決したいと思いながら、解決の糸口さえ見つからない問題はないだろうか」と自問する。それは既存パラダイムでは解決しないもの。
 法律分野の例
 ー現行の裁判制度は、上訴が繰り返され、恐ろしく時間がかかる。
 ー大変な弁護士費用がかかり、自分の身を守れるのは、金持ちだけである。
 ーダメもと精神で、賠償金を思い切りふっかける訴訟が横行している。
・既存パラダイムでは到底解決できない根深い問題がある時、新しいパラダイムが登場する舞台は整えられているとも言える。

 

■誰がパラダイムを変えるのか

パラダイムシフターは、アウトサイダー

パラダイムを変えるのは、簡単に言えばアウトサイダー
 ー現行パラダイムを細かい点まで十分理解してない人
 ーパラダイムをまるで理解していない人
 ーパラダイムを壊そうとしている人

アウトサイダーが素晴らしいアイデア(新しいパラダイム)を持ってきたとき、既存パラダイムにある意思決定層(管理者・経営層)が発する典型的なセリフ。
 ーそんなことは不可能だ
 ーここではそんなやり方は通用しない
 ーそれと同じようなことを前に試したが、うまくいかなかった
 ーそんな簡単にできれば、誰も苦労しない
 ーそんなやり方は、我が社の方針に反する
 ーもう少し経験を積めば、お前もわかるようになる
 ー誰がルールを変えていいと言ったのだ
 ー今のやり方が間違っていると、よく言えたものだ

アウトサイダーに拒絶反応を示すのは、それなりの理由がある。意思決定層(管理者・経営層)は、現行パラダイムで成功してきた人である。現状を見れば、変える必要など何もなく、これまでうまくいってきたし、どう考えてもやり方が間違っていると思えないのが、現行パラダイムでの成功者の普通の感覚。
・既存パラダイムと異なる、新しいパラダイム・やり方・アイデアを提示するアウトサイダーに遭遇した時、その意見に耳を傾けるのは、普通は難しい。
・新しいパラダイムを認めるということは、過去の努力を失敗と認め、投資を忘れろと言われていることに等しい。

・新しいパラダイムは、現行パラダイムで生きる全ての人に、大きなリスクを負わせる。その人の地位が高いほど、リスクが大きくなり、現行パラダイムに習熟し・投資してきたものが大きいほど、パラダイムが変わって失うものが大きくなる。

・状況的に、パラダイムシフターの可能性がある4カテゴリー。
 1研修終えたばかりの新人
 2違う分野からきた経験豊富な人
 3一匹オオカミ
 4よろずいじくりまわし屋

パラダイムシフターは4つのどのタイプも稀であり、貴重である。そう簡単に見つからない。目の前に現れても、相手にしないことが多い。

 

■2 違う分野からきた経験豊富な人

・別の分野で高度な技術や知識をもち、何か理由があって、それまでの分野と全く関係のない職業を選んだ人たち。
・この人たちの持つ強みの一つは、入ったばかりの分野の経験が乏しく、そのパラダイム共同体の微妙な点について、気がつけること。もう一つの強みは、何ができないかを知らないこと。できないと知らなければ、やってしまうことが可能。
(参考:ノーベル賞受賞者の一定割合は、このパラダイムシフターである 
ノーベル賞受賞者に学ぶ イノベーションの作り方 )

・この人たちは、知らないから、既存パラダイムにとって「とんでもない」質問をする。既存パラダイムにいる人が当然と考える行動様式やアプローチが不思議なものに映る。禁止事項を知らないから、既存のやり方に手をつけていけないとは思わない。

・重要なのは、この人はどこの組織にもいる(転職してきた人、別組織から来た人)が、その人が目の前に現れた時、その価値を見抜くことはできない。訓練し、予備知識を与え、仕事を教える。そうすることで(既存パラダイムの世界で)組織にとって役立つ人間になると考えるのが、普通。そして、大事な2つの強みを失ってしまう。

・"違う分野からきた経験豊富な人" が目の前に現れた時、最初にやるべきは "既存パラダイムでは解決しない問題" のいくつかを、解決するよう指示すること。「正しいやり方」を知らないうちに、それに取り組む機会を与えるべき(そのパラダイムの「正しいやり方」では、全然解決できないことはわかっているのだから)。
・この方法は、当然ほとんどうまくいかない。新人がパラダイムシフトをもたらす確率は、1000人に1人くらい。これは無駄ではなく、1000人に1人の確率だとしても、その1人を見いだせるか、見出せないかは、天と地の違いがある。

■3 一匹オオカミ

・社内の人であり、既存パラダイムで仕事をし、現在の方法では解決できないことを知っており、真っ先にパラダイムを変えようとする人。この人は大抵本流から外れたところにおり、一匹オオカミ、わからず屋、変わり者などと呼ばれている。社内にいるはいるが、そうそう滅多にお目にかかれない希少人種。
ほぼ例外なく、この人たちは、危機が発生するまで社内で相手にされない。

・この人たちの強みは、既存パラダイムを熟知しているが、それに囚われていないこと。

■4よろずいじくりまわし屋

・棚上げされている問題に、好き好んで取り組む珍種。それが特別な問題だとは知らず、ただそこに問題があり、それを解決しなければ先に進めないと思っているだけ。
・どんどん問題に取り組み、ほとんど失敗する。既存パラダイムで解決できない問題だから。しかし、時には、問題を解決してしまうことがある。

  

■誰がパラダイムを開拓するのか

新しいパラダイムの開拓者

パラダイムシフターが発見した未開の道を、真っ先に突き進むのがパラダイムの開拓者。

パラダイムの変化は、量的ではなく質的な変化のため、新しいパラダイムを判断するときは、曖昧な感覚になる。直観、ピンとくる、勘とか。データが不足しているときに決断する、直観的判断。
・早い段階で新しいパラダイムを取り入れる人は、本当に問題が解決できるかどうかわからないときに、決断せねばならないことが多い。確実にわかっているのは、既存パラダイムでは、解決できない問題があるということだけ。この種の決断は、信念がなければ下せるものではない。

パラダイムの開拓者に、新しいパラダイムに切り替える理由を問うても、根拠をもって説明できない。データや根拠はないからだ。開拓を決断する本質は、人よりも早くパラダイムを変えようと思い立つ人は、頭でそう判断するのではなく、心で判断する。

パラダイムの開拓者になるには、直観に加え、勇気が必要になる。直観を信じて行動する勇気がない人は決断できず、変化を傍観し、新しい変化に乗り遅れる。

 

パラダイム効果とは何か

パラダイムシフトの原理
パラダイムは常に、解決できない問題を浮き彫りにする。それが引き金になり、新しいパラダイムへの模索が始まる。
パラダイムを変えるのは、いつもアウトサイダーアウトサイダーは、現在のパラダイムの機微を知らず、それに時間や努力を投資していないから。
パラダイムの開拓者は、十分な根拠なしに、自分の直観を信じ、勇気を持って判断を下す。

パラダイムは、心理的フィルターの役割を果たしてり、誰もが、自分が無意識に採用しているパラダイムを通してしか、世の中を見ることができない。
・言い換えれば、自分のパラダイムに合わない現実世界に存在するデータや事象は全て、見えない状態になる、もしくは、自分のパラダイムに合わせてデータや事象を捻じ曲げて解釈するようになっている。

・したがって、私たちが何を知覚するかは、自分の採用するパラダイムによって決定されていると言える。これが「パラダイム効果」
・例えば、誰かに「そんなことは不可能だ」と言われたら、その言葉は「私が採用するパラダイムに基づくと、それをどうやればいいのかわからない」と言い換えれば良い。

パラダイムの力はあまりに強く、私たちは世界をある一方向からしか見ることができない。専門家ほど、既存パラダイムでの専門であるがゆえに、この傾向は顕著になる。
・見えるはずだと思うものは、はっきり見える。自分のパラダイムに合致しないデータは、よく見えないか、全く見えないか、自分のパラダイムに合わせて歪めて見る。

・将来を見通すには、現在のパラダイムでわかっていることは脇に置き、周辺に注意を払い、パラダイムを変えようとしている人を見つけ出す必要がある。

 

パラダイム効果の実例

パラダイムの実例

■訪問販売
・ある建設会社の経営会議にて、モデルホームを建て、お客さんに来てもらい、販売員がそこで説明をする、という営業をしていた。
・戦略会議に初めて参加した会計士は、不思議に思った。「他の多くの業界では、セールスマンはお客さんのところに出向く、お客さんが来るのを待っている会社はない」と。
・副社長がイラつきながら答えた「うちの仕事ではそんなことはできない、当たり前だろう。どうやって客を見つけるのだ。」
・会計士は言った「私なら、『売り家』看板が出ている家を探し、その持ち主に話に行く。その人は、潜在顧客のはず。」
・副社長はイラつき、黙ってくれと嫌な顔をした。
・会長が興味を示し「大して金はかからないし、そういうことをするセールスマンを雇ってもいい」と言った。
・その建設会社は、既存ルールに全く反する、会計士の馬鹿げたアイデアを試してみることに。結果は、驚くほどうまくいった。

■手榴弾メーカーがエアバッグを作る
・1985年ごろ、自動車メーカーが作るエアバッグのコストは500-600ドルだった。
・その頃、手榴弾の信管などの起爆装置メーカーが、エアバッグトリガーを開発し、値段はエアバッグ含め約50ドル。
・その社長は、エアバッグに必要な要素(衝撃を感じて飛び出す、膨らむ)は、自社が得意な分野と気づき、技術者2人にエアバッグの研究開発を命じた。1年もせず、研究開発費40万ドルもかけず、エアバッグトリガーを開発した。
・精密で簡潔、しかも安い。文句のつけようがない。
・そこで、ゼネラルモーターズに営業に行った。GMは、門前払いを食らわせた。GMだけでなく、アメリカ全ての自動車メーカーが耳を貸さなかった。
・自動車メーカーが、ブリードの提案を真剣に検討するのが難しかったのは、パラダイム効果のためである。ブリードは、全くのアウトサイダーで、手榴弾メーカーだなんて常識に反しており、自社で長年・多額の投資をして積み重ねてきた研究成果に反する者だった。

■白人男性と、女性とマイノリティ
セミナーでこんな実験をする「白人男性の社会で、成功するために必要な条件を、思いつくままにあげてください。」
・女性とマイノリティはすぐに「適合」に必要な条件を書き並べる。
・一方で、白人男性は、何もせず、ペンを走らせている女性やマイノリティの姿を茫然と眺めている。
・常に、このような状況になる。白人男性には、白人男性社会で成功する条件をかけない。あまりに無意識すぎるから。
・多くの場合は、パラダイムは目に見えない。それはいつも無意識にやっていることだから。無意識であっても、行動を規定するのはパラダイムである。

 

パラダイムの重要な特徴

パラダイムの重要な特徴7つ。

パラダイムはどこにでもある

パラダイムは役に立つ
・ある世界で共有されるパラダイムのおかげで、その世界でスムーズに生きることができる。
・"多様性"が大切なのは、異なるパラダイムを持つ人が集まることで、問題に対する対処の観点が多様になるから。

パラダイム効果は「見ると信じる」の常識的な関係を覆す
・「見れば、信じる」のではない。「信じれば、見える」という方が正確。

4ほとんどの場合、正しい答えは2つ以上ある
・目の前の事象やデータを、どういうパラダイムの前提で捉えるかにより、捉え方は変わる。事実は一つでも、捉え方はパラダイムの数だけ異なる。

5深く根付いたパラダイムの中にいると、パラダイムの麻痺を起こす
・成功して大きな力を手に入れると、自分たちのパダライムが永遠に続く錯覚にとらわれてしまいがち。
イノベーションを起こしたいなら、既存パラダイムの殻を破って、新しいパラダイムを求めようとしない限り、新しい素晴らしいアイデアは、常によその誰かが発見することになる。

6激動の時代には、パラダイムのしなやかさが最善の戦略
・自分の専門分野について、そんなバカな、と思うことを耳にしたら、それをとことん考えて見るべき。
・しなやかになるには、まず心を開くこと。自分の常識に反することをいう人に出会ったら、なぜそれが不可能かを説明したい気持ちを抑えて、こう言うべきだ。「そんなことは今まで、考えてもみなかった。もっと話を聞かせてくれ」と。

7人間は自分のパラダイムを変えることができる
・全く違う考え方をする人と話をするとき、事実が違うのではなく、パラダイムが違っている場合がほとんど。同じ事実を見ているのだが、データをより分けるフィルターが違うために、見えるものが違ってくる。
・違う考え方の人に出くわしたら、自分の意見を主張する前に、相手の話を聞く方が良い。じっと話を聞いていると、相手がどんなパラダイムを持っているのかわかってくる。

 

■管理者とリーダーとパラダイム

パラダイムとリーダー

・専門分野の違う人、部署の違う人が集まり、問題点を話し合うクロストークの場を設けよう。立場の違う人のパラダイムを、解決策の検討に用いる。

・本当に素晴らしいアイデアが出てくるためには、馬鹿馬鹿しいアイデアが100個は出てくる必要がある。
・馬鹿馬鹿しいと思えるアイデアを出した人に、感謝すべきだ。そして、いつでもまたアイデアを聞かせてほしいと頼んでおこう。なんせ100個のアイデアが必要なのだから。

・管理は既存パラダイムの中で行うもの。パラダイムの間を導き、人々が進んでいこうとしない場所に、人々を導くのがリーダー。
・既存パラダイム内での管理に必要なのが、ルール、システム、基準、プロセスなど。一方、パラダイムの進化は、直観的な判断、勇気が必要。
・状況が変化するときに必要とされるのは、管理者ではなく、リーダーである。

・管理者は管理し、リーダーは革新する。
・管理者は短期的視野を持ち、リーダーは長期的視野を持つ。
・管理者は「どのように」を重視し、リーダーは「なに」「なぜ」を重視する。 
・管理者は業績を見つめ、リーダーは地平線を見つめる。
・管理者は現状を受け入れ、リーダーは現状を打破しようとする。

 

ノーベル賞受賞者に学ぶ イノベーションの作り方

生理学や医学、化学や物理など、人の生活や科学の前進に大きく貢献する発明・発見が対象となるノーベル賞
ノーベル賞は、世界的に多大な影響を与えるイノベーションの歴史そのものとも言えます。

ノーベル賞受賞者の考え方や物事の捉え方、価値観や哲学は、イノベーションや新事業創出を目指す人にとって、学びが大きいはずです。

 

イノベーションとは

イノベーション とは「新たなことを創造し、変革で経済や社会に価値を生み出し、革新をもたらすこと」。
物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」。

 

江崎玲於奈氏(ノーベル物理学賞 1973年)

https://www.criprof.com/magazine/wp-content/uploads/2017/12/011_biographies01_768x480.jpg

半導体トランジスタ誕生から学んだのは、どれだけ真空管を研究・改良しても、質的に異なるトランジスタは生まれないということ。そのため真空管研究を止め、半導体物理学の研究に取り組み始めた。50年代初頭の話で、文字どおり未踏の分野。新分野を開拓すれば、二流の研究者でも一流の成果を挙げるチャンスがあると考えた。

ソニーに転職し、目標にしていたトンネル電流の観測に成功した。その先に "偶然" エサキダイオードを発見した。
半導体の実験中、助手が測定した異常電流に疑問を持った。助手は、実験手順を間違えたため、教科書にない異常電流を測定したと思った。しかし江崎氏は、教科書が間違ってるかもしれないと思い、実験を続けた。

・エサキダイオードの研究成果は、すぐ日本物理学会で発表したものの、当初はほとんどの人に意義を理解してもらえなかった。非常に高く評価してくれたのは、ベル研究所で、中でもノーベル物理学賞受賞者ウィリアム・ショックレー博士が絶賛してくれた。

・研究者としての江崎氏は、常にゴーイング・マイウェイ。リスクが高くても〝未知〞を求める路線が性に合っている。
・1970年に発表した半導体超格子理論は、84年頃から世界の研究者論文に引用される回数が急増した。

・成果を挙げることができたのは、独創的なシナリオを作成し、それを企業において実施したから。

・多くの人は、科学進歩が与える物質的な所産・成果ばかりに目を向けがちだが、大事なのは、それを生み出した精神的な所産。研究者の未知を探究する鋭い洞察力と、豊かな創造力を備えたウィズダム=叡知が大事である。

ノーベル賞を取るための5か条(必要条件)
 1:今までの行きがかりにとらわれてはいけない。
 2:大先生を尊敬するのはいいが、のめりこんではいけない。
 3:無用なものは捨て、自分に役立つ情報だけを取捨する。
 4:自分を大事にし、他人のいいなりにならず、時に闘うことを避けてはならない。
 5:いつまでも初々しい感性と知的好奇心を失ってはならない。

科学進歩の根源である叡知に注目しよう|Technologist’s magazine
江崎玲於奈 ITの幕開けを告げる技術発明でノーベル賞|SciencePortal China

  

野依良治氏(ノーベル化学賞 2001年)

https://img.recordchina.co.jp/thumbs/m400/201905/20190531-051636364.jpg

・科学者として成功に必要なのは、ものすごく単純で、自分でいい問題を見つけて、それに正しく答えること。その生き方を貫く。

・しばしば科学者として成功した人は変人奇人で、非社交的。良い子ではない。独創的とは「独り創造的」なので、彼らの考えや成果はなかなか認められない。寂しく、孤独。それに耐えねばならない。
・そして重要なのは「異に合う」。異なる物事や人々、異なる文化に出合う経験はものすごく大事。自分で問題を見つけるために、同じところで、じっと考えていても見つからない。

・同じところに留まる研究者は成長し難い。いろんなところに行き、新たな体験をし、それを糧として発想がひらめくわけでである。ノーベル賞受賞者は、受賞時に平均して国内外の4.6機関を経験している。

・創造性に必要なのは、強い地頭、感性と好奇心、新しいことへの挑戦と反権力・反権威(年配者や先生への忖度無用)。
・今の大きな問題は、社会全体を覆う効率主義・成果主義や形だけの評価制度のせいで、好奇心を持って自ら問う力、全体像を掴み考える力、答える力が落ちている。
・最も心配なのは「問う力」がほとんどないこと。発展につながる良い問を作るのは、与えられた問題に良い答えを出すより、ずっと難しい。誰かに作ってもらった問題に答える習慣が染み付いてしまっている。

野依博士「本気で怒っている」日本の教育に危機感|THE PAGE
ノーベル賞受賞者が見る教育の未来 野依博士に聞く|教育新聞
日中は科学研究で積極的な連携を―野依良治|レコードチャイナ

 

田中耕一氏(ノーベル化学賞 2002年)

https://project.nikkeibp.co.jp/atclmono/vision/060500031/pic4_DSC_0344.jpg

イノベーションに天才は不要、異分野融合の場こそが重要

・独創的な成果を目指すならば、異分野融合ができる仕組みや場が極めて重要。
イノベーションという言葉の定義は「新結合」「新しいとらえ方・活用法」を意味する。その実現手段として、異分野融合は極めて有用。

 

・1982年、レーザーによる表面質量分析技術の開発に取り組んだが、他者装置と同程度の性能しか実現できず、装置の開発としては失敗した。
・その失敗した技術を、別の分野で活用しようと、レーザーによるタンパク質など高分子質量分析に取り組んだ。
・それは、化学を少しでも知る人なら、非常識な開発目標で、無謀な挑戦だった。無謀な開発に挑めたのは、それがどれほど難しいことなのか、いま一つピンときていなかったから。つまり、化学の素人だから挑戦できたと言えるかもしれない。
(同僚の化学の専門家は、レーザーでタンパク質のイオン化なんて、できるわけないと断言していた。)

