出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

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【イノベーション5つの原則 要約】顧客が欲するものの生み出し方

世界最高峰の研究機関SRIが生み出した、イノベーションの実践理論を要約します。

原著の副題「The Five Disciplines for Creating What Customers Want」の通り、"顧客が欲するものの生み出し方" 5つの原則です。決して "技術革新" などではありません。

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(原著の出版は2006年であり、事例にはインターネットやモバイルなど、21世紀に起こっていることがほとんどありません。時代背景が少なくとも15年以上異なることを考慮して、読み解く必要があります。)

 

■はじめに

イノベーションを生み出す5つの原則。
①顧客と市場にとって重要なニーズに取り組む
②有用なッールを活用し、顧客価値を迅速に生み出す
イノベーションを率いる「チャンピオン」となって、価値創出プロセスを推進する
④多様な分野の専門家を集めた混成チームによって、天才に負けない集合知を実現する
⑤チームの方向性を定め、価値の高いイノベーションを体系的に生み出す

 

■何年にもわたる統合プロセスを駆動させる「ストーリー」
・統合プロセスを駆動するのは「ストーリー」。イノベーションのカギを握るのは多様性」ではない。その後にくる「統合」にこそ、イノベーション·マネジメントの本質がある。
・アイデア創出を受けて市場化し、市場で成果を出すまで何年もの時間をかけて、多くの有能な人材が助け合いながら働かなければならない。ランダムに生まれるアイデアを、市場での具体的な成果に向けて統合することこそ、イノベーションに突きつけられた課題である。

イノベーションの責任者は、客観的な物差しのない世界で、自分なりの基準で物事を判断するセンスが求められ、つまりは直感や好みに根ざすが、それだけでは人々は動かないし、プロセスを駆動できない。
・そこで不可欠になるのが、未来の顧客価値を想定した「ストーリー」。責任者は、アイデアが様々な活動と組み合わさり、それがどのように消費者に受け入れられ、世の中を変えるに至るのかというストーリーを構想する。このストーリーが、イノベーションに関わる全ての人々の共有される事によって、統合のプロセスが動き出す。

 

イノベーションとはアイデアを顧客価値に変換すること。顧客に焦点を当てるべき
・何がイノベーションを成功に導くのか、多くの人が誤解をしている。イノペーションというのは「技術的に優れたガジェットの発明」などではない。「発明」だけでは不十分。「発明を世に出すこと」に成功して初めて、イノベーションは成立する。
・言い方を換えれば、イノベーションとは「アイデアを顧客価値に変換すること」であり、それが結果として、継続的な利益を企業にもたらすものである。
・「改善」「改良」レベルのイノベーションもあれば、物事を一気に様変わりさせてしまうようなイノベーションもある。いずれにせよ、「市場に新しい顧客価値をもたらすこと」こそが「イノベーション」である。

・新製品や新サービスの80-90%が1年ほどで失敗に至っている。これらの失敗の原因は、技術やリソースの問題ではない。失敗の主因は、顧客の欲しいものを提供できなかったから。企業が、顧客ニーズを把握できていなかったのだ。
・顧客に焦点を定めた上で、顧客価値を把握するための言語とツールを共有し、価値を生み出すための体系的なプロセスを確立した企業は、顧客価値の創出に成功し、大きな成果を出す。「イノベーション5つの原則」は、こうした望ましい状態をチームや企業で実現するための方法論。

 

イノベーションの本質を知る

イノベーションとは
イノベーションとは、新たな顧客価値を創り出し、市場に送り届けるプロセスである。
・何かを発明したとしても、顧客にとって新たな価値を創出し、実際の市場に導入しなければイノベーションとは言えない。
イノベーションが成功するには、新しい顧客価値の創出が実現可能であり、継続的に利益が計上できることが必要だ。画期的な新製品の考案者は大勢いる。だが、市場導入に成功した人は少ない。
・影響度の大小にかかわらず、イノベーションは常に、新たな顧客価値を生み出している。

