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【シリアル・イノベーター 要約】企業で新事業/新製品を繰り返し作り出すシリアル・イノベーターとは

■シリアル・イノベーターとは

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・組織内で「重要な課題を解決するアイデアを思いつき、その実現に欠かせない新技術を開発し、企業内の煩雑な手続きを突破し、画期的な製品やサービスとして市場に送り出す。この過程を何度も繰り返せる人材
・新製品を継続的に生み出し続けることができれば、それは強力な成長の源となる。シリアル・イノベーターは企業を長期に渡って繁栄させる存在。

シリアル・イノベーターの特性を有する人材は、300人中1人ほど。非常に稀有な存在。

・シリアル・イノベーターの新製品開発プロセスは非直線的。直線的に段階を追うのではなく、各ステージを反復しながら非直線的なアプローチで進められる
・シリアルイノベーターは、フロントエンドで開発に携わり、プロジェクトの承認のために動き、多くの場合、実施段階にも関わる。彼らは顧客が製品をどう使うかまで、深く気にかける。

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■シリアル・イノベーターにが備える主な特性

●モチベーション
・業績評価や金銭的報酬ではなく、顧客の問題解決が大きな動機となる。
・未解決な課題に取り組みたい。

●パーソナリティ
・好奇心が強く、創造的。
・システム思考ができる。
・曖昧さに対する耐性があり、物事を成し遂げる粘り強さがある。

パースペクティブ(ものの見方)
・技術は目的のための手段とみなす。
・独自の視点で、価値を創造する事業に携わるという意識が強い。
・共に働く人々のそれぞれ異なる能力を大切にする。

●構え(Preparation)
・学ぶべきことは、学ぶべきときに必要なだけ学ぶ、機動的な学習者。
・仕事をしながら学び続け、知識領域を広げる。

(仮にアイデアが豊富で創造的であっても、持久力がなく、協力者の能力を引き出す力もなければ、製品やサービスを完成させることはできない)

 

■シリアル・イノベーターとマネジメント

・一般に成熟企業では、コスト削減、予測、安定、信頼性、構造化などの業務が盛んで、最適化やプロセス効率化の文化が発達している。各部門マネージャーは、担当業務を効率化せよ、目標数字を達成せよとなっている。
・対照的に、イノベーターフレンドリーな文化の特徴は、利益の増大、不確実性、流動性、機敏さなど。
・組織内でこの2つの文化の間で緊張が発生するのは、最適化の文化が支配的となり、イノベーターフレンドリーな文化を駆逐しようするとき。

マネジメント層にとって一番大切なのは、セレンディピティ(偶然の産物)を期待しつつ、不確実性を受け入れること

・多くの米国企業のイノベーション投資配分は、段階的イノベに95%、段階的とブレイクスルーの中間に5%、ブレイクスルーイノベに0となっている。
・理想的な配分は同じ順で60%、30%、10%程度であろう。収益あげる既存事業から、将来に役立つかもしれない活動に財源を移すことは、経営者にとっては英断となる。

・多くの企業では、新製品が最初の段階でヒットしない諦めるが、イノベーティブな企業は簡単に引き下がらない。新しいコンセプトを実現するため、商品を洗練させ続け、工夫を重ねる。
・自社のイノベーターが作り上げたコンセプトを保ち、支援し、成長するまで見守るのか。それとも気短に早々と見限るか。ここが大きな岐路となる。

 

■ブレイクスルーイノベーションは、個人から生まれる現実

ブレイクスルーイノベーションは、核となるアイデアは圧倒的に個人から生まれる
・企業は、先にチームを作ってアイデアを出そうとする。しかしうまくいかない。
・対してシリアル・イノベーターは、ビジョンある人が、自分のアイデアを製品として実現するために、人々を誘ってチームを作る。アイデアがあって、チームを作る。

・マネジメント層は、シリアルイノベーターに、ある程度遊ばせること。いろいろ試し、探ってみるためのリソースを与え、日常的な業務を強制しないこと。

・マネジメント層は、不確実性を扱えるようになるべきだが、実際には、ほとんどのマネージャーはこれができない。イノベーターは希有な存在だが、イノベーターにとってよいマネージャーはさらに希有な存在。
・マネジャーは、ビジネスを効率化することにフォーカスしすぎる傾向がある。
イノベーションが研究開発や投資によって実行できると考え、愚直なプロセスの持つ意味に目を向けようとしない。

イノベーションの起点はイノベーターとなる人物である。しかし、企業の多くの人が、経営学的な発想(人に差はないという考え方で、どんな人材でも有効に機能する前提でモデルや理論を打ち立てる)であることが、大きな問題。
仕組み化が難しいのに、仕組み化を志向する人が多い、という問題

