出張シェフサービスのマイシェフ社長ブログ

個人向け出張シェフ・出張料理サービス "マイシェフ" の社長のブログです

【ジョブ理論の事例】ジョブ理論を活用した新事業創出の日本事例

「ジョブ理論」を活用した、新規事業の事例を紹介します。ジョブ理論を活用し、新規事業の 出張シェフ「マイシェフ」、出張レストラン「マイシェフクイック」を立上げ、運営しています。

ジョブ理論の現在進行形の事例かと思い、マイシェフクイックの立上げ・運営について、ジョブ理論のフレームワークに照らして事例・サマリーまとめます。

f:id:smasa0810:20171226002506p:plain

 

当ブログでは、前半でジョブ理論の書籍のサマリーを、後半でジョブ理論に照らした当社の現在進行形の内容を説明します。

 

■ 書籍「ジョブ理論」のサマリー 

【Jobs to be done、プロダクトではなくプログレス】

・「片付けるべきジョブ」理論は、顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片付ける解決策とそれに付随する体験を構築することにある。

・顧客が新しい商品を人生に引き入れる決断を下した時、その根底に存在した因果関係とは何か?どんなジョブ(用事、仕事)を片付けたくて、その商品を「雇用」したのか?

 

・ジョブを見極めるためには。

1:その人が成し遂げようとしている進歩は何か。求める進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。
2:苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしている時か。
3:進歩を成し遂げるのを阻む障害物は何か。
4:不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
5:その人にとって、より良い解決策をもたらす品質の定義は何か。その解決策のために引き換え(トレードオフ)にしてもいいと思うものか何か。

・ジョブを理解するということは、消費者が進歩しようとする時に、何を最も気にかけるのかを理解すること。

  

【そこにあるのに、埋もれているジョブ】

・片付けるジョブの競争相手は「無」。無消費が競争相手。

・成長とイノベーションのためには、ジョブに基づいて区切ったセグメントにフォーカスする必要がある。そのセグメントには、現状では満足な解決策が存在しない無消費者も含まれる。ジョブを不満足に片付けるよりは、何も雇用しない方を選ぶ。

 

・ジョブのレンズを通して新しいジョブを考察し、決断すべき主たる3つのこと。

1:顧客は進歩を遂げるためにどのような体験を求めているか。
2:どのような障害を取り除かなくてはならないか。
3:社会的、感情的、機能的側面については何を考慮すべきか。

 

 

【ジョブをどう発見するか】 

・すぐ目の前にあるかもしれないジョブを発見する5つの着眼点。

1:身近の生活の中。
2:無消費に眠る機会。
3:間に合わせの対処策
4:できれば避けたいこと。
5:プロダクトの意外な使われ方。

・ジョブを正しく見つけ出すためには、有望な鉱脈を見つけた後も、周囲を観察し、ジョブの文脈を理解する必要がある。社会的・感情的な側面も深く掘り下げる必要がある。

・人を観察するのではなく、ジョブを観察する必要があり、機能面だけでなく、感情的・社会的側面についても観察して解明する必要がある。

・ジョブについての重要な知見は、あなたのプロダクトも他社のプロダクトも買っていない無消費者を調査することで得られることが多い。間に合わせの策や代替行動をとってジョブを片付けている場合も同様だ。

  

【顧客が言わないことをどう聞き取るか】

・顧客は自分の要求を正確に表明できることは滅多にない。顧客が言わないことを聞き取り、本質をつかむためには、顧客が何を「雇用」、それと同程度に重要なこととして、何を「解雇」するのかを見れば、そこにストーリーがある。

・顧客が苦労している状況は元からある。新しい解決策を雇用してもらうには、現在積極的に・消極的に雇用されているもの(無消費含め)のいくらかを、解雇してもらう必要がある。

・「当社の商品が雇用されるために、何を解雇させる必要があるか」十分に考える必要がある。何かの雇用の裏では、常に、何かが解雇される。

 

・何らかの雇用、解雇には、常に二つの相反する力が作用している。

1:新しい解決策に乗り換えようとする力。顧客が直面する不満は、アクションをとりたいと思わせるほどに強いか。顧客の片付けるジョブにとって、新しい解決策は、彼らが進歩を手に入れ、生活をよりよくできるものか。
2:変化に反対する力。現状に満足はしていないが、今のやり方に慣れているという問題の存在に慣れた状態。「もし新しい方法をとってうまくいかなかったらどうしよう」という変わることや新しいことへの不安。変化を阻む力の大きさ、感情的・社会的側面の影響はは巨大。

 

・変化に対抗する力に対して、それを緩和するような体験を用意する必要がある。新しいものへの移行への不安に対して、それを最小化するような体験を付随させる必要がある。

・顧客が心から雇用したいと望み、しかも繰り返し雇用したくなる解決策を生むには、顧客の片付けるべきジョブの文脈を深く理解し、遂行を妨げる障害物も把握し、その障害物に打ち克つ体験をプロダクトの周りに構築しなければならない。

 

