『心理学的経営』個をあるがままに生かす のメモ
・心理学経営とは、人間を人間としてあるがままに捉えるという現実認識が出発点。会社組織は、効率性と合理性を優先させるが、そもそも人間の行動は、組織活動においてムダとされる感情や情緒を持つところにその本質がある。 組織を動かすのに、合理性の原則や効率の論理のみにとらわれていると、一人一人の個性などは葬り去られてしまう。 心理学的経営では「感情」こそ、人間の行動に重大な影響を及ぼす要因として捉える。
・人間は矛盾を内在しており、マクレガーのXY理論のように綺麗に分かれるものではない。ある一人を取っても高い目標を設定して果敢に取り組むときがあれば、一方で煩わしいことは避けて楽をしようとする怠け者の自分を見出すときもある。本音と建前もしかりで、大事なのは本音の世界から目をそらさずに事実をありのままに捉え、人間が現実にどう行動しているかを知ること。
■モチベーションマネジメント
・積極的な満足感は仕事から生まれる。
・ハーズバーグの動機付け要因と衛生要因
ー動機付け:何かを成し遂げる達成感、自分の仕事が認められた時、自分の裁量で自由にチャレンジした時、責任の重い仕事を任された時、仕事を通して成長を実感できた時など。
ー不満足:作業条件、給与、会社の制度、上司の監督技術など。
・給与条件の改善、福利厚生の整備、オフィス環境の整備は、従業員を仕事に対して積極的に動機づけるものにならない。しかしモラルの底辺を支える。
・満たされることで仕事への内的動機付けが高まる職務の5要素
1スキルの多様性
必要な能力技能が多様なほど、自分の仕事は有意義で価値があり、重要だと感じる。
2タスクの全体間
大きな仕事の一部より、初めから終わりまで一貫して携わる仕事の方が、仕事のアイデンティティがはっきり自覚でき、内的動機付けが高まる。
3仕事の有意義性
自分の仕事はどれほど意味があるか。周囲にとって意味があり、組織にとって必要と感じられると、その意味を自覚でき、自分の仕事に価値があり重要だと感じる。
4仕事の自立性
自分の仕事をどれだけ自分の裁量で進められるかという点。自由裁量が大きいほど、自分の仕事の結果に責任を感じることになり、内的な動機付けが高まる。
5フィードバック
自分の仕事の成果を確かめることができるか否か。自分の仕事がどの程度うまくいっているか、フィードバックがある状態であれば、内的な動機付けにプラスに働く。
・若者とモチベートする3つの心理的条件
1自己有用性
仕事を通して自分の効力感を体感できること。これほど自分の成長欲求を満たすものはない。
2自己決定性
自分で考え、自分で計画し、自分でチェックする。自由裁量の幅が大きいのに加え、自己責任を伴うことが大事である。
3社会的承認性
とくに日本では、職場の仲間や上司との人間関係が重要な動機付け要因として意味を持つ。自分の努力や苦労、成果が周囲に理解されて認められて、社会的承認を実感でき、心理的な充足と情緒的な安定が得られる。
・目標の持つ意味
・目標は具体的で明確なほど、エネルギーを方向づける力になりやすい。
・易しい目標より難しい目標の方がモチベーションにとって効果的と言えそう。
・個人にとって、成否確率が五分五分くらいの難易度がモチベーションに効果的。
・しかしイノベーションは、不可能な目標への挑戦なしには生まれない。
・目標は提示されても、途中で放置されたままだと、目標効果は徐々に低減する。必要なタイミングでの確認・フィードバック、その時点への目標への見通しの確認が必要。
■小集団と人間関係
ホーソン効果、集団規範が行動を決める。自律的小集団、エンカウンターグループ
集団の中で相互に個が認識され、帰属の欲求を満たしながら、自らの存在基盤を確認し、時に自尊の欲求にまで充足を期待できるのは「小集団」をおいてはない。
■組織の活性化
組織の中で人々が実際に暗黙のうちに認め、受け入れている前提を生み出す土壌が、風土と呼ばれるもの。風土は組織の無意識の層に当たるが、人間の本質的な行動に影響を及ぼしており、決して見過ごしてはならない重大な部分である。
■リーダーシップと管理能力
■適正と人事
■個性かを求めて
心理学的経営の目指すところは、人間をあるがままに捉えるところから出発し、人間を大事にすると経営ということになろう。人間を大事にするというのは、一人一人の人間を尊重する、「個性」を尊重するという考えにたどり着く。ただこれは一筋縄で解決に至らない究極・永遠のテーマであると認識せねばならない。