出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

個人向け出張レストラン・出張料理 "マイシェフクイック" の社長のブログです

【シリコンバレー式 最高のイノベーション 要約】大企業の新規事業に役立つ内容や観点

シリコンバレーの著名アクセラレーター代表による、シリコンバレー流のイノベーションの生まれ方の書籍。スタートアップと成熟企業の新規事業では違いもあるため、成熟企業の新規事業に関係しそうなところを要約します。
アメリカ人が書いた書籍であり、激しい自己主張が普通のアメリカ人と、和を以て貴し集団思考の日本人では、やや解釈を変える部分もあると思われます)

https://www.diamond.co.jp/images/book/6/9784478103876.jpg


 

■1イノベーションのカギは多様性と模倣

■テクノロジーの罠にハマってはいけない

シリコンバレーの成功の秘訣は、テクノロジーではない。テクノロジーは重要だが、成功したスタートアップのほとんどは、起業した時点で独自のテクノロジーを持っていなかった。
・成功したスタートアップが利用するテクノロジーは、大抵既存のものかオープンソース。独自テクノロジーを開発したわけでなく、既存テクノロジーを、これまでにないやり方で応用しながら、ビジネスモデルとデザインのイノベーションに力を注いだ。

・独自のテクノロジーを持っていてもユーザーを理解できていないスタートアップは、何も持たずに仮説から始めたスタートアップと比べて、価値を生み出せずに苦労する。解決策から始めて、問題を探すからだ。
・独自テクノロジーがあっても、ビジネスチャンスがはっきり見えていない企業は、テクノロジーに合うソリューションを考えがちになる(テクノロジーの罠)。そんなソリューションは大抵の場合、そもそもありもしない問題を解決するようなものでしかない。
シリコンバレーは流行に流されがちで、魅力的な新しいテクノロジーが出現すると、みんな惚れ込んでしまうが、酔いはすぐ覚める。

・大企業もまた、テクノロジーの事業化が得意ではない(パロアルト研究所は顕著な例。様々な技術や発明は、ゼロックスの利益に貢献せず、ゼロックスの凋落を止めもしなかった)。

・テクノロジーの罠にはまらず、世界とその問題に目を向け、既存テクノロジーを利用し、その目的に合うよう仕様を変えて、需要があるか市場で試してみよう。そこから、その事業機会を深掘りする方が良い。

 

■違う考え方をする、反骨精神と異質性

シリコンバレーは、世間の除け者、ハッカー、ヒッピー、芸術家、技術者の集まりから始まった。シリコンバレーで創造性が爆発したのは、MBAと芸術家とオタクと科学者とクスリでイカれたヒッピーたちが、同じ場所でアイデアをぶつけ合ったから(1960年代70年代)。

シリコンバレーの人たちは、違う考え方をする(Think different)。反抗的であることを楽しみ、逆境を跳ね返し、現状に疑問を唱え、人の行かない道を行く。
イノベーションとは、新しい何かを創り出すこと。誰も見たことのない何か、誰も試したことのない何かを生み出すこと。

・世界のほとんどの地域と違い、シリコンバレーでは権威を無条件に尊重することはない。誰もが何かに貢献できるし、誰でも意見を言う権利がある、という文化。
・反骨精神と異質性がシリコンバレーの強みであり、人種と文化の多様性、移民への開放性、違いを受け入れる精神が、シリコンバレーの大きな競争優位性。
・アジアには優秀な人材も多いが、現状を変えようとする熱意、文化的多様性、非伝統的なアイデアやものの見方を受け入れる姿勢が、アジア人にはない。

・大きな飛躍はいつも、異分野のコラボレーションによって引き起こされる。
・同質の教育や人の集まりから、イノベーションは生まれない。

 

■パクリは賢い戦略

・成功したスタートアップの多くは、基本的に先人をパクリ、その上にイノベーションを積み重ねている。
・全てのイノベーションは、過去の何かのパクリから始まる。そしてパクるだけでなく、自分のものにする。

 

■2小さく、少なく始める

■小さなアイデアで始める

イノベーションを起こすには、大きなことを考えねばならないと思っている人が多いが、それは真実からほど遠い。多額の予算、大人数のチームのプロジェクトは、大抵失敗に終わる。
・本物のイノベーションを起こすには、大きく考えてはいけない。小さく考えなければいけない。大抵いちばん小さなアイデアが産業を変える力を持つ。
・3人のスタートアップでも、3万人の多国籍企業でも、イノベーションのプロセスはほぼ同じ。チームが小さく考えられるような環境と構造を創り出さねばならない。

