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デザイン思考 うまくいかない典型的な14の理由|新事業創出や新サービス開発で留意すべきこと

新商品・サービス企画や、顧客体験向上プロジェクトなどで、デザイン思考を取り入れる企業が増えています。
デザイン思考は、顧客の状況を観察して問題定義をし、顧客の問題を解決するクリエイティブなソリューション(商品やサービス開発・施策)を生み出すユーザー中心の問題解決手法。

モノ売りのプロダクトアウト発想でなく、顧客課題から考えるため、うまく行きやすいと期待されますが、どうもうまくいかないケースも多いようです。

デザイン思考がうまくいかない典型的なパターンや理由と、どう留意すれば良いか紹介します。

 

■デザイン思考の基本ダイアグラム

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 観察/共感、問題定義、アイデア創出、プロトタイピング、検証

1. 観察&共感(Empathize)
ターゲット顧客を、観察を通じて理解します。常にユーザー視点を持つことが大切。

2. 課題定義(Define)
ユーザーが抱える課題やその背景や理由を明確にします。適切な質問と傾聴により、より深い、より本質的な問題を特定します。

3. アイデア創出(Ideate)
見出した課題を解消するためのアイデアを出します。思いつく限りのアイデア出します。 

4. プロトタイピング(Prototype)
イデアの検証のために、プロトタイプを作成します。アイデアが目に見える形になることで、より具体化でき、ニュアンスやイメージを共有しやすくなります。

5. 検証(Test)
プロトタイプを用いて、ターゲット顧客に向けて検証・改善を繰り返します。試行錯誤しながら、ユーザーの問題解決につながるアウトプットに近づけて行きます。

 

■デザイン思考がうまくいかない、典型的な14の理由 

デザイン思考がうまくいかない場合の、典型的な理由リストアップです。

【観察〜課題定義まで】

① 想定顧客を定義していない
② 課題の発見・定義が重要だと理解していない
③ ユーザー視点でなく、自社視点になっている
④ 思い込みで課題を妄想する/顧客の観察をしていない
⑤ 自分たちはなんでもわかっていると勘違いしている
⑥ 課題の発見・定義ができていない/浅い

 【アイデア創出〜検証まで】

⑦ 自社商品やサービスなど答えありき
⑧ プロトタイプが、完成系だと思い込んでしまう
⑨ 何のために何を検証すれば良いかわかっていない 

【全体的に】

⑩ 手戻りを許容しない/プロセスは進むものと思い込んでいる
⑪ デザイン思考を使いさえすれば、うまくいくと思っている。
⑫ 試行錯誤や失敗が許容される雰囲気がない。
⑬ 発散型の思考や自分の頭で発想するクセがない
⑭ 意思決定者やリーダーが、変革や新事業創出するつもりがない

過去に自分がやってしまった失敗だ!と身に覚えあるものも、あるかもしれません。
うまくいかない理由と、そうならないような対処・留意すべきことを説明します。 

 

■ 観察〜課題定義

日本人・日本企業の多くは、与えられた課題に対して、課題解決方法を考えたり、期限を守って実行するのは、非常に上手と言われます。

その一方で、何が課題であるか捉えたり、一見問題がないように見える中から新たに課題を見出すのは、不得意・不慣れな人が多い。

解決すべき「課題の定義」が上手くできなければ、デザイン思考でも他の考え方でも、当然上手くいきません。解決する対象がありませんもの。

 

① 想定顧客を定義していない

デザイン思考 上手くいかない 想定顧客を定義していない

新規事業に取り組む際、「誰が想定顧客層か」を最初に定義することが必須です。これをせずに、事業開発が上手くいくケースは稀です。

既存事業の場合、「誰が顧客か」気にする必要はありません。"既存" 事業ですから、想定顧客やユーザー層は既に決まっています。
しかし新規事業の場合、「誰が顧客か」を定めるところから始まります。「誰が顧客か」の定義なしに、課題の調査さえできません。

起業経験者や新規事業経験者は、「誰が想定顧客層か」を定義する重要性を経験を通じて理解しています。

ところが、新規事業に初めて取り組む人は、この点に気づかず、肌感覚で理解することが難しいようです。その結果、想定顧客定義の検討することなく、無自覚のうちになんとなく既存顧客の課題探しをしてしまい、デザイン思考を用いても上手く新事業を作ることができません。