・ある時、グリセリンと金属超微粉末を誤って混ぜてしまった。間違いだから廃棄してよかったのだが、混ざった試料を何気なく分析器に入れると、世界で初めてタンパク質がイオン化できていた。
・科学者は、仕組みの理屈が先にあり、思い通りの現象を起こさないと学術的な面白みがないと考えるかもしれない。しかし私は技術者だから、トライアンドエラーでまず試して、うまくいったら後から理屈を考えればよいと考える。こういう発想だから、従来の常識、呪縛を超えられることもあると思う。

https://news.mynavi.jp/article/20180221-583937/images/008.jpg

ノーベル賞受賞後、新たな目標を立て、年間1億円の予算と研究環境を得たが、思うように研究が進まず、苦悶する日々が7年続いた。2009年に国のプログラムに採択され、5年で35億円の研究資金を得て、アルツハイマー研究を加速できた。

・血液検査でアミロイドβ検出することを目的に研究を続け、2年後に成功する。しかし、アミロイドβ検出では病気診断できないというのが医学会の常識だった。
・ただ、アミロイドβとわずかに構造が異なる「未知のタンパク質」データ検出に成功していた。それは学会では、理論上、存在が否定されたいたものであり、医学界の常識を覆すこととなった。
認知症研究の第一人者は「当初、何が新しいのかわからなかった」らしい。)

・大学教授や研究者は、専門分野を深掘りして探究することに注力する。対して、企業に勤める者は、雑誌やテレビなど雑多な媒体から興味を持った知識をかき集め、専門分野に囚われず様々な知恵を引っ張り出す。目的に対して手段は選ばないのは、確実に利点である。

・常識を打ち破る科学的発見は、偶然から導かれることが少なくない。だが、その偶然を生み出すには、失敗を恐れずにチャレンジし続ける、不断の努力で裏打ちされているものである。「偶然は、強い意志がもたらす必然である」

イノベーションに天才は不要、異分野融合の場こそ重要|ものづくり未来図
仮説の幅を広げたい - 研究への熱き想い|マイナビニュース
田中耕一が初めて明かした16年間の“苦闘” | 文春オンライン

 

鈴木章氏(ノーベル化学賞 2010年) 

・研究において重要なことは、取り組む分野が「いかに好きなのか」ということ。好きであれば、色々とを考えて工夫して、独創的な研究、独創的な発想が沸いてくると思う。しかも、好きでないと、続けていこうという気にならない。
・独創的な取り組みを続けて、他人の物まねをしないことが、最も重要。

・学生の時代に、海外で学ぶ経験を得ることができれば、それは素晴らしいこと。外国の先生や友人のものの考え方は、話すことで初めて理解できる。

・どの分野であっても、将来の望みや希望は自分たちで作っていくものだ、ということを強調しておきたい。例えば、理科や技術者と聞くと「将来の望みも希望もない」と言う人がいるようだが、それは違う。他人が言っていることを、そのまま受け入れるような感覚では困る。 

液晶・医薬を生んだ鈴木カップリング | 日経 xTECH

 

山中伸弥氏(ノーベル生理学・医学賞 2012年) 

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/history/honor/award_b/nobel/2015/images/yamanaka/03.jpg/image

・独創的なアイデアは、まず実験に取り組み、その結果を色のない目で見られるかどうかが大切。自分の仮説や教科書にあることに囚われない。人から聞いたことや教えてもらったことでなく、先入観を持たず、自分が観察したことを一番大切にすべき。

・研究は、「これはこうかもしれない」という仮説を立てて、それを実験して確かめる。その繰り返し。薬がどうやって効くかを研究。
・米国に動脈硬化の勉強に行ったのに、予想外にも自分の研究対象ががんになり、そこからさらに偶然にES細胞の研究に導かれた。そうした偶然の積み重ねから発展した成果がiPS細胞。

・研究者としての成功には、VとWが大切だと米国で教わった。Vision(目的・ビジョン)を持って、そのためにWork hard 一生懸命働くと。

・昔は、研究者は言ってみれば職人のような感覚だったと思う。しかし今は、違う大学や違う国の人、新しい技術を持ったグループとい協力し、自分の仮説なりをいち早く証明していく能力が必要とされている。

iPS細胞研究の現在そして未来「研究を支えるもの」|京都大学
iPS細胞の発見には偶然が関わっていた?|マイナビニュース
ノーベル賞・山中伸弥教授 挫折がiPS細胞研究につながった|ログミーBiz

 

中村修二氏(ノーベル物理学賞 2014年)

https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/e/3/670m/img_e3a652fc1e8ddf8942ecae7e140c0b9a93276.jpg

日亜化学工業に入社して10年間、毎日のように実験を繰り返していた。
・その際、会社に予算がなく、実験で壊した実験装置を自分で修理していた。そこで実験でに耐えられる石英ガラスの溶接作業をはじめ、さまざまな技術を身につけていった。

青色発光ダイオード装置勉強のためのフロリダ大学1年間留学は、辛かった。修士号の自分は、周囲の研究員にアホにされ、ディスカッションにも呼んでもらえず、いつもカヤの外で黙々と研究するだけだった。
・留学で得たのは悔しさ。絶対に博士号を取ってやろうと。それが研究の原動力になった。
・当時の職場では、社員の論文執筆活動を禁止していたため、隠れて書いた。

・窒化ガリウム青色LEDを作ろうと思ったのは、博士号を取るためだった。うまくいく確証はほとんどゼロの状態で。

・結晶幕を作る装置の性能が不十分だったため、装置の改造を繰り返した。毎日、午後に実験して、失敗。翌朝から装置を改造し、午後に実験してまた失敗。これが1年半続いた。
・これが、大企業の場合は、装置改造はメーカー外注が当たり前で時間がかかり、3ヶ月に1回しか実験できない。
・大企業は1年に4回実験する間に、中村氏は毎日実験して1年で360回実験した。

なぜ、中村氏は不可能と言われた青色LED開発に成功できたのか?|ダイヤモンド
5年ごとに会社を替われば能力は伸ばせる|日本経済新聞
中村修二 トップ研究者インタビュー|エナゴ

 

■天野浩氏(ノーベル物理学賞 2014年)

https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/2/a/670m/img_2a9788dcb4b3e2a96ce6717f9dea9c4524330.jpg

・それさえできれば世の中は変えられる、みたいな気持ちで、ずっと実験を続けたのが成功の第一の理由。
・実験は1500回以上失敗したが、何でも自分でできるから、実験自体がものすごく楽しかった。新しい実験結果が出ると、自分が他の人が知らないことを知る、ということが楽しかった。
・1年364日実験したが、結局、何の成果も得られないまま、惨憺たる思いで、15ページくらいの修士論文を2月に出した。

修士の2年間に1回もきれいな結晶はできず、博士課程になり、とにかく何か成果を出さないといけなかった。朝10時から夜中1時まで、実験、実験、実験を繰り返す毎日。だから勇気とかじゃなく、アイデアがあったら何でも試してみようと必死だった。できるかどうかではなく、とにかく何かやらないといけない。
・結果、博士課程の間にドクター(博士号)を取れず、満期退学になった。そんな時、「きみは一生懸命に実験に取り組んでいる」ということで助手として研究室に残してもらった。

・社会を変えたりイノベーションを起こしたりするには、信念と行動力がいる。どうしてもやり遂げるという気持ち。

失敗は1500回以上、それでも成功するまで続けた | 日経 xTECH
「欲することを見つめよう」 ノーベル賞学者 天野浩氏|日本経済新聞
ノーベル賞の天野浩氏と産学連携で生んだ「画期的業績」|ダイヤモンド

 

大村智氏(ノーベル生理学・医学賞 2015年) 

https://www.nippon.com/ja/ncommon/contents/column/37021/37021.jpg

・人のまねをするとそこで終わり。超えることは出来ない。

・成功した人は、人より倍も3倍も失敗している。やることはだいたい失敗する。1回失敗して、それでダメだと思ったらダメ。失敗したからよかった、この失敗が絶対役に立つと思いながら続けることが大事。
・挑戦して失敗しても、それは必ず後の人生で宝になる。

・とにかく科学者は人のためにならなきゃだめだ、分かれ道に来たときはそういう基準で考えた。

・大村グループは、500種近い化合物を発見し、うち26化合物が医薬品や農薬などに使われている。通常はある活性のものを見つけ出そうとするが、大村研究室は、新規の化合物を見つけ出してから活性を調べるという、逆転の発想で研究・調査を進めた。

「人のまねをするとそこで終わり」 大村智さんが語った人生訓の数々 | ハフポスト
世界3億人もの失明の危機救う:ノーベル賞の大村智氏 | nippon.com

 

大隅 良典氏(ノーベル医学・生理学賞 2016年)

https://public-newswitch.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/php4Ne9vz_5a436c16c16ea.jpg

・オートファジー研究を始めたきっかけは、人と競争するのが好きではなく、人と違うことがしたかったから。
・科学では、現在誰も注目していないことを始めるのがとても重要。大きな仕事を成し遂げるために 人がやっていないことに挑戦する以外に道は無い。これには、安定と真逆の考え方が必要。
・人と違うということは、決定的に大事なこと。人と同じところに、発見はない。

・自分自身が心底面白いと思えることをやる。研究には苦しさが伴うが、その研究テーマが自分にとって魅力的で面白いものならば、苦しさは必ず乗り越えられる。そして、安心して挑戦できる環境を整えることが必要。
・オートファジー研究のモチベーションは、『がんの研究につながるかも』ということではなかった。起きている現象が知りたいという、純粋な知的好奇心。疑問に思ったことに、解けるまでとことん付き合ってみる姿勢が大事。

・研究費を取るために、「役に立つ」と言わされ続けることが、研究の世界を害している。基礎研究には失敗はつきものだが、成果を2年後に出すことを求められると、2年でできることしかやらなくなってしまう。

・視野の狭い研究者ほど、客観指標(論文数や文献引用影響率など)に依存してしまっている。本来は自分の好奇心や自分の軸で判断したいところ。 

ノーベル賞大隅氏が説く、「役に立つ」の弊害|東洋経済オンライン 
大隅良典先生が若者に考えてほしい「役に立つこと」の意味|高校生新聞オンライン
大隅 良典教授に聞く、大きな仕事への挑戦と基礎科学の課題|ビジネス+IT
日本への危機感「人と同じところに発見はない」|AERA dot
大隅氏「視野の狭い研究者ほど客観指標に依存する」|ニュースイッチ

 

 

DX 成功のために必要なこと|攻めのデジタルトランスフォーメーション(新事業や新製品開発)が重要

デジタルトランスフォーメーションの成功に必要なことは、案外シンプルです。

成功する企業は、攻め型のデジタル戦略を採用する傾向 が顕著だそうです。
デジタルトランスフォーメーションの目的や施策として、新事業や新製品の開発・新規顧客の開拓に重点を置き、逆に、コスト効率化への注力が有意に少ないそうです。

 

■DX成功のために必要なこと

デジタルトランスフォーメーション成功のために必要なことは、1行で表現するなら、
「成功したいなら、真に変革に取り組み、新事業や顧客を開拓する必要がある。」

デジタルトランスフォーメーション  成功

 

■DX失敗する企業の傾向

逆に、デジタルトランスフォーメーションに失敗する理由を、1行で書くなら、
「DXに失敗する企業は、自動化やコスト削減ばかりやっている。」

デジタルトランスフォーメーション 失敗

 

デジタルトランスフォーメーション、変化への適応に本気で取り組む企業にとってカギとなるのは、自社の戦略が真に「変革」であり、単に一連のコスト削減策とならないよう、万全を期すこと、だそうです。
既存企業のデジタルトランスフォーメーションの敗因は、その守りの姿勢にある。

ハーバードビジネスレビューの記事は、デジタルトランスフォーメーションに成功する企業・失敗する企業の違いを、上記のように結論づけています。 

www.dhbr.net

 

ハーバードビジネスレビュー記事にある、デジタルトランスフォーメーション6つの戦略を、日本の既存企業のDX事例と合わせて説明します。 

 

■DX成功につながる「攻め型 DX3戦略」

デジタルトランスフォーメーションに成功する企業は、新たな需要・新たな供給・または新たなビジネスモデルの確立を狙う、「攻め型」のDX戦略を取ることが多いそうです。 

 ●攻め型① プラットフォーム展開
 ●攻め型② 新たな限界供給
 ●攻め型③ デジタル対応の製品・サービス

 

●攻め型① プラットフォーム展開

業界のバリューチェーンを再定義して価値の流れを劇的に変え、自社がバリューチェーン上で有利な立ち位置を取ることを狙う戦略。

 

■事例:ソニー社「Qrio Lock、MANOMA」

https://smarthacks.jp/mag/wp-content/uploads/35212_05.png

超大手企業ソニーにて、スマートホーム領域参入となる、デジタルIoTデバイスQrio Lock(スマートキー)。投資育成会社WiLとの合弁会社2015年8月「Qrio Smart Lock」を開発・発売。2017年にソニーが完全子会社化。

当時、米国ではGoogleがNestを買収して、スマートホームに参入。
もしソニースマートホーム分野に興味持つなら、そのタイミングで仕掛けるべきだとWil側は考えていた。なぜなら、もしGoogleが1つデファクトを握ってしまうと、マーケットで勝負が決まってしまうから。

新しいマーケット(スマートホーム領域)のバリューチェーンやエコシステムが定まる前に、ソニーがその入り口となり得るデジタルIoTデバイス(スマートキー)事業にて、市場に参入した事例。 

 

■事例:寺田倉庫社「minikura、TERRADA WINE STORAGEなど」

https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/31035/31035_04.jpg

BtoBの物流倉庫業の寺田倉庫が、BtoC向けの様々なデジタル関連保管サービスや、シェアリングサービスの倉庫機能の新規事業を次々立ち上げています。

法人向け物流・倉庫のノウハウを活かし、顧客層を法人から個人に変えることができれば、新たな市場の開拓ができると、2012年 個人向けのクラウド収納サービス「minikura」開始。
個人向けの小ロット対応ビジネスを成立させたことで、当時増えつつあったシェアリング企業のクラウド倉庫業務請負ビジネス(minikuraをAPI化)を開始。倉庫のAWSの立ち位置を確立した。

 

■事例:クックパッド社「クックパッドマート」

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shanonim/20190412/20190412174027.jpg

上場ネットベンチャーの "デジタル×リアル" 事業への新規参入。生鮮食品をスマホ注文し、自宅近くの店舗や施設ロッカーで受け取れる生鮮食品ネットスーパー。

生鮮食品の受け取り場所は、スーパー(リアル店舗)か自宅(EC通販)のみの所に、自宅からほど近い専用ボックス という、第3の選択肢を世の中に広めようとする事業。
言い方を変えれば、既存のバリューチェーンの最下流に、自社が新たに割って入ろうとするデジタル新事業です。

料理レシピという強みを生かし、既存の課題を既存のパラダイムと異なる方法で解消しようとし、デジタルを用いた新事業。

 

●攻め型② 新たな限界供給

ごく一部の企業がとるのが、デジタル技術を用いて、これまで閉ざされていた供給源を限界費用で活用できるようにすること。

 

■事例:IDOM社「NOREL、ガリバーフリマ、GO2GO」

https://image.itmedia.co.jp/business/articles/1609/30/yd_idom3.jpg

中古車 買取&販売大手のIDOM社(ガリバー)による、月額定額制の自動車レンタルサービスNORELや、中古車の個人間売買サービスのガリバーフリマ、個人間カーシェアGO2GO を新サービスとして展開。

同社には、買い取った中古車という資産があり、過去は、それを売るだけ(中古車販売)だった。
車業界の激変の中で、現状打破を狙い、2016年NORELサービス開始。買い取った中古車をNORELでも使用し、販売と貸出は共通在庫。保有車の販路最適化は過去よりずってやっており、その機能拡張した形。

GO2GO は個人間カーシェアを2019年に開始。中古車の買取・販売タイミングを利用。中古車を売った人には、安くシェアで使えることをアピールし、中古車を買う人には、シェアに出すことで固定費の足しになるとアピール。

 

■事例:ストライプインターナショナル社「メチャカリ」

 https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2017/06/mechakari_heavyuser.png 

ファッションIT新規事業 メチャカリ、2015年9月開始。
自社ブランドを企画・製造し、自社ECを持ち、ユーズド販売ECも運営している特徴を持っていたため、ECの在庫・物流を転用しつつ、新品レンタルをすることができる。

自社商品を新品でレンタルし、戻ってきたものを中古販売するビジネスモデル。

事業企画・スタート時、ある程度のカニバライズは覚悟していたが、蓋を開けてみれば、既存顧客は30%ほどで、70%は新規顧客。カニバライズ影響より、これまでと違う新たな顧客獲得につながっている。
また借りて、気に入ったら買う、というユーザーも一定いるそうで、当初想定しなかった嬉しい誤算もあり、事業は開始から3年にして既に黒字基調が見えているそう。

 

■事例:ヤマハ発動機社「月極ライダー」

https://biz-journal.jp/wp-content/uploads/2019/07/109648_0.jpg

月額バイクレンタルサービス 月極ライダー、2019年5月開始。ヤマハは自社バイク資産を使う形を取らず、販売店中古バイク)と利用者をつなげるウェブサイトのみ担う立ち位置のビジネスにした。
バイク市場は年々縮小しており、バイク免許取得者の25%がバイク利用経験がない。
この"眠っている"バイク免許取得者に、バイクに乗るきっかけを提供することを目的に、月額バイクレンタルサービスを開始。
バイクのサブスクは、既存事業と顧客は違う、競合する業界も違う、提供内容やビジネスモデルも違う。社内で様々な意見が飛び交った。しかも、他社バイクもあり、中古車、リースと、既存事業の真逆で有り、既存の販売会社から反発が当然あった。
 

●攻め型③ デジタル対応の製品・サービス

攻め型の企業の過半数がとるのがこの戦略。デジタル機能を持つ新製品や新サービスを生むために、デジタル技術を用いる。

 

■事例:クボタ社「農業経営支援 KSAS(クボタスマートアグリシステム)」

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ITP/17/microsoft1110/vol4/pic2.jpg

創業100年超、売上1兆5000億円の大企業、農業機械メーカー クボタのデジタル新規事業。
農業機械ではなく、クラウド農場経営管理・支援サービスを「KSAS」提供。製造業が「モノ」から「サービス」への業態拡大、「機械販売」から「顧客の経営・業務支援」まで提供範囲を拡大する、新規事業のデジタルトランスフォーメーション。

このクラウドサービスの技術があることで、新たにGPS自動運転農機 ファームパイロット(耕うんトラクタ・田植機・刈り取りコンバイン)の事業につなげている。

 

■事例:エーザイ社「eお薬さん」

https://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/12/IMG_6382-533x400.jpg

IoT服薬支援機器プロジェクト着手は2009年、サービス開始は2017年。8年かかった。

製薬会社として病院に薬を販売している。時代の変化とともに、薬以外のソリューション提供を検討するように。従来の "製薬の販売" に収まらないビジネス開発を目指した。2009年時は、CJ部(Customer Joy:顧客歓喜)に所属し、患者や家族の潜在的ニーズの充足による顧客歓喜の創出を目指した活動を開始していた。

IoT服薬支援機器の開発は一筋縄ではいかず、周囲の理解を得るのに時間を要し、数年はアンダーグラウンドで進めていた。社内に電子機器製造ノウハウはなく、社内の賛同者も少なかった。

指定時刻・指定量の服薬を促し、飲み忘れや過量服薬の防止をサポート。クラウドで患者の家族や薬剤師、ケアマネージャーなど関係者が服薬状況を確認できる機能も搭載。

 

■事例:三越伊勢丹社「Your FIT 365」

https://precious.jp/mwimgs/0/b/-/img_0b105529cc9c82bbf1da7994b1026f37118230.jpg

3D計測機で足型を計測し、木型を基にデータ化した靴情報とマッチングさせ、おすすめのパンプスをレコメンドしてくれるYour FIT 365。
まずは婦人靴の自社ブランド(ナンバートゥエンティワン)に活かし、その先には取引先の各種ブランドの情報とのマッチングを図り、より顧客パーソナルな接客販売に活かす。
自宅でリピート購入できるようアプリも用意されている。

