出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

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米国スタートアップの日本参入・日本立上げ時に留意したこと 

VOYAGEの宇佐見社長の 3年前のFB投稿 "海外進出の失敗例と成功のポイント" が流れてきた。

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ほとんどの人にとっては「日本から海外への進出」だけど、私は前職でその逆「アメリカから海外(日本)への進出」の日本側をやった。当時(今から4年半前)、次のようなことに留意した。

 

■ 進出国(日本)の経営

・「現地化がマスト」のセオリー通り、日本の事業立上げ・事業運営は一通り 私に任せてもらった。
・英語もそうとう微妙で、かつMBAではないが、任せてもらった。

 

■ 進出国(日本)のガバナンス

振り返ってみると、次の3点が良かったと思う。

1、米国在住のCEOと、1年間毎日スカイプでいろいろと話した。
毎週火曜から土曜まで、毎朝スカイプでCEOと話した。これにより、お互い何を大事にし、何は譲れず、何は譲歩可能で、どう優先度を考えるか、ものごとの捉え方や考え方のクセなど、意思決定のためのバックボーンが揃っていった。

毎日話すから、トピックは本当に多岐に渡り、プロダクトの方向性や日本の営業のやり方といった方針レベルから、個々の機能の仕様レベルの確認まで。セミナーでどういう会議室を使うべきであり、それはなぜか。「調子どう?」と聞かれたときにどう答えるべきか、それはなぜか。こういう些末なことまで

ここに時間をかけたことで、2年目以降の日本国内の意思決定(業務執行レベル)は、スムーズに行うことができ、また齟齬も比較的少なかったのではないかと思う。

現地化がマストではあるものの、現地化は目的ではなく手段のはず。意思決定のためのバックボーンがズレてしまうと、本国として結構厳しいと思う。

 

2、私が暴走できない形の権限委譲をした。
日々の業務執行をよりスピーディーに行うために、日本国内での権限はできるだけ私に委譲してもらったが、私に委譲しないようお願いしたものが2つあった。
1つはハンコ、もう1つは銀行口座。

私自身、何か悪さをしようという気はもちろんなかったが、CEOの立場に立てば、現地責任者(私)の勝手な判断で、経営上クリティカルなこと、不可逆なこと、横領や詐欺的なことを、仕組上できなくしておく必要がある。
ハンコと銀行口座により、私の判断で支払いも現金引出しもできないし、契約もできないようにした。

会社として契約が必要な場合は、日本で製本し、アメリカに郵送して捺印、日本に郵送し直して、日本から顧客に郵送という、とても手間と時間のかかる方法で、非常に面倒くさいし超非効率だったが、私の一存で勝手に契約できてしまう、という危険性を排除するためにその方法をとった。

なお、営業・受注はもちろん必要なので、ハンコを必要とせず受注できるよう事務手続きを整えた。

 

1も2も、米国在住のCEOに いかに私に対して疑念を感じさせないか留意した。

逆の立場で、もし私が本国CEOだったとしたら、進出国の責任者が「裏切らないか」「悪さをしないか」が前提の上で、「事業を伸ばせるか」が大事になるだろう。

もしも、CEOが私に対して疑念を感じてしまったならば、全てが破綻してしまう。一旦「騙しているのでは」「さぼっているのでは」と感じ始めると、リモートなこともあり、感情も理性も全てがネガティブに、強烈に逆流してしまうだろう。

 

3、執行レベルの判断は、私に任せてもらった。
1、2がある上で、取りたいマーケットポジション、プロダクトメッセージ、営業やマーケの方針、採用方針、業務管理など、執行レベルは多くを任せてもらった。
ハイレベルのKPIは、日本もアメリカと共通だったが、それ以外は日本主導でさせてもらった。

 

 ■ その他のこと

・進出国である日本は、日本語ができる、日本人(私)が現地責任者。
・ハイレベルKPIは常にアメリカと共有したが、細かい数値の提出を強要されることなく、アメリカの取引ルール/評価ルール/倫理観は日本に押し付けられない。日本のルールで運営。
・現地スタッフ(日本)の横領やコネ入社はない。
・アメリカから日本をコントロールしようとしない。
・日本の管理体制は、性悪説に基づくガバナンスと権限委譲。
・日本の企業ではなく、グローバルであり、グローバルニッチトップを取る想い。