 

② 課題の発見・定義が重要だと理解していない

課題解決するには、その課題を見出して課題を明確にしなければ、解決しようがありません。

日本は成熟社会で、物質的に十分豊かで、多くのことは既にある程度以上に解決されています。また日本人は環境適応力や忍耐力が高いため、不満があっても「そんなもんだ」と仕方ないものと受け入れる傾向にあります。

そのような中で、生活者やユーザーの不条理や不満、イライラや堪え難いストレスなどを課題として見出すのは、多くの人にとっては容易ではありません。
これまで認識されなかったことを解決すべき課題として見出し、解決できるプロダクトやソリューションを作り、市場や顧客に受け入れられれば、それはイノベーションと呼ばれるようになります。

デザイン思考は「問題解決の手法」と言われます。しかし、多くの人たちが見落としているのが、デザイン思考は問題解決よりも前からスタートする、ということ。いくら問題解決が上手でも、まず「何の問題を解決すべきか」を分かっていなければ始まりません。
身の回りの世界を観察し、問題を発見するセンサーを磨く。この意識こそデザイン思考に必要なもの。
「課題解決」の前に「課題発見」の手法:日経クロストレンド

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デザイン思考とは解決策を探すためだけのものではなく、解決策を探すのと同じレベルで、正しい「問い」を見つけることがデザイン思考の真骨頂。正しい「問い」を見つけること、それ自体ハイレベルなクリエイティビティを要するプロセスです。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット

多くの例を見てきて言えるのは、「問い」自体が革新的であるほど、答えも革新的になります。反対に、つまらない問いは、つまらない解決策しか生み出しません。
多くの企業は、つまらない、誰でも思いつくような問いしか思いつかないので、つまらないありきたりな解決策に落ち着いてしまう。
デザイン思考の重要な技術は、革新的な問いを思いつくことにあります。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット 

ソリューションやなくて、問題定義の方で差別化するねん。
ソリューションが画期的かどうかはユーザーにとって関係ない。なぜなら、画期的ソリューションであっても、自分の課題を解決しないプロダクトにユーザーはお金を払わないから。
新規事業にて、差別化すべき点は「その目の付け所、画期的やわ〜!」という問題定義の部分なのだ。
ここがちゃうねんデザイン思考

 

③ ユーザー視点でなく、自社視点になっている

デザイン思考 上手くいかない 自社視点になっている

課題の検討をするとき、「ユーザーの課題」ではなく、「自社や業界の課題」の検討をしてしまう人が多いです。それが無意識のクセとして、染み付いてしまっているのでしょう。
「ユーザー視点になる」「顧客視点で捉える」というのは、一見簡単なように見えて、極度に難しい行為です。なぜなら、自社視点が普通の状態になっており、そうなっていることに気づくことさえ難しいから。

ユーザー視点になる、とても簡単で効果的な方法は、ユーザーに10人以上会って、困っていることを伺い、日常の様子を観察することです。10人より30人、30人より100人の方が当然良いです。
困った様子や悩みを10人以上から伺えば、その状況に共感したり、どうにかできないものかと感じるものです。(サイコパスな方は除きます)

ビジネスパーソンの考え方は、利益や売上など自分たちのメリットにフォーカスして、事業モデルやサービスを構築(デザイン)します。
しかし、デザイナーの考え方は違います。ユーザーが価値を感じそうなことや、悩んでいることを主軸にしてデザインを考える。ユーザー視点でアイデアを出し、検証と改善を繰り返しながらクオリティーの高いものを生み出すのが「デザイン思考」。
なぜ日本企業では「デザイン思考」が浸透しない?|HIP

 

④ 思い込みで課題を妄想する/顧客の観察をしていない

デザイン思考というと、必ず、この様子の画像を目にします。ポストイットを使って、アイデア出し。

デザイン思考 上手くいかない ポストイット

もしも、課題定義の段階で、この画像のようにやってしまっていたら、上手くいくはずがありません。

おしゃれなオフィスでリラックスしながら、社員とコンサル会社のモデレーターとともに、思いつく限り、ユーザーの課題を洗い出す。
そこで洗い出された課題は、全て、勝手な思い込みの妄想課題です。