 

■DX成功に繋がらない「守り型 DX3戦略」

「守り型」のDX戦略は、従来の活動の改善を目的とするものです。
このDX戦略が、無駄とは言いません。効率化や自動化は、既存事業の改善に有効です。

しかしながら、「守り型」のDX戦略をどれだけ行おうとも、新たな需要・新たな供給・新たなビジネスモデルを創出することは不可能です。

 

●守り型④ リバンドルとカスタマイズ

製品・サービスをリバンドル(再構成)して、既存顧客へのメリットを高めるために、デジタル技術を活用する。

事例:新聞社の、オンライン記事の有料化。

 

●守り型⑤ デジタルの流通・販売チャネル

製品・サービスへの、顧客のアクセスをより簡単にするために、デジタルの流通・販売チャネルに投資する。

事例:メーカーの、直販ECサイト

 

●守り型⑥ コスト効率

コスト効率を高めるためにデジタル技術を利用。自動化やコスト縮小により実現。
この戦略は、比較優位の源泉を生むためではなく、自社が生き残るためのものと思われる。 

事例:多くの企業のRPA導入。

 

 

【事例 日本】大企業のデジタル新規事業の具体例|11のデジタルトランスフォーメーション成功事例

大企業のデジタル新規事業の事例を9つ紹介します。

また成功9事例から、企業内でデジタル関連の新規事業を立上げる上で、重要だと思われる点をまとめます。

 

■ デジタル活用の新規ビジネス創出事例

デジタル 新規事業の具体事例

インターネット登場から2010年頃までは、ネットビジネスは主にパソコンや携帯に閉じた世界であり、ネットの影響を受ける産業は限定的でした(広告、EC、コンテンツ系など)。

しかし2010年代に入りスマートフォンが登場し、モバイル・クラウド・ソーシャルが浸透しました。2015年ごろから AI、IoT、様々なデジタルデバイス(ドローンやスマートスピーカー等)が登場し、2020年ごろからはAR/MR、5G、様々なロボティックスも広がりを見せるでしょう。

 

このようなデジタル技術の進化と広がりは、パソコンやスマホ画面の中だけに閉じた世界ではなく、様々な産業や業界に大きな影響を及ぼします。
AirbnbUberNetflixや中国アリババのフーマーフレッシュなど、既存の産業常識や枠組みを根底から覆すイノベーティブなサービス、人々に圧倒的に支持される新しいサービスが生まれています。

そのようなディスラプティブなイノベーションが、自社の産業を襲う不安にただ怯えるのではなく、自らデジタルを活用して、新しい事業・新しい未来を作ってやろう。

 

その産業や業界の既存常識と異なる、パラダイムシフトを起こす新規ビジネスや、過去の延長線上にない新しい価値創出を狙う新規ビジネスは、ほぼ必然的にデジタル技術を利用することになります。
自社の産業や業界に、これまでの常識を覆すデジタル用いた新しいサービス、革新的なプロダクトを投入した事例を紹介します。

 

■事例:IDOM社「NOREL、ガリバーフリマ、GO2GO」
中古車買取・販売会社のデジタル新規事業。

https://image.itmedia.co.jp/business/articles/1609/30/yd_idom3.jpg

中古車 買取&販売大手のIDOM社(ガリバー)による、月額定額制の自動車レンタルサービスNORELや、中古車の個人間売買サービスのガリバーフリマ、個人間カーシェアGO2GO を新サービスとして展開。

【新規事業の背景】
デジタル新規事業の背景にあったのは、2つの大きな課題。1つは日本の新車販売台数の低迷、もう1つは自動運転やUberなどカーシェア系の登場。所有から利用、売り買いから貸し借り&使うへの移り変わりの中で、どうすべきか考える時期だった。
既存事業の売上は増えていたが、同社経営者は経営方針として「現状の打破」を提示。将来を見越して、他社に先んじられる前に、既存事業の毀損を厭わず対応に取り組むことに。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、当時執行役員 新規事業開発室室長。
中途入社後、人事やマーケ、新型店舗開発、経営企画の後に、経営層に「組織構造を変えてくれ」と直談判したところ、自身が新規事業開発室室長に。

 【デジタル新規事業の推進体制】
創業時の思い・自社戦略CaaSの一環・既存事業とのシナジーを起点に、新しいデジタル新規事業を企画。
新規事業立上げ時に「現業を否定して構わない、IDOMを外部パートナーの1社として見ても構わない」と経営陣から明確に言われていた。新事業に挑戦する経営陣のバックアップがあり、新事業を許容する人事制度や組織の壁を壊す環境があった。

新規事業の勝負は立ち上がってからが本番。立上げ後に顧客の反応を基にした事業自体の見直しや、訴求方法の見極めなど、事業が市場に合致するまで迅速かつ粘り強く検証と改善が繰り返されることになる。
その対応のために、人材に着目し、ITスキルなど備えた人材を積極的に社外から採用。NOREL立上げ後、NORELの2代目事業責任者は、2015年の中途入社組IT人材。

https://image.itmedia.co.jp/news/articles/1811/16/i8.jpg

2015年9月、個人売買アプリガリバーフリマ(クルマジロ)を開始。
NORELは2016年8月サービス開始。、車の所有を利用サービスにリプレイスするウェブサービスを目指している。買い取った車をNORELで使用。ただNOREL専用在庫ではなく、販売と貸出は共通在庫。保有車の販路最適化は過去よりずってやっており、その機能拡張した形。開始3年で会員は3万弱まで増えたが、まだ事業は赤字とのこと。

GO2GO は個人間カーシェアを2019年4月に開始。サービス開始時点で 7000人以上の貸出車両のオーナー登録あり。IoTで運転状況をアプリで把握、位置車両トラッキングも。 

中古車販売IDOMが総力戦で挑む変革とは?|ITmedia
NORELは自動車リースではなくウェブサービス|Response.jp
新規事業必要なのは「突破力」新規事業開発室|ITmedia
新スタイル提案 超短期カーリース「NOREL」
「リアル店舗の強み生かす」 ガリバー、個人間カーシェアに参入|ITmedia

 

■事例:ストライプインターナショナル社「メチャカリ」

創業25年、売上1000億円、新興カジュアルアパレル大手のデジタル新規事業。

https://www.amsinc.co.jp/wp-content/uploads/2019/07/ams_casestudy_vol5_02.jpg

ファッションIT新規事業 メチャカリ、2015年9月開始。スタートアップ企業エアクロ社がサービス開始した数ヶ月後に、真正面から既存アパレル企業が市場創造する新品ファッションサブスク事業です。2019年時点で有料会員数は1万3000人、ユーザーの8割が20-30代女性。

【デジタル新規事業の背景】
デジタル新規事業の背景にあったのは、一言で言えば、若者が服を買わなくなっている(2008年→2014年で4割減)ため。アパレル市場は縮小傾向にあり、若者のお金と時間はスマホにどんどん奪われている。若年層を取り戻すための良いアイデアがないかと考えたのがきっかけ。
当時、UberAirbnbなど業界外ITベンチャーによる業界ディスラプトが話題。ITベンチャーにやられる前に、自分たちで新たなサービスをやろうという空気があった。

自社ブランドを企画・製造し、自社ECを持ち、ユーズド販売ECも運営しているため、ECの在庫・物流を転用しつつ、新品レンタルをすることができる。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、ウェブマーケティング部課長。
アパレル企業、スポーツECネット企業をへて、同社に転職。EC事業の後、メチャカリ立ち上げ、現メチャカリ部長。

海外のLe Toteを参考に、自社商品を新品でレンタルし、戻ってきたものを中古販売するビジネスモデルができるのではと、社長に提案。

https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2017/06/mechakari_heavyuser.png

 【デジタル新規事業の推進体制】
事業構想は2014年末くらい。社長に企画提案後、2015年4〜6月にテスト実施、プロトタイプのサイトを作り、100名のお客様に使ってもらった。この結果をもとに値付けなどブラッシュアップした。2015年9月新サービスリリース。

ウェブサイトやアプリの企画制作はチームラボ社が担当。ローンチ後のAIチャットボット導入などもチームラボ社が担当。
在庫管理は、AMS社の在庫管理システムを利用し、倉庫・出荷・返品など業務運用もAMS社が担当。 

月額5800円「洋服レンタル」にハマる人の正体|PRESIDENT
ファッションサブスク「メチャカリ」有料会員1万3000人突破 | WWD JAPAN.com
業界初ファッションサブスクリプション 「メチャカリ」
他業界に奪われたシェアを取り戻す「メチャカリ」提供する理由|TechCrunch
『メチャカリ』店舗獲得できないユーザー層を取り込む|サブスクマガジン
ストライプインターのサブスク戦略_有料会員数が1.3万人に|通販新聞社
 ファッション×ITで事業拡大 「メチャカリ」黒字化までの3年間|MarkeZine
「3ヵ月継続で解約率が下がるから月額39円に」メチャカリ成功の秘訣|MarkeZine
「ファッションレンタル メチャカリ」チームラボが企画 制作を担当|teamLab
『メチャカリ』のバックオフィスにAMS独自システムを提供|CNET
パーソナライズスタイリングAIチャットボット”を導入|産経ニュース

 

■事例:クボタ社「農業経営支援 KSAS(クボタスマートアグリシステム)」

創業100年超、売上1兆5000億円の大企業、農業機械メーカー クボタのデジタル新規事業。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ITP/17/microsoft1110/vol4/pic2.jpg

農業機械ではなく、クラウド農場経営管理・支援サービスを提供。製造業が「モノ」から「サービス」への業態拡大、「機械販売」から「顧客の経営・業務支援」まで提供範囲を拡大する、新規事業のデジタルトランスフォーメーション。
2014年に営農支援サービス「KSAS」を提供。農機IoTセンサーでデータを取得し、コメ農家の経営改善に生かすクラウドサービス。2016年時点で1300軒以上の農業事業者が利用。

【デジタル新規事業の背景】
デジタル新規事業の背景にあったのは、日本のコメ農家は苦境にあり、コメ農家の生産性・競争力向上により、顧客の現状を食い止める必要性があった。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、現KSAS業務グループ長(当時は新規事業企画)。
農機営業、販売会社出向、製品企画を経て、新規事業企画を担当の後、農機第一事業推進部KSAS業務グループ長。
新規事業企画担当者と、技術部門の異なる研究対象の研究者4人が集まり、コンセプトを整理して企画書をまとめた(農機の自動運転も話題の一つだった)。

https://s.yimg.jp/images/promotionalads_edit/d-marketing/images/20161107/pic2.jpg

 【デジタル新規事業の推進体制】
2011年に新規事業の種を探していたとき、社内の「食味収量コンバイン」の研究開発を知った。コメ刈り取りと同時に食味と収量を測定できる技術。この技術とデータの記録・分析により、農業経営の支援につながるのではと考え、2012年4月にKSASプロジェクトが発足し、同年12月に開発に着手。13年4月に事業化に向けた検討を本格化。2013年までフィージビリティスタディし、コメ食味の品質向上と安定化、収量の増加も認められた。
約1年かけシステム開発、最盛期には50人の開発メンバー。同社にとって、製品(農機)とITが密接に関わる初めてのサービス開発。業務部門が主導し、トラクタ技術部、車両基礎技術部、サービス部門、営業企画部、システム子会社など複数の部門や、顧客である農家(モニターユーザー)も巻き込んで推進した。コメ農家からのフィードバックは、ユーザーインターフェース・現場の事情に関するものが多かった。

KSAS提供開始の後、2016年に農業サービスの高度化を狙い、NTTグループと連携協定を締結。

クボタ-ビッグデータで農機需要つなぎ留めにIT駆使|日経xTECH
IoTで旨い米をつくるクボタ式農業[前編]|Insight for D
IoTで旨い米をつくるクボタ式農業[後編]スマホ生産管理を可能に|Insight for D
 コメの“味”が分かるコンバイン|BigData Conference 2015
「入口から出口まで」のソリューション提供企業へ デジタル経営革命|日経 xTECH
https://www.ntt.co.jp/journal/1609/files/jn20160960.pdf

 

■事例:ソニー社「Qrio Lock、MANOMA」

大企業ソニーの、VC協業のデジタル新規事業。

https://japan.cnet.com/storage/2018/10/10/34064506467c2df7dbff31748b514a94/181010_sony_04.jpg

超大手企業ソニーにて、スマートホーム領域参入となる、デジタルIoTデバイスQrio Lock(スマートキー)。
投資育成会社WiLとの合弁会社で、2015年8月「Qrio Smart Lock」を、2016年10月「Qrio Smart Tag」を開発・発売した後に、2017年にソニーが完全子会社化。

【デジタル新規事業の背景】
米国ではGoogleがNestを買収して、スマートホームに参入。もしソニースマートホーム分野に興味持つなら、そのタイミング(Googleデファクトを握る前)で仕掛けるべきだとWil側は考えていた。
投資育成会社WiLがソニーのSAP(新規事業創出プログラム)にアイデアを持ち込み、WiL 6割、ソニー 4割を出資する合弁企業を2014年12月設立。
(2013年に複数の大企業の出資310億円でWilが設立され、ソニーも出資元企業であり、Wilはソニーに直接提案できる立場にあった。) 

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、WiLのゼネラルパートナー(合弁企業の代表取締役に)。
2014年の夏にWillがソニーに話を持ちかけると、若手エンジニアが空き時間に、社内で使ってなかった暗号化技術を使ってプロトタイプを作り、ソニー社長に提案したところGOとなった。
2014年12月に合弁企業設立+クラウドファンディング、量産体制を整えて、2015年8月に「Qrio Smart Lock」を出荷という、大企業が絡む新事業として異例のスピードに。

https://smarthacks.jp/mag/wp-content/uploads/35212_05.png

 【デジタル新規事業の推進体制】
Wil側が製品企画や販売、マーケティングを行い、プロダクトデザインと開発はソニーのエンジニアチームと共同で行う。無線セキュリティ暗号化技術など独自技術提供と開発サポートなどソニー側が行う体制・役割分担。
メーカーは物作りは得意だけど、インターネット企業に比べてサービス企画やその後の運営があまり上手じゃない。一方、量産や品質管理のノウハウは世界トップレベルで量産フェーズに大きな強みになる。

ソニーがスマートホーム事業に参入「MANOMA」ライフスタイル提案|CNET Japan
IoTの本質「Webな人」がソニーと作るメガベンチャー構想|エンジニアtype
Qrio Lock ネットビジネスの「技」をハードに活かす|月刊 事業構想
「Qrio Smart Lock」開発までの道のりとIoTに対する想い|SmartHacks Magazine
ソニー発のIoT企業がスマートホーム市場に見る勝機|BRAND TIMES
玄関の鍵が「子どもの見守り」になる仕掛け|東洋経済オンライン
ソニー、新規事業に社外のアイデア 手応えあり|日本経済新聞

 

■事例:オンワード樫山社「KASHIYAMA the Smart Tailor」
創業90年強、売上2500億円、大手老舗アパレルメーカーのデジタル新規事業。

https://forza.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/1200m/img_5d1812fb3c66ada67e9444ba19ac96fa704935.jpg

スタートアップが切り開いた D2Cオーダーメイドスーツ市場。アパレル大手のオンワード樫山オンワードパーソナルスタイル社)が2017年10月にD2Cオーダーメイドスーツ事業を開始、19年2月期売上高は37億円、約5万6000着販売。
19年2月から米国(マンハッタンやボストンなど全部で9拠点)で、4月から中国(大連)で事業開始。米国でも納期の早さが受けて、質が高いのに価格が安いと評判。

【デジタル新規事業の背景】
KASHIYAMA the Smart Tailor前に、オーダースーツの直営店事業(13店舗)、訪問販売のオーダースーツ事業があった。それらを引き継ぎ、ECやデジタル基板プラットホーム開発し、KASHIYAMA the Smart Tailorとして開始した。
従来のオーダースーツは最低10万円し、顧客の年齢層が高い。一方で、既成スーツ市場の平均単価は4万円ほど。その価格帯でオーダースーツを提供しようとした。
自社内には、スーツに見識を持つ従業員や優秀な生地屋、縫製工場など、資産ともいえるバックボーンを持っており、そのような人脈やノウハウ、リレーションを時代の中で活かせないかというのがスタート地点。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、現オンワードパーソナルスタイル社長。
経理部・CKやJプレスなど複数事業のMDや事業本部長を経験。この新事業案は、同氏が直接オンワードホールディングスの社長に打診。

新規事業立上げ時は、同社社長と生産部長の2人で推進し、事業立上げ時でも5人くらいの少人数体制だった。
新事業アイデアから事業スタートまで、およそ1年。

https://hyge.co.jp/wp-content/uploads/2018/02/kashiyama_article02.png

【既存事業からの反発】
新事業の企画段階で、オーダーメイドの納期を1週間にしたいと社内に伝えると、オーダーメイドは納品1ヶ月という社内常識があり、生産・物流・縫製すべての部門から「そんなのできるわけない」「品質が下がる」と猛反対に合った。
しかし、顧客の立場から考えれば、もちろん1週間の方が嬉しい。「自分が買う側だったらどう思うか」と社員に問いかけ、各部署を説得して回った。

https://lnews.jp/images/2019/04/20190408onword3-500x334.jpg

 【デジタル新規事業の推進体制】
14直営店の他に、予約専門の「ガイドショップ」と呼ぶサテライトショップが全国31店舗。
中国の工場を買収し、自社工場化。デジタルミシンがスーツを作り、生地の裁断などはロボット全自動なスマートファクトリー。2019年4月に第2工場開業。2018年8月時点で既に第3工場の建築も決まっている模様。
ウェブサイト・システム開発はハイジ・インターフェイス社が担当。
スマートテーラーでもテクノロジー(3D採寸)も検討した。しかしスマホ3D採寸では85%しか再現できず、残る15%のフィット感を諦めたらオーダースーツの意味がないため、3D採寸は採用しなかった。

https://res.fashionsnap.com/image/upload/q_auto,w_1535/media/2019/11/kashiyama-ordershoes-1106_010.jpg

2019年11月より、F2C事業(factory to customer)の第2弾として、オーダーメイドウィメンズシューズを開始。オンワードパーソナルスタイル ゼネラルマネージャーが主導。 

採寸は“スマホ”より人間 オンワードのオーダースーツ好調|日経クロストレンド
戦略ケース KASHIYAMA the Smart Tailor
オンワード樫山の資産をベースに創りあげた「オーダーメイドスーツ」|FORZA STYLE
創業90年アパレルが挑む、デジタル改革とは
最短1週間で届くオーダースーツKASHIYAMA the Smart Tailor|BI JAPAN
KASHIYAMA the Smart Tailor|HYGE Interface Inc.
オンワードが女性向けオーダーシューズ市場参入、最短1週間で完成

 

■事例:寺田倉庫社「minikura、TERRADA WINE STORAGEなど」
物流倉庫会社のデジタル新規事業。

https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/31035/31035_04.jpg

BtoBの物流倉庫業の寺田倉庫が、BtoC向けの様々なデジタル関連保管サービスや、シェアリングサービスの倉庫機能の新規事業を次々立ち上げています。

【デジタル新規事業の背景】
デジタル新規事業の背景にあったのは、2010年頃、不動産業界のトランクルーム事業への参入。外部環境変化により、事業戦略の大幅な変更を余儀なくされた。
自社の強みを「管理」と再認識し、次世代のトランクルームを目指し、デジタル技術を活用し、個人向けの新しい物品管理サービス・富裕層向けサービスを検討をした。