 

■少ない人数で始める

・理想的なチーム規模は、大企業なら2人から8人。人数が少ない方が、お互いに協力し、意思を通わせうまく親密に仕事ができるから。少人数なら全員が親しくなり、お互いの長所と短所を理解し、より深い関係を築くことができ、チームワークは良くなりがっつり組んで仕事ができるようになる。
・チーム成功の鍵は、全てのメンバーが全力でプロセスに貢献できる構造になっているかどうか。少人数の方が動きが早く、逆に人数が10人を超えると仕事のスピードが下がる。
・全員が積極的にイノベーションのプロセスに貢献でき、意思決定に参加できるようなチームが良い。

・理想的なチームに必要なのは、ハスラーハッカー、ヒップスター、ホットショット。大企業ならこれに加えて、政治家とオーガナイザーが必要。
ハスラー:"ビジネス","顧客","市場"を深く理解している人。企業のビジョンとプロダクトを世界に売り込むリーダー。
ハッカー:テクノロジーに精通し、それを使って事業を変える人。テクノロジーオタク。
ヒップスター:クリエイティブ面のリーダー、デザイン思考はとても大切。
ホットショット:高度に専門的ことに挑戦する場合には、その専門家が必要。その領域や問題の仔細を深く理解する人。博士号を持つ研究者など。
政治家:大組織の中でプロジェクト支援し、リソース確保し、部署間の調整をする人。
オーガナイザー:プロジェクトへの支持を取り付け、プロジェクトを管理し、日々の経費に目配りをする人。

・ハングリーで野心があり、心が開かれていて、企業の伝統に挑戦し、限界を広げて、その途中で失敗することも厭わないような人。

 

■少ない予算で始める

・チームが多額の予算を要求する場合、その費用を正当化する提案や計画が必要。会社がその提案を認めると、チームはその計画を実行しなければならなくなる。そして、新しい道を自由に模索できなくなる。
イノベーションは模索そのものなのに、詳細な計画を出した時点で計画に縛られる。現実には、それが正しい計画かどうかわからないし、計画通りに実行できるかもわからないのに。新しい可能性を開くどころか、可能性を閉ざしてしまう。
・大きな予算のもう1つの欠点は、チームが大人数になってしまうこと。大きくなるほど、方向性の修正が億劫になってしまう。発見と実験、素早い方向転換こそ、イノベーションの真髄なのに。

・予算が限られていると、イノベーティブな考え方が生まれやすくなる。お金もリソースもないからこそ、野心的な起業家ならば、過激なアイデアを思いつくことがある。他の人が見落としたことや、無理だと思ったことに挑戦する。お金がなければ常識外のことを考える。
・お金ではなく、頭を使えば、何かいい方法を思いつくものだ。制約があると、工夫せざるを得なくなる。

・既存技術とサービスを組み合わせて、新しい何かを創りだせば、自分たちで開発するより安く早く市場に提供できるようになる。
・既存のテクノロジーは、新しいものよりも早く広く普及しやすい利点がある。既に検証され、ユーザーにも馴染みがあるため。
・お金がないことで、自前主義の呪縛から逃れられることもあるし、それが刺激となりより速く製品開発されたり、新しいアイデアが生まれたり、創造性が花開くことも多い。

 

■小さな範囲で始める

・成功するスタートアップは大抵、はじめは比較的小さな問題に取り組んでいる。
・1つのカテゴリに狙いを絞り、集中する。コアの機能から初めて、1つのことが本当にうまくできるようになったら、そこから外側に広げるべき。MVP開発のコツは、コアの価値だけに集中して、他に何もしないこと。
・本物の革新的プロダクトは、最初から完璧ということはない。何度も繰り返し修正を重ねるのが普通。

イノベーションは難しい。最初から全てをシンプルに留めることは欠かせない。ユーザーが本当に欲しいものを1つ見つけること。それだけでビジネスが成り立たねば、初めからやり直した方が良い。機能を増やしても、絶対うまくいかない。
・ほとんどの場合、イノベーションとは、斬新なアイデアを思いつくことではなく、むしろユーザーがプロダクトやサービスに求めているものを正確に把握することにある。

イノベーションが成熟するには時間がかかる。大きく考えながらも、小さく始めることが成功につながる。その逆ではない。

 