妄想課題でなく、実際の課題を見出す方法は、極めて単純明快。おしゃれなオフィスを離れて、ユーザーに10人以上会って、困っていることを伺い、日常の様子を観察すること。
自社の会議室でインタビューより、ユーザーの生活環境に赴き、その様子を観察する方が、はるかに有益な情報を得られます。

優れた問いを見つける方法は、顧客の視点に立つこと。部屋の中に閉じこもっているのではなく、外へ出て顧客となる人々に会い、何を欲しているのかを理解するべき。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット

オフィスの外に出て、ユーザーと時間を過ごし、馴染みのないことにも挑戦する。自分たちの課題の世界に主体的に没入し、直感的にユーザーの体験を理解し、共感することが目的だ。
人間中心の「デザインリサーチ」とは|Forbes JAPAN

 

⑤ 自分たちはなんでもわかっていると勘違いしている

特に大企業の人は、自社は何でもできる、自社は何でもわかっていると、誤って思い込んでいる方が少なくありません。
"今までと同じこと" をする場合は、確かに何でもわかっているのでしょう。

しかし、新商品・新プロダクト開発や新事業に取り組む際は、未知のことが多いです。「わかっていないことが沢山ある」という態度で臨まない限り、どれだけ顧客の様子を観察しても、まともな洞察は得られないででしょう。

歴史と実績を誇る大企業の場合、社内にほとんどの知見や情報があると信じ、まっさらな状態でインスピレーションを求めにいくことを、無駄だと感じてしまう人もいるようだ。だが、同じリサーチを過去に誰かがやっていたとしても、自分自身が主観を持って新たなインスピレーション探しを行う過程で得られる学びは計り知れない。
デザイン思考を プロセスより大事なこと|Forbes JAPAN

 

⑥ 課題の発見・定義ができていない/浅い

既述の①〜⑤の理由により、課題発見や定義ができない、ありきたりな課題で浅いままのことが多いそう。課題の定義がまともにできていない状態で、その課題を解決しようとするアイデア創出に進むと、その後の膨大な作業は、ほぼ無駄になる可能性が高い。解くべき課題が定まっていないのですから。

革新的なプロダクトを作ろうとするのでなく、「なんでその問題は、21世紀の今でも放置されたままになってるんだ!」と感じるような課題を見出したいところです。

デザイン思考を使うには、解決するべき問題やテーマの存在が不可欠であるにもかかわらず、往々にして解決するべき問題やテーマが見つからないということが起きる。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット 

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新しい物事を生み出そうとするとき、何が課題であるか見えていないことがほとんど。最初からアウトプットを出すことに意識を向けず、本当の意味で解決したいこと、提供したい価値を考えることで、正しいスタート地点に立つことができる。
デザイン思考を プロセスより大事なこと|Forbes JAPAN

日本企業は、課題さえはっきりすればそれを解くことは非常にたけています。ところが今、IDEOへくる企業の話を聞いていると、そもそも「お題」が見えていない。例えば「モビリティで何かをしたい」といった抽象的なレベルで、まだ「お題」になっていません。 
日本には「変化のためのデザイン」が必要:日経クロストレンド

新規事業やイノベーションとなると、今までにない新しいものを作らなければ、新しいアイデアを考えなければ、と思い込んでしまうかもしれません。

しかし実際にはそうではなく、今まで解決されていない問題を捉え、それを既存より素晴らしい方法で解決できるプロダクト創出を目指すべきです。
集中すべきは、今までにないアイデア・プロダクトではなく、今まで解決されていない問題です。

未解決課題を解決できるプロダクトは、これまでの延長線上にない、今までにないプロダクトに、自ずとならざるを得ません。
それが市場や顧客に受け入れられたならば、結果として人々からイノベーティブなプロダクトと呼ばれるものになります。

 

■アイデア創出〜検証まで

⑦ 自社商品やサービスなど答えありき

成熟企業には多くの自社商品やサービスがあり、顧客はそれを買うものだという認識を、無意識のうちに思っている方が多いです。そのため、アイデア創出までは自由にできた場合でも、その後に具現化する段階で、無意識に自社商品ありきになってしまうことが少なくないようです。
"アイデア創出〜プロトタイピング〜検証" は、アイデアを素早く形にし、ユーザーに見せて/体験させて、そのフィードバックを得て検証と改善を繰り返し、よりユーザー課題解消につながるもの・クオリティーの高いものを生み出す狙いです。

