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【大企業の新規事業】失敗確率を下げるために必要な組織的観点

新規事業は、ほとんど失敗します。
大企業の新規事業であれ、起業の新規事業であれ。

一般的に、新規事業の成功率は10%未満。新規事業立上げの試みは、10回中、少なくとも9回は失敗するのが一般的です。

企業内で新規事業をうまく立ち上げるために、「事業的な観点」と「組織的な観点」の両面がうまくいって初めて、成功する可能性が見え始めます。
大企業の新規事業 失敗確率を下げるために必要な組織的観点を、新規事業請負のプロの見地からまとめます。

(なお、この内容を気をつければ成功するのではなく、あくまで「組織的な観点」で失敗しないための内容です。「事業的な観点」は全く別物で、当ブログエントリーでは一切 触れておりません。)
(このブログエントリーは、新規事業創出の専門家 守屋氏のインタビュー内容をまとめたものです。守屋氏は新規事業に50回以上携わり、博報堂JAXAなどの顧問も務める新規事業創出のプロ)

 

■大企業の新規事業 成功例に共通する4つの視点

・大企業の新規事業立上げは、ベンチャーに比べて圧倒的な条件で勝負できる。普通に考えれば、ベンチャーに負けるはずがない。にも関わらず、現実には、新規事業でベンチャーに負けたり、新規事業そのものを創出できない問題が頻繁に発生する。
根本的な原因は「本業のしがらみ」にあるだろう。

大企業の新規事業 失敗確率を減らすために

①会社の視点
・「資金」「意思決定」「評価」の3つを本体から切り離す必要がある。
・これができない限り、大企業内の新規事業が、独自の発想やスピード感で走り続けることは難しい。会社が本業基準で判断しは、新規事業は絶対に伸びない。

②部署の視点
・新規事業を創出して市場に打って出る「外戦」の前に、大企業では「内戦」が発生しがち。外に打って出る前に、内で消耗し、本人も案件も力が尽きてしまう。
・そういう悲劇を避けるために、部署として事業開発だけでなく、「事業開発のための環境を作る」という役割も担い、支援機能と広報機能を強化する必要がある。

③担当の視点
・誰がどう臨むかが、新規事業の成否を分ける。
・業務として取り組むのでなく、新規事業への意志を持つ人材を充てる必要がある。
・さらに、社内だけでなく、外部の力をどう巻き込んでいくかも大切。

④事業の視点
・新規事業は、新たな創業に挑戦するということ。何を持って成功とするか、また撤退ラインをどこに引くか。
・ポジティブに勝機を見出していくという「新規事業向きの価値観」を醸成していく上でも重要なプロセス。

・この4つの視点はすべて「顧客を見て事業開発を進められるかどうか」という点に集約する。

出典:https://nomad-journal.jp/archives/1704

 

■大企業の新規事業 ①会社の視点

大企業にて新規事業を立ち上げようとする際、「資金」「意思決定」「評価」の3つを本体から切り離す必要がある
新規事業で失敗したものは、この3点が明確に失敗している企業が多い。

大企業の新規事業 失敗しないために資金・意思決定を切り離す

「資金」の切り離し
・新規事業の資金は、既存の事業を分けておくべき。新規事業のPLは、既存事業のPLから分けておく。
・新規事業と既存の事業とでは、売上も利益の出し方も全く異なるはず。だから分けておくべき。
・「単年度会計」で判断しない。本業のように単年度で見てしまったら、その時点でもううまくいかない。
・多くの場合「新規事業と本体の資金を同じ財布から出す」という過ちを犯してしまう。この過ちを犯すと、新規事業が、本体の業績の影響を過分に受けてしまう、という悪影響がある。

「意思決定」の切り離し
・新規事業の意思決定が、親会社の意思決定に引っ張られてしまっては、新規事業は全く進まない。
・新規事業は、既存の事業とは異なるわけで、本業基準で物事を判断していくのは無理がある。
・組織規模によるが、意思決定の場に最低限必要なのは2人だけ。担当役員と担当責任者、「付議する側」と「承認する側」だけ。新しいことをしているので、意志決定の体制はミニマムで進め、迅速に動けるようにすべき。
・組織内に稟議書を回している時点でアウト。会議も出席者を絞るべき。
・四半期の本社への報告(事業検討会議的な)は、止めるほうがよい。新規事業をやったことがない人が、やったことがないことを、報告資料だけ見て、それらしい判断しようとする、というコントのようなことが起こる。
・厳密なチェック機能は、新規事業ではメリットはない。確かに致命傷を負う訳にはいかないものの、しかし、課題ばかり指摘してブレーキばかり踏んでいたら前には進まない。より大事なことは、課題を指摘する役割ではなく、勝機を見出し、勝ち戦へのシナリオに導く役割。

「評価」の切り離し
・新規事業と本業ビジネスとでは、評価制度も人事制度もまったくの別物にすべき。
・大企業はの評価は、往々にして減点主義で運用されているが、その考えを新規事業に当てはめてしまうと、失敗確率が高い新規事業に誰も手を挙げないという状況につながってしまう。
・本気で新規事業を考えているならば、「手を挙げた時点で昇級させる」くらいの評価で臨むべき。
・誰もやったことないことに挑戦するわけだから、新規事業なんて失敗するのは当たり前。その現実に対して、大企業の従来の人事評価基準を当てはめると、「勇気を出して新規事業に取り組んだ人間が、低い評価で割を食う」という風になる。

「資金」「意思決定」「評価」が本業から切り離せない場合
・全て切り離さなければ、絶対に失敗する、とまでは言わない。
・しかし、もしも切り離せないならば、それは「そもそも構造的に苦しい」ことが明確になっており、まず失敗すると理解が必要。
・ただでさえ失敗確率が高い新規事業立上げが、構造的に無理なことをして、まず失敗するやり方を選んでいると、きちんと自覚しておかなければならない。