(2011年社長変更時、戦略変更と構造改革により、売上は7分の1(700億円→100億円)に、従業員数は10分の1(1000人→100人)に激減させ、キャッシュフローを大幅に増大。)

https://ecnomikata.com/img_contents/ecnews/images/15465_thumbnail_0.png?now=20170814090004

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、現専務執行役員
倉庫現場10年・営業4年の後、新規事業開発チームに所属時に、新ビジネス案としてminikuraを提案。法人向け物流・倉庫のノウハウを活かし、顧客層を法人から個人に変えることができれば、新たな市場の開拓ができると見込んだ。
2012年 個人向けのクラウド収納サービス「minikura」開始。2013年に minikuraをAPI化し、シェアリング企業のクラウド倉庫業務請負ビジネスを開始。

【デジタル新規事業の推進体制】
minikuraプロジェクト開始当初は担当は数名。IT人材はおらず、外部の開発会社利用。
しかし、スピード感を出せず、UIの細かな調整や施策のトライ&エラーのために、内製化の必要性を強く感じた。
数年の採用努力を経て、minikura事業部の半数は、ここ数年に入社したIT人材になっている。

https://prtimes.jp/i/14158/158/resize/d14158-158-637470-0.png

minikuraサービスとは別に、オンラインのワイン保管管理サービス「TERRADA WINE STORAGE」を2013年より開始、担当部門はプレミアムストレージグループ。
同グループにて厳選インポーター出店のワインマーケット「TERRADA WINE MARKET」を2019年開始。ワイン購入〜保管・管理までワンストップ提供。

また、美術品のオンライン個品管理サービス「TERRADA ART STORAGE」を2019年開始、担当は2016年設立の TERRADA ART ASSIST株式会社(美術品に関するソリューションのワンストップ提供する会社)。

稼いだカネは全部寄付、家も車も持たない。寺田倉庫社長の人生|講談社
倉庫会社が倉庫を手放す理由とは|LivingTech
TERRADA WINE STORAGEに感じる「嗅覚とセンス」の良さ|ECのミカタ
創業69年のイノベーション創発企業へ 寺田倉庫の変貌|MarkeZine
倉庫業からイノベーティブな会社へ 寺田倉庫のデジタルシフト|Digital Shift Times

 

■事例:リクルート社「エアレジ」

新規事業を数十年生み続けるリクルートの、リボン図ではない、リアル業界×デジタルの新規事業。

https://food-stadium.com/wp/wp-content/uploads/2016/04/12517132_974640559257095_292904905_o-800x449.jpg

飲食店の集客広告(ホットペッパー)を提供するリクルートライフスタイル社。ネット&リアル接点があり、領域(飲食、美容など)をまたぐ新規事業のエアレジ。
無料レジから始まったエアレジは、店内注文システムや受付管理、予約管理やバイトシフト、お店の売上管理など、飲食店の様々な業務支援に領域を広げています。2013年10月ローンチし、利用店舗数は2019年9月末時点で44万超。

【デジタル新規事業の背景】
デジタル新規事業の背景には、リアルとソフトウェアの融合の観点で、GoogleなどITテクノロジー企業が競争優位性を活用できず、リアル接点を有するからできることを模索。「ローカル、リアル、店舗」などのキーワード。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、リアルマーケティング開発グループ担当。
中途入社し、じゃらんの後に、ポンパレ立上げ担当。2013年にエアレジ開発担当。
ちなみに、事業立上げ前、社内では何年も前からレジ事業は複数の人から何度も起案され、その都度却下され続けていたそうです。

 【デジタル新規事業の推進体制】
Airレジの開発は2013年4月から、5人ほどでスタート。開発時、副業で飲食店でアルバイトして実際にPOSレジ業務など行い、副業で飲食店経営する社員もいた。(POSレジ業務の課題や使い勝手をヒアリングをしても "毎日やる必要ある業務" と捉えており、改善のヒントが見つからない。実際に体験する必要があるため、アルバイトした。)
担当者に、美容室エステの予約管理システムの元企画者もおり、紙情報をデジタル化することで、業務負荷が下がることは経験・実証済みだった。

プロジェクト開始から3ヶ月後にプロトタイプのアプリ開発。導入1号店はリクルートOBが経営する店。当初は全員で営業し、10店舗ほどクローズドテスト協力してもらい、フィードバックやデータを得ていた。その時に、このプロダクトはいけると手応えを得た。

POSレジ新事業の企画が、却下されなかったのは、実際のアプリがあったからだろうとのこと。
ローンチ後、広く導入が広がったのは、リクルートグループの営業力含めた資産の力が大きい。ローンチ後2年で、5-6人のチームだったのが200人ほどのチームに拡大。

Airレジの構想と誕生秘話を探る | ウェブ電通報
Airレジ開発のこだわりと今後の展開 | ウェブ電通報
プラットフォームとしてのAirレジの可能性 | ウェブ電通報
「Airレジ」はリクルートになかったビジネスモデルへの挑戦|ダイヤモンド
「Airレジ」立ち上げの裏側|doda
リクルートの「力技」Airレジを立ち上げた営業パワー|ICC
商売の「当たり前」を変える POSレジアプリ経営支援|事業構想
0円でカンタンに使えるPOSレジ「Airレジ」|フードスタジアム

   

■事例:エーザイ「eお薬さん」

製薬会社エーザイの IoTデジタル新規事業。

https://static.tbsradio.jp/wp-content/uploads/2017/12/IMG_6382-533x400.jpg

IoT服薬支援機器プロジェクト着手は2009年、サービス開始は2017年。8年かかった。

指定時刻・指定量の服薬を促し、飲み忘れや過量服薬の防止をサポート。クラウドで患者の家族や薬剤師、ケアマネージャーなど関係者が服薬状況を確認できる機能も搭載。

【デジタル新規事業の背景】
製薬会社として病院に薬を販売している。時代の変化とともに、薬以外のソリューション提供を検討するように。従来の "製薬の販売" に収まらないビジネス開発を目指した。
「医療安全」と「在宅患者様のQOL向上」の実践方法を探るため、医療機関や在宅の現場を積極的に訪問していた。在宅患者の服薬管理についての悩みの聴き取りから製品を開発。「独居の認知症患者は、服薬したのを忘れて過量に服用するリスク」「服薬実態が把握できないまま、用量が増えて副作用が発現した事例」など、良い薬の開発・販売だけでは、十分ではないことに気づく。

【デジタル新規事業の主導者】
hhcソリューション本部 ソリューション企画推進部。2009年時は、CJ部(Customer Joy:顧客歓喜)に所属し、患者や家族の潜在的ニーズの充足による顧客歓喜の創出を目指した活動を開始していた。

【デジタル新規事業の推進体制】
IoT服薬支援機器の開発は一筋縄ではいかず、周囲の理解を得るのに時間を要し、数年はアンダーグラウンドで進めていた。
社内に電子機器製造ノウハウはなく、社内の賛同者も少なかった。社外に協力者を求めつつ、徐々に社内を説得していった。自分の目で現場を見た上で始めたプロジェクトだからこそ、賛同者が少ない初期から“正しいことをしている”と信じて社内に発信し続けることができた。
プロジェクト着手は2009年、サービス開始は2017年。8年かかった。

エーザイの担当者はどう新規事業を立ち上げ、顧客体験を変えたのか|Biz/Zine
現場の悩みから服薬支援機器を開発 開発者より|エーザイのhhcソリューション事業
超高齢化社会を迎える中、製薬会社が開発した服薬支援の新型薬箱

 

 

■事例:クックパッド社「クックパッドマート」
上場ネットベンチャーの "デジタル×リアル" 事業への新規参入。

https://cf.cpcdn.com/info/assets/wp-content/uploads/20180710032357/pr180710_1.jpg

レシピサイト大手 クックパッド社による、実際の生鮮食品を扱う新規事業。生鮮食品をスマホ注文し、自宅近くの店舗や施設ロッカーで受け取れる生鮮食品ネットスーパー。

デジタルトランスフォーメーションというと、フィジカルな実業を持つ企業がデジタル 活用が多いですが、もともとデジタル企業(ネット企業)がフィジカル事業に参入するチャレンジです。
サービス提供開始から1年経過時点では、専用宅配ボックスの設置箇所は30箇所。

【デジタル新規事業の背景】
デジタル新規事業の背景として、社内では食品関連ECに再チャレンジしたい考えがあった(過去に参入するも4年で撤退)。料理レシピ・買い物と生鮮品流通・生産者の領域で。

既存の生鮮品を扱う企業(スーパーなど小売や既存流通、ネットスーパーなど)は、"専業主婦の母親が、日中 家にいる環境" を前提に買い物と料理を提供している。対して、"共働きで買い物時間なく、日中家にいない" という過去の前提とは異なる、現在増加している状態を前提に、サービスをデザインしている。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、新規事業担当部長。
学生起業の後、スタートアップ企業に転職。当該企業のクックパット買収に伴いグループ入り。当該企業の2代目CEO。当該企業が別企業に事業譲渡に伴い、クックパッドに残り新規事業担当部長に。クックパッドマートが自身5回目の事業立上げ。

最初の企画書は"使い方はECアプリ、動いてるのは買い物代行" というサービスECの1枚ペラの企画だった。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shanonim/20190412/20190412174027.jpg

 【デジタル新規事業の推進体制】
最初は3人(事業責任者、デザイナ、エンジニア)でサービス作りを開始し、様々な検証を行い、その半年後にはおよそ10人体制に。責任者は元ベンチャーCEO、他メンバーも過去に別の新規事業に携わってメンバーも多い。
事業スキームや登録店舗開拓、アプリや物流スキームだけでなく、IoT冷蔵庫や販売者むけIoTラベルプリンタ、ドライバー向けアプリなども開発。

当初はシンプルな買物代行サービスを想定し、検証に取り掛かった。目的価値検証できる最も簡単な方法を選んだことで、チーム発足後2週間で最初の検証テストに着手。

新規事業「クックパッドマート」の立上げの話
クックパッドがC2Cに本腰。26歳最年少部長の原体験|BI JAPAN
クックパッド レシピを前面にEC開始|日流ウェブ
クックパッドが食品ECビジネスに参入|TechCrunch Japan
新規事業のIoTプロダクト開発に必要なこと
 リリース間近の新規事業「クックパッドマート」の立ち上げの話|開発者ブログ
新規事業のIoTプロダクト開発に必要なこと|開発者ブログ
新卒3年目の私が、新規事業で冷蔵庫を探して学んだこと|クックパッドマートnote
クックパッドマート事業責任者が語った舞台裏-新規事業の組織づくり手法|CNET
クックパッドマートの舞台裏--新規事業における組織づくり手法
イノベーティブな生鮮食品EC 「新しい仕組みの作り方」(前編)
イノベーティブな生鮮食品EC 「新しい仕組みの作り方」(後編)
クックパッドがネットスーパー開始から1年後の現状|Diamond 

 

■事例:ブリジストン「B-TAG、TreadStat、Tirematics」

https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/img_news/2016/2016071301_01.jpg

良いタイヤ製造の時代から、技術成熟によるタイヤ単体のコモディディ化・低価格化になり、デジタル技術を使うソリューション提供にビジネスの軸足を移すうという経営判断に。
価格ではなく、タイヤ関連のトータルコストやパフォーマンスで勝負する作戦に。

顧客にタイヤをレンタルし、メンテナンスや管理、適切なタイミングで表面ゴム張替えする。安全性も向上し、非稼動ロスも削減。顧客はタイヤ在庫やローテーション・修理を考えなくて良い。
データ収集と分析により、タイヤの故障原因や傾向を捉え、タイヤ使用の提案や商品開発にも生かしている。

南米や豪州の巨大鉱山の超大型トラックタイヤ向けに、IoTセンサー「B-TAG」と、使用状況に応じたメンテナンスプログラム「TreadStat」を提供。
バスやトラックにも装着できるようB-TAGを進化させ、車両位置情報などリアルタイムモニタリング「Tirematics」を提供。 

ブリヂストン タイヤ製造販売からタイヤソリューション事業者への変革|日経xTECH
ブリヂストンの変革 「タイヤを売らずに稼ぐ」ビジネスとは|ITmedia
IoTの進化 がもたらしたタイヤのイノベーション|ビジネス+IT

 

■事例:ヤマハ発動機社「月極ライダー」

オートバイメーカーの デジタルサブスクリプションビジネス。

https://biz-journal.jp/wp-content/uploads/2019/07/109648_0.jpg

月額バイクレンタルサービス 月極ライダー、2019年5月開始。ヤマハは自社バイク資産を使う形を取らず、販売店中古バイク)と利用者をつなげるウェブサイトのみ担う立ち位置のビジネスにした。

【デジタル新規事業の背景】
バイク市場は年々縮小しており、バイク免許取得者の25%がバイク利用経験がない。に林業界の活性化をすべく、この"眠っている"バイク免許取得者に、バイクに乗るきっかけを提供することを目的に新事業を開発。

バイク製造・販売するが、販売会社経由であり、消費者との直接の接点を持ってこなかった。デジタル革新によりメーカーと消費者の関係性も変わり、コミュニケーション変革こそ事業拡大の一手として、消費者向けのサービスに取り組んだ。

https://public-newswitch.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/images/php2W5dOi_5d5287fb8fcf8.jpg

【デジタル新規事業の主導者】
MC事業本部 新ビジネス推進部。
オートバイ設計開発、営業管理、海外駐在を経て、新規事業部門。

【デジタル新規事業の推進体制】

バイクのサブスクは、既存事業と顧客は違う、競合する業界も違う、提供内容やビジネスモデルも違う。社内で様々な意見が飛び交った。しかも、他社バイクもあり、中古車、リースと、既存事業の真逆で有り、既存の販売会社から反発が当然あった。
既存ビジネスは "新品のバイクを買う" 方にしかリーチできず、既存ビジネスで無視しているユーザー層に新たにリーチできるサービスは、既存ビジネスにも意味がある(顧客との接点を増やし、新たなビジネスチャンスを創出する)、と社内を説得した。

更に1年前から提供するバイクレンタルでは、事業開始当初、新車販売に影響するという声が社内にあった。しかしいざ事業を始めれば、レンタル利用者の6割が20-30代(一方でバイク購入者の平均年齢は50歳代)で、新たな見込み客を販売店へと向かわせるツールになっている。

ヤマハの担当者はどう新規事業を立ち上げ、顧客体験を変えたのか|Biz/Zine
中古バイクでサブスク、メーカー横断で仕掛けるヤマハ|Response.jp
「月極ライダー」他社製バイクも低額&定額利用。二輪業界は競争から協力へ
レンタルバイク利用者のデータから見えた新しいライダー像|Park blog
販売台数減少に危機感、2輪車業界が若者需要喚起にあの手この手|ニュースイッチ

 

 

【日本 成功事例】デジタルトランスフォーメーション 成功事例15選
DX主導部門とDX目的との成果(成功,失敗)の関係性

新規事業を成功させるために必要なこと
新規事業の成功率は10%未満 ◉ 大企業の新規事業 成功確率を上げるために
新規事業 向いている人の見分け方|大企業の社内新規事業 担当者の選び方

 

【日本 成功事例】デジタルフォーメーション 成功事例15選|デジタル新事業や全社的DX推進

日本企業のデジタルトランスフォーメーションの成功事例を15こ紹介します。

デジタルトランスフォーメーションは、次の2通りの目的に分かれます。

  • 業務やプロセスの効率化・改善・高度化
  • 新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革

前者は、既に多くの企業で取り組まれて、成果を上げる企業も多いと聞きます。

一方で、後者 "新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革" に取り組む企業はまだまだ少ない。当エントリーでは、デジタル新規ビジネス創出・ビジネスモデル変革目的の デジタルフォーメーション成功事例を15こ紹介します。

 

■ デジタル活用の新規ビジネス創出事例

デジタルトランスフォーメーション 日本 成功事例

デジタルの広がりにより、AirbnbUber、LineやNetflixなど、既存の産業常識や枠組みを根底から覆すイノベーティブなサービス、人々に圧倒的に支持される新しいサービスが生まれています。

そのようなディスラプティブなイノベーションが、自社の産業を襲う不安にただ怯えるのではなく、自らデジタルを活用して、新しい事業・新しい未来を作ってやろう。

 

その産業や業界の既存常識と異なる、パラダイムシフトを起こす新規ビジネスや、過去の延長線上にない新しい価値創出を狙う新規ビジネスは、ほぼ必然的にデジタル技術を利用することになります。

"デジタル活用する新規事業" と "既存の延長線上にない新しい価値創出する新事業(当然デジタル技術を使う)"は、似て全く非なるアプローチになります。

自社の産業や業界に、これまでの常識を覆すデジタル用いた新しいサービス、革新的なプロダクトを投入した事例を紹介します。

 

■事例:寺田倉庫社「minikura、TERRADA WINE STORAGEなど」
物流倉庫会社のデジタルトランスフォーメーション。

https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/31035/31035_04.jpg

BtoBの物流倉庫業の寺田倉庫が、BtoC向けの様々なデジタル関連保管サービスや、シェアリングサービスの倉庫機能の新規事業を次々立ち上げています。

【DXの背景】
デジタルトランスフォーメーションの背景にあったのは、2010年頃、不動産業界のトランクルーム事業への参入。外部環境変化により、事業戦略の大幅な変更を余儀なくされた。
自社の強みを「管理」と再認識し、次世代のトランクルームを目指し、デジタル技術を活用し、個人向けの新しい物品管理サービス・富裕層向けサービスを検討をした。

(2011年社長変更時、戦略変更と構造改革により、売上は7分の1(700億円→100億円)に、従業員数は10分の1(1000人→100人)に激減させ、キャッシュフローを大幅に増大。)

https://ecnomikata.com/img_contents/ecnews/images/15465_thumbnail_0.png?now=20170814090004

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、現専務執行役員
倉庫現場10年・営業4年の後、新規事業開発チームに所属時に、新ビジネス案としてminikuraを提案。法人向け物流・倉庫のノウハウを活かし、顧客層を法人から個人に変えることができれば、新たな市場の開拓ができると見込んだ。
2012年 個人向けのクラウド収納サービス「minikura」開始。2013年に minikuraをAPI化し、シェアリング企業のクラウド倉庫業務請負ビジネスを開始。

【デジタル新規事業の推進体制】
minikuraプロジェクト開始当初は担当は数名。IT人材はおらず、外部の開発会社利用。
しかし、スピード感を出せず、UIの細かな調整や施策のトライ&エラーのために、内製化の必要性を強く感じた。
数年の採用努力を経て、minikura事業部の半数は、ここ数年に入社したIT人材になっている。

https://prtimes.jp/i/14158/158/resize/d14158-158-637470-0.png

minikuraサービスとは別に、オンラインのワイン保管管理サービス「TERRADA WINE STORAGE」を2013年より開始、担当部門はプレミアムストレージグループ。
同グループにて厳選インポーター出店のワインマーケット「TERRADA WINE MARKET」を2019年開始。ワイン購入〜保管・管理までワンストップ提供。

また、美術品のオンライン個品管理サービス「TERRADA ART STORAGE」を2019年開始、担当は2016年設立の TERRADA ART ASSIST株式会社(美術品に関するソリューションのワンストップ提供する会社)。

稼いだカネは全部寄付、家も車も持たない。寺田倉庫社長の人生|講談社
倉庫会社が倉庫を手放す理由とは|LivingTech
TERRADA WINE STORAGEに感じる「嗅覚とセンス」の良さ|ECのミカタ
創業69年のイノベーション創発企業へ 寺田倉庫の変貌|MarkeZine
倉庫業からイノベーティブな会社へ 寺田倉庫のデジタルシフト|Digital Shift Times

  

■事例:オンワード樫山社「KASHIYAMA the Smart Tailor」
創業90年強、売上2500億円、大手老舗アパレルメーカーのデジタルトランスフォーメーション。

https://forza.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/1200m/img_5d1812fb3c66ada67e9444ba19ac96fa704935.jpg