■価値提案(NABC)の重要性
イノベーションの価値提案は、この4点を簡単な言葉で説明できる必要がある。
①市場のニーズは何か?(Need)
②そのニーズに応えるために、どうアプローチするか? (Approach)
③そのアプローチの費用対効果は? (Benefits per cost)
④その費用対効果は競合と比べてどうか? (Competiton)

イノベーション5つの原則
イノベーション創出の際、いつも通りは通用しない。顧客価値にフォーカスするとき、次のような重要な問いへの答えを見出す必要がある。
・顧客は誰か?
・顧客にどのような価値を提供できるか?
・迅速かつ効率的、体系的に新しい顧客価値を創り出すために、どういう方法をとるべきか?

この重要な問いへの具体的な考え方が、イノベーション5つの原則
①真の顧客ニーズ:自分がおもしろいと感じることだけでなく、顧客と市場にとって重要な ニーズに取り組む
②価値創出:価値創出のツールを活用して、顧客価値を迅速に生み出す
③チャンピオンになる:「イノベーションを率いるチャンピオン」になって、価値創出プロセスを推進する
イノベーションチームの構築:様々な分野の専門家を集めた混成チームにより、天才レベルの集合知を実現する
⑤組織の方向づけ: あなたのチームを組織全体の方向性に合致させ、価値の高いイノベーションを体系的に生み出す

成功するには、5つすべてを満たす必要があり、それぞれに相乗効果がある。つまり「成功=ニーズ × 価値創造 × チャンピオン × チーム × 組織化」となる。

 

イノベーションか、死か

イノベーションとは、新しいコンセプトが顧客価値と企業価値の双方を徐々に高め、新しい顧客価値(新製品・サービス)として市場に送り出すプロセス。市場投入に至るまでに必要なのが価値提案であり、次の基本的質問に答えることで明確になる。
①まだ満たされていない重要な顧客ニーズ、市場ニーズは何か ? 
②そのニーズに応えるためにどのようなアプローチをとるか?
③そのアプローチの費用対効果は?
④その費用対効果が競合より優位なのはなぜか?

・価値提案は「新しいコンセプト創出」から「新製品・サービスの市場投入」へと向かうあらゆる段階で役に立つ。それは新たな顧客価値の創出に向けた事業活動の核となる。
・「技術主導型」や「結果は後からついてくる」的アプローチは、単に新製品を開発するものであり、顧客ニーズに対する理解が欠如しているため、こうした手法がうまくいくことは滅多にない。
・素晴らしい技術的発明を数多く成し遂げたが、最終的に顧客ニーズを満たせなかった失敗事例は、顧客ニーズの軽視と非体系的なイノベーション創出手法が、失敗と企業の崩壊を招いた。

■新製品・新サービスイノベーションの起こり方
・魅力的で新しい顧客価値を体系的に創出する方法は、"市場・顧客ニーズ”と"新しいアイデア"の源に相互作用を起こすこと。
・常に市場と接して "満たされていない重要な顧客ニーズ・市場ニーズ" を把握し、その市場環境・競争環境への理解を深めることが必要で、同時に新技術や新ビジネスの "新しいアイデアの源" にも継続的に接して、何が可能かを見極め、新しいイノベーションのコンセプトを開発するのだ。
・新しい顧客価値は、種々様々な方法から誕生する。たとえば、革新的な技術やスマートな製品デザインが、新製品やサービスの元になることもある。だが、イノベーションの多くは、新しいビジネスモデルから生まれている。

■指数関数的な進化を生み出す、4つの必要条件
・指数関数的な進化を生み出すために、次の4点が大切となる。
1重要度の高い顧客ニーズ・市場ニーズに取り組む。
2新しいアイデアを多数収集し、段階ごとに最大限の改良を施す。
3責任者「チャンピョン」とチームによる循環的な増殖プロセス。
4予算や人員など適切なリソースを調達して、プロセスを推進する。

 

