出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

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研究開発から新規事業を作るために必要なこと

「研究開発から新規事業を作る・技術力を活かした新規事業を立上げる」
研究開発・技術に力を入れる会社で、このように考えない企業はありません。

しかし、企業の研究開発投資効率は、30年に渡り悪化の一途をたどり、研究開発起点の新規事業開発がうまくいかない会社が大半のようです。

研究開発から新規事業を作るために必要なことをまとめます。

 

■新規事業がうまくいく企業は8.3% 

研究開発から新規事業を作るために必要なこと

日経ものづくり 2016年3月号 のアンケートによると、新規事業がうまくいく会社はごくわずか、過半数の会社が新規事業はうまくいかないそうです。

・ほぼ失敗する・うまくいくの少ない:67.7%
・ほぼうまくいく:1.5%
・うまくいくの多い:6.8%

新規事業がおおよそうまくいくのは、100社中 8社のみ。

 

同調査によると、成功する確率が高いのは、顧客からアイデアを得ながら、既存の商品・サービスをベースに新たな市場・顧客を開拓する方法とのこと。
成功のカギは顧客ニーズ、既存商品をベースに新市場狙え|日経 xTECH

同調査記事ではさらっと書かれていますが、 "新たな市場・顧客を開拓する" は、既存のあらゆる業務と異なる性質の内容で、新規事業立上げの大きな産みの苦しみを伴います。

https://news.mynavi.jp/article/20191225-945767/title_images/title.jpg

例えば、産業用ロボットを製造販売するデンソーウェーブ社は、人協働ロボット(既存の製品)を、オフィス・研究施設など(新たな市場と顧客)への販売を目論んでいます。

この野心的な新規事業を成功させるのに、技術力は大した問題ではありません。

問題なのは、技術や製品以外を、ゼロから新たに検討・構築する必要があること。顧客発見・顧客の課題発見(≒用途開発)、販路開拓、料金帯や提供形態の整備、販売後のサポート保守体制など、産業向けロボとは、ことごとく異なるはず。

この点を明確に理解し、推進体制を作っているか否かが、"既存の商品・サービスをベースに新たな市場・顧客を開拓する" タイプの新規事業の成否を握っています。

 

■新規事業立上げに必要な "組織・人" 観点

研究開発から新規事業を作る

研究開発起点か否かに関わらず、新規事業立上げに必要な組織的な観点、人(担当者)の観点を説明します。

新規事業は、大まかに次の3要素に分けて考えられます。
 "①どういう組織枠組みで" × "②誰が" × "③何をどうやるか" 

 

①どういう組織枠組みで

既存事業が中心の成熟企業で、新規事業をどう作っていくか、組織的な観点です。
詳細は複数の別記事の通りですが、新事業の目的の明確化、既存事業と予算や評価軸を明確に分ける&変える、権限と意思決定の委譲、小規模組織など、新規事業立上げのための組織的なセオリーは、ある程度決まっています。

【企業内の新規事業開発】成功率を高めるための組織的観点
失敗確率を下げるために必要な組織的観点
イノベーションのジレンマ|大企業の失敗要因を知り、新規事業創出に役立てる
 画期的な製品やサービスを繰り返し創り出す企業内イノベーター 

 

②誰が

新規事業は、「新規事業に向く素養」を持ち、「新規事業の経験のある」社員を充てるのがセオリー。
日本の大企業で、新規事業に適した志向性や資質で、かつ既に何かしら挑戦や行動を起こしている「イノベーター人材」は2〜2.5%程度だそうです。
ほとんどの人にとって新規事業が難しい最大の理由は、やったことがないからです。2度3度と経験すると、直感が冴えるようになり、過去に見たことある光景が増えて、新規事業の成功率が高まります。

新規事業 向いている人の見分け方|大企業の社内新規事業 担当者の選び方
"非連続のイノベーション" を生み出す人材になるために

 

③何をどうやるか

具体的に何をやるかは、完全に個別事案となるためセオリーはありません。

その一方で、どうやるかは、過去の成功・失敗事例から、学べるところが多いように思います。日経ものづくりのいくつかのアンケートから読み解きます。

【新規事業がうまくいく要因】

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/263432/030200014/GW9.jpg

「新規事業開発で、うまくいったものは、次のどれが当てはまるか」の問いに対し、新規事業が上手な会社は、次の3点をあげます。
 ・顧客ニーズとの高い適合性
 ・経営トップの意識・意欲が高い
 ・技術力の高さ
 

【新規事業がうまくいかない要因】

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/263432/030200014/GW10.jpg

逆に「新規事業開発で、失敗したものは、次のどれが当てはまるか」の問いに対し、新規事業が下手な会社は、次の5点をあげます。

・新規事業開発の進め方や方法が不適切
・顧客ニーズに適合しない
・販売力の弱さ
・新規事業開発を推進する組織・体制の欠如
・技術力の低さ

 