スタートアップが切り開いた D2Cオーダーメイドスーツ市場。アパレル大手のオンワード樫山オンワードパーソナルスタイル社)が2017年10月にD2Cオーダーメイドスーツ事業を開始、19年2月期売上高は37億円、約5万6000着販売。
19年2月から米国(マンハッタンやボストンなど全部で9拠点)で、4月から中国(大連)で事業開始。米国でも納期の早さが受けて、質が高いのに価格が安いと評判。

【DXの背景】
KASHIYAMA the Smart Tailor前に、オーダースーツの直営店事業(13店舗)、訪問販売のオーダースーツ事業があった。それらを引き継ぎ、ECやデジタル基板プラットホーム開発し、KASHIYAMA the Smart Tailorとして開始した。
従来のオーダースーツは最低10万円し、顧客の年齢層が高い。一方で、既成スーツ市場の平均単価は4万円ほど。その価格帯でオーダースーツを提供しようとした。
自社内には、スーツに見識を持つ従業員や優秀な生地屋、縫製工場など、資産ともいえるバックボーンを持っており、そのような人脈やノウハウ、リレーションを時代の中で活かせないかというのがスタート地点。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、現オンワードパーソナルスタイル社長。
経理部・CKやJプレスなど複数事業のMDや事業本部長を経験。この新事業案は、同氏が直接オンワードホールディングスの社長に打診。

新規事業立上げ時は、同社社長と生産部長の2人で推進し、事業立上げ時でも5人くらいの少人数体制だった。
新事業アイデアから事業スタートまで、およそ1年。

https://hyge.co.jp/wp-content/uploads/2018/02/kashiyama_article02.png

【既存事業からの反発】
新事業の企画段階で、オーダーメイドの納期を1週間にしたいと社内に伝えると、オーダーメイドは納品1ヶ月という社内常識があり、生産・物流・縫製すべての部門から「そんなのできるわけない」「品質が下がる」と猛反対に合った。
しかし、顧客の立場から考えれば、もちろん1週間の方が嬉しい。「自分が買う側だったらどう思うか」と社員に問いかけ、各部署を説得して回った。

https://lnews.jp/images/2019/04/20190408onword3-500x334.jpg

 【デジタル新規事業の推進体制】
14直営店の他に、予約専門の「ガイドショップ」と呼ぶサテライトショップが全国31店舗。
中国の工場を買収し、自社工場化。デジタルミシンがスーツを作り、生地の裁断などはロボット全自動なスマートファクトリー。2019年4月に第2工場開業。2018年8月時点で既に第3工場の建築も決まっている模様。
ウェブサイト・システム開発はハイジ・インターフェイス社が担当。
スマートテーラーでもテクノロジー(3D採寸)も検討した。しかしスマホ3D採寸では85%しか再現できず、残る15%のフィット感を諦めたらオーダースーツの意味がないため、3D採寸は採用しなかった。

https://res.fashionsnap.com/image/upload/q_auto,w_1535/media/2019/11/kashiyama-ordershoes-1106_010.jpg

2019年11月より、F2C事業(factory to customer)の第2弾として、オーダーメイドウィメンズシューズを開始。オンワードパーソナルスタイル ゼネラルマネージャーが主導。 

採寸は“スマホ”より人間 オンワードのオーダースーツ好調|日経クロストレンド
戦略ケース KASHIYAMA the Smart Tailor
オンワード樫山の資産をベースに創りあげた「オーダーメイドスーツ」|FORZA STYLE
創業90年アパレルが挑む、デジタル改革とは
最短1週間で届くオーダースーツKASHIYAMA the Smart Tailor|BI JAPAN
KASHIYAMA the Smart Tailor|HYGE Interface Inc.
オンワードが女性向けオーダーシューズ市場参入、最短1週間で完成

  

■事例:IDOM社「NOREL、ガリバーフリマ、GO2GO」
中古車買取・販売会社のデジタルトランスフォーメーション 。

https://image.itmedia.co.jp/business/articles/1609/30/yd_idom3.jpg

中古車 買取&販売大手のIDOM社(ガリバー)による、月額定額制の自動車レンタルサービスNORELや、中古車の個人間売買サービスのガリバーフリマ、個人間カーシェアGO2GO を新サービスとして展開。

【DXの背景】
デジタルトランスフォーメーションの背景にあったのは、2つの大きな課題。1つは日本の新車販売台数の低迷、もう1つは自動運転やUberなどカーシェア系の登場。所有から利用、売り買いから貸し借り&使うへの移り変わりの中で、どうすべきか考える時期だった。
既存事業の売上は増えていたが、同社経営者は経営方針として「現状の打破」を提示。将来を見越して、他社に先んじられる前に、既存事業の毀損を厭わず対応に取り組むことに。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、当時執行役員 新規事業開発室室長。
中途入社後、人事やマーケ、新型店舗開発、経営企画の後に、経営層に「組織構造を変えてくれ」と直談判したところ、自身が新規事業開発室室長に。

 【デジタル新規事業の推進体制】
創業時の思い・自社戦略CaaSの一環・既存事業とのシナジーを起点に、新しいデジタル新規事業を企画。
新規事業立上げ時に「現業を否定して構わない、IDOMを外部パートナーの1社として見ても構わない」と経営陣から明確に言われていた。新事業に挑戦する経営陣のバックアップがあり、新事業を許容する人事制度や組織の壁を壊す環境があった。

新規事業の勝負は立ち上がってからが本番。立上げ後に顧客の反応を基にした事業自体の見直しや、訴求方法の見極めなど、事業が市場に合致するまで迅速かつ粘り強く検証と改善が繰り返されることになる。
その対応のために、人材に着目し、ITスキルなど備えた人材を積極的に社外から採用。NOREL立上げ後、NORELの2代目事業責任者は、2015年の中途入社組IT人材。

https://image.itmedia.co.jp/news/articles/1811/16/i8.jpg

2015年9月、個人売買アプリガリバーフリマ(クルマジロ)を開始。
NORELは2016年8月サービス開始。、車の所有を利用サービスにリプレイスするウェブサービスを目指している。買い取った車をNORELで使用。ただNOREL専用在庫ではなく、販売と貸出は共通在庫。保有者の販路最適化は過去よりずってやっており、その機能拡張した形。開始3年で会員は3万弱まで増えたが、まだ事業は赤字とのこと。

GO2GO は個人間カーシェアを2019年4月に開始。サービス開始時点で 7000人以上の貸出車両のオーナー登録あり。IoTで運転状況をアプリで把握、位置車両トラッキングも。 

中古車販売IDOMが総力戦で挑む変革とは?|ITmedia
NORELは自動車リースではなくウェブサービス|Response.jp
新規事業必要なのは「突破力」新規事業開発室|ITmedia
新スタイル提案 超短期カーリース「NOREL」
「リアル店舗の強み生かす」 ガリバー、個人間カーシェアに参入|ITmedia

 

■事例:クックパッド社「クックパッドマート」
上場ネットベンチャーの "デジタル×リアル" 事業への新規参入。

https://cf.cpcdn.com/info/assets/wp-content/uploads/20180710032357/pr180710_1.jpg

レシピサイト大手 クックパッド社による、実際の生鮮食品を扱う新規事業。生鮮食品をスマホ注文し、自宅近くの店舗や施設ロッカーで受け取れる生鮮食品ネットスーパー。

デジタルトランスフォーメーションというと、フィジカルな実業を持つ企業がデジタル 活用が多いですが、もともとデジタル企業(ネット企業)がフィジカル事業に参入するチャレンジです。
サービス提供開始から1年経過時点では、専用宅配ボックスの設置箇所は30箇所。

【DXの背景】
DXの背景として、社内では食品関連ECに再チャレンジしたい考えがあった(過去に参入するも4年で撤退)。料理レシピ・買い物と生鮮品流通・生産者の領域で。

既存の生鮮品を扱う企業(スーパーなど小売や既存流通、ネットスーパーなど)は、"専業主婦の母親が、日中 家にいる環境" を前提に買い物と料理を提供している。対して、"共働きで買い物時間なく、日中家にいない" という過去の前提とは異なる、現在増加している状態を前提に、サービスをデザインしている。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、新規事業担当部長。
学生起業の後、スタートアップ企業に転職。当該企業のクックパット買収に伴いグループ入り。当該企業の2代目CEO。当該企業が別企業に事業譲渡に伴い、クックパッドに残り新規事業担当部長に。クックパッドマートが自身5回目の事業立上げ。

最初の企画書は"使い方はECアプリ、動いてるのは買い物代行" というサービスECの1枚ペラの企画だった。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shanonim/20190412/20190412174027.jpg

 【デジタル新規事業の推進体制】
最初は3人(事業責任者、デザイナ、エンジニア)でサービス作りを開始し、様々な検証を行い、その半年後にはおよそ10人体制に。責任者は元ベンチャーCEO、他メンバーも過去に別の新規事業に携わってメンバーも多い。
事業スキームや登録店舗開拓、アプリや物流スキームだけでなく、IoT冷蔵庫や販売者むけIoTラベルプリンタ、ドライバー向けアプリなども開発。

当初はシンプルな買物代行サービスを想定し、検証に取り掛かった。目的価値検証できる最も簡単な方法を選んだことで、チーム発足後2週間で最初の検証テストに着手。

新規事業「クックパッドマート」の立上げの話
クックパッドがC2Cに本腰。26歳最年少部長の原体験|BI JAPAN
クックパッド レシピを前面にEC開始|日流ウェブ
クックパッドが食品ECビジネスに参入|TechCrunch Japan
新規事業のIoTプロダクト開発に必要なこと
 リリース間近の新規事業「クックパッドマート」の立ち上げの話|開発者ブログ
新規事業のIoTプロダクト開発に必要なこと|開発者ブログ
新卒3年目の私が、新規事業で冷蔵庫を探して学んだこと|クックパッドマートnote
クックパッドマート事業責任者が語った舞台裏-新規事業の組織づくり手法|CNET
クックパッドマートの舞台裏--新規事業における組織づくり手法
イノベーティブな生鮮食品EC 「新しい仕組みの作り方」(前編)
イノベーティブな生鮮食品EC 「新しい仕組みの作り方」(後編)
クックパッドがネットスーパー開始から1年後の現状|Diamond 

 

■事例:クボタ社「農業経営支援 KSAS(クボタスマートアグリシステム)」

創業100年超、売上1兆5000億円の大企業、農業機械メーカー クボタのデジタルトランスフォーメーション。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ITP/17/microsoft1110/vol4/pic2.jpg

農業機械ではなく、クラウド農場経営管理・支援サービスを提供。製造業が「モノ」から「サービス」への業態拡大、「機械販売」から「顧客の経営・業務支援」まで提供範囲を拡大する、新規事業のデジタルトランスフォーメーション。
2014年に営農支援サービス「KSAS」を提供。農機IoTセンサーでデータを取得し、コメ農家の経営改善に生かすクラウドサービス。2016年時点で1300軒以上の農業事業者が利用。

【DXの背景】
デジタルトランスフォーメーションの背景にあったのは、日本のコメ農家は苦境にあり、コメ農家の生産性・競争力向上により、顧客の現状を食い止める必要性があった。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、現KSAS業務グループ長(当時は新規事業企画)。
農機営業、販売会社出向、製品企画を経て、新規事業企画を担当の後、農機第一事業推進部KSAS業務グループ長。
新規事業企画担当者と、技術部門の異なる研究対象の研究者4人が集まり、コンセプトを整理して企画書をまとめた(農機の自動運転も話題の一つだった)。

https://s.yimg.jp/images/promotionalads_edit/d-marketing/images/20161107/pic2.jpg

 【デジタル新規事業の推進体制】
2011年に新規事業の種を探していたとき、社内の「食味収量コンバイン」の研究開発を知った。コメ刈り取りと同時に食味と収量を測定できる技術。この技術とデータの記録・分析により、農業経営の支援につながるのではと考え、2012年4月にKSASプロジェクトが発足し、同年12月に開発に着手。13年4月に事業化に向けた検討を本格化。2013年までフィージビリティスタディし、コメ食味の品質向上と安定化、収量の増加も認められた。
約1年かけシステム開発、最盛期には50人の開発メンバー。同社にとって、製品(農機)とITが密接に関わる初めてのサービス開発。業務部門が主導し、トラクタ技術部、車両基礎技術部、サービス部門、営業企画部、システム子会社など複数の部門や、顧客である農家(モニターユーザー)も巻き込んで推進した。コメ農家からのフィードバックは、ユーザーインターフェース・現場の事情に関するものが多かった。

KSAS提供開始の後、2016年に農業サービスの高度化を狙い、NTTグループと連携協定を締結。

クボタ-ビッグデータで農機需要つなぎ留めにIT駆使|日経xTECH
IoTで旨い米をつくるクボタ式農業[前編]|Insight for D
IoTで旨い米をつくるクボタ式農業[後編]スマホ生産管理を可能に|Insight for D
 コメの“味”が分かるコンバイン|BigData Conference 2015
「入口から出口まで」のソリューション提供企業へ デジタル経営革命|日経 xTECH
https://www.ntt.co.jp/journal/1609/files/jn20160960.pdf

 

■事例:ストライプインターナショナル社「メチャカリ」

創業25年、売上1000億円、新興カジュアルアパレル大手のデジタルトランスフォーメーション。

https://www.amsinc.co.jp/wp-content/uploads/2019/07/ams_casestudy_vol5_02.jpg

ファッションIT新規事業 メチャカリ、2015年9月開始。スタートアップ企業エアクロ社がサービス開始した数ヶ月後に、真正面から既存アパレル企業が市場創造する新品ファッションサブスク事業です。2019年時点で有料会員数は1万3000人、ユーザーの8割が20-30代女性。

【DXの背景】
DXの背景にあったのは、一言で言えば、若者が服を買わなくなっている(2008年→2014年で4割減)ため。アパレル市場は縮小傾向にあり、若者のお金と時間はスマホにどんどん奪われている。若年層を取り戻すための良いアイデアがないかと考えたのがきっかけ。
当時、UberAirbnbなど業界外ITベンチャーによる業界ディスラプトが話題。ITベンチャーにやられる前に、自分たちで新たなサービスをやろうという空気があった。

自社ブランドを企画・製造し、自社ECを持ち、ユーズド販売ECも運営しているため、ECの在庫・物流を転用しつつ、新品レンタルをすることができる。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、ウェブマーケティング部課長。
アパレル企業、スポーツECネット企業をへて、同社に転職。EC事業の後、メチャカリ立ち上げ、現メチャカリ部長。

海外のLe Toteを参考に、自社商品を新品でレンタルし、戻ってきたものを中古販売するビジネスモデルができるのではと、社長に提案。

https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2017/06/mechakari_heavyuser.png

 【デジタル新規事業の推進体制】
事業構想は2014年末くらい。社長に企画提案後、2015年4〜6月にテスト実施、プロトタイプのサイトを作り、100名のお客様に使ってもらった。この結果をもとに値付けなどブラッシュアップした。2015年9月新サービスリリース。

ウェブサイトやアプリの企画制作はチームラボ社が担当。ローンチ後のAIチャットボット導入などもチームラボ社が担当。
在庫管理は、AMS社の在庫管理システムを利用し、倉庫・出荷・返品など業務運用もAMS社が担当。 

月額5800円「洋服レンタル」にハマる人の正体|PRESIDENT
ファッションサブスク「メチャカリ」有料会員1万3000人突破 | WWD JAPAN.com
業界初ファッションサブスクリプション 「メチャカリ」
他業界に奪われたシェアを取り戻す「メチャカリ」提供する理由|TechCrunch
『メチャカリ』店舗獲得できないユーザー層を取り込む|サブスクマガジン
ストライプインターのサブスク戦略_有料会員数が1.3万人に|通販新聞社
 ファッション×ITで事業拡大 「メチャカリ」黒字化までの3年間|MarkeZine
「3ヵ月継続で解約率が下がるから月額39円に」メチャカリ成功の秘訣|MarkeZine
「ファッションレンタル メチャカリ」チームラボが企画 制作を担当|teamLab
『メチャカリ』のバックオフィスにAMS独自システムを提供|CNET
パーソナライズスタイリングAIチャットボット”を導入|産経ニュース

 

■事例:ソニー社「Qrio Lock、MANOMA」

大企業ソニーの、VC協業のデジタルトランスフォーメーション 。

https://japan.cnet.com/storage/2018/10/10/34064506467c2df7dbff31748b514a94/181010_sony_04.jpg

超大手企業ソニーにて、スマートホーム領域参入となる、デジタルIoTデバイスQrio Lock(スマートキー)。
投資育成会社WiLとの合弁会社で、2015年8月「Qrio Smart Lock」を、2016年10月「Qrio Smart Tag」を開発・発売した後に、2017年にソニーが完全子会社化。

【DXの背景】
米国ではGoogleがNestを買収して、スマートホームに参入。もしソニースマートホーム分野に興味持つなら、そのタイミング(Googleデファクトを握る前)で仕掛けるべきだとWil側は考えていた。
投資育成会社WiLがソニーのSAP(新規事業創出プログラム)にアイデアを持ち込み、WiL 6割、ソニー 4割を出資する合弁企業を2014年12月設立。
(2013年に複数の大企業の出資310億円でWilが設立され、ソニーも出資元企業であり、Wilはソニーに直接提案できる立場にあった。) 

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、WiLのゼネラルパートナー(合弁企業の代表取締役に)。
2014年の夏にWillがソニーに話を持ちかけると、若手エンジニアが空き時間に、社内で使ってなかった暗号化技術を使ってプロトタイプを作り、ソニー社長に提案したところGOとなった。
2014年12月に合弁企業設立+クラウドファンディング、量産体制を整えて、2015年8月に「Qrio Smart Lock」を出荷という、大企業が絡む新事業として異例のスピードに。

https://smarthacks.jp/mag/wp-content/uploads/35212_05.png

 【デジタル新規事業の推進体制】
Wil側が製品企画や販売、マーケティングを行い、プロダクトデザインと開発はソニーのエンジニアチームと共同で行う。無線セキュリティ暗号化技術など独自技術提供と開発サポートなどソニー側が行う体制・役割分担。
メーカーは物作りは得意だけど、インターネット企業に比べてサービス企画やその後の運営があまり上手じゃない。一方、量産や品質管理のノウハウは世界トップレベルで量産フェーズに大きな強みになる。

ソニーがスマートホーム事業に参入「MANOMA」ライフスタイル提案|CNET Japan
IoTの本質「Webな人」がソニーと作るメガベンチャー構想|エンジニアtype
Qrio Lock ネットビジネスの「技」をハードに活かす|月刊 事業構想
「Qrio Smart Lock」開発までの道のりとIoTに対する想い|SmartHacks Magazine
ソニー発のIoT企業がスマートホーム市場に見る勝機|BRAND TIMES
玄関の鍵が「子どもの見守り」になる仕掛け|東洋経済オンライン
ソニー、新規事業に社外のアイデア 手応えあり|日本経済新聞

 

■事例:リクルート社「エアレジ」

新規事業を数十年生み続けるリクルートの、リボン図ではない、産業フィジカル×デジタルのデジタルトランスフォーメーション。

https://food-stadium.com/wp/wp-content/uploads/2016/04/12517132_974640559257095_292904905_o-800x449.jpg

飲食店の集客広告(ホットペッパー)を提供するリクルートライフスタイル社。ネット&リアル接点があり、領域(飲食、美容など)をまたぐ新規事業のエアレジ。
無料レジから始まったエアレジは、店内注文システムや受付管理、予約管理やバイトシフト、お店の売上管理など、飲食店の様々な業務支援に領域を広げています。2013年10月ローンチし、利用店舗数は2019年9月末時点で44万超。