デザイン思考を10年前から取り入れてきたのに、実業では直接目に見える成果が出ていない。
日本のメーカーは課題設定をした後、ある程度の答えを先に決め、一生懸命その答えに向かってアプローチしがちです。デザイン思考をやったつもりでも、実は表面的な問題解決にとどまってしまう。
話せば生まれるコラボ 富士フイルム流のデザイン思考|NIKKEI STYLE

新しいものを生み出そうとする取り組みは、事前に答えは分かりません。しかし日本企業では往々にして、先に「落としどころ」を求められます(落とし所があるものだと思い込んでいる)。落としどころが見えていたら、そもそもプロジェクトをやる必要がありません。
デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド

デザイン思考 うまくいかない理由

 

⑧ プロトタイプが、完成系だと思い込んでしまう

課題解決のアイデアと、それをある程度の具体的な形にするプロトタイプは、「こういうサービス・製品だったら、ユーザーの課題解決できるのでは」という仮説、正確に言えば、妄想や思い込みを目に見える形にしたものに過ぎません。

人間は、目に見えないものにはコメントできませんが、プロトタイプにして目に見えさえすれば、様々な感想や意見、文句や感情表現をしてくれます。
ユーザーの感想や意見、文句や感情表現を引き出すために、目に見えるプロトタイプが必要です。上記の目的を達成できる最低限のレベルを、最小のコストと時間で作るのがプロトタイプ制作です。

日本人は完璧主義になりがち。日本の物作りの巧妙さや美しさは素晴らしいことだが、反面、て新しいことをやろうとする際には、足枷となる。
プロトタイプを展示会に出展しようとすると、日本人は不安な反応を示す。実験の意図はユーザーからフィードバックを受けること。本格的に製品化して市場に出す前に、改善すべき点を知れることは素晴らしい。
デザイン思考を プロセスより大事なこと|Forbes JAPAN

イデアを試すとき、プロトタイプに完璧を求めてしまう。「完璧なプロトタイプ」はそもそも矛盾しているんですけどね。原因の1つはプロトタイプにお金をかけすぎること。プロトタイプ製作に2000万円もかけてしまっては、もはや否定するわけにはいきません。
デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド

もっと実験上手にならなければいけない。コストかけずに小さい失敗をしやすくし、実験の数を増やすこと。コンセプトやアイデアを試すプロトタイプ段階では、段ボールのモックアップでも意図するところは検証できます。仕上げやリスクなど、後で考えればよいことを早くから心配し過ぎ。
デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド

 

⑨ 何のために何を検証すれば良いかわかっていない 

"検証"や"評価は"、その作業自体が目的ではなく、ユーザーの様々な感想や意見、文句や感情表現から情報を収集し、プロトタイプに修正を加え、それを繰り返すことで、販売できるレベルまでプロダクトをブラッシュアップします。

場合によっては、修正では済まず、アイデア創出フェーズまで戻る必要があるかもしれません。この段階まで来てから、そもそもそのユーザーにそんな課題はなかった、となってしまうのは、できれば避けたいもので、そのためには、最初のユーザー観察と共感・課題定義が極めて重要になります。

 

■全体的に

⑩ 手戻りを許容しない/プロセスを進むものと思い込んでいる

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デザイン思考の説明図がいつもこの六角形だからか、プロセスだと思い込む人が多く、プロセスが直線的に進むものだと勝手に思い込む人が多いそう。

既存事業では、何をやれば良いか決まっており、物事はプロセスに沿って、期限を守って進められます。
しかし、新しい取り組みは、新規事業のようなゼロイチはもちろん、あやふやな状況から始まり、時間通りプロセスに沿って物事が進む、いうことは現実にはありません。(時間厳守に進めることを目的・最重要とすれば、もちろん進みますが、その結果は推して知るべし。)

問いの定義づけをし、外へ出て顧客を観察したり、時にはリサーチします。こういう作業を繰り返すと、当初とは異なる問いが生まれることも。問いを進化させていくうちに、解決策にたどり着くこともありますし、更に新しい問いを発見することも。このように、解決策と問いの間を行き来するのが、イノベーションのプロセスには重要なのです。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット

