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【パラダイムの魔力 要約】イノベーションとパラダイムシフトの関係性

イノベーションには欠かせない「パラダイム
パラダイム・シフトはいつ起こるのか、また誰が起こすのか、どうすればパラダイム・シフトを起こせるのか。

将来を予見する必要ある人、新規事業開発や新技術開発を担う人が、認識しておくべき「パラダイム」と「パラダイムシフト」。

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■時計市場のパラダイムシフトとイノベーション

時計のパラダイムシフト

・スイスは、長年にわたり世界の時計市場を支配し、時計技術と品質をリードし、世界最高の時計を作っていた。
・1968年と1980年の腕時計市場のシェア。
 ー1968年:販売個数65%以上、利益80%以上
 ー1980年:販売個数10%以下、利益20%以下

・スイスは、腕時計作りのルールが根本から変わってしまうパラダイムシフトに直面し、対応を誤った。時計職人6.2万人のうち、5万人が職を失った。
・一方、成功したのが日本。1968年の日本のシェアは1%未満だったが、クオーツ時計をセイコーが採用し、日本のシェアは33%を占めるまで急成長した。

・クオーツ研究は、スイス人が成果を上げていた。しかし1967年、この革命的アイデアを、自国のスイス時計メーカーに持ち込んだ時、相手にされなかった。
・その技術に飛びついたのが、日本のセイコーだった。

・将来を正確に予測することはできないが、努力すれば、おおよその方向は見えてくる。「パラダイム」の概念を理解できれば、将来を見通す能力は大きく高まる。

 

パラダイムとは何か

パラダイムとな何か

パラダイムとは
 ーパラダイムは、我々が世界を認識する方法。
  広く共有された一連の仮説(パラダイム)に基づき、現実を捉え、将来予測している。
 ー現実のある見方に基づいて、認識し、考え、評価し、行動する基本的な行動。
  支配的パラダイムは、声高に論じられることはまずない。
  その文化の中で、疑う余地のない暗黙の了解として存在する。
 ールールと規範であり、その教会内でどう振る舞えばよいか教えてくれるもの。

パラダイムシフトとは、パラダイムがガラッと変わり、新しいゲームに移行すること、そのゲームのルールがすっかり変わってしまうこと。

・時計の歴史を見れば、1968年時点では歯車やベアリングなどを精巧に作る技術・職人が重要だった。しかしクオーツは、歯車もゼンマイもなく、電池を入れれば良い電子時計。パラダイムがシフトし、1980年には、腕時計のゲームのルールはすっかり変わっていた。

・将来を予見する能力を高めたい場合、トレンドが目に見えて変わるまで待ってはいけない。ルールをいじり始めた人に、注意しなければならない。それが大きな変化の最初の兆候だからである。

パラダイムについて考察する4つの点。
 1新しいパラダイムはいつ現れるのか?
 2どんな人がパラダイムを変えるのか?
 3パラダイムを変える人の後を、最初に追うのは誰で、なぜそうするのか?
 4パラダイムシフトは、その渦中にいる人にどんな影響を与えるか?

 

■新しいパラダイムはいつ現れるか

・新しいパラダイムは、必要とされる前から現れる。求められてもないのに、新しいパラダイムが現れる、とも言える。
・新しいパラダイムが現れた時、典型的は反応は、拒絶反応である。それまでのパラダイムに習熟した人・成功している人は、新しいパラダイムを受け入れられない。スイス人が、クオーツを相手にしなかったように。

・「自分の専門分野で、同僚の誰もが解決したいと思いながら、解決の糸口さえ見つからない問題はないだろうか」と自問する。それは既存パラダイムでは解決しないもの。
 法律分野の例
 ー現行の裁判制度は、上訴が繰り返され、恐ろしく時間がかかる。
 ー大変な弁護士費用がかかり、自分の身を守れるのは、金持ちだけである。
 ーダメもと精神で、賠償金を思い切りふっかける訴訟が横行している。
・既存パラダイムでは到底解決できない根深い問題がある時、新しいパラダイムが登場する舞台は整えられているとも言える。

 

■誰がパラダイムを変えるのか

パラダイムシフターは、アウトサイダー

パラダイムを変えるのは、簡単に言えばアウトサイダー
 ー現行パラダイムを細かい点まで十分理解してない人
 ーパラダイムをまるで理解していない人
 ーパラダイムを壊そうとしている人