■原則1:真の顧客ニーズ

■おもしろさとニーズ
・「イノベーション五つの原則」の1つ目「自分がおもしろいと感じることだけでなく、顧客と市場にとって重要な ニーズ」に取り組む。
・市場で長く利益を生み出し続けられるようなイノベ ーションにつなげるためには、重要度の高い顧客ニーズと市場ニーズに焦点をあてることが不可欠。

・未解決の課題は巻にあふれている。その中で、満たされていない顧客と市場のニーズを適切なタイミングで選び出すことが、全ての起点となる。
・その上で、そのコンセプトが実現可能か、必要インフラは整備されているか、必要なリソースが確保できるか、が問われる。

■重要度の高いニーズに取り組む
・新しい市場機会を開拓する際に留意すべき重要性は、顧客と市場のニーズに照準を合わせることの他に、あと2つ基準がある。市場の進化に飲み込まれないものであること、実現可能であることだ。
イノベーションは、製品やサービスの他に、インフラや必要な技術、リソースが揃って初めて可能になる。いつの時代でも、チャンスやアイデアはあっても実現しなかったアイデアは数多く存在する。

・重要プロジェクトの選別は、次の3点を考慮する。
①そのプロジェクトは、顧客に明らかな価値をもたらすものか?
②そのプロジェクトは、自社の目標と合致しているか?
③本気でそのプロジェクトに取り組みたいと思っているか?
・プロジェクトや発明に本気で取り組むつもりがなければ、イノベーションは生み出せない。天才的ひらめきを得ることは簡単だ。むしろ何年も全力で取り組み、イノベーションを実現させることのほうが格段に難しい。

■顧客価値を決めるのは「あなた」ではなく「顧客」である
・顧客価値を考えるとき、胸に刻むべき教訓は、価値を決めるのは「あなた」ではなく「顧客」だということ。
・顧客があなたの製品やサービスにお金を払うかどうかで、あなたの成功が決まる。顧客の行動によって、あなたが価値を創出しているかどうかわかる。

・顧客に、ニーズが満たされているかどうかを聞きもせず、顧客のニーズを誤解している人は多い。
・顧客を特定し、顧客のニーズを捉えることが、顧客価値創出の第一歩であり、最も重要なステップである。

■あなたの唯一の仕事は、顧客価値の創出
・企業は様々な価値を提供しようとするが、まず顧客価値が最重要。顧客ニーズを理解し、顧客にとって魅力的なプロダクトを開発しない限り、他の価値(企業価値、株主価値、従業員価値、社会価値)は生み出しようがない。
・CEOが株主価値を高めることばかり話しても、どうすれば良いかを社員に伝えたことにならない。CEOはじめ従業員全員が、顧客に、そして顧客ニーズに注力すべき。
・ただし、顧客価値の高いプロダクトを作っても、そのプロダクトが損失を出し続けては成り立たない。新製品発売時は、顧客にとっての価値と、自社にとっての価値が、少なくともなければならない。

 

■原則2:価値創出

■価値提案の「NABC」
イノベーションの目指すところは、競合や既存手段より明らかに優れた顧客価値を創り出し、市場に届けることにある。
・新たな顧客価値を構築するには、次の4つの基本的ポイントに答える価値提案からスタートする必要がある。
 ーN:重要な顧客と市場のニーズ(Needs)や課題はどんなものか?
 ーA:そのニーズに応えるための独自のアプローチ(Approach)は?
 ーB:そのアプローチの費用対効果(Benefits per costs)はどうなのか?
 ーC:費用対効果は、競合(Competition)や代替品と比べてどのくらい優れているか?

・大切なのは4つ全て網羅することであり、目指すべきは、競合や代替品より優れた顧客価値ー費用対効果ーを提供する独自アプローチをとること。
イノベーション検討の初めのうちは、4つのポイントのどれもよくわからず、4つは互いに作用し合っている。他の人の意見や顧客の声を得ながら何度も見直すという「反復サイクル」を繰り返して、説得力ある価値提案を完成させなければならない。