【DXの背景】
デジタルトランスフォーメーションの背景には、リアルとソフトウェアの融合の観点で、GoogleなどITテクノロジー企業が競争優位性を活用できず、リアル接点を有するからできることを模索。「ローカル、リアル、店舗」などのキーワード。

【デジタル新規事業の主導者】
デジタル新規事業を主導したのは、リアルマーケティング開発グループ担当。
中途入社し、じゃらんの後に、ポンパレ立上げ担当。2013年にエアレジ開発担当。
ちなみに、事業立上げ前、社内では何年も前からレジ事業は複数の人から何度も起案され、その都度却下され続けていたそうです。

 【デジタル新規事業の推進体制】
Airレジの開発は2013年4月から、5人ほどでスタート。開発時、副業で飲食店でアルバイトして実際にPOSレジ業務など行い、副業で飲食店経営する社員もいた。(POSレジ業務の課題や使い勝手をヒアリングをしても "毎日やる必要ある業務" と捉えており、改善のヒントが見つからない。実際に体験する必要があるため、アルバイトした。)
担当者に、美容室エステの予約管理システムの元企画者もおり、紙情報をデジタル化することで、業務負荷が下がることは経験・実証済みだった。

プロジェクト開始から3ヶ月後にプロトタイプのアプリ開発。導入1号店はリクルートOBが経営する店。当初は全員で営業し、10店舗ほどクローズドテスト協力してもらい、フィードバックやデータを得ていた。その時に、このプロダクトはいけると手応えを得た。

POSレジ新事業の企画が、却下されなかったのは、実際のアプリがあったからだろうとのこと。
ローンチ後、広く導入が広がったのは、リクルートグループの営業力含めた資産の力が大きい。ローンチ後2年で、5-6人のチームだったのが200人ほどのチームに拡大。

Airレジの構想と誕生秘話を探る | ウェブ電通報
Airレジ開発のこだわりと今後の展開 | ウェブ電通報
プラットフォームとしてのAirレジの可能性 | ウェブ電通報
「Airレジ」はリクルートになかったビジネスモデルへの挑戦|ダイヤモンド
「Airレジ」立ち上げの裏側|doda
リクルートの「力技」Airレジを立ち上げた営業パワー|ICC
商売の「当たり前」を変える POSレジアプリ経営支援|事業構想
0円でカンタンに使えるPOSレジ「Airレジ」|フードスタジアム

    

■STARTUP事例:シェアメディカル社「ネクステート」

https://japan.cnet.com/storage/2019/08/23/101081edbae22c1689a350790bc98c49/1_R.jpg

聴診器デジタル化ユニット ネクステート。聴診データをデジタル化することで、データ保存・共有が可能となり、医療教育や遠隔治療への利用が期待されます。医者への負担軽減やスピーカー出力などの効果も。

【DXの内容】
デジタルトランスフォーメーションの内容は、過去200年大きな変化なくアナログだった補聴器に、デジタル化ユニットをつけることで、補聴器をデジタル化できるもの。

“聴診器”をデジタル化すると何が変わるのか|CNET Japan

 

■STARTUP事例:マイシェフ社「マイシェフクイック」

デジタルトランスフォーメーション 成功と失敗

接客スタッフが自宅に来てサービスをしてくれる

マイシェフ株式会社の出張レストランサービス「マイシェフクイック」。
飲食業界 × デジタルの新しいサービスです。

【DXの内容】
飲食経営者の暗黙の前提である「お客がレストランに来る」を疑い、「レストランがお客の家に行く」という常識の真逆のパラダイムを、デジタル活用することで実現したサービス。

1食4000円 出張シェフ 家族の記念日需要を獲得:日経クロストレンド

 

過去にない事業は、ビジネスモデル自体の検証や、顧客定義や需要創造から行う必要があり、新規事業を成功させる確率は極めて低く、ほとんどが失敗に終わります。
しかし、うまく需要と市場を切り開くことができたならば、新しい市場で大きく事業を伸ばすことができます。

 

デジタル活用した新規事業の創出事例は、まだ非常に少ないです。

取り組む企業がまだ多くないという理由に加え、新規事業の成功率は極めて低く、情報が一般公開される前に、社内で失敗に終わることがほどんとだからだと思われます。

新規事業の成功率は10%未満|大企業の新規事業 成功確率を上げるため大切なこと

smasa0810.hatenablog.com

 

 

■ ビジネスモデルの変革事例

デジタルトランスフォーメーション  成功事例

 

UberNetflixのようなディスラプティブなイノベーションが自社の産業を襲う前に、自社をデジタルで変革して、産業のイノベーションを牽引しようと野心的にDXに取り組む会社を紹介します。

自社ビジネスモデルの変革 を目的とする場合、社内外に全社的なDXの必要性を繰り返し訴え、DXの一連の取り組みを社長が主導する必要があります。

デジタルによる変革をやり遂げなければならないと、断固たる決意と勇気を持つ社長か、そうではないかが、運命の分かれ道。

よく "創業者・創業家社長は思い切った戦略を打ち出しやすい(サラリーマン社長は株主を気にせざるを得ず、短期的なPL思考になりやすい)"と言われますが、事例を見ると、創業者社長 or サラリーマン社長というのは、あまり関係がないとわかります。

 

■事例:SOMPOホールディングス

https://www.sompo-hd.com/~/media/hd/new_images/ir/data/disclosure/hd/online2018/digital/img_digital_02.jpg?h=1208&w=2048

「事故後の保険会社」から「安心・安全をプロアクティブに提供する」方向に全社的に舵を切ったSOMPOホールディングス

デジタルトランスフォーメーション責任者(CDO執行役常務)は、三菱商事出身でシリコンバレーのスタートアップで12年間活躍した人を外部から招聘。

CDO配下にデジタル3部門を設置。デジタル戦略部はデジタル技術を担い、ビジネスデザイン戦略部ではデジタル技術用いる新ビジネスモデルの具現化、ビジネスクリエーション部では生命科学やロボティックスなど5分野の技術で大学と提携などオープンイノベーションで新たな事業を模索。
このデジタル3部門と、SOMPO Digital Lab(東京、シリコンバレー、テルアビブ)が、過去の延長線上にないDXを推進している。

2016年からの2年で、損保事業の延長にある”持続的な事業創出”は、事業アイデア1000件以上検討し、実際に担当部署と商品化を目指すまで進んだのが42件、商品として世に出せたのは10件(ドライブレコーダー付き保険、AIスピーカー用いる保険料見積もりサービス、ウェアラブル端末用いる健康増進型保険など)。
一方で、"破壊的な事業創出"は1件のみ(イスラエル企業と協業しサイバーセキュリティ事業)に止まってしまったと。

その後は、LINEと業務提携したLINE保険や、個人間カーシェアリング事業「DeNA SOMPO Mobility」マイカーリース事業「DeNA SOMPO Carlife」という2つの合弁会社DeNAと設立、駐車場シェアakippaを関連会社化。シリコンバレービッグデータ解析Palantirと日本合弁企業を設立なども。  

デジタル技術で新商品・サービス続々|週刊エコノミスト
デザイン思考とアジャイル経営が企業活動の根幹になる|@IT
未踏の領域を進むSOMPOホールディングスデジタル戦略部
デジタル戦略 | SOMPOホールディングス
事業モデル自ら壊す損保改革、“壊し屋”はシリコンバレー仕込み | BI JAPAN
損保ジャパン日本興亜がデジタル顧客基盤|日経クロストレンド
SOMPOホールディングス|CDOインタビュー
DeNAと損保ジャパンが異色タッグ 「0円マイカー」の衝撃:日経xTrend
駐車場シェア参入 akippaを関連会社化|ITmedia NEWS 
データ分析企業「Palantir」がSOMPOと新会社設立|CNET Japan

 

■事例:コマツ

https://home.komatsu/jp/press/2018/others/__icsFiles/artimage/2018/01/29/cne_2018_06/main.jpg

製造業のDXで、日本で最も進んでいるコマツ社。1999年開始の機械稼働管理システム「KOMTRAX」でGPS管理するコマツ建設機械はいまや世界で30万台以上。
1990年代後半、盗難油圧ショベルによるATM破壊強盗が多発し、その盗難対策としてGPSを付ける案から始まったそう。2001年に、標準装備で2%の利益が消えるが、KOMTRAX標準装備すると社長が決断(当時は会社は800億円赤字)。GPS有償オプションでなく、標準装備として新しいビジネスモデルを作った。

2008年には世界初の無人ダンプトラックシステムを開始。
2015年に自動化ICTブルドーザーやICT油圧ショベル、ドローンなどを活用するスマートコンストラクション開始。
2017年に建設生産プロセス全体をつなぐIoT基盤プラットフォームIoT LANDLOG開始。
2020年までに、建設会社向けにダンプトラック配車サービスも開始する予定。

いずれも、インダストリー4.0やIot、DXといった流行り言葉を意識したものでなく、顧客の問題解決を起点とする新規事業やサービス。 

建設機械の革命「KOMTRAX」誕生の足跡|by iX
無人ダンプトラック運行システム10周年 稼働台数100台超達成|小松製作所
コマツ、建機のIT化から見える自動運転の未来|日本経済新聞
コマツが描く「未来の建設現場」、ドローン測量や建機の遠隔操縦で「現場」はどう変わる? - INTERNET Watch
IoTで日本企業は今後の成長戦略をどう描くべきか | SAPジャパン
コマツのIoT戦略は「顧客志向」が成功の源泉|MONOist
日本発IoTの進捗度は10%、ランドログ社長が語る現在地と覚悟|日経xTECH
コマツ、ダンプの配車サービス 建設会社向け3年以内に|日本経済新聞

 

トヨタ

https://global.toyota/pages/global_toyota/company/messages-from-executives/detail_002.jpg

デジタル化の大波がやってきた自動車業界。GAFAとの直接的な競合関係になるトヨタも、食われる前に食ってやる勢いでデジタルを取り込みます。

「自動車会社」から、「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすると社長が明言し、ソフトバンクとの提携をはじめ、トヨタコネクティッドやトヨタ・リサーチ・インスティテュート、シリコンバレートヨタAIベンチャーズや北米DX&モビリティなど、コネクティッド・自動運転・電動化に向けた多領域の取り組みを進めています。

技術中心・トヨタ本体の内容のみならず、トヨタグループとしてシェアリング系サービスも進め、自動車サブスク「KINTO」、トヨタ売店によるカーシェア「TOYOTA SHARE」、トヨタレンタカーによる無人貸渡しレンタカー「チョクノリ!」、社用車のシェアリング「MONET Biz」なども開始。 

100年に一度の大変革の時代「モビリティカンパニー」にモデルチェンジする
トヨタとソフトバンク提携、避けられぬ製造業のサービス化|DIGITAL X
「CASE」が自動車産業にもたらす脅威とビジネスチャンス|HBR
トヨタ×自動運転、ゼロから分かる4万字解説 | 自動運転ラボ
「TOYOTA SHARE」/「チョクノリ!」の全国展開を開始
法人向けサービス「MONET Biz」の提供に向けた実証実験|MONET Technologies

トヨタがここまで振り切れるのは、創業家社長という理由の他に、豊田章男氏が20世紀末のインターネットのフロンティアに、いち早く飛び込んだ一人だったから、だと想像します。
トヨタの顧客向けインターネットサービスGAZOOを主導したのが豊田章男氏。1998年サイトオープン(楽天創業の翌年、サイバーエージェント創業と同時期にGAZOO.comを開設)し、2000年にはなんと旅行や書籍、家電やゲームなども売っていた。
ちなみにGAZOOショッピングでは、今でも米が売られており、随分前からサブスクリプションモデルが採用されているようです。

GAZOO.comが目指すもの|GAZOO
GAZOOショッピング お米定期便 ショップ | GAZOO.com

https://cdn.autoc-one.jp/images/article/201901/15143417063_3604_o.jpg

そのようなデジタル化の流れと並行して、その流れに逆行するように、スポーツカーのスープラを17年ぶりに復活させました。
時代に逆行するような、スープラ17年ぶりの復活。その一番の理由は「クルマが好きだから」だそうです。控えめに言って、最高ですね。

新型スープラがデビュー!豊田章男社長のアツいプレゼン|MOTA
「私の最も親しい友」“カーガイ”豊田章男社長が熱く話す、新型スープラへの思い

 

■事例:ブリジストン「B-TAG、TreadStat、Tirematics」

https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/img_news/2016/2016071301_01.jpg

良いタイヤ製造の時代から、技術成熟によるタイヤ単体のコモディディ化・低価格化になり、デジタル技術を使うソリューション提供にビジネスの軸足を移すうという経営判断に。
価格ではなく、タイヤ関連のトータルコストやパフォーマンスで勝負する作戦に。

顧客にタイヤをレンタルし、メンテナンスや管理、適切なタイミングで表面ゴム張替えする。安全性も向上し、非稼動ロスも削減。顧客はタイヤ在庫やローテーション・修理を考えなくて良い。
データ収集と分析により、タイヤの故障原因や傾向を捉え、タイヤ使用の提案や商品開発にも生かしている。

南米や豪州の巨大鉱山の超大型トラックタイヤ向けに、IoTセンサー「B-TAG」と、使用状況に応じたメンテナンスプログラム「TreadStat」を提供。
バスやトラックにも装着できるようB-TAGを進化させ、車両位置情報などリアルタイムモニタリング「Tirematics」を提供。 

ブリヂストン タイヤ製造販売からタイヤソリューション事業者への変革|日経xTECH
ブリヂストンの変革 「タイヤを売らずに稼ぐ」ビジネスとは|ITmedia
IoTの進化 がもたらしたタイヤのイノベーション|ビジネス+IT

 

リクルート

グローバルデジタルディスラプションに向かうリクルート

就職情報リクナビや中古車情報カーセンサー、結婚情報ゼクシイや飲食ホットペッパーなど、数十種類のメディア事業を持つリクルート社。
2000年ごろは全て紙媒体でしたが、2010年には全ての事業がWebサービスになり、今から10年以上前に、コア事業群のデジタルトランスフォーメーションを終えてしまっています。

その上で、既存デジタル事業でのAI活用や、既存ビジネスとは異なる新しいデジタルビジネス(エアレジとかスタディサプリとか)も多数生まれています。

2011年には、自社コア事業のディスラプターとなる可能性のある米国indeedを「誰かに破壊されるくらいなら、自分たちで壊しに行け」とばかりに買収。自社のコア事業である人材採用広告市場の競合となるindeedを日本でも展開し、大きく事業を伸ばしています。(実際に競合のバイト情報 an は2019年に事業終了)
2018年には、求人企業レビューサイトGlassdoorを買収。 

リクルートが "デジタル","グローバル" に舵を切った契機|ビジネス+IT
世界で生き残るためのデジタルトランスフォーメーション|MarketingBase

 

■ 補足:業務やプロセスの効率化・改善・高度化事例

デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業のほとんどが、既存業務やプロセスの効率化や改善目的のDXを行なっています。
事例は数多ある中で、多領域での業務やプロセス改善・効率化に取り組む事例として、関西電力事例を紹介します。

■事例:本格的に業務やプロセスの効率化・改善・高度化に取り組む関西電力

DX加速させる目的でアクセンチュアとK4 Digital設立した関西電力関西電力80%、ACN社20%)。

デジタルトランスフォーメーションの会社の目的

当該会社の取り組みは「設備関連業務の効率化・高度化」「顧客接点業務の効率化・高度化」「オフィス業務の自動化・効率化」とあり、
つまりは「既存業務やプロセスの効率化・改善・高度化」であると、極めて明確に定義されています。

当該会社の経営陣は、代表取締役関西電力のIT戦略室、取締役1:同 IT戦略室、取締役2:関電システムソリューションズ常務取締役、取締役3:アクセンチャ と、完全にIT畑な方々であり、既存業務やプロセスの効率化や改善のための体制です。

"IT部門・情シスが主導するDXは①業務やプロセスの効率化・改善・高度化 を目的とする内容になる" というセオリー通り、組織の実行能力と事業の目的や戦略とが、きちんと整合されている、素晴らしい事例だと思います。

(仮にもし、この体制で「新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革」が目的にされてしまうと、わけがわからないことになり、組織が生まれながらに失敗を義務付けられているような状態になってしまいます。)

新会社 K4Digital株式会社 設立について|関西電力.pdf

インタビュー記事では、副社長は「第一に、業務プロセスのデジタル化による「生産性の向上」、第二に、エネルギー・非エネ領域における新サービス開発や新規事業立上げなどの「新たな価値の創出」に取り組みたい」とコメントしています。
新サービスや新規事業に取り組む時には、当該会社の経営陣もおそらく刷新(IT畑の人でなく、新規事業畑の人に)されるのでしょう。

関西電力 デジタルトランスフォーメーションへの挑戦|アクセンチャ

2019年公表の中計には、4つの大方針の一つとして「新たな価値創出に向けてDXを実現します」とあり、DX取組状況を社外に知らせるPDFまであります。
実施中プロジェクトは、既存業務やプロセスの生産性向上380件、新たな価値創出20件あるらしいです。設備のIoT遠隔監視や数値に基づく最適化は、社内目的ですが、将来的に他社への外販も目論むそう。

DXに関する取組み状況201909|関西電力.pdf

 

大企業のデジタル新規事業の具体 成功事例
DX主導部門とDX目的との成果(成功,失敗)の関係性

新規事業の成功率は10%未満 ◉ 大企業の新規事業 成功確率を上げるために

デジタルトランスフォーメーション主導部門とDX目的との成果(成功,失敗)の関係性

活発にデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業が多いそうです。

デジタルトランスフォーメーションは、大きく2タイプに分かれます。

 ①業務やプロセスの効率化・改善・高度化
 ②新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革

 

"①業務やプロセスの効率化・改善・高度化" は、既存事業の既存業務やプロセスを対象とし、デジタル技術やデジタルデータを用いて、業務を自動化・迅速化したり、人手では実現できなかったことを実現したりします。
既存事業の業務やプロセスは、大まかに "社内"業務とプロセス、"顧客接点"業務とプロセスに分かれます

"②新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革" は、今まではできなかったけどデジタル活用で実現できる新サービスや事業を新たに創ったり、既存事業をデジタルで刷新・変革することを狙う内容です。

 

この2タイプは、目指すゴールや推進体制、アプローチや成功率・失敗率など、ほぼ全て異なります。

例えば、会社としては ②デジタルで新規ビジネス創出、を掲げていても、取り組むのが①のタイプ(RPAで自動化や、AIによる審査作業の時間短縮など)では、当然、②の成果を上げることは不可能です。

デジタルトランスフォーメーション  成功 失敗

 

ちなみに、①業務やプロセスの効率化・改善・高度化 は "デジタライゼーション" と呼び、②新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革 が"デジタルトランスフォーメーション" である、という定義をする人もいます。

https://image.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1901/08/kz_kore190108_01.jpg

 

(呼び方がどうであれ)デジタルトランスフォーメーションの成果は、それを主導する部門に依存すると考えています。

「デジタルトランスフォーメーションが上手くいかない」という声を見聞きしますが、失敗する理由の半分くらいは、"目標と主導する部門の不整合" にあるのではないでしょうか。

 

■デジタルトランスフォーメーションの狙いと推進部署の関係

デジタルトランスフォーメーション(DX)の目標と、それを主導する部門の関係はおおよそ次の通りではないでしょうか。

①既存業務やプロセスの効率化・改善・高度化
 1.IT・情シス部門(社内業務・プロセス)
 2.マーケ・ウェブ関連・顧客接点部門(顧客接点業務・プロセス)
 3.事業部の企画部門

②新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革
 (3.事業部の企画部門)
 4.新規事業部門
 5.社長直轄・経営企画

 

「組織は、戦略に従う」と言われますが、デジタルトランスフォーメーションにおいては「実際の実行能力は、組織に依存する」ように思います。

 