出典:https://nomad-journal.jp/archives/1706

ちなみに、これを最初から理解している会社はいいが、理解してない会社に説明しても、最初は聞く耳持ってもらえない。同じことを1年くらいずっと言い続けると、そうかも、とちょっとだけ変わる大企業が、たまに出現する。

 

■大企業の新規事業 ②部署の視点

・企業内の新規事業では、本来なら、顧客や競合について作戦を練るべき。しかし、延々と社内の傾向や対策について作戦を練っている人がいる。
・少しでも本業に競合する可能性あるのはNGとか、新規事業のはずなのに未経験な分野は難しい、とか(苦笑)
・このような、わけのわからないことを防ぐためには、「資金」「意思決定」「評価」の3つの切り離しが必要。

・新規事業立上げは、それ自体が非常に難易度の高い取り組み。なのに、同じ人物が社内配慮や既存部署調整に追われていては、成功する確率はほぼゼロになる。
・それを防ぐべく、事業開発をする部署は、「事業を開発する」本流の役割に加え、「事業開発のための環境を作る」本流を支える役割も担う。それが、支援機能と広報機能を強化すること。

必要な2つの役割
・「事業開発する」役割に加え、「事業開発のための環境を作る」役割に、注意を払う必要がある。
・「事業開発のための環境を作る」役割は、社内調整、根回し、社内の利害対立、足の引っ張り合い、弱い者いじめまで。多々発生する後ろ向きな議論・事業の推進に余計なものを払いのける役割が必要。
・また真逆の話として、大企業の強みを生かす役割も大事。グループ内外に散在する必要リソースをかき集めてくる役割。最適なリソース調達を引き受ける役割が必要。

必要な2つの機能
・「支援機能」と「広報機能」が必要。
・「支援機能」は、事業立上げのための直接的・間接的なあらゆる支援のこと。上述の通り、余計なものを払いのける、必要をかき集めるなど、事業立上げの直接的支援に加え、事業案候補を集める、集めた事業案を選別する、起業のノウハウを蓄積するなど、事業開発の組織全体に必要なことも含む。
・「広報機能」は、取組みを社内に知らしめる機能。大企業では、多部署が何をしてるのか見えないもので、特に新規事業は見えない存在。「単に知らない」ではなく、「あそこは何をやっているんだ?」という、不満を含む印象になってしまいがち。適時適切に社内広報することが必要。

・「事業開発のための環境を作る」役割(支援機能と広報機能)を役割分担しないまま進めると、成り行きの事業開発になってしまい、事業開発ノウハウが溜まらず、孤軍奮闘した事業開発担当者の中だけに留まってしまう。

出典:https://nomad-journal.jp/archives/1712

 

■大企業の新規事業 ③担当の視点

・新規事業の企画を進める間、給料日は「給料が振り込まれる日」だと思っているサラリーマンと、給料日は「給料を払う日」であり売上を作らなければ倒産する独立起業家では、「覚悟ベース」で全く違う。この差はそのまま、事業にかける意思や切迫度合いの違いとして表れる。
・この覚悟の大きさが、事業の生死を分ける決定的な違いにもなる。そのため、サラリーマンも極端なまでのこだわりを持つ必要が大いにある。

・大企業によく見られるような「業務」と割り切っている新規事業担当者を配置しては、他にいかなるリソースがあろうと、その新事業は間違いなく朽ち果てていくだけ。
・新規事業に携わる人たち全員が、オーナーシップを持っていなければならない。新規事業を誰に担当させるかは、新規事業そのものの成功のためにも、経営者人材を育てるためにも、経営レベルで重要な判断となる。

・新規事業には、意思を持つ社内のトップ人材・一軍を投入すること。
・一軍の投入は、「この新規事業を絶対に成功させるんだ」という経営者の強い意志を、社内に浸透させる上でも効果的。 かつ、新規事業に対する意志を持った人材を選びたい。

・「自社人材で新規事業を回すことがベスト」と考える企業は多いが、弊害もある。自社人材だけでやると、新たな市場にチャレンジするはずの新規事業が、すべて本業のルールに基づいて走り始めてしまう傾向がある。
・大企業の社員は、ほとんどの人材は本業経験しかなく、新規事業立上げ経験者は少ない。創業者以外は、新規事業経験者がほぼいない場合が少なくない。いたとしても、新規事業経験者ではなく、新サービス・新商品の経験者というレベルで全く違う。
・社外には、新規事業の経験者はたくさんいる。それを自社のために活用し、「経験」や「視点」、そして「熱量」をうまく獲り込み、どういう戦略設計を描くかが、これからの企業競争力の源泉になる。

出典:https://nomad-journal.jp/archives/1716

 

■大企業の新規事業 ④事業の視点 

大企業の新規事業 担当者は大事

・創ろうとする新規事業の、撤退ルールと成功ルールを決めて、リビングデットを避けイグジットを実行する。
・新規事業を始める際は、「撤退ルール」を明確に定めておきたい。これはつまり、会社の投資ルールを明確にするということでもある。
(ただし、過去10年以内にあまり新規事業に取り組んでいない場合、妥当な撤退ルールの設定がまともにできない場合も多い。妥当さの基準が、社内に経験が蓄積されていないため。)
・コンセプト設定などの事業企画 2ヶ月、事業化の検証 6ヶ月、事業立上げと参入してから2年間が、典型的な新規事業の工程管理。その期間内に、各工程で成果が出なければ、事業の見直しや撤退を考える。
・新規事業は考えた通りには進まない。

出典:https://nomad-journal.jp/archives/1718