■担当者と経営陣の目線を揃える
・価値提案の構築が難しい理由の一つは、誰もが自分の「アプローチ」を話したがり、他の要素を置き去りにしてしまうこと。「アプローチ」ばかりで、「顧客とニーズ」「費用対効果」「競合や代替品」はほぼ検討されないのが、よくある失敗例。誰もが、常にアプローチで頭がいっぱいだ。
・そうではなく、価値提案の開発に着手する際、重視すべきは「顧客とニーズ」「競合や代替品」である。まず顧客と競合の状況、つまり市場のエコシステムに対する理解が最初にあるべき。その後に新しいアプローチ構築・練り直しによって、競合に対して優位な費用対効果がもたらされる。

イノベーションのことになると、担当者と上層部は、文字通り言葉が通じなくなる。
・スタッフは「アプローチ」で頭がいっぱいだ。ニーズや費用対効果、競合は眼中にない。
・しかし、上層部がまず関心を示すのは「顧客とニーズ」「競合」である。未開拓の顧客ニーズを満たし、競合に競り勝ちたいのだ。ニーズと競合さえ理解できれば、あとは担当者が、アプローチや費用対効果を何とかしてくれるものと考えている。
・これを解決するには、「顧客とニーズ」「競合」→「アプローチ「費用対効果」の顧客価値という統一言語を共有すること。

■価値提案は複数が必要とされる

・価値提案は2つ以上必要になる。 
・1つは将来の想定顧客に提示するもの、彼らにとって重要な尺度は費用対効果で、それが競合や代替品より凄く優れているか。2つめは投資決定者(経営陣や上級マネージャー)に提示するもの、この場合の成功尺度は、市場規模や利益、増収率や投資収益率など。
・多くの場合、3つ以上の価値提案が必要になり、ビジネスパートナーも関わってくる。彼らの顧客に対する費用対効果や、事業の市場規模や利益などが魅力的でない限り、彼らの関心を得られない。

・価値提案の例

イノベーションの価値提案NABC

■優れたNABC作成のために
・優れた価値提案は、具体的かつ明確で、数値化される方が良く、物語がある。
・顧客とニーズに関して、見込み顧客の話を聞こう。市場に対する理解を深めること。
・アプローチは、できれなプロトタイプを作り、少なくともイラストやモックアップは必須。
・そのプロトタイプを使用する見込み客を、よく観察する。
・見込み客と話すまでは、どんなディスカッションやアイデアも、机上の空論に過ぎない。
・競合は、競合状況を把握し、あらゆる代替品を把握する。将来を見据えた新たな競合も想定する。
・反復が必要。いち早く成功するには、なんども失敗を繰り返す。

・多くの場合、何をすべきか判断するには、短い価値提案で十分である。価値提案のNABCのプレゼンテーションは1分〜4分に限定する。
・ただし、新規事業など多くのリソースを投入する判断の場合は、最終的には価値提案はイノベーションプランのあらゆる要素を網羅する必要がある。

■アイデアを集めて、価値提案をブラッシュアップする
・NABCは、改良プロセスを進める間は、新しい考え方や変更に対してオープンであること。最初に考え出したアプローチを、完全に断念する可能性も排除しないことが大切。
・顧客の話を繰り返し聞き、競争状況について十分に理解し、独自アプローチを練り上げなければ、優れた価値提案は生まれない。
・アプローチを説明する際は、イラストや絵、趣味レーションやプロトタイプを用意すると良い。そうすれば価値提案を、相手に瞬時に把握してもらえる。

・価値提案を、同僚や友人に見せて、アイデアの追加や練り直しに協力してもらおう。興味を示すポイントは人によって異なり、多様な視点を得ることは意味がある。ほとんどの人は、喜んで知恵を出してくれる。(その際、くれぐれもアプローチばかり主張しないように注意されたい)
・自前主義はやめよう。素晴らしいアイデアは、自組織から生まれないことの方が多い。

■顧客を観察し、顧客に質問し、顧客に話を聞く
・オフィスを出なければならない。価値提案が正しい方向に向かっているか教えてくれるのは、見込み顧客やパートナーである。あなたの妄想ではない。
・顧客を観察しよう。言葉を鵜呑みにするより、実際に現場で観察することだ。買い物カートを作りたいなら、スーパーに行って買い物客の行動を観察する。医療処理方法の改良を目指すなら、病院に行って患者を自分の目で確かめる。顧客のあらゆる体験を、自分の目で実際に観察すること。

