新規事業創出企業の新規事業のつくりかた(リクルート、DeNA、メルカリ、ゼロイチ人材要件と育成)
■リクルート(Ring)の新事業創造
・話し手:新規事業開発の責任者の川本さん。
・Ringは1982年から35年やり続けている。
・応募629件、1次2次審査経て12件に。このうち数件が事業か検討に進む。
・応募件数が多いのは、出してもらうための投資と手間を相当かけているから。
ー応募を促すワークショップ 3ヶ月で 72回実施。
ー72回で、3000人の従業員が参加。
ー事業開発経験者はほぼいないため、ワークショップを通じてサポート。
ーひたすら勉強会を繰り返す。共にブレスト、壁打ち。
・経営陣(社長)の積極的な参加も必要。会社としての本気度示す必要ある。
・事業開発のターゲットは、6年以内の事業化を範疇とするカテゴリーと、長期的なパラダイムシフトを狙うカテゴリーの2種。
・1次審査通過42件全てに、次世代事業開発室メンバー7人が付きっ切りで支援。
ずっと既存事業をやってきた応募者は、事業計画つくりのスキルが足りない。
・最終審査通過した数件は、既存領域と新規領域で異なる進め方。
・新規事業が進んだら、100%異動の辞令。既存組織に拒否権はない。
・全応募中、事業化フェーズに進むの2%、そのうち黒字化に到達が15%。
630件応募の場合、黒字化まで至るのは2件弱の確率。
■リクルートの経営陣の新規事業へのコミット
・リクルートが新規事業を生み出せるのは、経営がコミットしてるから。
・ビジネスプランコンテストに対する、経営陣コミットは毎年1つ以上は必ず事業化すること。
http://kahoko.blog.jp/archives/1070106688.html
■DeNAのリーンな新規事業創造
・ボトムアップの新サービス開発部署のやり方:リーンインキュベーション部
インターネットのサービス、スマホ画面内のサービスの創出。
(AIや自動運転など、全社方針レベルの新規事業は全く違うため注意)
・サービス案に対する判断基準はただ1つ。提供しようとする価値を、熱狂的に必要とする人が「インターネット上にいるかどうか」。
・いれば初期予算1000万まで。開発〜リリースまで。
ー約3カ月間の開発と運用ができるぎりぎりの金額。
ー企画立案者、エンジニア、デザイナーの3名で開発。
ー人件費やオフィス地代など販管費も含み。
・キャッシュアウトするタイミングで、継続可否と継続の場合の追加予算を決める。
ーだいたい3ヶ月ごとに継続可否判断。
・累積コストが5000万円くらいで、大きな判断をする。
ー社長決裁。
ー追加で大きな投資をするかどうか判断。
ーその後成長フェーズに入り、成長に応じて、組織の切り出しも。
・小さく始めるのは、失敗を恐れずに何度も挑戦を続けるため。
・この方法で2014年からの4年で約40サービスを世に出した。
ー2018年末時点で継続してるのは4〜5サービスくらい?(9割失敗)
ー新事業創出成功例は『SHOWROOM』や『Mirrativ』
■DeNA社内の新事業創造からスピンアウト事例 Mirrativ
・サービスリリース後、1ヶ月に右肩上がりにならず、事業クローズの議論もした。
・右肩上がりに強引に持っていき、担当取締役が可能性を見出してくれた。
ー取締役は、表層的なユーザー数でなく、ユーザーの熱量に可能性を見出した。
ー右肩上がりに持っていくために、地味な施策を2つ。
ー朝8時から夜中2時まで、毎日自分で泥臭くカスタマーサポート。
・立上げ時、ゼロイチで濃いニーズを検証する、という発想がなかった。苦しい経験を経て理解した。
・社内事業立上げは、全身全霊をかけて、打率1割の世界。
■メルカリの新事業創造
・新しいことをやるなら、ハコ(会社)も新しい方が良いのではないか。
・新規事業創造で極めて重要なのは人材。
ー新規事業開発には「0→1」を得意とする人材が必要。
ー0→1が得意な人材は数が少ないので、社内で見つけるのは大変。
ー経験則として0→1立ち上げのいろいろな課題を知ってるかどうか、圧倒的な熱量とスキルがあるか、が極めて大きい。
・新サービスが成功するかどうかは、立ち上げる人に依存するという考え方が強い。
・0→1未経験者に、いきなり事業開発の責任者を任せることはない。
ーまずは0→1フェーズを責任者でない立場で経験してもらう。
ー実経験を積んだ後に、新規事業をやってもらう。
・新規事業責任者に、ほとんどのことが権限委譲される。
ー社長へのレポーティングは週1回。
ー社長や既存事業部門から、ああしろ、こうしろと言われることはない。
ー既存事業への配慮や、念のため報告や調整が一切不要で、余計なことを考えずに済む。
ー全体的に、新規事業責任者が自由に推進できる。採用も独自に行っている。
ー反面、全ての責任感じるから、社内新規事業というより、起業に近い雰囲気に。
・ただグループにいるメリットは活かすように。