■3イノベーションのコツを知る

■自分たちの思い込みを疑う

・アイデアを思いつく一つのやり方は、自分たちの考え方・思い込みを疑うこと。
・思い込みを検証する方法は、自ビジネスについて真実だと思っていることを全て書き出し、項目の一つ一つに疑問を投げかけること。これは一人でやるのでなく、チームでやるのが良く、外部の意見も必要。
・刷り込みを覆すのは難しく、外部メンターが助言と分析と批判的な思考を提供し、これまでのやり方に異を唱えさせる。

 

■スタートアップは、うまくいかなくても失うものはない

・スタートアップにとって美味しい市場は「スタートアップには失うものが何もなく、既存企業には失うものばかりの市場」。
・破壊的ビジネスモデルでスタートアップが参入すれば、既存企業は価格を下げる他に対抗手段はなく、ゆっくり死んでいく。大企業は現状にあぐらをかき、自分たちが一番ではない世界を思い描けない。

・大企業の中でイノベーションを起こそうとしているなら、スタートアップのように考え始めた方が良い。自社事業とのカニバライズを心配する余裕はない。自社でやらなければ、誰かがそれをやるだけである。
・勝ちたかったら、自社の顧客を自分たちで奪うしかない。たとえそれが、短期的な損失につながったとしても。

 

■大切なのはテクノロジーよりデザイン力

・技術のイノベーションより、デザインのイノベーションから価値が生み出されている。
・デザインの本質は、そのプロダクトを使うとき、人はどう感じるか? 重要なのは体験であり、機能ではない。些細なことを見過ごしてはいけない。

・解決すべき本物の問題があるかは、既存プロダクトのどこがどうダメなのか、理解することがカギになる。
・これから10年、デザインにより数多くのプロダクトが作り変えられるだろう。デザインには莫大な費用が必要なく、ユーザーがプロダクトやサービスに何を求めているか見通せる、非凡な才能を持つ人たちがいればいいから。

 

■ビジネスモデルのルールを書き換える

・ビジネスモデルのイノベーションは、ルールを研究し、それを破ること。
・例えばクレイグズリストは、無料のクラシファイド広告から始まった。伝統的な紙媒体のルールを無視するやり方だった。

・1つのビジネスモデルがうまくいかない時は、別のモデルを試す方が良い。プロダクトと、ビジネスモデルを車の車輪と考え、どちらも同時にイノベーションを起こさなければならない。

 

■開発者の罠に気をつけろ

・初日からプロダクト作りに取り掛かってはいけない。時間の無駄なだけでなく、間違った方向に行き、失敗の可能性を高めることになる。
・数ヶ月もプロダクト開発に時間を費やすと、チームはそのプロダクトに執着するようになる。必死で努力したことを、諦めて捨てたい人はいない。
・失敗プロダクトに時間とリソースを注ぎ込むほど、真実を直視できなくなる。たとえユーザーがそのプロダクトを必要としていないと証明されても、チームにはそれが認められず、今あるものをどう改善しようかと考えてしまう。

・開発者の罠を避けるのに一番効くのは、簡単なプロトタイプを作ってみること。簡易プロダクトは、作るのに時間も労力もかからないが、そのビジネス案の基本的な前提が正しいかどうか検証するのに役に立つ。

・消費者がそれを買うかどうかを検証したければ、半日でウェブページを作り、ウェブ広告を使ってターゲット層を誘導し、注文を取る。そうすれば、人々があなたのプロダクトにお金を払うかどうか、手っ取り早く検証できる。
・ある会社が靴販売サイト立上げた時、その案を検証するために、まず簡単なウェブページを作り、靴の画像に地元の靴店の販売価格をつけて掲載した。そのサイトで注文を取り、自分で地元の靴店でその靴を買い、ユーザーに発送していた。そうすることで、時間もお金もかけずに市場を検証できた。サプライチェーンを築いたり、倉庫を借りたり、在庫を持つ必要もなく、検証できた。その後、社名をザッポスと変更した。
・ある会社が、レストラン厨房をシェアするサービスを思いついた。本格的な開発に取り組む前に、簡単なウェブページを作り、レストランオーナーと料理人に電話し、営業時間外に厨房をシェアする/借りれるサービスに興味あるか聞いてみた。すると、問題が多すぎるとわかり、このビジネスは到底うまくいきそうもないとわかり、時間とお金を無駄にせずに済んだ。