・顧客に会う目的は、あなたが知らないことを教えてもらうこと。質問し、真剣に聞いて、理解しようとしよう。
・顧客への接触は、早ければ早いほど良い。市場と顧客のニーズについて、重要な情報を提供してもらえるから。将来の顧客とパートナーを巻き込んで、一緒に繰り返し価値提案を練り直そう。

■初期の価値提案NABCは、大抵間違っていて間違いもある
・初期の価値提案は、不完全で間違いもあるもの。成功への道のりは、まっすぐである方が珍しい。
・早く成功したいなら、何度も間違いを繰り返す必要がある。成功するイノベーションに必要なのは探求の旅で、市場の声を深く聞いて、それに応えなければならない。
・初期の失敗は避けられず、避けれると期待してもいけない。
・価値提案の修正は、一度や二度の見直しではなく、何度も繰り返し改良を続けるべきもの。修正回数の不十分、不十分なスピード、顧客やパートナーの声の軽視によって、本格的に失敗して潰れてしまう。

■エレベーターピッチで経営者の注目を得る

・新規事業推進で成功するには、アイデアの明瞭さと価値の高さで抜きん出て、社内で注目を得るしかない。
・プロジェクトを完成に導くには、社長や役員に、優れたアイデアを持つことを納得してもらわなくてはならない。明瞭で簡潔なプレゼンテーションで一線を画す必要がある。

・エレベーター·ピッチとは、1〜2分で伝えることができる「価値提案の核心部分」のこと。見込み顧客やパートナー、経営陣や上司の興味をかき立て、聞いた人の印象に残り、もっと知りたいと思ってもらえれば大成功。
・メッセージはできる限り短くすべき。提案は簡潔なものにしよう。核心部分を探し出し、聞いている人が忘れられないポイントを見つけ出すことが大切である。
・説得力あるエレベーターピッチができるということは、市場で価値創造するために対処すべき課題を把握していることの証で、そのビジョンを経営陣や投資家だけでなく、顧客や社員にも説明できる証明でもある。

・ある使い捨て補聴器の会社の、見込み客に対するエレベーターピッチ。
「聞こえづらいのは、あなただけではありません。
何千万もの人が難聴に苦しみ、補聴器の値段の高さに疑問を持っています。
世界で初めて、使い捨ての補聴器ができました。
この使い捨て補聴器は、1日あたりのコストが1ドル。最高のデジタル音質を提供するだけでなく、使用開始から1カ月後には処分するので、柔らかい素材でできています。
装着も快適かつ安心で、外からは見えません。ドラッグストアでお求めになれます。
本格的な補聴器は数千ドルするうえ、医師に調整してもらう必要があります。高価なものであるだけに、素材は耐久性があって丈夫ですが、耳に違和感が残り、フィット感もありませんし、音質も損なわれます。
使い捨て補聴器をご覧になってはいかがでしょうか?」

■エレベーター·ピッチは「つかみ」「核心」「結び」の3パート
・「つかみ」で相手の注意をかき立て、「核心」で数値を交えながら価値提案(NABC)のストーリーを語り、「結び」で次のステップへのアクションを投げかける。
・経営陣や投資家は、長くて複雑な議論を覚えていられない。
・エレベーターピッチを聞いた後、彼らがプロジェクトを支援する理由を簡潔かつ明瞭に言えなければ、それは失敗を意味する。

・相手の重視することと、アイデアをつなぐ「つかみ」は重要。好奇心や関心を掻き立てるか否か、つかみが左右する。
「聞こえづらいのは、あなただけではありません」
「毎年、薬の深刻な副作用で10万人が亡くなっています」
「特許を取得したネズミ取りは2000件を超えますが、実際に利用されているのは2種類だけです」