ー情報共有。報告の場はないが、情報はオープンに、社内の誰でもアクセスできる。
ー思想の共有。採用の基準は同じ。
新規事業・新規サービスの責任者は、元起業家、新規事業経験者、元スタートアップCOO。
・メルカリ アッテ
ー事業責任者は元起業家
ー2016年春リリース、2018年春クローズ。
ー立上げ時は6人チーム。責任者1、ディレクター1、デザイン1、エンジニア2、他1。
・メルカリ カウル
ー事業責任者は新事業立上げ経験者、元スタートアップCOO。
ー2017年春リリース、2018年春クローズ。
ー立上げ時は5人チーム。企画&責任者1、デザイン1、エンジニア3。
・メルカリ メゾンズ
ー事業責任者は元起業家
ー2017年夏リリース、2018年夏クローズ。
・メルチャリ
ープロダクト責任者は元デザイナー、新サービス立上げ経験者。
ー2018年初春リリース。2019年春 他社に譲渡。
・ティーチャ
ー事業責任者は元起業家
ー2018年春リリース、2018年夏クローズ。
・メルカリNOW
ー2017年秋リリース、2018年夏クローズ。
・メルトリップ
ー事業責任者は元起業家
ー2018年秋リリース、2019年初春クローズ。
・メルペイ
ー事業責任者は元メガネットベンチャー取締役
海外経験かつ金融経験
ー2019年冬リリース
■ゼロイチ人材の生い立ちと育成
・過去は、企業の既存事業を伸ばせば良かったが、今は非連続の成長が求められる。
・だからゼロからイチを生み出せる人材が必要とされる。ゼロイチな人が会社を新たな成長に導いてくれる。
・ずっと花形部署にいる人は、ゼロイチ人材になりにくい。
・左遷されたような辺境部署、中途社員、外国人など、保守本流から離れた所にゼロイチ人材はいる。
・ゼロイチになりやすい人の判断基準
ーやんちゃな人。誰もが無理と思った案件を、無理を通してやりきってしまう人。
ー破天荒だけど、なんか憎めない。荒削りだけど、実行してしまう人。
ー視点に特異点があり、物事を進められる。
・ゼロイチを判断するためのキラークエスチョン
ー子供の頃に秘密基地を作っていたかどうか。何もないところから、自分なりのルールでゲームメイキングできるかどうかがわかる。
ー会食の幹事をよく引き受けているか。ホスピタリティ精神が高く、プロデュース能力に長ける。
ー受験勉強をラクにこなしたか。死ぬほど勉強して合格した人は、ゼロイチになりにくい。受験勉強がラクだった人は、要領が良くツボを押さえるのがうまい証拠。
・ゼロイチの共通項
ー幼い頃に両親が離婚したなど、家庭に何らかの不具合があったケースが多い。
ーこういう人は、若いうちから自分のために動き、自分なりの物差しを持ち、自分の幸せを自分で決めようとする。
ーどこかで満たされない飢餓感や欠乏感があり、それが原動力にもなる。
・ゼロイチの可能性のある人材に、どういう経験を積ませるべきか。
ー35歳以下、できれば30歳以下の頃に、新規事業や小さめ海外子会社社長や買収企業統合の責任者など、経営者の機会をチャレンジさせ、そこで意思決定の場に立ってもらい、どんどん失敗してもらう。
ー挑戦の数を死ぬほど増やすことで、何かを生み出す。ゼロを100回繰り返したら、やっと1が生まれるかどうか。
ー重要なのは、逃げ場のない立場で、意思決定の場数をいかに踏ませるか。
・OJTではゼロイチは生まれない。同じような社員が生み出され、考える力を失う。
・世界中のノーベル賞受賞者は田舎育ち。田舎の子は何もないから、自分で考えて決める。都会の子は、親が与えてしまうから子供が自分で考えない。
・シリコンバレーでゼロイチから成長した会社の共通項は、創業社長が不良であること。つまり外部が規定する生き方に縛られずに、物事をゼロイチで考えられる。
■新規事業で90%の失敗を回避する方法
・作りたいもの、作れるものを作るから、失敗する。人が欲しがるものを作るべし。
ー起業家は、自分が作りたいものを作りがち。
ー大企業は、自社が作れるものを作りがち。
ー人が欲しがるもの、5-10年後に人が欲しがるものを作るべし。
・ユーザーに欲しいものを聞くのでなく、ユーザーのインサイト・課題に立脚すべし。
ーユーザーは潜在ニーズを自分で顕在化できない。欲しいものを聞いても無駄。
・自分たちの最初のターゲットとなるユーザーを明らかにするのが大事。その人にどういった不満や不安、不便といった不があるか。
・市場は見つけたり育てるのではなく、市場の創造・クリエイトが必要。
ーまだない市場をこれから創造しようとする段階で、P/Lはかけない。
ー全方位ではなく、まずはどこを攻めるかというエントリー市場を決めること。
ー新規事業の大原則は競争しないこと。
ーまだ存在しないけど、実はポテンシャルが高いのに気づかれてないところが良い。
・自分自分がある程度共感できない事だと、事業として成り立たないと思う。
ーそうでなければ、気持ちが続かない。
ーあらゆるものがないスタートアップの武器は、共感性の高いストーリー。