・簡易プロダクトタイプは、プロダクトではなく、実験プロセスである。何がうまくいくか、いかないかを学ぶために行う。
・「新しい仮説」→「簡易プロトタイプ作成」→「仮説検証(顧客提示とヒアリング)」→「結果の確認と、仮説の微修正」の循環を繰り返す。
・プロトタイプは、ハードウェアもソフトウェアも使わない簡易プロトタイプが最も役立つこともある。データを集め、検証できれば、どんなものでもいい。
・早い段階からたびたびユーザーを巻き込むことがカギになり、ユーザー相手にアイデアを試し、検証と修正を行う。プロトタイプを作り直し、他のものを試す。ユーザーとか変わる度にチームは何かを学び、解決すべき問題をより深く理解できるようになる。

 

■4ユーザーを観察し、顧客データを集めて、価値を提供する

■コアの強みを活かして優位性を広げる

・自社に、世界的な流通網や独占的な販売チャネル、名のあるブランドや成熟した生態系があるなら、それを活用する方が良い。専門性や競争力のない分野、自社の優位性の外で成功することは難しい。
・成熟企業は、コアの強みの外で勝負する場合、コア事業と100%方向性が同じでない事業で失敗が続くと、ほとんどの会社は耐えられなくなる。
・コアの外で勝負するときは、自社の進みたい道だとはっきりさせておく方が良い。失敗が続き、時間を失い、費用が膨らむことを覚悟しておく必要がある。コア競争優位の外で成功することがどれほど難しいかは、理解しておく必要がある。

・新たなコアコンピテンシーを獲得することは誰にとっても難しい。だから、ほとんどの企業にとっては、コア事業に近い領域でイノベーションを起こす方が良い。
・コア事業から周辺領域に拡大した時に、利益と継続的な成長が生まれやすい。
・最高のイノベーターは、コア事業の強みの上に新たな優位性を築き、それ自体が新しいカテゴリーとなるような製品やサービスを周辺市場に持ち込んでいる。

 

■ユーザーは最高の情報源

・スタートアップに必ず聞くのは「ユーザーは誰か?」ということと、「ユーザーとどのくらい時間を過ごしたか?」。
・スタートアップの大半が軌道に乗れない理由の1つは、最初の段階でユーザーと時間を過ごしておらず、ユーザーを十分に引きつけていないこと。

・オフィスを出て、ユーザーの現場に入る必要がある。ユーザーの不満がイノベーションのチャンス。ユーザーが普段はあまり口にしない「満たされない欲求」を理解しなければ、何もデザインできないし、創れない。
・ユーザーの元に行き、ユーザーと話し、ユーザーが毎日何をしているか学ぶことに、できるだけ多くの時間を費やすべき。自分の直接の経験が何より役に立つ。その手のインサイトは、本や会議やアンケートでは生まれない。現場にいて初めて出てくるもの。

・ユーザーに欲しいものを聞くのは、改善アイデアには役立つが、革新的なイノベーションや新規事業となると話は別。

・何を質問するかと同じくらい、どう質問するかが重要。ユーザーに「何が欲しいか」聞いてはならない。「何に困っているか」「製品に何をして欲しいか」「なぜそうして欲しいか」「それがどう役立つと思うか」問う必要がある。
・どう質問するか以上に重要なのは、誰に質問するか。自社の得意客にフィードバックを求める企業は多いが、そのフィードバックは、ユーザーの大半にとってどうでもいい場合が多い。
・ユーザーを巻き込むのは大切だが、本当に有効なのは、適切な人たちに、適切な質問した場合だけ。

 

■ユーザーを観察して、学ぶ

・ユーザーを観察するのに一番良い方法は、彼らがプロダクトを初めて使うのを、何も言わずに肩越しに眺めること。
・ユーザーに知識を見せ付けようとするな。口を閉じて黙り、相手に話を続けさせる必要がある。あなたのプロダクトをどう使うか、どこに不満を感じるか、注意深く見よう。
・自分たちのソリューションが正しいという確証を得ることに必死になってしまい、観察も学習もできなくなると最悪だ。
イノベーションとは、あっというアイデアを思いつくことではない。探求であり、証拠集めであり、ユーザーへの聞き取りであり、隠れた真実を表に出すことだ。

