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公益資本主義とは|中長期的に価値を生み出し社会を豊かにする、21世紀型の資本主義の形

公益資本主義とは、「会社の存在価値は実体経済」にあり、社会の公器として、事業を通じて継続的に社会に貢献し、技術・人材・信頼の共同体への蓄積・社会への貢献により会社も持続的に企業価値を高めることができ、結果として株主も利益を享受できる経営を善とする資本主義の形。

「会社は株主のものである」と考える、株主資本主義・金融資本主義へのアンチテーゼでもある。

 

■公益資本主義とは

・会社は「株主だけのもの」ではなく、従業員、顧客、取引先、地域社会、国や地球全体までをステークホルダーと捉える、経営はこれらすべてを幸せにするという方針に基づくべき。
・公益資本主義とは「企業の事業を通じて、公益に貢献すること」。より具体的には「企業の事業を通じて、その企業に関係する経営者、従業員、仕入れ先、顧客、株主、地域社会、環境、そして地球全体に貢献する」ような企業や資本主義のあり方
・企業の関係者をステークホルダーと呼ぶが「利害」という言葉は対立概念を含むため違和感がある。そうではなく、企業に所属する人から地球環境までの全てを「企業を支える仲間」と捉え「社中」と呼ぶことにする。

・「公益資本主義」は、もともと日本型経営の理念や企業哲学に深くつながっている。

【株主資本主義と公益資本主義の違い】

●株主資本主義
・短期の勝負
・新たな富を生まない。マネーゲームゼロサムゲーム
・一部の富裕層と大多数の貧困層を生む
英米の金融界、メガファンドや投機家が望む資本主義

●公益資本主義
・中長期の勝負
・新たな富を生む。プラスサムゲーム
・層の厚い中間層を生む
・大多数の日本人と、世界の大多数の国民が望む資本主義

 

■公益資本主義が重視する3つの経営戦略

・持続的な経済成長を促すのが公益資本主義。会社は社会の公器であり、事業を通じて社会に新たな価値をもたらし、 そのような貢献を通じて、ここの会社も持続的に発展できる、という考え方。

・公益資本主義では、具体的に次の3つを重視する。

①中長期投資
持続的成長を支えるために、中長期的な投資を行う。経営陣は、短期の利益を求めつつも、中長期的な課題にバランスよく取り組む。

②社中分配
会社があげた利益を、株主だけでなく、会社を支える社中各員に公平に分配する。こうすることで社会の格差を是正し、貧困層を減らし、層の厚い中間層を作る。

③企業家精神による改良改善
リスクをとって果敢に新しい事業に挑戦し、常に改良改善に努める。本業で利益を上げながらも、リスクをとって新しい事業にチャレンジする。

 

■公益資本主義が重視する3つの指標

・公益資本主義では、公平性、持続性、改良改善性の3つの要素・指標に優れる企業を、将来有望であるとみなす。

①富の分配における「公平性」
・株主と経営陣が利益独占する株主資本主義と異なり、全ての「社中」に公平に分配する。
・会社が儲かり、経営者は裕福になっているのに、従業員の給料は上がらなければ、従業員のモラルや意欲が下がるのは当然。
・長期的に見れば、不満や嫉妬を生まない公平な経営の方が、創造性を発揮でき、将来性を持つ。

②経営の「持続性」
・「会社は株主のもの」という考え方は、短期の利益や株価上昇ばかりを追求する。
内部留保を取り崩し、中長期の研究開発費を圧縮し、人件費を削り、配当として吐き出すことを求められる。
・「株主への還元」は、「株主配当と自社株買いの合計額」だが、純利益100%を超えるような株主還元を繰り返せば、企業は体力を失い、持続的な成長はできない。
・自然災害や金融危機などの突然の危機が生じても、従業員や会社を守れるだけの内部留保流動資産を持つことは極めて重要。これをやるとROEは下がるが、それより遥かに重要な経営の持続性を増強できる。
・短期的利益ではなく、長期的な成長を目指す経営の方が、会社にとっても株主に取ってもプラスになる、という価値観の転換を図らなければならない。