■エレベーターピッチの先
・エレベーターピッチを終え、イノベーションプランを精織化するフェーズに移ると、新製品や新サービスの価値を感覚的に伝える必要がある。イラストやサンプルを使い、顧客に提示しよう。新製品イラストやサンプルを用意しないプレゼンなどあり得ない。
イノベーション·プランができ、資金を確保できても、製品やサービスを市場に導入するまでの道のりはまだ遠い。プロセスのいずれにおいても、価値提案が重要なツールであることに変わりはない。

 

■原則3:イノベーションをリードするチャンピョン

■まずはチャンピオンが必要
・価値創造NABCは、顧客の立場に立って先を見据え、イノベーションが直面する資金・社内政治・人材・技術などの課題に対応していく「チャンピオン」の存在が必要不可欠。
・どんなイノベーションプロジェクトにも、プロジェクトを成功に導くスキルと決意、強固な意志を持つチャンピョンが必要。ビジョンを掲げ、チームメンバーやパートナーを触発し、全責任を負ってやり遂げる。
・チャンピオンとチームは、重要な顧客ニーズを特定することから始まる価値創出のプロセスに従って、成功に至る。価値提案の改良を続け、想定外の問題にも対応し、継続的に見込み顧客に接触し、プロジェクトを通じて得られる新しい情報を、価値提案に盛り込む。チャンピォンには、目の前の問題に真正面から取り組むと同時に、長期的ビジョンをしっかり見据える二つの視点が必要。
・チャンピオンは、組織の責任を負う。彼らは、組織のミッションにも忠実で、自らのアイデアと勝ち得た信頼と熱意を伝染させる力によって、組織から責任や支援を引き出す人物。

■チャンピオンへのアドバイス
・耳を傾け、そして学ぶこと。
・いち早く成功するには、何度となく失敗すること。アイデアを早めに何度もテストしよう。
・リソースを求める前に、アイデアを募ること。コストは引き下げ、関心を引き上げよう。
・熱意ある有志を集めること。熱意と好奇心、価値観で人を選ぼう。
・ビジネスモデルと財務モデルを早期に作成しつつ、懐疑的でいること。数値化はまずは見当をつけるところから始めよう。
・考える人に感謝し、参加者を賞替賛すること。功績は共有し、人の貢献に感謝しよう。
・プロセスを信じること、何度もプランを練り直そう。

 

■原則4:イノベーションチームの構築

■コラボレーションを促進するイノベーションチーム

・指数関数的な進化は、次の4条件が必要。①重要度の高いニーズに対応すること、②新しいアイデアがあること、③積み重なるな価値創出プロセスがあること、④人材や資金など必要リソースが入手可能であること。
・新しい技術やプロジェクト、ビジネス開発に必要なのは、新しいビジョンとビジネスモデル、そして型にはまらない解決策である。

イノベーションを進めるのに、コラボレーションは欠かせない。その基本的要素は、戦略ビジョンの共有、スキルの相互補完、報酬の共有。この3つが全て揃って初めて、人は手を取って協力する。
・第一に、プロジェクトのビジーンやゴールや目的が理解され、賛同されるべき。
・第二に、自分の役割と貢献がプロジェクトの成功に必要不可欠だということが明らかでなければならない。
・第三に、チームのメンバーとして受けるべき報酬がはっきりしていることが必要。
・さらに、相手に対する敬意あるコミュニケーションを続けることで、コラボレーションが成り立つ。

【戦略ビジョンの共有】
・チャンピオンとしてチームを集め目標の達成に向かうには、メンバーを一体化する明快なビジョンが必要。志は、高く掲げよう。
・チームのビジョンは、全社的なミッションやビジョンと整合しなければ、革新的なプロジェクトを進められない。また明快で説得力あるものでなければならな い。
・お金は、ビジョンにならない。成功したイノベーターは、金銭についてほとんど口にしない。彼らは高い志を抱き、世の中に大きな影響を与えるイノベーションを実現したいと考えている。