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■シリアル・イノベーターの抜擢と環境整備

イノベーションは人が起点となって起こるものであり、仕組み化は効果が薄いという認識を、まず持つ必要ある

1:採用と抜擢
・自己完結性の高い人はイノベーター候補になりうる
・シリアル・イノベーターは、上司・同僚などからの毀誉褒貶にまるで揺るがない傾向がある。
・それよりも自分の探求心を重視し、結果的に画期的なアイデアを発案したり、イノベーションの困難をかいくぐる粘り強さが生まれる。
・アマチュアは専門家の「型」を破り、斬新な発想ができる。常識に囚われない方法でその発想を形にできる。重要なのは専門性ではなく、理解力や探求力、科学的アプローチのリテラシー
(ただ、一般的な採用基準でいえば、自己完結性の高い人はあまり企業受けしない。独立心が強すぎる、トラブルメーカーになりうると見なされがち。日本企業は協調性やコミュニケーション力などを重視する傾向。)

2:最初のイノベーション環境を整える
・失敗の多い人ほど評価して、経験から学ぶ姿勢を培う。
・イノベーター候補は1回やって勘所を身につければ、後は自発的に動く。1回目のイノベーションをサポートすることが大事。
・人材 技術 資金 設備など社内外リソースにアクセスできる環境を整え、失敗しても良いと安心感を与えること。
・昔の職場はもっと大らかで、失敗が許される気風・は経験から学ぶという暗黙の了解があり、みんなで失敗を共有できた。それが最近は根絶やしになっている感じがし、それをどうするかは深刻な問題。

 

出典記事
イノベーターをマネジメントするには不確実性を受け入れること | WORKSIGHT
開発者に問われる変革のリーダーシップ  | WORKSIGHT

 

私見】シリアル・イノベーター論の問題と現実への適応案

シリアルイノベーター理論の現実

シリアル・イノベーターは、その能力をフル活用することで、新製品を繰り返し生み出し、企業強力な成長の源となる可能性がある。この点に異論はない。

しかし「シリアル・イノベーターの特性を有する人材は、300人中1人ほど」しかおらず、そのような"超" 激レア人材のために、大企業が文化や組織運営・評価制度を変革するのは、非現実的でしょう。

そのような特性の人材を採用しようにも、シリアル・アントレプレナーは人事部門が"嫌う" 特性を持ちます。仮に新卒採用できたとしても、活躍するのは少なくとも10年は先です。
すごい素養と経験を持つ人を中途採用できたとしても、自社の組織内のことを知らず、各部門の人たちとの信頼関係なくして、活躍できることはないでしょう。
シリアル・イノベーターを外から採用するのも、非現実的ではないでしょうか。

シリアル・イノベーターを軸とした新事業・新製品開発を、会社として意図的に行うのはかなり困難なのが、シリアル・イノベーター論の問題です。

 

■"非直線的な新製品開発プロセス" は有効

しかし一方で、シリアル・イノベーターの非直線的な新製品開発プロセスは有効でしょう。直線的に段階を追うのではなく、各ステージを反復しながら非直線的なアプローチで進められる新製品開発・新事業開発

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新規事業開発の管理方法として、ステージゲートプロセスを採用する企業が多いそうですが、私はステージゲートプロセスに懐疑的です。

ステージゲート"プロセス" の最大の問題点は、不確実性の高いことに取り組む新規事業なのに、さも着実に進む "プロセス" のように勘違いしてしまうこと。意思決定の仕方が、無意識のうちに既存事業と同じようになってしまい、間違って確実性を求めてしまう問題。

 

■非直線的な新製品開発プロセスを、技術とビジネスのタッグで進める

新規事業開発は、マーケットイン(市場や顧客主導)型とプロダクトアウト(技術主導)型があり、前者は市場の声が研究者や開発者に届きにくく、後者は顧客ニーズや市場動向とフィットしづらい欠点があります。

(書籍「シリアル・イノベーター」では、これを打開する方法として、シリアル・イノベーター主導の新規事業開発を提唱しますが、組織内に300人に1人しかおらず、非現実的なのは上述の通り)

この欠点を打開し、新規事業を生む仕組みとして、"常設の" 新規事業開発部門を設置し、研究開発部門と密なタッグを組んで、新規事業の開発にあたるのが、現実的な方策ではないでしょうか。
重要なポイントは、研究開発部門と同じように、新規事業開発部門を"常設"すること。中長期を見据えた活動を、技術の観点(研究開発部門)と顧客や市場の観点(新規事業部門)で連動して行います。

研究開発部門と常設新規事業部門の連動

  

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