アウトサイダーが素晴らしいアイデア(新しいパラダイム)を持ってきたとき、既存パラダイムにある意思決定層(管理者・経営層)が発する典型的なセリフ。
 ーそんなことは不可能だ
 ーここではそんなやり方は通用しない
 ーそれと同じようなことを前に試したが、うまくいかなかった
 ーそんな簡単にできれば、誰も苦労しない
 ーそんなやり方は、我が社の方針に反する
 ーもう少し経験を積めば、お前もわかるようになる
 ー誰がルールを変えていいと言ったのだ
 ー今のやり方が間違っていると、よく言えたものだ

アウトサイダーに拒絶反応を示すのは、それなりの理由がある。意思決定層(管理者・経営層)は、現行パラダイムで成功してきた人である。現状を見れば、変える必要など何もなく、これまでうまくいってきたし、どう考えてもやり方が間違っていると思えないのが、現行パラダイムでの成功者の普通の感覚。
・既存パラダイムと異なる、新しいパラダイム・やり方・アイデアを提示するアウトサイダーに遭遇した時、その意見に耳を傾けるのは、普通は難しい。
・新しいパラダイムを認めるということは、過去の努力を失敗と認め、投資を忘れろと言われていることに等しい。

・新しいパラダイムは、現行パラダイムで生きる全ての人に、大きなリスクを負わせる。その人の地位が高いほど、リスクが大きくなり、現行パラダイムに習熟し・投資してきたものが大きいほど、パラダイムが変わって失うものが大きくなる。

・状況的に、パラダイムシフターの可能性がある4カテゴリー。
 1研修終えたばかりの新人
 2違う分野からきた経験豊富な人
 3一匹オオカミ
 4よろずいじくりまわし屋

パラダイムシフターは4つのどのタイプも稀であり、貴重である。そう簡単に見つからない。目の前に現れても、相手にしないことが多い。

 

■2 違う分野からきた経験豊富な人

・別の分野で高度な技術や知識をもち、何か理由があって、それまでの分野と全く関係のない職業を選んだ人たち。
・この人たちの持つ強みの一つは、入ったばかりの分野の経験が乏しく、そのパラダイム共同体の微妙な点について、気がつけること。もう一つの強みは、何ができないかを知らないこと。できないと知らなければ、やってしまうことが可能。
(参考:ノーベル賞受賞者の一定割合は、このパラダイムシフターである 
ノーベル賞受賞者に学ぶ イノベーションの作り方 )

・この人たちは、知らないから、既存パラダイムにとって「とんでもない」質問をする。既存パラダイムにいる人が当然と考える行動様式やアプローチが不思議なものに映る。禁止事項を知らないから、既存のやり方に手をつけていけないとは思わない。

・重要なのは、この人はどこの組織にもいる(転職してきた人、別組織から来た人)が、その人が目の前に現れた時、その価値を見抜くことはできない。訓練し、予備知識を与え、仕事を教える。そうすることで(既存パラダイムの世界で)組織にとって役立つ人間になると考えるのが、普通。そして、大事な2つの強みを失ってしまう。

・"違う分野からきた経験豊富な人" が目の前に現れた時、最初にやるべきは "既存パラダイムでは解決しない問題" のいくつかを、解決するよう指示すること。「正しいやり方」を知らないうちに、それに取り組む機会を与えるべき(そのパラダイムの「正しいやり方」では、全然解決できないことはわかっているのだから)。
・この方法は、当然ほとんどうまくいかない。新人がパラダイムシフトをもたらす確率は、1000人に1人くらい。これは無駄ではなく、1000人に1人の確率だとしても、その1人を見いだせるか、見出せないかは、天と地の違いがある。

■3 一匹オオカミ

・社内の人であり、既存パラダイムで仕事をし、現在の方法では解決できないことを知っており、真っ先にパラダイムを変えようとする人。この人は大抵本流から外れたところにおり、一匹オオカミ、わからず屋、変わり者などと呼ばれている。社内にいるはいるが、そうそう滅多にお目にかかれない希少人種。
ほぼ例外なく、この人たちは、危機が発生するまで社内で相手にされない。

・この人たちの強みは、既存パラダイムを熟知しているが、それに囚われていないこと。

■4よろずいじくりまわし屋

・棚上げされている問題に、好き好んで取り組む珍種。それが特別な問題だとは知らず、ただそこに問題があり、それを解決しなければ先に進めないと思っているだけ。
・どんどん問題に取り組み、ほとんど失敗する。既存パラダイムで解決できない問題だから。しかし、時には、問題を解決してしまうことがある。