「顧客ニーズへの適合」「技術力」は、新規事業が上手な企業も、下手な企業も重要視します。
その一方で、差が出るのが「新規事業開発の進め方や方法」「新規事業開発を推進する組織・体制」「経営トップの意識と意欲」です。

想像するに、新規事業が下手な企業では、経営トップの新規事業への意識・意欲が低いがゆえに、新規事業開発の組織や進め方への理解がなく、研究者が孤立無援状態になり、四苦八苦してうまくいかずに失敗に終わるのではないでしょうか。

 

【新規事業開発に関する特別な仕組みや取り組みあるか】

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/263432/030200014/GW7.jpg

新規事業が上手な企業は、「資源(人、モノ、金)の優先的投入」「新規事業開発リーダーへ権限委譲」などの割合が高く、 

当記事の "①どういう組織枠組みで" のセオリー通り行っています。

 

【新規事業開発の企画担当メンバーをどう選定するか】

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/263432/030200014/GW5.jpg

新規事業が上手な企業は、公募に応募した人(やりたいと自己アピールする人)の割合も高い。 

 

【新規事業開発のリーダー育成の仕組みや取り組み】 

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/263432/030200014/GW8.jpg

新規事業の上手な企業・下手な企業で差が大きいのが、「社員に新規事業開発を経験させる制度や体制がある」。

新規事業が上手な企業は、当記事の "②誰が" のセオリー通り、「新規事業に向く素養」を持ち、「新規事業の経験のある」社員を充てる傾向がありそうです。

新規事業開発は希望者に任せるのが一番 | 日経 xTECH

 

■研究開発の範疇を超える新規事業創出

研究開発部門は、研究を極め、その技術を開発する役割を担っています。

戦後〜1980年頃までは、研究技術開発 ≒ 新事業開発・新製品開発だったようです。当時は、欧米に追いつけ追い越せで、極論すれば、顧客や市場ニーズを考えて何を作るか考える必要がありませんでした。欧米の製品を、もっと小さく、高品質に、高速に、安く作る。
戦後の日本人は、豊かな欧米への憧れ・物の豊かさへの渇望から、企業の製品を大量購入・大量消費しました。

しかし1990年を過ぎ、欧米に追いつき、先進国は物質的に十分豊かになりました。顧客のニーズや望みは何で、顧客価値は何で、何を作れば良いか、考えなくてはならない時代に突入。

これは、研究開発部門の役割範疇を大きく超えています。この領域を担い、技術と繋げる役割が、1990年代以降、製品メーカーにも求められるようになっています。

 

このような歴史的な流れや変化を受け、「新規事業開発の進め方や方法」「新規事業開発を推進する組織・体制」を構築する必要があります。

 

■ 研究開発と並列の、新事業開発部門の常設を

研究開発活動と新事業に仕上げる活動との間にある大きなギャップを解消するには、事業モデル構築や顧客視点を担う "新規事業開発部門" を常設で設置して、研究開発部門と常に連携させるのが良いのではないでしょうか。

研究者や技術者は、他社の研究者や大学研究機関など、研究や技術の切り口では、社外との連携・交流をすることは多いです。しかし、世の中の社会動向や、消費者ニーズ、他社からの新規事業レベルのでの検討は、研究者や技術者は、苦手とするところでは。

研究開発・技術と、新事業・市場と繋ぐには、事業開発の能力と役割が必要です。
研究開発部門とタッグを組む、事業開発に慣れた担当者・市場や世の様々な業界動向を広く捉える役割がいて初めて、新規事業創出へ進むことができます。

研究開発投資効率を改善するのに、新規事業開発部門設置が良い

その役割を担える人材は、自社に少ないかもしれません。
ただ、これまでやっていないのであれば、そのような人材がいないのは当然。仕方がありません、これから始めましょう。

 

研究開発部門・研究開発費が毎年計上されるのと同様に、新規事業開発部門・新規事業開発費を毎年計上して、継続的に新規事業を作り続けるのが良いでしょう。

新規事業を思いついた時にやるのでは、新規事業の経験者の蓄積ができません。
新規事業開発部門が常設でないと、いつも素人が新規事業を担当する事態になってしまいます。

また世の中や社会との連携は、社外から見て常に窓口があるからこそ、既存顧客や既存製品に限定されない、多様な情報が入ってくる可能性を持ちます。

 

その新規事業開発部門は、複数のチームに分かれることでしょう。
・自社技術を、買ってくれる新しい市場・新しい顧客を探すチーム
・自社やグループ内で、技術が役立ちそうなプロダクトや部門とつなげるチーム
・顧客起点で解決すべき課題・困りごとを特定し、自社で事業を開発するチーム

例えばこの3つのチームは、担う役割や目的、日常の仕事も全く変わってきます。
またいずれのチームも、自社内の全体像(様々な技術や商品・顧客層)を把握する必要があり、他社からの持込提案の窓口ともなります。