・大抵の場合、チームの最初の思い込みやアイデアは間違っている。自分たちの無知を認め、発見し続けることに力を入れよう。観察と質問が大切。
・優秀な人は次から次への仕事を処理し、作業の生産性という点ではそれでいい。しかし、「学び」の点では悪害でしかない。観察は、急いではいけない。
・観察するということは、正しい人に、正しい問いを投げ、聞くだけではない。どのように質問するか、どう観察するかも重要になる。さりげなく、アドリブのように自然な形で重要な質問をすると、バイアスが減る。
・観察をしたら、チームで振り返りのプロセスが必要。時間を取り、細かいことをあれこれ思い返すことで、人々の発言や行動の背後にある隠れた意味が理解できることが多い。

 

■データを集める

・プロトタイプ的作業を通じて、特定の顧客データを早期に集めることが、最も効率的なプロダクト開発法。
・キーワード検索、グーグルトレンド、ユーザーへのインタビュー、SNS、競合サービスの情報。ランディングページで注文を取る、事前注文ページ、動画説明、簡易プロトタイプ、フェイクMVP(ホームページだけあり、裏側の業務は全て手作業)など。
・プロトタイプ施策やホームページ作成前に、早いうちに集めるデータほど役に立つ。そのプロダクトを開発しない方が良いことがわかったり、競合が見つけていない手法を確認できるかもしれない。
・データがビジネスプランの土台になる。「僕はこう思う」じゃなく、「証拠をお見せします」と言えれば勝てる。データの裏付けがなければ、アイデアが創造性に富んでいても、意味がない。

 

■5不安要素を取り去る

■「恐れ」との戦いに勝ち、失敗を汚点としない組織文化に変える必要がある

・人間は不確実性を好まない。ほとんどの人が、不確実な結果より確実な結果を選ぶ。大抵の人は、本能的にリスクや失敗を避けたくなるもの。
・VCが出資するスタートアップの大半はいずれ消え去る。企業内のイノベーションプロジェクトも大半は失敗する。イノベーティブであるほど失敗する確率は高い。

・科学者が失敗と向き合う姿勢には、学ぶところがある。科学者は仮説を立て、一連の実験を行い、ダメな場合は次の実験に向かう。科学とは、何度も試して何度も失敗することに他ならない。実験の結果が仮説と違っていても、それはプロセスの一部だ。

・成熟企業では、イノベーション成功から得られる見返りより、失敗で受ける罰の方がはるかに大きい。そのような組織構造の中にいれば、創造的な人材でさえ、リスクをとって革新的なプロジェクトに参加することが、バカバカしいことはすぐわかる。

・研究開発部の科学者だけでなく、社内の全ての改装でイノベーションを起こすためには、失敗をありがたく受け止め、それを汚点としないような組織を築くことが必要。
・ほとんど全てのイノベーションは、失敗からの学習によって生まれてきた。失敗が学びと反復と適応につながる。

・失敗の恐れを取り除かなければ、組織はいつまでたっても段階的なカイゼンに留まる。社員はカイゼンに精を出し、これまでにないものを生み出すことはない。シェア維持はできるが、市場を作り替えたり、生み出すことはできない。

 

■新しいものを受け入れる文化を創る

・まず、受容の文化を創り出すこと。受け入れるのは失敗だけでなく、バカバカしいアイデアも、つまらない失敗も、矛盾する考え方も、金のムダ遣いに見えることも。
・チームメンバーのアイデアが、どれほど突拍子なく、とんでもないものに思えても、アイデアを出した人を批判してはならない。歴史を少しでも振り返れば、突拍子もなく現実味もないアイデアが、未来を創ってきた。

・大きく飛躍したいなら、周りに染まらない変人が必要になる。先を読む目を持った人材を外に追い出さないために、伝統に逆らうような意見や、口に出せない考え方を、安心して発言できるような企業文化がなければならない。
・イノベーティブな企業と、そうでない企業を分ける一番の要因は、組織文化。

【イノベーティブな企業文化6点】
・価値観:企業の価値観を決めるのは、経営トップやリーダーの行動。言葉ではなく、行動。創造性の育成や、新しい起業家的プロジェクト立ち上げに投資している。
・振る舞い:経営者が意図的に自社の既存事業を破壊し、聖域を排除し、顧客に耳を傾けていること。それが重要。
・環境:学習を育み、社員同士の信頼を築き、独立した思考を促すような心理的安全な環境。
・リソース:イノベーションの先頭に立てるような人材、資本やプロジェクト。
・プロセス:アイデア提案し、検証し、それを実現する、イノベーションプロセスが確立されている。
・成功:仕事に対する評価の仕方。

 