  

■誰がパラダイムを開拓するのか

新しいパラダイムの開拓者

パラダイムシフターが発見した未開の道を、真っ先に突き進むのがパラダイムの開拓者。

パラダイムの変化は、量的ではなく質的な変化のため、新しいパラダイムを判断するときは、曖昧な感覚になる。直観、ピンとくる、勘とか。データが不足しているときに決断する、直観的判断。
・早い段階で新しいパラダイムを取り入れる人は、本当に問題が解決できるかどうかわからないときに、決断せねばならないことが多い。確実にわかっているのは、既存パラダイムでは、解決できない問題があるということだけ。この種の決断は、信念がなければ下せるものではない。

パラダイムの開拓者に、新しいパラダイムに切り替える理由を問うても、根拠をもって説明できない。データや根拠はないからだ。開拓を決断する本質は、人よりも早くパラダイムを変えようと思い立つ人は、頭でそう判断するのではなく、心で判断する。

パラダイムの開拓者になるには、直観に加え、勇気が必要になる。直観を信じて行動する勇気がない人は決断できず、変化を傍観し、新しい変化に乗り遅れる。

 

パラダイム効果とは何か

パラダイムシフトの原理
パラダイムは常に、解決できない問題を浮き彫りにする。それが引き金になり、新しいパラダイムへの模索が始まる。
パラダイムを変えるのは、いつもアウトサイダーアウトサイダーは、現在のパラダイムの機微を知らず、それに時間や努力を投資していないから。
パラダイムの開拓者は、十分な根拠なしに、自分の直観を信じ、勇気を持って判断を下す。

パラダイムは、心理的フィルターの役割を果たしてり、誰もが、自分が無意識に採用しているパラダイムを通してしか、世の中を見ることができない。
・言い換えれば、自分のパラダイムに合わない現実世界に存在するデータや事象は全て、見えない状態になる、もしくは、自分のパラダイムに合わせてデータや事象を捻じ曲げて解釈するようになっている。

・したがって、私たちが何を知覚するかは、自分の採用するパラダイムによって決定されていると言える。これが「パラダイム効果」
・例えば、誰かに「そんなことは不可能だ」と言われたら、その言葉は「私が採用するパラダイムに基づくと、それをどうやればいいのかわからない」と言い換えれば良い。

パラダイムの力はあまりに強く、私たちは世界をある一方向からしか見ることができない。専門家ほど、既存パラダイムでの専門であるがゆえに、この傾向は顕著になる。
・見えるはずだと思うものは、はっきり見える。自分のパラダイムに合致しないデータは、よく見えないか、全く見えないか、自分のパラダイムに合わせて歪めて見る。

・将来を見通すには、現在のパラダイムでわかっていることは脇に置き、周辺に注意を払い、パラダイムを変えようとしている人を見つけ出す必要がある。

 

パラダイム効果の実例

パラダイムの実例

■訪問販売
・ある建設会社の経営会議にて、モデルホームを建て、お客さんに来てもらい、販売員がそこで説明をする、という営業をしていた。
・戦略会議に初めて参加した会計士は、不思議に思った。「他の多くの業界では、セールスマンはお客さんのところに出向く、お客さんが来るのを待っている会社はない」と。
・副社長がイラつきながら答えた「うちの仕事ではそんなことはできない、当たり前だろう。どうやって客を見つけるのだ。」
・会計士は言った「私なら、『売り家』看板が出ている家を探し、その持ち主に話に行く。その人は、潜在顧客のはず。」
・副社長はイラつき、黙ってくれと嫌な顔をした。
・会長が興味を示し「大して金はかからないし、そういうことをするセールスマンを雇ってもいい」と言った。
・その建設会社は、既存ルールに全く反する、会計士の馬鹿げたアイデアを試してみることに。結果は、驚くほどうまくいった。

■手榴弾メーカーがエアバッグを作る
・1985年ごろ、自動車メーカーが作るエアバッグのコストは500-600ドルだった。
・その頃、手榴弾の信管などの起爆装置メーカーが、エアバッグトリガーを開発し、値段はエアバッグ含め約50ドル。
・その社長は、エアバッグに必要な要素(衝撃を感じて飛び出す、膨らむ)は、自社が得意な分野と気づき、技術者2人にエアバッグの研究開発を命じた。1年もせず、研究開発費40万ドルもかけず、エアバッグトリガーを開発した。
・精密で簡潔、しかも安い。文句のつけようがない。
・そこで、ゼネラルモーターズに営業に行った。GMは、門前払いを食らわせた。GMだけでなく、アメリカ全ての自動車メーカーが耳を貸さなかった。
・自動車メーカーが、ブリードの提案を真剣に検討するのが難しかったのは、パラダイム効果のためである。ブリードは、全くのアウトサイダーで、手榴弾メーカーだなんて常識に反しており、自社で長年・多額の投資をして積み重ねてきた研究成果に反する者だった。