【スキルの相互補完】
・ジム·コリンズはこう語る「優れた人材を集め、そぐわない人材は排除し、適材適所を確実に実現することだ」。
・独自スキルを持ち、それを互いに補い合いながらコラボレーションできる人だけが、チームに参加するべき。
・各メンバーに重要な役割を与え、安心してもらうこと。各メンバーの役割を暖味にしておくと、成功に必要なコミットメントやコラボレーションを妨げてしまう。
イノベーションチームの原動力はメンバーの集合知で、メンバーが価値創出する反復プロセスをチームとして実践すれば、個人の数十倍、数百倍の顧客価値を生み出すことができる。
イノベーション開発では、アイデアは多くの人から積極的に集めるべきだが、チームは最小限のサイズにとどめておくべき。チームのコミュニケーションコストを最小限に抑えること。

【報酬の共有】
イノベーションチームのメンバーは皆、自らの貢献が報われるものと期待している。
・報酬には様々な形態があるが、最大の報酬は素晴らしい同僚とともに素晴らしいプロジェクトに取り組むチャンスが与えられることだ。

イノベーションの壁を乗り越える
イノベーションチームが信頼を築くために必要不可欠な要素は、他者への敬意、誠実さ、寛容さといった姿勢や態度。こうした資質がなければ信頼関係は生まれない。

■変化に対する抵抗
・変化は抵抗を生む。人が新しいビジョンに向かおうとすると、お馴染みの習性:懐疑的な態度と恐れ・不安・疑い、そして誤解 が顔を出す。
・チャンピオンは、ある程度の懐疑論や反発があるものだと、予め覚悟しておかなければならない。
・懐疑的な態度を示す人は当然現れるし、そうした懐疑論は必要不可欠だ。そのおかげで対処すべき課題を特定できる。懸念材料に対する対処法のカギとなる。
・チャンピオンは、チームの憂慮する声を積極的に聞き、人間関係を管理し、各メンバーの貢献を明確にし、結果として得られる恩恵を明らかにしなければならない。

・大きな変化に直面すると、恐れ・不安・疑いがよぎる。恐れ・不安・疑いに襲われると、それに怯え、ネガティブな発言をするようになる。
・反発がくすぶるのは、成功に至るプロセスの自然な成り行きであり、成功へのヒントがもたらされるとチャンピョンは認識すべき。
・表面的な言葉の裏を見抜き、問題を解くカギに変えていくこと。恐れ・不安・疑いと向き合い、発想を転換するところから始め、本人と話し合おう。
・人の懸念に対応するときは、常に感覚を研ぎ澄まし、じっくり耳を傾け、その人の支えとなり、理解する気持ちを持つこと。チャンピョンは、感情の爆発、挑戦的な態度、消極的な抵抗に、常に敏感でいることが必要。そして敬意を込めて、率直に人と向き合うことこそ、成功に至る唯一の道だと肝に銘じよう。

■許されざる行為
イノベーションプランの遂行の際、容認できない行為が存在する。批判的態度、消極的抵抗、陰口、告げ口といったもの(懐疑的態度、恐れ・不安・疑い、誤解 とは別のもの)。
・「批判的な態度」に直面したら、原因を特定(批判をばらまく個人)し、公にし、正面から対処すること。皮肉たっぷりの批判は、新たな取り組みに水を差し、無視していると成長して革新的アイデアを例外なく潰してしまう。
・シニカルな批判の問題は、あたかもそれが正しいかのように見えてしまうこと。
・「批判的抵抗」「陰口」「告げ口」は、本人と話して対処する必要があるが、チームを潰したかったり、イノベーションチーム構築に取り組む気がないならば、立ち去ってもらうべきである。