■失敗を褒める文化を作る

集団思考や同調欲求は、イノベーションの的である。先人のやり方に従うと安心し、他の人が信じることを自分も信じる方が簡単で、一般的に真実とされることに歯向かうより信じる方が簡単だ。
・しかし、組織の中の人の考え方を変えるには、既成概念を疑わなければならない。

・フォーシーズンでは、企業文化を変えるため、「失敗」「間違い」といった言葉を禁止し、「不具合」と言うことにした。言葉を変えるつまらない方法と思うだろうが、それが問題の核心である。言葉が変われば、考え方や行動が変わる。
・グーグルXでは、失敗を褒めており、早めに失敗したチームにはボーナスや休暇を与えている。早めに失敗することを目標にすれば、安上がりで、成功の可能性のある他のことに挑戦できる。最後に失敗すると高くつく。自由に新しいことに挑戦できる道が開かれる。

・誰もが現状を打破するように励まされ、新しい発想を奨励されるような、寛容で開かれた文化を創ることがカギになる。
・不可能を可能にできると考える人たちが、受け入れられるような環境を作らなければならない。

 

■学びに集中して、不安を払拭する

・プロジェクトが失敗するたびに、学びの価値が生まれる。チームがプロジェクトの経験から、学ぶことの中に価値がある。
イノベーションチームの取り組みを全て分析し、顧客や市場、プロセスなどの学びを社内に共有できたら、それは失敗ではなく、前進になる。
・過去の失敗から得たデータや知見が、次の大きなブレークスルーに繋がることは多い。失敗が大きいほど、学びも多い。
イノベーションチームは、自分たちが経験して学んでいることを、逐一社内に伝えなければならない。

・個々のプロジェクトの成功や失敗より、学習のプロセスの方が大切。イノベーションチームは学びのプロセスに集中して、その発見を社内に伝えることに力を注ぐ必要がある。
・学びを制度化するには、チームで毎週、最新の失敗を教え合い、どうしてそうなったのかと説明すると良い。みなの目が失敗ではなく、新しい知見の獲得のプロセスに向くようになる。グループとして学び、事業のあらゆる側面を問い直せるようにしたい。
・失敗にはいくつもの理由があり、わざと失敗する人はいない。失敗を責めても問題は解決せず、悪化させるだけだ。問題を正しく認識し、正しい質問をする方がはるかに役に立つ。

 

■成熟企業でイノベーションを進める8つのルール

・成熟企業では、社内政治が関わってくるのは間違いない。どの部門の管理職も、本社の管理部門は新規事業チームの手綱を握っていたいと考え、事業部門は自分の縄張りが荒らされ、権力が弱まることを嫌がる。しかしそれではうまくいかない。
イノベーションチームが特殊であることを、社内の全ての部門に知らしめる必要がある。イノベーションチームは、既存事業の部門と同じルールは当てはまらない。

・社内イノベーションの道を開くことを助ける8つのルール。

イノベーションを最優先する
イノベーションの重要性を社員全員に認識させ、イノベーションの列車に乗るか、そうでなければチームの邪魔をしないように、社内に周知徹底しよう。

2協力体制を敷く
既存事業部門の管理職とイノペーターの協力体制を築こう。イノベーターを仕切りに囲い入むと、全社にその恩恵が行きわたらない。全ての人が参加する必要がある。

3ビジョンを掲げる
未来へのビジョンがなければ、チームの支えがない。明確で説得力あるビジョンを土台に、使命を築き、プロジェクトを立ち上げると良い。

4志願者を募る
優れた志願者は社内にいる。彼らがプロジェクトに志願するのは、そのビジョンと使命を信じるから。それが会社の未来だと信じ、その実現に貢献したいと思っている。彼らに協力する手段を与え、障害を乗り越える助けや、問題解決の手助けをしてもらおう。

5新しい道を開く
既存事業の厳格な手続き・命令系統とは別に、イノベーションチームのための道を作る必要がある。イノベーターに裁量を与え、禁じられた領域を横切る権限を、彼らに与えなければならない。

6現実的な目標を定める
イノベーションは視界不良で苦しい旅だ。道標となる小さな目標を設定して進歩を測り、チームで学びを共有しよう。チームに短距離走を走らせ、仮説を検証する。カギになる社内の参加者と、発見を共有しよう。成功も失敗も組織全体の学習機会として捉え、賞賛しなければならない。

7最後まで諦めない
最初は勢いのあったプロジェクトも、数ヶ月もすると勢いがなくりがち。しかし、そうさせてはならない。CEO以下の全員に、旅の最後まで参加してもらわなければならない。