プロセス重視はプロセス厳守とはちゃうねん。
プロセス定義されていると、プロセスをフォローすることに気持ちが行ってしまうが、プロセスをこの順番通りに行えという訳では無い。実際は、このプロセスを行き来することもあれば、全く違うプロセスに飛ぶことだってある。デザイン思考の原則を重視して取組でいるのであれば、何も問題はない。
ここがちゃうねんデザイン思考

プロジェクト体制が「リレー式の役割分担」になってしまう問題があす。仕事の結果だけを次プロセスに渡し、最初に関わった人は「手離れ」する。しかし新しいものを生み出すには、異なる立場の関係者を、初めから終わりまで巻き込む方がうまくいきます。視野を広げる上でも効果的だし、後工程の関係者とプロセス共有することで意識を共有でき、共感による大きな波及効果を望めます。 
デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド

 

⑪ デザイン思考を使いさえすれば、うまくいくと思っている。

デザイン思考は簡単に身につき、簡単に使え、簡単に上手くいくと思い込んでいる人が多いそうです。

ものごとの考え方・取り組みの考え方ですから、ワークショップ参加や本を読むだけで、使いこなせるはずがありません。何度何度も実地で経験し、失敗を繰り返しながら、身につけていくものです。
ゴルフやテニスなどのスポーツも、楽器や絵画や書道も、テキストを読むだけで、体験スクールに参加するだけで、十分上手になりませんよね。デザイン思考もそれと同じです

デザイン思考 うまくいかない

書籍を読んで、ワークショップに1、2度参加して、次に自分でやったらうまくいかなかった──それで当たり前。
ワークショップがデザイン思考そのものだと思わないでほしい。ワークショップは、人工的なセッティングで、仮想テーマによる実験で、リハーサルです。肝心なのはそれを、自分の現業に生かしていくこと。
デザイン思考使いこなすのに時間がかかる:日経クロストレンド

理解することと実践することの間には、大きなギャップがあります。デザイン思考はあくまで道具。よい家を建てるためには、よい大工道具は大事ですが、それ以上に腕のよい職人、正しい道具の使い方、ハードワークが必要なのです。
何回か実践して、小さな成功体験を重ねていくことが大事です。
デザイン思考は使いこなすのに時間がかかる:日経クロストレンド 

デザインシンキングのワークショップが流行っており、「ブートキャンプ」と呼ばれる1〜2日間の催しに、企業は何百ドル、何千ドルも払って参加している。
こんな短期間に容易に学べるメソッドで、参加者は本当に問題を解決できるのでしょうか? 私にはまるで、トレーニングはしたくないけれど、オリンピック選手になりたいと言っているように聞こえます。
「デザインシンキングなんて糞食らえ」|AXIS

 

⑫ 試行錯誤や失敗が許容される雰囲気がない。

既存事業では、何をやれば良いか決まっており、失敗が許容される雰囲気ではないでしょう。当然です。効率的に進めて合理的に判断し、90-100%の成功率が求められて当然です。

一方で、新しい取り組みは、何が正しいかわかりません。例えば新規事業のようなゼロイチは、そもそも成功率は10%未満と言われます。

参考:新規事業の成功率は10%未満 ◉新規事業 成功確率を上げるため大切なこと

失敗が許容される雰囲気かというレベルの論点ではなく、そもそも90%は失敗。普通にやったら90%は失敗です。
10%未満の成功率を、何とかして高めようとする試みです。アイデアを素早く試して、アイデアの拡散と収束を繰り返して試行錯誤する以外に、選択肢がないという状況があります。

日本企業の多くが、初期段階で最も抵抗を感じやすいのが「不確実な状況」をよしとすること。デザイン思考において、様々なインスピレーションを得る過程で生まれる非連続の思考を大切にし、結論を急がない。
デザイン思考を プロセスより大事なこと|Forbes JAPAN

「デザイン思考」で大事なのは、「失敗する自由」「探検する自由」を与えること。新しい価値がどこにあるのかは、誰にもわからない。勇気を出して踏み込んでも、見つかる保証はありません。それでもチャレンジしなければ、新たな発見を見出すことはできないのです。失敗は新しい価値を生み出すプロセス。
だからこそ、日本の企業には、もっと失敗を許容する土壌が必要です。
なぜ日本企業では「デザイン思考」が浸透しない?|HIP

