個人向けの出張シェフサービス “マイシェフ” を始めた理由
個人向けの出張シェフサービスの “マイシェフ” を運営しています。
■マイシェフHP:http://mychef.jp/
サービスの提供開始から今に至るまで、育児中のママ・ワーキングマザー(と、そのご家族やご友人など)などの 外出が大変・困難な方 中心に利用いただいています。
私が男性なこともあり、なぜ マイシェフを始めたのか、良く質問をいただきます。その理由を書こうと思います。
都市部の育児中の女性が大変そうに見えていた
私が20代の後半の頃から、なんとなく「都市部の育児中の女性が大変そう」に見えていました。
女性は出産というイベントをきっかけに、時間的・社会的・精神的な制約が一気に発生すると思います。
もちろん出産して お子さんを育てる・お子さんと過ごすのは、何事にも代え難い素晴らしいことだと思います。 ただ、出産によって大きく環境が変わり、お友達と会う機会や美味しいものを食べに出かける機会は一気に減り(お子様のために少し我慢)、かなりストレスがあるように見えました。
そういう課題があると、一般に企業は色々なサービスを提供しようとします。ただ当時の私から見ると、育児中の女性向けには どうも気の利いたサービスが足りていない。あっても家事代行くらい。
赤ちゃん・子ども向けには、多くの企業が色々なサービスを提供するも、育児ママ・ワーママ向けにサービスが不足しているように見えました。
不満や課題は大きいのに、それに対応するサービスが足りない。その状況は私から見ると解決すべきことであり、何か新しいサービスのチャンスでした。
でも、具体的に解決すべき課題が見つからない
「都市部の育児中の女性」向けに、何かしらの課題を解消する、何かしらのサービスを提供しよう、そのように自分の中でぼんやり決めるも、その後が大変でした。
なんせ私は男性で未婚なため、育児中の女性の真逆です。
育児中の女性の日常や状況は、メディアで意図を持って切り取られた様子くらいしか知りません。育児女性のじみじみした日常と現状を知らない自分。さて困ったぞ。かなり困ったぞと。
自分なりに仮説を立て、案を出し、調べ、ヒアリングをし、案をつぶす。これを何度も繰り返しました。思いついた案は、ダメなものばかりでした。
そんなとき、たまたま読んだのが『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』という本。2010年の終わりに読み、「所有から利用」というパラダイムシフトに、かなり衝撃を受けました。
その本に様々な事例があり、最も意味不明なサービスの一つが、見知らぬ人の家に泊まるという Airbnb。早速その年明けにニューヨーク旅行をし、Airbnbを使いました。結果としてAirbnbは全く違和感なく、新鮮な体験でした。
その経験を通じて、満たされていない何かと何かを、これまでにない形で繋げることが有効ではないかと考えるようになります。
「欲しい!」と言われる、でもなぜ欲しいのかがわからない
あるとき、「都市部の育児中の女性」向けに、料理人が自宅に出向き、リーズナブルな料金でホームパーティー料理を作る、というアイデアを思いつきます。
そして、育児中の女性の友人に、その粗いアイデアを話すと、
「そういうサービス欲しいんだよー!作るの?早く作ってよ!」
「それいいねー。本当に面倒なんだよね、来客の時って」
「それ使うよー。使う、使う」
など、軒並みポジティブな感想。これまでにない、良い反応です。
一方、他の層にもアイデアを話してみたところ、20代の男性の反応は軒並みネガティブなものでした。ネガティブを超えて、意味不明そうにする人も少なくありません。
個体として最高能力な20代の男性が 意味不明だと感じるというのは、私にとって良い情報でした。 個体能力が高く、突っ走る突破力があり、徹夜もいとわない20代の人には見えない課題こそ、30代の私が取り組むべきトピックだと思いました。
ただ気にかかるのは、育児中の女性に「欲しい!」と言われるも、なぜ欲しいのか、よくわからない、苦笑。 なぜ欲しいと言われるかわからないので、その背景にある課題も、深いレベルではよくわからない、苦笑。
しかも 自分に料理・料理業界に関して、知識も経験も、人脈もノウハウも、キレイなほどに、ない。料理人の友達、ゼロ。
都市部の育児中の女性が「欲しい!」と言ったから、やろう
さらに調べると、過去に出張シェフを提供するも、事業撤退した某上場企業があったりと、どうも好ましい情報はありません。
日本では一般に出張料理人を呼ぶ慣習もなく、私自身も人生で1度も料理人を呼んだこともありません。冷静に考えると なんか止める方が良さそう。
ただその頃、私の中で強く意識づけられていたのが「Make something people want」というシンプルなフレーズ。
アメリカのYコンビネーターという、起業支援の投資グループ(インキュベーター)プログラムに参加すると「Make something people want」と書かれたTシャツがもらえるそうです。
そして「Make something people want」が全てであると。
上手くいくか わかりませんでしたし、相変わらず何か課題かよくわかりません。ただ、以前から「都市部の育児中の女性が大変そう」に見えていた私にとって、「プロ料理人が自宅に出向き、リーズナブルな料金でホームパーティー料理を作る」が、その人たちから「欲しい!」と言われたもので、私にとっての「Make something people want」だろうと感じました。
MyChef開始の背景
このアイデアからプランに落とし、準備と検証と修正を行い、2013年の9月4日にサービスを開始しました。
■MyChef開始の背景
女性は出産により環境が大きく変わり、お友達と会う時間や美味しいものを食べる機会は減ってしまいます(お子さんのために少し我慢されている)。私はそれが課題だと感じ、ママさんがお友達と会う場(ママ会や自宅での集まり)を気軽に実施でき、独身時代に食べたような美味しくておしゃれな料理をシェフが自宅に訪問して提供することができれば、幼児を抱えるママさんが今よりもっと楽しく過ごせるだろうと思うため、MyChefを始めます。
出張シェフは富裕層が利用するサービスと思われてきました。しかし出張シェフを本当に必要とするのは、外出が大変な育児中のママさん、働くママさんだと考えます。一般の女性、特に育児中のママさんが、気軽に出張シェフを利用できるようMyChefを開始します。
マイシェフを始めた理由は、(善し悪しありますが)私の強烈な原体験に基づくものではなく、また、こうあるべきだという理想像に基づくものではありません。
以前から、なんとなく都市部の育児中の女性が大変そうに見えていて、その女性たちに欲しい!と言われた そのアイデアが、私にとっての「Make something people want」であり、 マイシェフを始めた理由です。
■マイシェフHP:http://mychef.jp/