8変化をありがたがる
これらが実現されるには、企業が劇的に変わらなければならない。長く続いた伝統を覆し、確立された手続きを書き直す。その途中で、多くの人を怒らせることになる。しかし、それがイノベーションの本質である。

 

■おじさん悲観論者がイノベーションを殺す

・成熟企業でのイノベーションの取り組みや、若手社員を自由に独立スタートアップのように活躍させる考え方は、机上では、魅力的に見える。
・しかし、誰かが現状を変えようとすると必ず、否定的な意見が出る。特に20代30代の若手が変えようとすれば、否定的な意見が出る。変化を嫌い、嫉妬の炎を燃やすのは、大抵おじさん悲観論者(上層部や50代60代)。
・人は誰しも縄張り意識を持ち、自分の縄張りを支配したがる。若い人が来て変化を起こし、何かを要求されたり、計画を混ぜ返されて、嬉しい人はいない。しかしそれが、イノベーションチームの仕事である。

・悲観論者はイノベーションを殺す。そのような姿勢を許してはならない。

イノベーションチームにあった組織構造や独自の評価過程を設置しなければ、失敗は避けされない。おじさん悲観論者のかっこうの餌食になる。
・法務部が障害になり、プロジェクトを殺すこともある。法務部や社内弁護士の目的は、本社を守ることと、クビにならないこと。イノベーションチームが社内弁護士を迂回できるような計らいが必要になる。
・広報が障害になることも。本社のプロダクトと区別できるよう、別ブランドなどが求められる。

・スタートアップには、大企業のような制約はない。いつも危険と隣り合わせで、行き止まりで戻ったり、フェンスをよじ登ったり、フェンスの下に無理やりトンネルを掘ったりする。成熟企業のイノベーションチームにも、同じ自由を与えなければ成長できないし、物事を最後まで成し遂げられない。 

 

■6大きなリスクを取って大胆に挑戦する

イノベーションは速さが命

イノベーションは速さが極めて重要。スタートアップが置かれる環境は、半年ごとに変わる。たった数ヶ月で時代遅れになるスタートアップも少なくない。
・小回りの効くスタートアップは、そのスピード感を心得ている。成熟企業のイノベーションにも同じスピードが求められる。重荷がなく、しがらみがない方が良い。完了手続きを取り除き、加速させなければならない。

・いつも新製品やサービスをいち早く市場に出し続けている企業は、リーダーとみなされる。ブランドイメージへの影響は大きく、消費者はパクリ品ではなくイノベーターの製品を買いたがる。

・スピードは、大企業は不利だ。社員の大半はそれほど必死に働きたがらないし、リスクも取りたがらない。大企業の社員は、スタートアップのようなプレッシャーはなく、何をしなくても給料をもらえるので、スピードより注意深さを優先する。

・極めて重要なことは、挑戦に背中を押されるような人だけをイノベーションチームに入れよう。評価やボーナスを気にする人はダメだ。怠けのもはダメだ。タダ乗りしようとする人もダメだ。口先だけの人間もいらない。
・正しいDNAを持つチームができたら、追越車線を設ける必要がある。そして誰にも邪魔させてはいけない。
・承認に数日以上かけてはいけない。数日以内に承認か否認されなければ、自動的に青信号とすれば良い。他の部署でやっている書類の処理は免除されるべき。必要な物を購入する権限が与えられ、説明や清算は事後で良い。信頼できるリーダーがいることは、欠かせない。
イノベーションチームは、他部署の縄張りに入ったり、ルールを破ったりする特権を与えられなければならない。
・競合を手を組む必要があるなら、そうする権限を持ち、外部のデザイン会社を社内の倍の値段で発注する必要あるなら、それが許されるべきである。
・追越車線は必要だとしても、イノベーションを既存事業部門と完全に切り離してはいけない。心理的な分断が起こり、自分には関係ないし、チームに参加も協力もしなくていいと思われてしまう。

・高速化のもう一つの方法は外注。自分たちが最高で最速でなければ、最高最速の誰かと探す方が良い。自前主義は、追越車線に置かれた信号のようなもので、渋滞を引き起こす。

 

■素早く失敗し、反復検証する

・速さを極めるということは、反復検証改善サイクル数を増やすということ。プロダクトを繰り返し検証し、変更し、変更箇所をまた検証することで、初めて進歩できる。
・新製品のほとんどは失敗する。しかも大ゴケする。プロダクトを市場に出せるかどうかは、それほど重要ではない。学習スピードが重要。
・学習と発見のプロセスを加速させるためには、反復スピードに注目すべき。反復サイクルは毎回、チームの前提を検証する機会であり、何がうまくいって何がうまくいかないかを発見する機会。