デザイン思考はメソッドちゃうねん、マインドセットやねん。
デザイン思考は、プロセスや「メソッド(やり方)」と捉える人も多いが、読んで字のごとく「思考」のこと。つまり「マインドセット(考え方)」のことを指している。
ここがちゃうねんデザイン思考

現在の組織の多くが、組織体制から評価方法、意思決定の手順まで、すべてロジカル思考、つまり「絞り込む」ための手法に合わせて出来上がっている。その環境の中で新しいアイデアを出しても適切に評価されず、つぶされてしまう。
日本には「変化のためのデザイン」が必要:日経クロストレンド

難しいのは中間層と、中間から少し上にいる人たち。今までずっと上から「本当にうまくいくのか?」「裏付けは?」「実例は?」と言われ続けてきたのに、急に「もっと実験せよ、失敗を積め」と言われても、動けませんよね。上からは「新しいことをしろ」、下からは「あなたのやり方は古い 」と言われて、今、最もつらい立場の人たち、かつ変わることを求められている人たちです。
デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド

 

 発散型の思考や自分の頭で発想するクセがない

大企業に勤めると、"上司が答えを持っている"と思い込む、外注先企業に企画から丸投げするクセ、外注先から複数提案された中から"選べば良い"という思考回路になるのが、典型的だそうです。
また、成熟した事業では様々な業務内容やプロセスは、ほとんど20世紀のうちに整備済みで、その業務やプロセスがなぜそうなっているか考える必要がなく、既存ルールを遵守するよう指導教育されるそう。

どれだけ優秀な人であっても、そのような環境に数年いると、それが当たり前になります。むしろ環境順応性も高いから、優秀なのです。そのような中で "自由に発散して考えろ"、"自分の頭で考えろ"、といきなり言われても、何をどうすれば良いかわからないのは無理もありません。

デザイン思考(クリエイティビティに必要な発散型)を進める大きなネックになっているのが、これまで収束型の行動原理を身につけてきた人たちが、なかなかそれを変えられないこと。特に意思決定の仕方が問題です。
日本には「変化のためのデザイン」が必要:日経クロストレンド 

インプットを咀嚼してインサイトを導きアイデアにつなげる際には、抽象的なふわふわした思考が必要です。ところがそこで「これ本当に着地するの?」と不安になってしまう。あいまいさが苦手で、具体的な結果を急いでしまう。
 デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド 

 

⑭ 意思決定者やリーダーが、変革や新事業創出するつもりがない

"デザイン思考 うまくいかない典型的" に限らず、手法や目的が何であれ、新しい取り組みがうまくいかない典型的な理由です。

ただ実際には、社長など経営トップが事業変革や新事業創出するつもりがないことは少なく、その下の執行役員・事業部長・部長クラスがそのつもりがないことが多いそう、失敗すると昇進に響くからです。

あなたの変革や新事業創出への熱意が本物ならば、直属の上司や意思決定者がやる気なくとも、変革や新事業創出のあなたの熱意は消えることはないでしょう。経営トップや変革に熱意ある別部門の役員・部長クラスと連携を図りたいですね。

参考:イノベーション創出に必須の 失敗・継続性・独創性・異端

組織のリーダーが強い信念を持つことです。リーダーが本心から変革が必要だと思っていなければ、実現することはできません。リーダーは、変革が必要だという信念を、はっきり表明する必要があります。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット

イノベーション創出プロジェクトには、うまくいくものも、途中で頓挫してしまうものもある。頓挫してしまうケースは、決定権者が不在の場合がほとんど。リーダー不在のイノベーションの実現はありえない。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット

新しいアイデアを生むのはそれほど難しいことではありません。一方で、それを実行に移すのは時間もリソースも必要ですし、リスクを伴った行為なので、多くの会社が躊躇してしまう。実行に移す勇気が必要です。
IDEO ティム・ブラウンに問うデザイン思考|センタードット

経営層の関わり方は、一番良いのはトップがプロジェクトの一員として参加する形。フルコースでの参加が難しくても、少なくとも「トップは最後に評価・判断を下すだけ」という形は崩していく必要がある。 
デザイン思考の実践へ、6つの壁を乗り越えろ:日経クロストレンド