③事業の「改良改善性」
・成功体験を持つ企業ほど、商環境の変化に対応する柔軟性を失い、新しい業態への転換が難しくなる。
・目先利益に囚われず、組織を硬直化させず、変化への柔軟性をいかに確保するか。経営の改良改善性も、公益資本主義の下での企業価値を決める要素である。

 

■公益資本主義実現のためのルールづくり

ルール① 「会社の公器性」と「経営者の責任」の明確化
・「企業、とりわけ上場企業は公器である」ことを定義する必要がある。
・「経営者と取締役会は、従業員、顧客、取引先、株主、地域社会、地球環境など、全ての社中に対して責任を持つ」ことを明文化した上で、新しい企業統治のルール構築が必要。

ルール②:中長期株主の優遇
・現行法では、投機家が短期間で株を売り抜け、莫大な利益を得ている。短期保有の株主を優遇する制度を改め、マネーゲームを封じ込めねばならない。
・そうしないと、いくら法人税率を下げても設備投資や賃上げにつながらず、会社の利益は株主配当か自社株買いに充てられるだけ。
・対抗策として、配当増と同じ割合だけ従業員の給与や内部留保をあげる仕組みを作れば良い。
・株主として権利行使できるのは5年以上保有している者に限る、という制限も設けるべき。短期トレーダーは配当金とキャピタルゲインを得る、経済的利益分配の受益者とみなす考え方。

ルール③:にわか株主の排除
人工知能が自動的に売買する超高速取引(HFT)は、欧米では既に規制が導入された。日本も、HFTに規制をかけたり、取引税を課すなどして証券市場に本来の健全な取引を取り戻さないといけない。
・会社の成長を誠実に願う株主が主役となる制度が必要。

ルール④:ストックオプションの廃止
・株主資本主義の追放のためには、CEOや役員へのストックオプション付与も廃止すべき。
・株式非公開のうちは、ストックオプションは大きな意味がある。
・しかし、上場後に経営陣に与えることは、ストックオプションの行使期間内に、無理にでも株価を高くしようという動機が働く。
(ただし、日本のストックオプションは退職金の代わりとして制度設計されるものもあり、米国型と同一に語ることはできない)

ルール⑤:新技術・新産業への投資の税金控除
・リスクキャピタル制度はすぐ整備すべき。リスクキャピタルへの投資を、会計上損金計上できることを認めることで、節税につながり、業績好調時にリスクの高い投資を促すことができる。

ルール⑥:株主優遇と同程度の従業員へのボーナス支給
株式配当と自社株買いの一定割合を、従業員に還元する(ボーナス支給)する規定を、コーポレートガバナンスコードに盛り込む。
・会社としては、自社株買いに充てる現金の一部を従業員へ回す形のため、出ていくキャッシュ総額は変わらず、公益資本主義の公平な社中分配を実現する手立てとなる。
・利益を上げた時には、ここぞとばかりに社員を豊かにすることは、会社経営陣が果たすべき仕事の一つ。

ルール⑦:ROEに変わる新たな企業価値基準「ROC
・現在、税制・会計基準・ガバナンスに関わる企業価値ROEで測られている。ただ資本を圧縮すれば数値が高くなるROEは、そもそも歪んだ指標である。
ROEは、あくまで「経営の結果」であって、「経営の目的」ではない。
・公益資本主義を測る指標は「ROC」。Return on Companyで、社中への利益分配を公平に行うための指標。
・公益資本主義における利益は、次の形で分配される。
 ー従業員:給与・教育・福祉
 ー株主:配当・株価上昇
 ー顧客:安全性・品質
 ー仕入先:適正価格での購買
 ー地域社会:貢献
 ー地球全体:環境
 ー会社自身:内部留保
・フローにおける価値基準は「分配公平性スコア」、ストックにおける価値基準は「持続性スコア」。