"目標と主導する部門の不整合"とは、例えば、IT・情シス部門に「デジタル系の新規ビジネスを創出せよ」というミッションを与えてしまうこと。それは、相当無理があります。 

IT部門の仕事の99%以上は社内仕事です。自社内の課題は知っていても、顧客の課題を知りませんよね。
(社内のユーザー部門ではなく)実際の顧客に会わずして、顧客の未解決の課題を見出せるわけがなく、新規ビジネスを作れるはずもありません。

付き合いある会社に相談しようと思っても、その相手は ITコンサルやSIer、システムベンダーなど。それら企業は、あなたの会社の要望(あなたの社内の課題)を聞き、あなたにシステムを売るのが仕事です。

  

最近では、CDO(チーフデジタルオフィサー)や、デジタル開発室 のような部署を設置する企業が増えているそうです。しかし結局のところ、CDOやデジタル部の構成員の職務経験に依存します。 
(IT畑の長い人が中心なら、自ずとIT部門の思考のクセを持ち、新規事業や企画畑が長い人なら、自ずと新事業や企画の思考のクセが強い部署になります)

どういう経験・経歴の人をDX担当に充てるべき、というものでなく、
デジタルトランスフォーメーションで狙う成果や目標と、主導する部門の整合性が取れている必要があると思います。

 

①既存業務やプロセスの効率化・改善・高度化 を目的とするなら「1.IT・情シス部門」や「2.マーケ・ウェブ関連・顧客接点部門」に、DX推進の役割を担わせましょう。

そうではなく、②新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革 が目的なら「4.新規事業部門」や「5.社長直轄・経営企画」に、DX推進の役割を担わせましょう。

 

既存業務やプロセスの効率化・改善・高度化 ー 1. IT部門主導のデジタルトランスフォーメーション 

IT部門が主導するデジタルトランスフォーメーション

 

IT部門・情シスが主導するデジタルトランスフォーメーションは、①業務やプロセスの効率化・改善・高度化 を目的とする内容になり、"社内"の既存業務やプロセスが対象となるでしょう。

日本のIT市場規模は18兆円以上と巨大なこともあり、日本国内でDX推進事例として知られるものは、ほぼIT部門が主導する業務改善・プロセス効率化の事例です。

 

IT部門の発注先である ITコンサル会社やSIerは、IT部門主導の既存業務やプロセスの効率化・改善DXが、もっと増えて欲しいと思っています。

あるITコンサル会社のお偉いさんは、DXは改善だと言い切っています。 

https://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/1/e/550wm/img_1ee6fb89b2335ebd040eabda83243d4d610750.jpg

レイヤーズ コンサルティングのDX事業部 統括マネージングディレクターは、このように述べました。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57256?page=3

私は、DXとはカイゼンするための手段としか捉えていません。
カイゼンネタの探し方」について、業務効率化を行うためには、業務を棚卸し、整理、可視化する必要があります。「カイゼン」ネタは、いわゆる個人業務や部門業務などの業務と業務の境界線に隠れています。

 

別のITコンサルのベイカレントコンサルティングは、既存業務やプロセスにデジタル要素を統合する「デジタルインテグレーション」を、日本企業が到達すべきステップとしています。
(言い換えれば、②新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革 には触れていません)

https://digital.baycurrent.co.jp/files/bgeditor/img/276__5ZuzMV8yMDE5MDcwM1-jg6rjgrXjgqTjgrrmuIg-d-.jpg

https://digital.baycurrent.co.jp/aboutus

日本企業がDXを推進する戦略として「デジタルパッチ」「デジタルインテグレーション」「デジタルトランスフォーメーション」という3ステップを提唱しています。その中で、2番目のデジタルインテグレーションは全ての日本企業が到達すべきステップであり、ベイカレントのデジタルに関する提言を象徴する概念。

 

ITベンダーのマイクロソフトは、DXの本質はデジタル技術による日々の業務課題の解決だと言い切っています。

https://dhbr.ismcdn.jp/mwimgs/8/c/670m/img_8cdea421790951a40cbb4b60d6576d44231174.jpg

マイクロソフトのビジネスアプリケーション事業本部本部長は、HBRの広告記事でこのように述べました。

https://www.dhbr.net/articles/-/6142

自分たちの経験とスキルを生かし、日々の業務課題をデジタル技術で解決することがDXの本質です。

ITベンダーやITコンサルは、対象が巨大になる既存業務やプロセスに興味があります。逆に、対象が微々たるサイズにならざるを得ない新規事業には、興味がありません。

ITベンダーやITコンサルの立場に立てば、当然に顧客企業の"業務やプロセスの効率化・改善・高度化"がビジネスの対象範囲となります。

 

IT部門・情シスが主導する、①業務やプロセスの効率化・改善・高度化 を目的とするDXは、具体的には次のようなパターンが多いです。

ⅰ  効率化・自動化により、人を減らすことができる
ⅱ 効率化・自動化により、今より少人数で必要とされる業務量に対応できる

ⅲ 数値モニタリングにより、予防やコスト削減できる
ⅳ アナログ情報のデジタル化により、人が減ってもノウハウを将来に繋げられる

ⅴ 高度化・歩留まり向上により、売上や成果が増える

 

■ ⅰ 効率化・自動化により、人を減らすことができる

例えば、ホワイトカラーの事務作業(人手作業)へのRPA導入による効率化・自動化により、人員を削減(人件費の削減=利益の向上)できます。

○○時間削減、○○人をリストラ・配置転換など、目に見える数字で成果を提示できるため、IT部門主導のDXで取り組みやすい内容です。

例:メガバンクに業務自動化の波、数千人規模の人員削減 - Bloomberg

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/imVFBzB67QoA/v0/400x-1.jpg

例:100超の業務効率化「RPA導入」45万時間の創出 | 損保ジャパン
 損保ジャパン ITで効率化、4000人削減、介護分野などに配転

 

■ ⅱ 効率化・自動化により、今より少人数で必要とされる業務量に対応できる

人手不足の業界では、今より少ない人手で、今の業務量をこなす必要があります。そのための効率化・自動化ニーズの必要性が高いです。

例:日立建機、施工現場のIoT化を実現

https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/iotnews-media/images/20180412163530/413.jpg

例:介護施設 Iotセンサーによるベッド見守り・排泄予測

 

■ ⅲ 数値モニタリングにより、予防やコスト削減できる

それまで勘や経験に頼っていた領域にて、数値把握することにより、より効率的な対応(コスト削減)が期待される領域です。

例:水道管監視とメンテナンスにAI・IoT利用
例:ヤンマー 農機のIoT遠隔管理システム「スマートアシスト」

 

■ ⅳ アナログのデジタル化により、人が減ってもノウハウを将来に繋げられる

職人など経験則に基づく領域に、デジタルを活用によりそのノウハウを把握・形式知化します。それにより、経営の安定や事業コア情報の柔軟な適応が可能になります。

例:「獺祭」ブラックボックスだった酒造りノウハウをデジタル管理
例:日本航空へHoloLens使用 MR保守技術者研修|MoguraVR News

 

■ ⅴ 高度化・歩留まり向上により、売上や成果が増える

人手では不可能であった領域に、デジタルが取り組むことにより、より高度な成果を生み出したり、売上アップにつなげます。

例:AI画像解析によるガン・脳腫瘍・に認知症の早期発見
例:黒毛和牛の発情期をIoT検知
例:中国平安保険の1日 3万件の保険金支払いを支えるAIエンジン

デジタルトランスフォーメーション 成功と失敗

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02231/

 

■事例:本格的に業務やプロセスの効率化・改善・高度化に取り組む関西電力

デジタルトランスフォーメーションの会社の目的

DX加速させる目的でアクセンチュアとK4 Digital設立した関西電力関西電力80%、ACN社20%)。

当該会社の取り組みは「設備関連業務の効率化・高度化」「顧客接点業務の効率化・高度化」「オフィス業務の自動化・効率化」とあり、
つまりは「既存業務やプロセスの効率化・改善・高度化」であると、極めて明確に定義されています。

当該会社の経営陣は、代表取締役関西電力のIT戦略室、取締役1:同 IT戦略室、取締役2:関電システムソリューションズ常務取締役、取締役3:アクセンチャ と、完全にIT畑な方々です。
"IT部門・情シスが主導するDXは①業務やプロセスの効率化・改善・高度化 を目的とする内容になる" というセオリー通り、組織の実行能力と事業の目的や戦略とが、きちんと整合されている、素晴らしい事例だと思います。

(仮にもし、この体制で「新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革」が目的にされてしまうと、わけがわからないことになり、組織が生まれながらに失敗を義務付けられているような状態になってしまいます。)

新会社 K4Digital株式会社 設立について|関西電力.pdf

インタビュー記事では、副社長は「第一に、業務プロセスのデジタル化による「生産性の向上」、第二に、エネルギー・非エネ領域における新サービス開発や新規事業立上げなどの「新たな価値の創出」に取り組みたい」とコメントしています。
新サービスや新規事業に取り組む時には、当該会社の経営陣もおそらく刷新(IT畑の人でなく、新規事業畑の人に)されるのでしょう。

関西電力 デジタルトランスフォーメーションへの挑戦|アクセンチャ

2019年公表の中計には、4つの大方針の一つとして「新たな価値創出に向けてDXを実現します」とあり、DX取組状況を社外に知らせるPDFまであります。
実施中プロジェクトは、既存業務やプロセスの生産性向上380件、新たな価値創出20件あるらしいです。設備のIoT遠隔監視や数値に基づく最適化は、社内目的ですが、将来的に他社への外販も目論むそう。

DXに関する取組み状況201909|関西電力.pdf

 

既存業務やプロセスの効率化・改善・高度化 ー 2. マーケ・ウェブ関連・顧客接点部門主導のDX

マーケ・ウェブ関連・顧客接点部門が主導するデジタルトランスフォーメーションは、"顧客接点" における ①業務やプロセスの効率化・改善・高度化や、既存ビジネスの販売貢献を目的とする内容が中心でしょう。 

■ 販売接客員のデジタル活用

例:店頭販売員向けiPadアプリ(全チャネルの全顧客データが一元管理)
例:住友不動産販売のVR内見

 

■ 問合せ対応のデジタル活用

例:富士通のコンタクトセンターのAI活用
例:三井住友銀行ののチャットボットによる自動応答

 

 

■ 新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革 ー 4. 新規事業部主導のデジタルトランスフォーメーション 

新規事業部が主導するDXは ②新規ビジネスの創出 を目的とする内容が中心になるでしょう。 
DXで期待される「デジタル技術を活用したビジネス変革」は、まさに②新規ビジネスの創出でしょう。

デジタルトランスフォーメーション 新規事業部

 

デジタル新規事業は、これまでは実現・提供できなかったが、新しいデジタル技術活用により、既存の延長線上にない新ビジネス創出を狙います。
デジタル活用 新規事業は ①世の中にない新しいビジネス、②世の中的に新しくないけど自社では新規事業、の2パターンに分かれます。

 

① 世の中にない新しいビジネス

デジタルトランスフォーメーション 新事業の創造

過去になかったサービスや商品で、人々の生活をより良いものへと変革するような、デジタル新規事業。

過去にない事業は、ビジネスモデル自体の検証や、顧客定義や需要創造から行う必要があり、新規事業を成功させる確率は極めて低く、ほとんどが失敗に終わります。
しかし、うまく需要と市場を切り開くことができたならば、新しい市場で大きく事業を伸ばすことができます。

自社の産業や市場にて、これまで取り組んでいない領域に、これまでの常識を覆す新しいサービス、革新的なプロダクトを投入したデジタルトランスフォーメーション事例です。

 

■事例:リクルート社「エアレジ」

https://assets.media-platform.com/bi/dist/images/2018/01/31/air01.jpg

飲食店の集客広告(ホットペッパー)を提供するリクルートライフスタイル社。ネット&リアル接点があり、領域(飲食、美容など)をまたぐ新規事業のエアレジ。

Airレジの構想と誕生秘話を探る | ウェブ電通報
Airレジ開発のこだわりと今後の展開 | ウェブ電通報
プラットフォームとしてのAirレジの可能性 | ウェブ電通報

ちなみに、事業立上げ前、社内では何年も前からレジ事業は何度も起案され、その都度却下され続けていたそうです。
無料レジから始まったエアレジは、店内注文システムや受付管理、予約管理やバイトシフト、お店の売上管理など、飲食店の様々な業務支援に領域を広げています。

 

■事例:寺田倉庫社「minikura、TERRADA WINE MARKET」

https://ecnomikata.com/img_contents/ecnews/images/15465_thumbnail_0.png?now=20170814090004

BtoBの物流倉庫業の寺田倉庫が、BtoC向けの様々な保管サービスや、シェアリングサービスの倉庫機能の新規事業を次々立ち上げています。

倉庫会社が倉庫を手放す理由とは|LivingTech
TERRADA WINE STORAGEに感じる「嗅覚とセンス」の良さ|ECのミカタ

 

■事例:IDOM社「NOREL、ガリバーフリマ、GO2GO」

https://image.itmedia.co.jp/business/articles/1609/30/yd_idom3.jpg

中古車 買取&販売大手のIDOM社(ガリバー)による、月額定額制の自動車レンタルサービスNORELや、中古車の個人間売買サービスのガリバーフリマ、個人間カーシェアGO2GO を新サービスとして展開。

新規事業必要なのは「突破力」新規事業開発室|ITmedia
新スタイル提案 超短期カーリース「NOREL」

 

■事例:クボタ社「GPS農機 ファームパイロット」

https://www.kubota.co.jp/kubotapress/img/autonomous-farm-machinery/auto_top.jpg

農業機械メーカー大手のクボタ。農業機械の製造販売ビジネスから、農業全体のソリューション提供に広げます。まず農機の自動運転。GPS自動運転農機(耕うんトラクタ・田植機・刈り取りコンバイン)。

クボタの「農機自動運転」 農業の未来を担う実力|クボタプレス
農業の「入口から出口まで」のソリューションを提供する企業へ|日経xTECH

 

■事例:クックパッド社「クックパッドマート」

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/shanonim/20190412/20190412174027.jpg

レシピサイト大手 クックパッド社による、実際の生鮮食品を扱う新規事業のクックパッドマート。生鮮食品をスマホ注文し、自宅に宅配ではなく、自宅近くの店舗や施設ロッカーで受け取れる生鮮食品ネットスーパー。

デジタルトランスフォーメーションというと、フィジカルな実業を持つ企業がデジタル 活用が多いですが、もともとデジタル企業(ネット企業)がフィジカルに参入するチャレンジです。

新規事業「クックパッドマート」の立上げの話
新規事業のIoTプロダクト開発に必要なこと
クックパッドマートの舞台裏--新規事業における組織づくり手法

  

■事例:ソニー社「Qrio Lock、MANOMA」

https://japan.cnet.com/storage/2018/10/10/34064506467c2df7dbff31748b514a94/181010_sony_04.jpg

超大手企業ソニーにて、スマートホーム領域参入となる、デジタルIoTデバイスQrio Lock(スマートキー)。
ベンチャーキャピタルWiLとの合弁会社Qrio開発した後に、完全子会社化。

ソニーがスマートホーム事業に参入「MANOMA」ライフスタイル提案|CNET Japan

 

■事例:エアバス「MRデバイスアプリケーション」

https://ascii.jp/elem/000/001/882/1882387/image00_588x.jpg

フランスに本社を置く航空機器メーカーのエアバスは、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」用アプリーケーションを、JALに販売。
同アプリケーションは、元々は自社の研修用であったが、それを外販する。MR(Mixed Reality)研修,リモート協業,保守作業に関するアプリケーション。

 

■事例:ストライプインターナショナル社「メチャカリ」

https://www.amsinc.co.jp/wp-content/uploads/2019/07/ams_casestudy_vol5_02.jpg

30以上のブランド展開するアパレル企業ストライプインターナショナルの、ファッションIT新規事業 メチャカリ。スタートアップ企業エアクロ社が切り開いたファッションレンタルサブスクに、真正面から既存アパレル企業が競合して市場創造する事業です。 

月額5800円 ファッションレンタルサブスクリプション | PRESIDENT
ファッションサブスク「メチャカリ」有料会員1万3000人突破 | WWD JAPAN.com
業界初ファッションサブスクリプション 「メチャカリ」

 

■STARTUP事例:シェアメディカル社「ネクステート」

https://japan.cnet.com/storage/2019/08/23/101081edbae22c1689a350790bc98c49/1_R.jpg

過去200年大きな変化のなかった聴診器をデジタル化した、聴診器デジタル化ユニット ネクステート。聴診データをデジタル化することで、データ保存・共有が可能となり、医療教育や遠隔治療への利用が期待されます。医者への負担軽減やスピーカー出力などの効果も。

“聴診器”をデジタル化すると何が変わるのか|CNET Japan

 

■STARTUP事例:マイシェフ社「マイシェフクイック」

デジタルトランスフォーメーション 成功と失敗

接客スタッフが自宅に来てサービスをしてくれる

マイシェフ株式会社の出張レストランサービス「マイシェフクイック」。
飲食経営者の暗黙の前提である「お客がレストランに来る」を疑い、「レストランがお客の家に行く」という常識の真逆のパラダイムで提供するマイシェフクイック。
飲食業界 × デジタルの新しいサービスです。

1食4000円 出張シェフ 家族の記念日需要を獲得:日経クロストレンド

 

デジタル活用した新規事業の創出事例は、まだ非常に少ないです。

取り組む企業がまだ多くないという理由に加え、新規事業の成功率は極めて低く、情報が一般公開される前に、社内で失敗に終わることがほどんとだからだと思われます。

新規事業の成功率は10%未満|大企業の新規事業 成功確率を上げるため大切なこと

smasa0810.hatenablog.com

 

 

② 世の中的に新しくないけど自社では新規事業

デジタルトランスフォーメーション 成功と失敗

既に先行企業のデジタル関連のサービス・商品があっても、後発として市場参入する新規事業デジタルトランスフォーメーション。

市場があると証明されてからの参入、市場が成長期であったり明らかに巨大市場への参入、後発からトップを狙う場合や、自社の強みが明らかにいきる場合、その事業を立上げ自体が求められる場合など、背景は個々の企業によって異なるでしょう。

後発として 新ビジネス創出・市場参入するメリットは、先行企業を調査できること。
先行企業を徹底的に調査してパクリ、資本力や営業力で攻めるのも、大手企業の新規事業のよくある攻め方です。

 

フィジカル産業にデジタルを導入し、過去はできなかった事業(デジタルなしでは出来ない内容)を実現させようとする、新事業開発のデジタルトランスフォーメーション事例です。

 

■事例:オンワード樫山社「KASHIYAMA the Smart Tailor」

https://forza.ismcdn.jp/mwimgs/9/7/1200m/img_97875054130fe04f795910ef8def7f1f432317.jpg

スタートアップが切り開いた D2Cオーダーメイドスーツ市場。アパレル大手のオンワード樫山オンワードパーソナルスタイル社)が2017年10月にD2Cオーダーメイドスーツ事業を開始して新事業を垂直立上げし、19年2月期売上高は37億円に。
新規事業立上げ時は、同社社長と生産部長の2人で推進し、事業立上げ時でも5人くらいの少人数体制だったようです。

戦略ケース KASHIYAMA the Smart Tailor
オンワード樫山の資産をベースに創りあげた「オーダーメイドスーツ」|FORZA STYLE
最短1週間で届くオーダースーツKASHIYAMA the Smart Tailor|BI JAPAN

  

■事例:家庭教師のトライ社「Try IT」

https://prtimes.jp/i/14618/1/resize/d14618-1-243593-4.jpg

リクルート社の受験サプリ(スタディサプリ)が切り開いた、スマホ映像塾。2015年7月に Try IT開始し、大手家庭教師の知名度とコンテンツ力にて猛追。

家庭教師のトライ 無料オンライン授業『Try IT』開始

 