■白人男性と、女性とマイノリティ
セミナーでこんな実験をする「白人男性の社会で、成功するために必要な条件を、思いつくままにあげてください。」
・女性とマイノリティはすぐに「適合」に必要な条件を書き並べる。
・一方で、白人男性は、何もせず、ペンを走らせている女性やマイノリティの姿を茫然と眺めている。
・常に、このような状況になる。白人男性には、白人男性社会で成功する条件をかけない。あまりに無意識すぎるから。
・多くの場合は、パラダイムは目に見えない。それはいつも無意識にやっていることだから。無意識であっても、行動を規定するのはパラダイムである。

 

パラダイムの重要な特徴

パラダイムの重要な特徴7つ。

パラダイムはどこにでもある

パラダイムは役に立つ
・ある世界で共有されるパラダイムのおかげで、その世界でスムーズに生きることができる。
・"多様性"が大切なのは、異なるパラダイムを持つ人が集まることで、問題に対する対処の観点が多様になるから。

パラダイム効果は「見ると信じる」の常識的な関係を覆す
・「見れば、信じる」のではない。「信じれば、見える」という方が正確。

4ほとんどの場合、正しい答えは2つ以上ある
・目の前の事象やデータを、どういうパラダイムの前提で捉えるかにより、捉え方は変わる。事実は一つでも、捉え方はパラダイムの数だけ異なる。

5深く根付いたパラダイムの中にいると、パラダイムの麻痺を起こす
・成功して大きな力を手に入れると、自分たちのパダライムが永遠に続く錯覚にとらわれてしまいがち。
イノベーションを起こしたいなら、既存パラダイムの殻を破って、新しいパラダイムを求めようとしない限り、新しい素晴らしいアイデアは、常によその誰かが発見することになる。

6激動の時代には、パラダイムのしなやかさが最善の戦略
・自分の専門分野について、そんなバカな、と思うことを耳にしたら、それをとことん考えて見るべき。
・しなやかになるには、まず心を開くこと。自分の常識に反することをいう人に出会ったら、なぜそれが不可能かを説明したい気持ちを抑えて、こう言うべきだ。「そんなことは今まで、考えてもみなかった。もっと話を聞かせてくれ」と。

7人間は自分のパラダイムを変えることができる
・全く違う考え方をする人と話をするとき、事実が違うのではなく、パラダイムが違っている場合がほとんど。同じ事実を見ているのだが、データをより分けるフィルターが違うために、見えるものが違ってくる。
・違う考え方の人に出くわしたら、自分の意見を主張する前に、相手の話を聞く方が良い。じっと話を聞いていると、相手がどんなパラダイムを持っているのかわかってくる。

 

■管理者とリーダーとパラダイム

パラダイムとリーダー

・専門分野の違う人、部署の違う人が集まり、問題点を話し合うクロストークの場を設けよう。立場の違う人のパラダイムを、解決策の検討に用いる。

・本当に素晴らしいアイデアが出てくるためには、馬鹿馬鹿しいアイデアが100個は出てくる必要がある。
・馬鹿馬鹿しいと思えるアイデアを出した人に、感謝すべきだ。そして、いつでもまたアイデアを聞かせてほしいと頼んでおこう。なんせ100個のアイデアが必要なのだから。

・管理は既存パラダイムの中で行うもの。パラダイムの間を導き、人々が進んでいこうとしない場所に、人々を導くのがリーダー。
・既存パラダイム内での管理に必要なのが、ルール、システム、基準、プロセスなど。一方、パラダイムの進化は、直観的な判断、勇気が必要。
・状況が変化するときに必要とされるのは、管理者ではなく、リーダーである。

・管理者は管理し、リーダーは革新する。
・管理者は短期的視野を持ち、リーダーは長期的視野を持つ。
・管理者は「どのように」を重視し、リーダーは「なに」「なぜ」を重視する。 
・管理者は業績を見つめ、リーダーは地平線を見つめる。
・管理者は現状を受け入れ、リーダーは現状を打破しようとする。