出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

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【企業内の新規事業開発】成功率を高めるための組織的観点

企業内の新規事業は、ほとんど失敗します。

企業内で新規事業は「事業的な観点」と「組織的な観点」があり、後者が原因で、新規事業開発の土俵にさえまともに立っていないケースも散見されます。

企業内の新規事業の、成功率を高めるために必要な組織的観点を、新規事業のプロの見地からまとめます。

(このブログエントリーは、新規事業創出の専門家 坂本氏のインタビュー内容をまとめたものです。坂本氏は複数回の起業経験のある新規事業創出のプロ)

(なお、この内容を気をつければ成功するのではなく、あくまで「組織的な観点」で成功率を高めるための内容です。「事業的な観点」は全く別物で、このブログエントリーでは一切 触れておりません。)

 

■新規事業立上げは、普通は失敗する

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新規事業の成功率は 10回やって1回成功するかどうか。失敗するのが普通なのが、新規事業開発

・新規事業開発が上手くいかないのは、「世の中/社内に新規事業を立上げた経験ある人が少ない」ということに尽きる。
 ー新規事業の担当者が孤軍奮闘。社内に相談しようにも、先輩も取締役も新規事業を立上げた経験などない場合が多い。
 ー大企業で優秀な人材が多くとも、起業経験者は創業社長だけ。
 ーあとは秩序を維持して働くのが得意な優秀な社員がいるのが通常の組織。
 ー何もないところにイチから秩序を作る能力と経験ある人はいないのが普通。

・新規事業の立上げが難しいのは、新規事業の特徴のため。
 ー新規事業はゼロから10をつくるとか、10売上げ事業が急にゼロになったりとか、不連続の上にあるのが大きな特徴の一つ。
 ー「失敗して当然で、今まで自分達が経験したことがないルールを持ち込まないと勝負にならない」のが新規事業の立上げ。

・同じ事業運営とはいえ、既存事業に必要なスキルやマインドセットとは、全く別のものが新規事業では要求される
 ープランニングやお金や人のリソース投入は、随時、状況に合わせて軌道修正が必要なのが新規事業の標準。
 ーそういう認識がないと、その新規事業立上げは現実離れしたものになってしまう。

 

■新規事業の成否を分ける、モチベーションとハングリー精神

新規事業の成功確率を高める組織論

・新規事業プロジェクトチームは発足したものの、メンバーから燃えるようなやる気が伝わってこないことがよくある。
・新規事業には重要な5つは、「人」「モノ」「カネ」と「モチベーション」と「ハングリー精神」。

・起業でも、企業内でも、新規事業に携わる限り誰だって、その事業を成功させたいに決まっている。しかし、新事業に対する執着の度合いや、「絶対に成功させてやる」という意欲や根性の強さは、与えられた条件や置かれた状況によってかなり差がある。
 ー起業家のモチベーションは異常に高い。
 ーベンチャー立上げ期は、強制されてるわけでなく、誰もが会社に泊まり込んで、何日も帰らないという光景は、ごく自然に見られる。
 ーハングリー精神は、何かから逃れたい、現状への不満、このままだと全て失ってしまうという、強烈な心理的圧力に後押しされている。

・一方、企業の新規事業メンバーに、こういうハングリーさや強烈なモチベーションを望むほうが無理である。
 ーサラリーマンは挑戦よりも安定や現状肯定に価値を感じる人がほとんど。
 ーそういう人が、突然ハングリーになって働くとは考えにくい。

・企業内で新規事業を立上げる場合、「人」「モノ」「カネ」に十分なリソースが用意できても、「ハングリー精神」と「モチベーション」は、スタートアップにかなり劣ると思ったほうが良い。

