ローエンド型破壊【事例】平成 日本はローエンド型破壊イノベーションでデフレが進行
クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」にて、破壊のタイプの1つとして説明された「ローエンド破壊型」イノベーション。
「ローエンド破壊型」は、既存の主流市場のローエンドに位置する顧客層に向け、性能や品質は劣るも最低限の条件をクリアする商品を安く提供するもの。
1970−80年代は、日本の様々な産業/メーカーが、ローエンド型破壊で世界に出て行った。自動車、家電、半導体、精密機械などなど、古き良きJapan as No1の時代。
1990年代以降の平成時代は、日本国内の個人消費市場にて、ローエンド破壊型の企業が躍進し、その結果としてのデフレが進行した。その実例をピックアップ。
■ユニクロ
1998年に原宿店とフリースで一気にブレイクしたユニクロ。
安くて、そこそこ良い品質。製造小売で攻め、東レとのパートナーシップで素材開発まで手がけることで、本州最西端から国内のアパレル勢力図を一気に塗り替えた。
平成初期にはこの世の春を謳歌していた大手アパレルメーカーや百貨店を、ローエンド型破壊で、奈落に突き落とした張本人のユニクロ。
■ニトリ
北の国から攻め入ってきた、お値段以上のニトリ。
2006年に東京進出し、リーマンショックに揺れた日本列島に、値下げ宣言を10回以上実施。デフレ一色の世の中で一気にシェアを拡大。
95年頃から市場縮小していたスーパーマーケット業界を、更に追い詰めた主犯格のニトリ。
■ダイソー
近畿の広島から名乗りをあげたダイソー。
「100円SHOPダイソー」のチェーン展開を本格化した1991年。なんでも100円、完全なるローエンド型破壊イノベーションで、スーパーマーケット業界に三行半を突きつけたダイソー。
■アイリスオーヤマ
東北地方の首都仙台から、全国制覇を狙うアイリスオーヤマ。
2009年に家電事業に本格参入後、多くの大手家電メーカー技術者を採用。今やアイリスオーヤマ単体売上の6割以上を家電が占めるほどに。
ユーザーインの商品開発で、そこそこ良い品質で安い家電商品を大量に量産。
■オープンハウス
住宅業界で業界勢力図を塗り替えたのが、「東京に、家を持とう」のオープンハウス。まさにローエンド型破壊イノベーションで、1996年創業ながら、今や新築戸建て住宅のトップ級ビルダーに上り詰めたオープンハウス。
土地仕入から販売まで内製化する製造小売モデルで、古い戸建てを買い取って解体し、そこに3棟立てるという必殺技で、東京に戸建てを持ちたい消費者のハートと懐をがっちり掴んだオープンハウス。
■カーブス
ローエンド側破壊イノベーションは、小売・メーカー領域のみならず、サービス業でも。
オトナ女性のライトフィットネスで、業界に風穴を開けた風雲児のカーブス。
平成時代は、フィットネス業界全体は伸びた業界ではある中で、大手が苦しむ中で、リーズナブルプライスで一気に大手の一角にのし上がったカーブス。
■QBハウス
髭剃りやシャンプー要らんから、早く、安く髪を切るQBハウス。
安く提供できるように、カット以外のプロセスを簡略化するオペレーションを徹底的に突き詰めたローエンド型破壊イノベーション。
■スシロー
衣食住の「食」でも、ローエンド型破壊イノベーションが進展。
「誰が握ったのかわからない寿司なんて」という寿司職人の常識に反して、そこそこの美味しさでお財布に安く、広く庶民が食べれるようになった回転寿司は、ローエンド型破壊イノベーションの代名詞で、その業界筆頭格のスシロー。
■平成時代 ローエンド破壊の実例
平成時代のローエンド型破壊で、伝統企業を圧倒した新興企業(今や業界大手)は、皆最初はローエンドに安かろう、そこそこよかろう品質で参入し、
伝統企業の売りとは異なる価値軸で訴求し、ビジネスモデルなり、提供モデルなりの差別化を通じて、一気に存在感を高め、そして徐々にハイエンド側に品質を高める、というパターン。
一方で、平成時代のローエンド型破壊は、主にEC市場やコンテンツ業界を除き、デジタル活用はあまりなされておらず、
きっと令和の時代は、software will be eating worldが様々な業界で現実のものとなるでしょう。