【ジョブスペックと解決策のつくり方、雇用のされ方】

・ジョブは、進歩を遂げようと苦労している顧客の立場から状況を組み立てるのに対して、ジョブスペックは、イノベーターの視点からジョブを捉えたもの。解決策の要件をジョブスペックで把握し、ここには、顧客が求める進歩、受け入れられるトレードオフ、打ち負かすべき競合、乗り越えるべき顧客の障害物を明らかにする機能的・感情的・社会的側面が含まれる。

・自社製品が実際のところ何と競っているかを理解して初めて、顧客にとって重要な体験を構築することができる。

・顧客があなたの解決策を雇用し、今のやり方を解雇する際に直面するであろう障害物を乗り越えられるように、購入及び使用に伴う体験を慎重にデザインして実装しなければならない。ジョブを片付ける解決策は、単なるプロダクトではなく、実際には顧客の生活の中でサービスを遂行している。

 

■「ジョブ理論」フレームワークと新事業「マイシェフクイック」事例

 【マイシェフクイックとは】

事例説明に先立ち、マイシェフクイックが何か、簡単に説明します。

マイシェフクイックは "出張レストランサービス"。イタリアンやフレンチなどコース料理を、接客スタッフが持参して出張し、出張先のキッチンで仕上げて提供、キッチン後片付けまで行うサービス。4000〜5000円/1人分で、2〜10名分の注文受付しています。
『レストランが自宅にやってくる』ようなサービスです。

外出・外食が困難な家族※に、ハレの日やイベントごとで利用いただいています。(※育児世帯、高齢者や障害者がいる世帯など)

 

■マイシェフクイックHP: マイシェフクイック|東京の出張レストランサービス

 

f:id:smasa0810:20170526004400p:plain

接客スタッフがご自宅で提供する

f:id:smasa0810:20170506151349p:plain

イタリアンやフレンチなどの本格コース料理を提供

 

【マイシェフクイックの顧客は誰か、どのような文脈・状況か】

複数の顧客層・シーンがありますが、とある3つの具体例(顧客・文脈・状況)を用いて説明します。

1:生後30日の赤ちゃんがいる夫婦。お宮参りで両方の両親も家に来る。
2:赤ちゃんが生まれて初めての結婚記念日を迎える夫婦。
3:子供が2歳のママ、近所のママ友との子供の合同誕生会。

 

これらは世間一般には「育児ママ」と括られますが、より詳細で具体的な文脈・状況に分けて捉えようとしています。  

書籍「ジョブ理論」の中では、顧客の定義にあまり触れられていませんでしたが、ジョブ理論のフレームワークの前提として、顧客の定義はかなり重要なように思います。

  

余談ながら、マイシェフクイックの主顧客でない人ほど、的外れ?な意見や感想を言ってくれます。「レストランに行けばいいんじゃない?」「法人向けケータリングが良いのでは?」「ワインも一緒に売ると良いのでは?」「ミシュラン星付や人気レストランを増やすのが事業成長のキモですね」「女性は他人がキッチンに入るの嫌がるでしょ?」などなど。もちろん悪意や悪気などは全くなく、良かれと思っての感想や意見だと思いますが。

このような感想やコメントには大抵「常識的に考えると・・・」「消費者観点でいえば・・・」「直感的に・・・」のような枕詞がつけられており、それらしく聞こえがちです。
しかし、その感想やコメントを発する人自身にとっての常識、その人自身の観点、その人の直感であり、十中八九、主顧客の状態や状況を踏まえたものではありません。 

 

【顧客の片付けるジョブと、求めるプログレス】

この3つの例にて、顧客が片付けたいジョブは次のようなものです。

1:お宮参り後の食事
お宮参り後の食事は、両親も来るしゆっくり祝いたい。個室ある和食店はご馳走でゆったりだけど、店まで移動があるし外に長時間いるのは赤ちゃんに負担が大きいので避けたい。家で仕出し弁当にすれば、自宅だから安心だけど、高い割に結局弁当だから味気ない。

2:結婚記念日
結婚記念日だから夫婦で祝いたい(去年まではフレンチレストランなどで祝った、まだ子供いなかった)。でも赤ちゃんがいるから、レストランに行ける気がしないし、泣いたりウンチしたら お祝いどころでないから行きたいとも思わない。

3:ママ友と子供の合同誕生会
普段のママ会は近所のカラオケ(子供が泣いても叫んでも走り回ってもOK)だけど、誕生会だしお祝い感が欲しい。ただ少し雰囲気良いレストランは子供が泣いたり、走りまわったら困るからNG。ママ友の家は安心だけど、出前では味気ないし、料理持ち寄りは 家を貸してくれるママの負担が大きくて気にかかる(取分け皿出したり、料理切ったり温めたり、後片付けしたり)。

 

それぞれの状況は、過去10年20年30年にわたり存在しているものです。しかしなぜ進歩しなかったか。
進歩を成し遂げるのを阻む障害物は、1、2、3とも、過去10年20年30年にわたり、新たな良い解決策が出てこなかったからではないかと考えています。このジョブが当社のビジネスチャンスです。

f:id:smasa0810:20180130161904j:plain

 