■事例:コニカミノルタ社「ケアサポートソリューション

https://image.itmedia.co.jp/news/articles/1905/15/kf_yamashita_01_w290.jpg

複合機や産業用光学システムの技術を生かした新規事業として、2013年ごろより介護事業に取り組むコニカミノルタ

介護業界 IoTで改善 コニカミノルタの新事業|ITmedia NEWS

 

■事例:三越伊勢丹社「Your FIT 365」

https://precious.jp/mwimgs/0/b/-/img_0b105529cc9c82bbf1da7994b1026f37118230.jpg

3D計測機で足型を計測し、木型を基にデータ化した靴情報とマッチングさせ、おすすめのパンプスをレコメンドしてくれるYour FIT 365。自宅でリピート購入できるようアプリも用意されている。

伊勢丹新宿店の新サービス「Your FIT 365」|Precious

  

■撤退事例:AOKI社「suitsbox」

スーツのサブスクリプションサービスを始めるも、サービス開始から半年で事業撤退。

AOKIが半年でサブスク撤退 新社長による事業見直しか:日経クロストレンド

 

■撤退事例:リクルート社「カジアル」

リクルートスタッフィングのインターネット予約家事代行サービスは、サービス開始から1年半で事業撤退。

リクルートスタッフィング 家事代行カジアル

 

■撤退事例:ソフトバンク社「SoftBank HealthCare」

スマホ健康管理「SoftBank HealthCare」は、サービス開始から3年強でサービス終了。

「SoftBank HealthCare」サービス終了のご案内|ソフトバンク

 

■ 新規ビジネスの創出/ビジネスモデルの変革 ー 5. 社長直轄・経営企画主導のDX

全社改革デジタルトランスフォーメーション

新しい事業の柱(新規ビジネス群)の創出や、自社ビジネスモデルの変革 を目的とする場合、社内外に全社的なDXの必要性を繰り返し訴え、DXの一連の取り組みを社長が主導する必要があります。

デジタルによる変革をやり遂げなければならないと、断固たる決意と勇気を持つ社長か、そうではないかが、運命の分かれ道。

よく "創業者・創業家社長は思い切った戦略を打ち出しやすい(サラリーマン社長は株主を気にせざるを得ず、短期的なPL思考になりやすい)"と言われますが、事例を見ると、創業者社長 or サラリーマン社長というのは、あまり関係がないとわかります。

 

■事例:ブリジストン「B-TAG、TreadStat、Tirematics」

https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/img_news/2016/2016071301_01.jpg

良いタイヤ製造の時代から、技術成熟によるタイヤ単体のコモディディ化・低価格化になり、デジタル技術を使うソリューション提供にビジネスの軸足を移すうという経営判断に。
価格ではなく、タイヤ関連のトータルコストやパフォーマンスで勝負する作戦に。

顧客にタイヤをレンタルし、メンテナンスや管理、適切なタイミングで表面ゴム張替えする。安全性も向上し、非稼動ロスも削減。顧客はタイヤ在庫やローテーション・修理を考えなくて良い。
データ収集と分析により、タイヤの故障原因や傾向を捉え、タイヤ使用の提案や商品開発にも生かしている。

南米や豪州の巨大鉱山の超大型トラックタイヤ向けに、IoTセンサー「B-TAG」と、使用状況に応じたメンテナンスプログラム「TreadStat」を提供。
バスやトラックにも装着できるようB-TAGを進化させ、車両位置情報などリアルタイムモニタリング「Tirematics」を提供。

ブリヂストン タイヤ製造販売からタイヤソリューション事業者への変革|日経xTECH
ブリヂストンの変革 「タイヤを売らずに稼ぐ」ビジネスとは|ITmedia
IoTの進化 がもたらしたタイヤのイノベーション|ビジネス+IT

  

■事例:コマツ

https://home.komatsu/jp/press/2018/others/__icsFiles/artimage/2018/01/29/cne_2018_06/main.jpg

製造業のDXで、日本で最も進んでいるコマツ社。1999年開始の機械稼働管理システム「KOMTRAX」でGPS管理するコマツ建設機械はいまや世界で30万台以上。
1990年代後半、盗難油圧ショベルによるATM破壊強盗が多発し、その盗難対策としてGPSを付ける案から始まったそう。2001年に、標準装備で2%の利益が消えるが、KOMTRAX標準装備すると社長が決断(当時は会社は800億円赤字)。GPS有償オプションでなく、標準装備として新しいビジネスモデルを作った。

2008年には世界初の無人ダンプトラックシステムを開始。
2015年に自動化ICTブルドーザーやICT油圧ショベル、ドローンなどを活用するスマートコンストラクション開始。
2017年に建設生産プロセス全体をつなぐIoT基盤プラットフォームIoT LANDLOG開始。
2020年までに、建設会社向けにダンプトラック配車サービスも開始する予定。

いずれも、インダストリー4.0やIot、DXといった流行り言葉を意識したものでなく、顧客の問題解決を起点とする新規事業やサービス。

建設機械の革命「KOMTRAX」誕生の足跡|by iX
無人ダンプトラック運行システム10周年 稼働台数100台超達成|小松製作所
コマツ、建機のIT化から見える自動運転の未来|日本経済新聞
コマツが描く「未来の建設現場」、ドローン測量や建機の遠隔操縦で「現場」はどう変わる? - INTERNET Watch
IoTで日本企業は今後の成長戦略をどう描くべきか | SAPジャパン
コマツのIoT戦略は「顧客志向」が成功の源泉|MONOist
日本発IoTの進捗度は10%、ランドログ社長が語る現在地と覚悟|日経xTECH
コマツ、ダンプの配車サービス 建設会社向け3年以内に|日本経済新聞

 

NTTドコモ

https://www.bcm.co.jp/bcm/wp-content/uploads/2019/05/f-1-2-640x443.jpg

日本を代表する大企業 NTTドコモは、2018年5月に会社の方針変更をしました。
「回線契約数から会員数へと舵を切った」と言って過言ではない、大きなレベルの方針変更。

具体的には「dポイントクラブ」をリニューアルし、回線契約ではなく、「dポイントクラブ」の「会員基盤」を軸とした事業運営に。

「dポイント」は以前よりありましたが、ドコモ回線契約者のおまけポイント的な位置付けでした。それが、ドコモ回線契約の有無と切り離され、独立した「dポイントクラブ会員」の会員データ事業・決済・パートナー企業向けのデジタルマーケティング事業に。
簡単に言えば、ツタヤのTカードの事業を丸っと奪い取り、さらに幅広いデジタルマーケや決済まで取り込む形だと思われます。

2016年3月時点で dポイントクラブ会員数5800万・dポイントカード登録数366万だったのが、わずか3年後の2019年3月時点で クラブ会員7000万突破、dポイントカードは3年前の9倍の3372万と急増。

1億人の最強会員基盤を目指すドコモ
ドコモの新たな挑戦 キャリアフリーの会員獲得戦略へ|ロボスタ
dポイントクラブをリニューアルし、dポイント共有グループを新設|NTTドコモ

 

■事例:SOMPOホールディングス

https://www.sompo-hd.com/~/media/hd/new_images/ir/data/disclosure/hd/online2018/digital/img_digital_02.jpg?h=1208&w=2048

「事故後の保険会社」から「安心・安全をプロアクティブに提供する」方向に全社的に舵を切ったSOMPOホールディングス

デジタルトランスフォーメーション責任者(CDO執行役常務)は、三菱商事出身でシリコンバレーのスタートアップで12年間活躍した人を外部から招聘。

CDO配下にデジタル3部門を設置。デジタル戦略部はデジタル技術を担い、ビジネスデザイン戦略部ではデジタル技術用いる新ビジネスモデルの具現化、ビジネスクリエーション部では生命科学やロボティックスなど5分野の技術で大学と提携などオープンイノベーションで新たな事業を模索。
このデジタル3部門と、SOMPO Digital Lab(東京、シリコンバレー、テルアビブ)が、過去の延長線上にないDXを推進している。

2016年からの2年で、損保事業の延長にある”持続的な事業創出”は、事業アイデア1000件以上検討し、実際に担当部署と商品化を目指すまで進んだのが42件、商品として世に出せたのは10件(ドライブレコーダー付き保険、AIスピーカー用いる保険料見積もりサービス、ウェアラブル端末用いる健康増進型保険など)。
一方で、"破壊的な事業創出"は1件のみ(イスラエル企業と協業しサイバーセキュリティ事業)に止まってしまったと。

その後は、LINEと業務提携したLINE保険や、個人間カーシェアリング事業「DeNA SOMPO Mobility」マイカーリース事業「DeNA SOMPO Carlife」という2つの合弁会社DeNAと設立、駐車場シェアakippaを関連会社化。シリコンバレービッグデータ解析Palantirと日本合弁企業を設立なども。 

デジタル技術で新商品・サービス続々|週刊エコノミスト
デザイン思考とアジャイル経営が企業活動の根幹になる|@IT
未踏の領域を進むSOMPOホールディングスデジタル戦略部
デジタル戦略 | SOMPOホールディングス
事業モデル自ら壊す損保改革、“壊し屋”はシリコンバレー仕込み | BI JAPAN
損保ジャパン日本興亜がデジタル顧客基盤|日経クロストレンド
SOMPOホールディングス|CDOインタビュー
DeNAと損保ジャパンが異色タッグ 「0円マイカー」の衝撃:日経xTrend
駐車場シェア参入 akippaを関連会社化|ITmedia NEWS 
データ分析企業「Palantir」がSOMPOと新会社設立|CNET Japan

 

トヨタ

https://global.toyota/pages/global_toyota/company/messages-from-executives/detail_002.jpg

デジタル化の大波がやってきた自動車業界。GAFAとの直接的な競合関係になるトヨタも、食われる前に食ってやる勢いでデジタルを取り込みます。

「自動車会社」から、「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすると社長が明言し、ソフトバンクとの提携をはじめ、トヨタコネクティッドやトヨタ・リサーチ・インスティテュート、シリコンバレートヨタAIベンチャーズや北米DX&モビリティなど、コネクティッド・自動運転・電動化に向けた多領域の取り組みを進めています。

技術中心・トヨタ本体の内容のみならず、トヨタグループとしてシェアリング系サービスも進め、自動車サブスク「KINTO」、トヨタ売店によるカーシェア「TOYOTA SHARE」、トヨタレンタカーによる無人貸渡しレンタカー「チョクノリ!」、社用車のシェアリング「MONET Biz」なども開始。

100年に一度の大変革の時代「モビリティカンパニー」にモデルチェンジする
トヨタとソフトバンク提携、避けられぬ製造業のサービス化|DIGITAL X
「CASE」が自動車産業にもたらす脅威とビジネスチャンス|HBR
トヨタ×自動運転、ゼロから分かる4万字解説 | 自動運転ラボ
「TOYOTA SHARE」/「チョクノリ!」の全国展開を開始
法人向けサービス「MONET Biz」の提供に向けた実証実験|MONET Technologies

トヨタがここまで振り切れるのは、創業家社長という理由の他に、豊田章男氏が20世紀末のインターネットのフロンティアに、いち早く飛び込んだ一人だったから、だと想像します。
トヨタの顧客向けインターネットサービスGAZOOを主導したのが豊田章男氏。1998年サイトオープン(楽天創業の翌年、サイバーエージェント創業と同時期にGAZOO.comを開設)し、2000年にはなんと旅行や書籍、家電やゲームなども売っていた。
ちなみにGAZOOショッピングでは、今でも米が売られており、随分前からサブスクリプションモデルが採用されているようです。

GAZOO.comが目指すもの|GAZOO
GAZOOショッピング お米定期便 ショップ | GAZOO.com

https://cdn.autoc-one.jp/images/article/201901/15143417063_3604_o.jpg

そのようなデジタル化の流れと並行して、その流れに逆行するように、スポーツカーのスープラを17年ぶりに復活させました。
時代に逆行するような、スープラ17年ぶりの復活。その一番の理由は「クルマが好きだから」だそうです。控えめに言って、最高ですね。

新型スープラがデビュー!豊田章男社長のアツいプレゼン|MOTA
「私の最も親しい友」“カーガイ”豊田章男社長が熱く話す、新型スープラへの思い

 

リクルート

グローバルデジタルディスラプションに向かうリクルート

就職情報リクナビや中古車情報カーセンサー、結婚情報ゼクシイや飲食ホットペッパーなど、数十種類のメディア事業を持つリクルート社。
2000年ごろは全て紙媒体でしたが、2010年には全ての事業がWebサービスになり、今から10年以上前に、コア事業群のデジタルトランスフォーメーションを終えてしまっています。

その上で、既存デジタル事業でのAI活用や、既存ビジネスとは異なる新しいデジタルビジネス(エアレジとかスタディサプリとか)も多数生まれています。

2011年には、自社コア事業のディスラプターとなる可能性のある米国indeedを「誰かに破壊されるくらいなら、自分たちで壊しに行け」とばかりに買収。自社のコア事業である人材採用広告市場の競合となるindeedを日本でも展開し、大きく事業を伸ばしています。(実際に競合のバイト情報 an は2019年に事業終了)
2018年には、求人企業レビューサイトGlassdoorを買収。

リクルートが "デジタル","グローバル" に舵を切った契機|ビジネス+IT
世界で生き残るためのデジタルトランスフォーメーション|MarketingBase

 

【日本 成功事例】デジタルトランスフォーメーション 成功事例15選
大企業のデジタル新規事業の具体 成功事例

企業で新事業/新製品を繰り返し作り出すシリアル・イノベーターとは
新規事業 向いている人の見分け方|大企業の社内新規事業 担当者の選び方

 

【新規事業 立上げプロセス】企業内で新規事業企画・開発を行う流れ

企業内の新規事業立上げのプロセス。

1.目的を決める
2.事業テーマを決める
3.ビジネスプランの策定
4.事業化の可否の決定
5.その他、成功確率の向上に向けて

(このブログエントリーは、新規事業創出の専門家 坂本氏のインタビュー内容をまとめたものです。坂本氏は複数回の起業経験のある新規事業創出のプロ)

 

前編:新規事業の成功率を高める組織的観点
【企業内の新規事業開発】成功率を高めるための組織的観点 

 

1.目的を決める

「新規事業の目的」は、全ての出発点であり、全ての基準点となるため、極めて重要。新規事業の目的が曖昧なままで、成功することは絶対にない

・新規事業の目的は、少人数のトップ層やその直轄メンバーで、建前や前例に囚われずとことん議論し、考え尽すことをおすすめする。
・強力な事業アイデア、ビジネスシーズがあり、それを具体化する方向で始まる形の新規事業の場合も、会社にとってその新規事業を立上げる目的まで遡って議論するべき。

 

2.事業テーマを決める

・新規事業を立上げる目的を定めたら、そこで何をやるか決める必要がある。

・事業テーマ検討時、ふさわしい人を集めてチームを作り、そのチームに新規事業アイデアを考えるミッションを与える。
 ー社内の若手~中堅を中心に。
 ー新規事業立上げに関心があり、能力も高い人材を集める。
 ー複数の部署から集め、もちろんこのチームは当ミッションに対する専任であるべき。

新規事業の立上げプロセス

・事業テーマ検討の流れは次の通り。
 ーチームに対して、最初に、新規事業の目的をはっきり共有・説明する。
 ー事業アイデアを出させる。
 ー次に、その中からビジネスモデル化できるものだけを選び出す。
 ーそれぞれについて、立ち上げからゴールまでのビジネススキームを作らせる。
 ーうまくスキーム化できないものは消す
 ービジネススキームは、静的な一枚絵のイメージではなく、ビジネスの立ち上がりから、成長軌道に乗せるまでの顧客や競合の動きから、調達先、提携先等の動きをすべて想像し勘案した結果、導きだされる動的なイメージ。
 ーここまで考えて、目的もゴールもぴったりで、ビジネスとして成立しうると納得するスキームが作れたら、ようやくそれが、新規事業の候補になり得る。

・新規事業を企画検討するときには「今存在しないそのビジネスを、既に見てきたように語れるレベルになるまで」考え尽すべき。
 ーこの作業には最低 3ヶ月、数百時間は必要である。
 ーチームは一つでなくてもよく、むしろ複数ある方が良い。

・各チームが検討したビジネススキームを比較検討し、もっとも良いものを、新規ビジネス候補として、ビジネスプランの策定に移る。

・ちなみに、新規事業テーマを社内公募で募るケースがあるが、この方法が功を奏すことは滅多にない。

 

3.ビジネスプランの策定

新規事業立ち上げプロセス 事業計画の作成

・この新規事業の目的は何で、目的を達成するためにこういうことを行うということを、メンバーはもちろん、社内の不特定の第三者が見ても、新ビジネスの概要がわかるよう文章でビジネスプラン(事業企画書)をまとめる。

・前述のビジネススキームの資料化とも言え、新ビジネスの細部までイメージが伝わるよう、できるだけ詳しく、わかりやすく描き上げる必要がある。
・資金と収益の検討のためにPL(損益計算書)を作成する。

・ビジネスプラン、P/Lのいずれも、どこまでの時間をかけることは可能だが、この段階では、いたずらに時間をかけるべきではない。
・検討すべき要素を網羅し、熟考したビジネススキームの可能性を説明できる内容であれば良い。それを事業化検討のテーブルにあげる。
・新規事業は、実際に動き出してからも、ビジネスプランは現実に合わせて何度も修正をかける必要があり、当初から将来を完璧に予想した完成形を作ることは不可能なので。

 

4.事業化の可否の決定

・複数のビジネスプランの中で、どれを選び実行に移すかは、評価者が決定する。
・評価者には本来、新規事業立上げを複数回経験のある人物が含まれることが望ましい。

・典型的な判断基準。
 ー自社が新規事業に進出する目的に合致しているか。
 ー自社に合うビジネスか。
 ーそのビジネスを開発するリソースが自社内外で調達できるか。
 ー失敗しても本業の屋台骨までは傾かないか。
 ー進出するマーケット自体が成長しているか。
 ー参入障壁が低過ぎないか。
 ー誇りを持ってできるビジネスか。

 

5.その他、成功確率の向上に向けて

新規事業の立ち上げプロセス

・企業内に新規事業立上げ責任者(経験者ではなく、責任者)が沢山いることは稀。下手をすると、新規事業や企業経験者は創業者以外にいないということも。
・つまり、既存事業でどんなに優秀でも、新規事業では未経験者(つまり素人)。

・会社組織である限り、組織の下位の人(平社員、マネージャー)は、上位の人(マネージャー、部長)の指示に従って動かざるを得ない。
・しかし、上位の人が新規事業の責任者経験がない場合、未経験者(つまり素人)が的確な指示や意思決定ができるはずがなく、パロディのような状態になり、限りなく失敗率100%に近づいてしまう。

新規事業開発に携わるメンバーの半分以上は、過去に新規事業経験あることが望ましいが、少なくとも、新規事業立上げ責任者は、過去に新規事業の責任者の経験があるべき
・万が一、そうでない体制で新規事業に望まざるを得ない場合は、新規事業開発チームに、起業・新規事業開発経験のある、新規事業開発の外部のプロ(アドバイザーやコンサル)を加える方が良い。
・どういう時期に何をすべきか指示を受けれれば、不必要な無駄や、間違った方向に進む確率を下げることができる。つまり作業レベルでの失敗確率を下げることができる。
・こと新規事業開発においては、新規事業の経験の有無が成功確率・失敗確率に与える影響が大きいため、外部のプロを利用するメリットは大きい。

・新規事業を既存事業と同じ組織で行うと、色々なデメリットが大きいため、別組織にして、社長直轄組織にするのが好ましい。

 

出典:新規事業立ち上げのプロセス(前編) | 東洋経済オンライン
出典:新規事業立ち上げのプロセス(後編) | 東洋経済オンライン

smasa0810.hatenablog.com