ルール⑧:社外取締役制度の改善
・現行の制度下では、社外取締役は株主の立場に立った企業統治を行なっている形。
・そうではなく、社外取締役に求められるのは、会社は社会の公器という観点から、企業経営を見極め、助言し、協力すること。特に次の3点。
 1:企業が持続的発展を遂げるために、短期業績だけでなく、中長期視点から経営が行われているか。
 2:中長期成長のために、リスクある新事業にも果敢に挑戦する経営ができているか
 3:利益を生み出した際に、社中各員に公正な分配が行われているかどうか。

ルール⑨:時価会計原則と減損会計の見直し
時価会計原則や減損会計は、投資家の立場から見れば最高のルール。最新価格を知りたいから。
・一方、時間をかけて無から有を生み出そうとする事業家にとっては、最悪のルール。
・技術開発に時間がかかると、監査法人から資本の減損を要求される。現金が、技術開発によって、知的財産になったのだ、といくら説いても納得してもらえない。
会計基準は民間のルールで、いきなり世界全体を変えれないので、まずできることとして、税制度の改正。例えば、高度高度研究開発への投資については、法人税を大幅減免するなどし、次世代の基幹産業を生み出すような、企業投資、新技術開発を促す。

 

■やめるべき株主優遇の規制緩和

・日本の上場企業の、外国人投資家の持ち株比率は約3割。売買取引量7割。その人を優遇する金融エコシステムは変えるべき。
株価や不動産価格が上がっても、国民に還元されなければ社会全体は豊かにならない。会社の儲けが株主ばかりに還元され、社員や非正規社員仕入れ先などに還元されない。だから一向に消費が伸びず、景気も上向かない。

金融庁が2014年に導入した「日本版スチュワードシップコード」、東証が2015年に定めた「コーポレートガバナンスコード」は、「中長期的観点から投資先企業の企業価値および資本効率を高め、その持続的成長」を促し「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与する」ためと位置づけられたが、結果として、利益の株主還元が行われた。
・要するに、これら導入により恩恵を受けたのは、従業員でも顧客でもなく、主にファンドと富裕層で構成される株主ばかり。日本企業の儲けの3割が海外流出している
・こうした経営判断は、コーポレートガバナンスコード導入前の日本では、ありえなかった。

■株主資本主義の問題点

・「会社は株主のもの」とする考え方=株主資本主義は、株主利益が第一で、従業員や顧客の利益は後回しになる。
・同じ利益をあげるなら短期間が良く、そのため中長期の投資は否定される。

企業価値時価総額で測られ、株価を左右するのはROE
・分子を拡大でなく、分母を削減する経営者が増加。資本圧縮、人件費や研究開発費の削減、工場売却など。長い年月と資金を必要とする研究開発はやらない方が良い、となってしまっている
・これまで研究開発や内部留保にあててきた利益は、配当に回すよう株主から圧力がある状態。これが続くと、必然的に新しい技術や産業は生まれなくなる

・株主資本主義・金融資本主義が蔓延したアメリカには、新技術を次なる基幹産業にする力はもはやない。

・経営者がストックオプション付与されると、株主利益と経営者利益が同じになり、ROEを上げ、ストックオプションで儲ける株価優先の経営方針になってしまう。

・株主資本主義で利益を得るのは、株主=資本家層・富裕層・CEO。
・中間層〜下位層年収は抑えられる。富裕層への富の偏在と、中間以下層の格差拡大、分断拡大につながっている。結果、社会不安が増大する。

 

 

参考企業:東レ炭素繊維)、JR東海(リニア)、トヨタ、J&J、ヤマト、三菱マテリアルなど。

トヨタは2015年に、日本初となる「AA堅種類株式」を発行。この発行の目的を「持続的成長を実現するための競争力強化」「中長期視点での研究開発投資」「中長期株主層の形成」にあるとしている。国内の中長期の個人株主を獲得し、優遇するための種類株。