【無消費と競争する】

「競合サービスは」何ですか?とよく質問されますが、具体的な競合サービスがあるというわけではありません。
ジョブを不満足に解決するサービスや現在の主たる選択肢を解雇してもらい、マイシェフクイックを雇用してもらうこと。諦めや無消費を解雇してもらい、マイシェフクイックを雇用してもらうこと、これらが当社の競合です。

 

1 お宮参り の競争相手
個室のある和食店、仕出し弁当や出前寿司です。奥さんの超頑張りや、奥さんの母親の手料理も競争相手です。

2 結婚記念日 の競争相手
「結婚記念日だから祝いたいけど、赤ちゃんいるから今年は無理だね」という無消費であり、諦めが競争相手です。

3 ママ友との合同誕生会
結局いつものカラオケ、つまりジョブを不満足に片付けるより、新たに何も雇用せず、いつもと同じ方法での対応を選ぶことが、競争相手です。

1、2、3では、取り除くべき障害や、感情的・社会的な障壁は当然異なります。

 

【ジョブをどう発見したか】 

上述のジョブは、当初はほぼわかっておらず、実際にサービスを販売・提供し、顧客の利用シーンを観察する中で、徐々にわかってきました。

サービスを開始した頃は「これは、きっと有望っぽい鉱脈だろう」というあやふやな状態でしたが、実際の顧客の様子を観察して文脈の理解に努め、社会的・感情的な側面も掘り下げていきました。

 

例えば、1 お宮参り後の食事にて、顧客がマイシェフクイックを雇用しようか検討する際の典型的な障害は「家の台所は狭いが大丈夫だろうか」「家の食器で足りるだろうか、見栄えが良くない」「期待はずれの料理・サービスだったらどうしよう」「義両親(特に姑)はどう思うだろうか」「本来私がやるべきことを、金で解決するなんてなんてダメな母親なんだ(自己嫌悪や罪悪感)」など。

このような障害を取り除くために、やるべき施策はまだまだ沢山あります。機能的な障害を取り除くための施策は比較的容易で、感情的な障害を取り除いたり緩和したり、責任転嫁や罪悪感を感じずに済む言い訳作りのための施策は、かなり複雑で難易度が高いです。

また、当社のサービスを利用する顧客の観察は行っているものの、間に合わせの策や代替行動、無消費な方の観察はまだ行っておらず、今後徐々に行うことで新たな知見を得たいと考えます。

   

【ほとんど本音を言わない顧客】

当社の顧客は女性が中心で、いろいろ伺っても本音を言ってくれることは滅多にありません。
頼んでもないのに持論をドヤ顔で語る男性とは異なり、状況観察に長けて細やかな配慮と周囲の関係性を潜在意識下で重視する女性は、直接的にヒアリングをしても、ほぼ本音を言ってくれることはありません。

 

顧客の状況や苦労や心情的な障壁を理解するのに、最も役に立ったのは仮説検証を意識した顧客層の方との雑談と、実際の現場の観察です。これまでに数百の現場は観察したと思います。

数百の現場観察を通じても、顧客の状況や心情のごく一部しか理解できていませんが、それでも当初と比べるとより多くのインサイトを得られるに至っています。

顧客の状況や苦労や心情的な障壁の理解が進むほど、それを緩和するような体験の用意、うまくいかなかったらという不安の軽減策の企画・実施ができます。

  

【ジョブスペックと解決策のつくり方、雇用のされ方】

上述の1、2、3の状況・ジョブに対して、当社では出張レストランサービス マイシェフクイックを提供しています。
顧客にマイシェフクイックを雇用してもらうために、障害や、感情的・社会的な障壁に対して、その緩和策・解消策・軽減策を、継続的に企画・実施しています。私の理解では、男性一般と女性一般で比較すると、女性の方が男性の少なくとも10倍以上は細やか(男性は雑で単純)ですので、緩和・解消・軽減策はそれこそ様々です。

 

■マイシェフクイックは、果たして顧客のジョブをうまく片付けているか

「ジョブ理論」を活用した、新規事業の事例として、マイシェフクイックについて書きました。

私の書いたことが正しいかどうかは、正直なところ、どうでもよいことです。
このような考え方に基づき立上げ・提供するマイシェフクイックが、果たして顧客のジョブをうまく片付けており、マイシェフクイックが継続して顧客が雇用しようと思い、継続して顧客に雇用され続けるかどうか、それが何より大事です。

 

このブログエントリーをここまで読んだあたなも、ぜひマイシェフクイックを使ってみて、ご自身の目で確かめてみてください。
マイシェフクイックの主顧客や利用シーンは、外出・外食が困難な家族の、ハレの日やイベントごと。くれぐれもこの状況にフィットしない方・シーンで使ってしまい、的外れな感想を抱かないよう、マイシェフクイックの主顧客とともにご利用くださいね。

 

■マイシェフクイックHP: マイシェフクイック|東京の出張レストランサービス

 

quick.mychef.jp