・(モチベーションが普通の)新規事業メンバー5人だとしたら、5人全員のモチベーションを高め、炎の集団に変えることができるかといえば、極めて難しいものがある。
 ー研修やインセンティブで、多少はモチベーションも上が流が、その効果は限定的。
 ーもともと起業家マインドを持たない人を、この新事業に人生の全てを懸けてもいいという「炎の集団」に変えることなど、できるはずがない。
 ー大企業には優秀な人材が多いが、そもそも就職先に大企業を選んだ時点でその人はハングリーでないし、イチから事業を起こして大きくするなどという仕事は、できればやりたくないのが普通。

 

【個人的な見解】
・「新規事業を作りたい」「新しいものを作りたい」と思っており(メンタリティ)、かつ、新規事業に向く人(素養)が良い。
・起業家レベルのハングリーさはなくとも、自身の人生に裏打ちされたモチベーションを持つため、新規事業で能力を発揮する可能性がある。
・そのような人は、評価を気にしない人もおり、社内ではちょっと変わった人だと見なされることが多め。冷や飯を食わされたり、不当な低評価を受けている場合も。

・社内で「優秀だ」と評される人は、新規事業の担当には向かない。既存事業のルールでうまくやる優秀さを備え、失敗に弱く、社内評価を気にする傾向にあるため。
・ただし、買収企業の経営経験(子会社経営ではなく)、海外の新市場参入など、イレギュラーな修羅場経験を積んだ優秀な人は、新規事業のような状況にも、素晴らしい適応力を見せることも多い。

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■新規事業の目的の明確化は極めて重要

・ 新規事業はプラン通りにいくことはなく、成功させるために「どうやったら勝てるのか」を不断に考え、日々仮説を修正し、ビジネススキームを立上げプロセスの中でより精度の高いものへ向上・修正させることが必須。
・成功のために「変化すること」を大きな前提とするのが、新規事業の具体的な立上げプロセス。

逆に「変えない」ことが、大きな前提条件になる要素があり、それが「新規事業の『目的』の規定」

「何のための新規事業なのか」ということを、最初にはっきりさせておくのが極めて大事
 ー目的によって、その新規事業の着地点や成功の意味合いは、当然変わる。
 ーそこに至る戦略なども、当然変わってくる。
 ー目的を明確にし、共有することに、それなりに時間をかけるべき。
 ー目的なき、新規事業は、悲劇を生むだけ。

・新規事業の目的が固定され、不変であればこそ、具体的な立上げプロセスにおいて、当初プランにない様々な打ち手も可能になってくる。
・最終的に「何を持って成功/失敗と判断するか」という基準も、当初の「目的」が基準となる。

・ただ、新規事業の目的が曖昧なことは、現実にはよくある。大問題だ

・よく見られるのが、「あれもこれも」という盛込み型の目的規定。
 ー耳障りのよい曖昧な言葉を羅列するばかりで、最終的に何が目的かさっぱりわからないものも、残念なことによく見受けられる。
 ー最重要なものは何かをきちんと議論し、優先順位をつけ、誰もがわかるシンプルで明確な言葉で、新規事業の目的を、文章として記載する必要がある。

・そのような「目的」は新規事業の出発点であり、プロジェクト進行中も常に参照すべき基準点となる。

・企業における新規事業の目的の典型的な例
 ー本業の重心移動
 ー本業の周辺を強化
 ー未来を担うビジネスにシフト
 ー他社をキャッチアップ
 ー衰退しつつある本業を補う
 ー自社の付加価値を増す
 ー新しい事業の種を発見する

新規事業を立上げる前に、その目的を明確にし、関わる人全員で十分に共有してもらいたい

 

■新規事業における、間違った常識

【新規事業検討では、社内の多くの意見は、取り入れない方が良い】

・「新規事業の検討では、社内に事業審査会のようなものを作り、なるべく多くの意見を取り入れる方が、より良い結論を導き出せるはずだ」という間違った常識。
新規事業にあたり、社内の多くの意見を取り入れるのは、害の方が多い

