出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

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【ナイキ 厚底シューズ イノベーション】常識を覆すイノベーション創出秘話

ランニング・マラソン界を席巻する、ナイキの厚底シューズ「ズーム ヴェイパーフライ4%」。

「靴」というアナログ商品に、圧倒的なイノベーションをもたらしたナイキの厚底シューズ。
ナイキの厚底シューズ開発秘話は、大企業がイノベーション創出するために何が必要か、参考になるでしょう。

 

■世界記録・日本記録を連発するナイキの厚底シューズ

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「ナイキの厚底シューズを履いた選手が、物凄い記録を出している。あのシューズはなんなんだ?」

2017年・2018年にケニアの選手が世界最高記録を更新し、日本では2018年2月に設楽選手が、10月に大迫選手が日本記録を更新。
それらの選手が履いていたのが、ナイキの「ズーム ヴェイパーフライ4%」という、ランニングシューズの常識を覆す厚底シューズ。

ランニングシューズの過去の常識の延長線上では、絶対に生まれない厚底シューズ。日本トップ選手が、自らの走り方を変えるリスクを冒してまで選んだナイキのシューズ。

それまでの常識を覆す、破壊的イノベーションの「ズーム ヴェイパーフライ4%」は、いかにナイキで生まれたのでしょうか?

 

■ズーム ヴェイパーフライ4%の常識はずれの特徴

ナイキ 厚底シューズ イノベーション
・レース用シューズなのに、厚い部分は約4センチもある超厚底。クッション性が高く足への衝撃が少ない。
(従来は、1グラムでも軽くて薄いシューズが常識だった)

・厚いソールには航空宇宙産業の特殊樹脂素材(多孔質ソール)が使われ、中に大きなスプーン状のカーボンファイバー製プレートを挟み反発・推進力アップ。
(同社で過去に使用したことのない素材を使用)

・選手が履くズーム ヴェイパーフライ4%は、市販されているモデルと全く同じ。
(トップ選手は契約メーカーの別注モデルを履くことが多かった)

・耐用距離はたった160キロ。
(かつては耐用性のある安価なシューズが支持され、耐用距離500-600キロが一般的)

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 従来のシューズは「クッション性があるか」「薄くて反発があるか」のトレードオフだった。
しかしズーム ヴェイパーフライ4%は、「クッション性がありつつも、反発力がある」という従来の常識を覆す性能を実現した。

普通に考えれば、厚底になれば重要が増す。その問題を克服したのが、厚底の中に挟み込まれたカーボンファイバープレートと航空宇宙産業の発泡体フォーム素材。軽さとクッション性の両立を実現させ、プレートがバネのように屈曲し、それが脚を前に押し進めるエネルギーを生み出す。

コロラド大学の調査によると、当時のナイキ最速シューズなどと比較して、ヴェイパーフライを履いた選手のランニングエコノミーは4%強ほど改善した。

 

■厚底シューズ 開発秘話

【顧客の課題とニーズから始める】
・ズーム ヴェイパーフライ4%の開発のきっかけは、アフリカトップ選手の言葉。クッショニングがしっかり装備されたシューズが欲しいと要望があった。
・アフリカ勢は未舗装の道でトレーニングを積んでおり、薄底シューズだと足へのダメージが大きく、路面の硬いロードを嫌う。そのためクッション性を持ちつつ推進力もある、既存の常識はずれの "新発想のシューズ" 開発が始まった

【無謀な目標設定】
・ナイキ研究所(スポーツリサーチラボ)の研究員は、当初ランニングエコノミーの3%改善という、無謀な目標を設定していた。
・研究を行う中で、既存の延長線上で改善するのではなく、限界を破る必要性に迫られた

【常識に立ち向かい、既存常識を捨てる】
・軽さを出すと、薄くなる。薄くなると、足へのダメージが大きくなる。でも軽いシューズで走りたい。そんな矛盾する要望を実現するために、既存の常識の真逆である、厚底シューズの発想が生まれた
・レース用シューズは1グラムでも軽く、が従来の常識だった。しかしズーム ヴェイパーフライ4%は全く逆のアプローチ。シューズは薄い方がいいとの概念を捨てた

長年の技術の蓄積と新技術の融合
・その発想を具現化するために、軽くて柔らかく、反発性の高い素材探しが始まった。素材探索の結果、これまで業界で使われたことのない、航空宇宙産業で使われる素材に行き着いた。
・ナイキは過去に、カーボンファイバーを使用したシューズを出したことがあるが、うまくいかなかった。(その時の挑戦と失敗から、可能性と超えるべき課題をある程度掴んでいた可能性がある)
・カーボンファイバープレートと航空宇宙産業の発泡体フォーム素材の研究を続ける中、とある日の研究データが4%改善を示しており、研究者は間違いだと疑った。そのくらい、研究者の常識を覆すものだった。

【顧客との共創】
・アフリカ選手以外のトップアスリートも、数年にわたり開発段階から関与。クッション性やフィット感なども"アスリートが試行錯誤を繰り返した”ようだ。
・2016年のリオ五輪本番で、ナイキ契約選手がズーム ヴェイパーフライ4%の"プロトタイプ"を使用。

・従来の延長線上にない新たな形にたどり着き、耐久性は犠牲になるが、アフリカ選手の要望に応えたものが完成した。