イノベーションの動機は金ではない
・優れた社員は誰しも、仕事を通じて何らかの形で社会に貢献したいと考えている。
イノベーションは、根源的な欲求が動機として機能することにより生まれる。根源的欲求は達成・権限・関与の3つ。
・人は仕事にポジティブな貢献をして価値を生み、「有意義な目標を達成したい」と考えている。重要度の高い顧客・市場ニーズに焦点を当てることで、チームは貢献を果たす。
・人は仕事上の自由が必要で、社員が抱く最大の不満は「事細かに管理されている」こと。チャンピョンは、「何を」すべきか明確にしたら、あとはメンバーの裁量に任せ「どうするか」を考えさせると良い。メンバーに責任と権限を与え、サポートすること。
・人は、自分に影響を及ぼす意思決定に関わりたいという強い欲求を持つ。メンバーに関わる意思決定の場に、彼らを関与させないのは極めて危険な行為。メンバーを巻き込めば、そのようなリスク回避できるだけでなく、ほぼ確実に良い解決策が生まれる。

■チャンピョンが注意すべき、チームマネジメントのポイント
チャンピョンが犯してしまいがちな、組織運営失敗の法則。注意したい。
・誰にも相談せずに、壮大なビジョンを持ち込む。
・影響を受ける人に話をせずに、何を変革するのかをいきなり発表する。
・上役とばかり話をして、一般社員をないがしろにする。
・「変革」のメリットしか見ようとせず、デメリットには触れない。
・象徴的で大きな変更だけ行う。例: 人員整理、組織再編、企業ロゴの変更
・抵抗する社員を異端者と決めつけ、動機を疑う。
・プランの各要素について個々の社員と協議・修正・検討する機会を持とうとしない。
・「支持者」とだけ話をして、「敵対陣営」は避ける。
・抵抗が生じたら、ミーティングを開かなくなる。

チャンピオンとして成功するには、チームの全員を巻き込み、メンバーからアイデアを集め、彼らからサポートを得ること。イノベーションを推進する、これほど確実な原則はない。

 

■原則5:組織の方向づけ

イノベーションチームに導入·展開されるべき「五つの原則」
1重要な顧客ニーズと市場ニーズにフォーカスすること。 
 理解度を簡単にチェックする方法は、自分たちの顧客は誰で、顧客のニーズは何か、チームメンバーに書き出してもらう。次に、顧客にも同じことをやってもらう。両者の食い違いの大きさを見れば一目瞭然。
2価値創出ツールを使って顧客価値を創造すること。
3各イノベーションプロジェクトに、チームを動機づけ、前進させ続ける「チャンピオン」を確保すること。
チャンピオンはプロジェクト全体に責任を負うことが大切である。
4適切なメンバーを選び、全面的にプロジェクトに関与してもらい、噴出する懸念を解決し、前進させていくこと。意欲的で献身的なチームの存在が何より大切。
5成功に向けてチームを結束させること。
そして成果が出始めたら、顧客価値を中心に全ての業務が回るよう、その考え方をチームの外にも少しずつ広めること。

イノベーションプロジェクトを妨げる障壁
・様々な障壁が成功を妨げる。例えば、部署内の既存製品と競合する新規プロジェクトは頓挫しかねない。組織内の利害対立は、プロジェクトの足を引っ張り、プロジェクトをつぶしてしまうこともある。
・新規プロジェクトのために、別組織を作ることが成功につながることもある。新会社設立が最善な場合もある。当初は組織内で育成し、イノベーションプランが完成し、必要リソースを確保できた時点で新会社としてスピンアウトする場合もある。
・当然ながら、チームの方向づけを阻害する要因は無数にある。大事なのは、それらを速やかに見つけ、必要に応じて組織的に取り除くこと。
・チームや組織の足を引っ張る自己防衛的な「障壁」だと思い込んでいるものの大半は、誤解に基づくものだ。・オススメなのは、気がついた障壁を残らず書き出し、プロジェクトの一環として、関係者とのディスカッション時に提示すること。障壁が明らかになれば、ほとんどの関係者は、それを取り除くことに協力してくれる。
・何かを不可能だと、勝手に決めつけてはいけない。やるべきことをしてから、聞いてみることだ。

・多くの企業は、新しいアイデアを導入する際に、組織カルチャーを変えなければならないと話す。しかしカルチャーの変化は、新しいスキルを開発したり、成果を上げたときに生じる副産物であり、「イノベーション五つの原則」によって最初に目指すべき目標ではない。
・目指すべきは、目覚ましい成果を上げることである。