・スピードとは、例えばプロトタイプ制作とか、自分たちの勝手な目標やスケジュールのことではない。その事業についての深い知見を得られなければ意味がない。
・大切なのは、そのビジネスの隠れた真実を見つけ出すことであり、ユーザーがプロダクトに何を望み、何が爆発的なリターンにつながるかを理解すること。
・不格好でもプロダクトを世に出して、すぐに学習を始める方が良い。時間をかけて開発しても、どうせユーザーの望むことはできないから時間のムダ。
・ユーザーの手にプロダクトを委ねないと、本当の反復プロセスは始まらない。調査やプロトタイプでは、ユーザーの欲しいものはぼんやりとしかわからない。口ではなんとも言えるが、本当の学びが始まるのは、ユーザーがプロダクトをどう使うか見たときである。

・例えばネットフリックスは、進みながら色々作っていく。予測してもバイアスがかかるだけ。うまくいくものは残して、うまくいかないものは捨てる。試したものの9割はうまくいかない。
・グーグルも同様で、例えば1週間の試作で5〜10個のアイデアを試しても、1つしかうまくいかない。だからアイデア検証期間をできるだけ短くし、多くのアイデアを素早く検証している。
・素早く失敗することは、シリコンバレーの常識として受け入れられている。

・ある新事業アイデアが軌道に乗らないとわかった時は、さっさと諦めた方が良いか、挑戦を止めてはいけないということ。後戻りしていると感じても、新しい道を切り開き続けなければならない。
・リリースしたプロダクトがうまくいかない場合も、ユーザーの行動を注意深く観察しよう。特に予想外の行動をするユーザーがいたら、そこを深掘りする。気づいていなかった、新しい機会を発見できることもある。
・プロダクトの価値がどこにあるかは、顧客に教えてもらう。

 

■大企業に必要なイノベーション人材

・他人と違う考え方が必要なら、変わった人を雇わなければならない。賛成する人のいないアイデアや意見を持ち、変化のきっかけを作るのは、そうした人たちである。
イノベーションチームには、トップの優秀な人材だけを暑得てはいけない。変わった人こそチームに必要。
・大企業のイノベーションチームに必要なのは、ハスラーハッカー、ヒップスター、ホットショット、政治家とオーガナイザーだが、何より大切なのは、コアメンバーの中に、中途半端な気持ちで取り組む人がいないこと。
・チームが非常にうまくいっていて、目覚ましい結果を出しているなら、口を出してはいけない。勝利の方程式を見つけたら、勝手にメンバー変更しないほうがいい。

 

■新しいアイデアの生まれ方

・新しいアイデアは、突然どこからともなく現れるものではない。あなたが学んだこと、経験したこと全てが意識によって関連づけられ、一つになってそこから新しいアイデアは生まれる。組み合わせの妙からアイデアは生まれる。
イノベーションの多くは、ある分野の既存事業アイデアを借りてきて、別の分野の事業にに当てはめることから生まれている。古いアイデアを掘り出して、新しい問題に応用する。例えばIDEOはこの方法を使っている。
・起業家はビジネス書ばかり読んではいけない。普段あまり関わりない分野の情報、多様な情報源から新しいことを発見し学ぶことが、実は最も価値がある。自分が知らない情報だからだ。
・ある分野からアイデアを借りてきて、別の分野に当てはめることでイノベーションが生まれる。

 

■大当たりが1つだけ出ればいい
・世の中にはビジネスモデルは2つしかない。ユーザーが金を払うか、広告主が金を払うか。それ以外にはない。
・ユーザーが支払う場合、それぞれのユーザーが生涯に渡りたくさんの小額取引をするか、数回の多額の取引をするかどちらか。
・広告モデルで儲けるには、莫大なユーザー参加が必要。アクティブユーザーが100万人かそれ以上の規模に達しない場合、広告モデルは成り立たない。
・ビジネスモデルは複雑だと誰もが思っているが、そんなことはない。これ以外の方法でお金を儲けている会社はない。
・新しい事業が倍々ゲームでのビルには、ライバルを寄せ付けないような参入障壁、不当な優位性が必要だ。かなりの不当な優位性がなければ、価格競争に陥る。