・多くの人から意見を聞くと、それらの人の経験の範囲・既存事業の物事の捉え方の中に収まるものしか出てこない。
新規事業の成功体験のない、(当該案件について思い入れの薄い)人たちから集めた多数の意見から、新しいビジネスが生まれるはずがない

・新規事業始める際、社内からよく集まる意見。
 ー市場がないから売れない
 ーはじめから黒字にしろ
 ー昔うまくいった方法を踏襲しろ
 ー前例がないからやめろ
 ー既存事業と一部競合するからやめろ
 ー自分の部門に都合が悪いからやめろ
こういう意見をまともに聞き、プランやコンセプトに反映したら、何のインパクトもない、わざわざ新しく始める価値のないものになることは間違いない。

 

【新規事業の意思決定は、できるだけ少ない人数で行うべき】

新規事業の意思決定にかかわる人間は、できるだけ少ないほうが良い
・理想的なのは、新規事業の事業化の判断においては、社長と担当役員(当該案件に関係の深いトップ層)、外部の新規事業経験の豊富な専門家などで構成される、人数を絞った組織体で十分な議論をつくす形。

・新規事業立上げ後の意思決定は、本社の社長(もしくはそれに代わる人)と、新規事業の実務担当者(新規事業会社の新社長)が同等の権限を持ち、一対一で話し合って決めるというシステムをとるべき
・それ以外の社員やスタッフの意見を参考にするのは構わないが、デシジョン・メイキングはあくまで二人だけで行う。

 

【新規事業担当は、必ず新規事業の専任で】

・新規事業を行なう組織を、既存事業部内で小規模にやる、担当は既存ビジネスと兼任でやる、という考え方は、新規事業を失敗に導く。

新規事業と既存事業とでは、担当者に求められるスキルや意識、ルールまでも全く異なる
・過去の延長上に明日のアクションある既存事業とは異なり、新規事業では過去にないものを考え続け、修正し続ける必要がある。両機能を、ひとつの組織内、ひとりの担当内に混在させることは不可能。

・新規事業を行なう組織は、事情が許せば、別会社化することが好ましい。
 ー別会社化し、物理的に枠を切り分けることで、新しいビジネスに向けて、関係者の意識を変えやすくなる。
 ー新会社のメンバーは当初は出向でも構わないが、専任とすることは極めて重要。
 ー出向期間中は、新規事業を毎日24時間考えざるを得ない状況にすべき。

 

【新規事業の評価は、既存事業の評価とは別物にする】

・立上げ後の新規事業を、既存事業の評価方法で評価してしまう間違いを犯す会社が非常に多い。

・既存事業では、計画どおりに成長・進捗しているかが一般的な評価軸となる。

・一方で新規事業は、生まれたばかりで、まだビジネスとして成り立つかどうかもわからない。むしろ、成立しない可能性のほうが高い。そのような新規事業の成長率や計画通りの進捗率など、評価しても意味がない。
・新規事業は既存事業とは違い、不連続に成長していくもの。売上や成長率を上げるより、事業として成功する確率を少しでも高くすることが大事であり、そのために全力を尽くすべき。

・評価は 売上のような "数字や量" ではなく、質的な部分を評価するが良い。
 ーきちんと設計され、ビジネスのポテンシャル評価が可能なテストマーケティング展開を行なうこと。
 ー初期導入顧客から実態調査と評価フィードバックをきちんと行なっているか。
 ー店舗ビジネスの場合は、担当者が実際に店に足を運び、改善を図れる仕組みを構築できているか。

 

後編:新規事業開発プロセスに続く

smasa0810.hatenablog.com

 

出典:なぜ、御社の新規事業はうまくいかないのか? | 東洋経済オンライン
出典:企業の新規事業を成功に導く考え方とは? | 東洋経済オンライン
出典:何のために新規事業を起こすのか? | 東洋経済オンライン
出典:新規事業における、『間違った常識』 | 東洋経済オンライン

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