出張レストランサービスのマイシェフ社長ブログ

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ビズジン(Bizzine) 新規事業内容の要約 & 各新規事業支援会社の立ち位置

■■■失敗しない新規事業開発の進め方(Relic)

新規事業のために検討すべき3ステップ

①新規事業の「目的や意義」を明確にする。
②新規事業の「目線や定義」を決める。
③目線や定義に合う、新規事業アプローチを選ぶ。

・新規事業の成果が出ない要因は、手段ではなく、そもそも新規事業に取り組む目的や意義(“事業的な観点”・“組織的な観点”)が明確になっていない点にある。
・新規事業の目的と意義を定める際、どちらを重視するか、経営者と事業開発現場は明確にする必要がある。それにより、目指す目線や成功の定義、アプローチが変わるから。

・新規事業の目線や定義は、市場軸(どのような市場・領域で)× 時間軸(いつまでに)× 規模軸(どの程度の規模を目指すか)の3軸を定める。
・市場軸:自社アセットを活用できる市場か、市場規模や成長率が見込める新市場か。
・時間軸:短期的な貢献を目指すか、10年以上の長期で成果創出を目指すのか。
・規模軸:どの程度の売上・利益規模を目指すか。

・新規事業の目線が明確になっていない状態で事業開発に着手してしまうと、社内の新規事業開発に対する意思統一が定まらない。

・同社が提示する目的と意義・目線と定義によるアプローチ表。

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私見ステップ①・②は同じ考えだが、③は異なる。"事業立上げ経験を積ませたい・幹部候補育成"という組織観点ならば、実際に新事業立上げに携わり、「修羅場体験」を実体験させないとほぼ意味がない。
アクセラレーションプログラムは技術購買(先端技術・デジタル技術の購買)に特化するのが良い。新規事業プログラムは、新事業に向く人材の発掘に使える手段の一つ(ただし費用対効果は良くはない。時間と費用が結構かかり、本当のイノベーション人材は手を上げないらしい)。

 

■事業開発の場で頻出する3つの課題

①事業構想・技術シーズ段階:事業プランやアイデアが出てこない。
②評価・仮説検証・PoC段階:事業プランを適切に評価・検証できない。
③事業化・グロース段階:事業プランをうまく実行・遂行できない。

 

■①事業プランやアイデアない課題 に対して

【パターン1:市場や顧客課題を起点に構想する】
・市場や顧客課題を起点に構想する場合、リーンキャンパスの"顧客セグメント"と"課題"、つまり「誰の、どんな課題や困りごとを解決するのか?」が最優先で検討すること。
・解決すべき市場や社会の課題・ニーズを起点に、その課題を最も強く感じる顧客が誰か、を検討するケースか、対象とする顧客セグメントが誰かを設定した上で、その顧客の抱える課題を検討するケースもある。
・検討初期段階の事業アイデアは、誰のどういう課題に対し、どういう解決策(具体的サービス案)を提供し、それはどんな独自価値(独自の価値提案)があるか、を明確にすれば十分。(リーンキャンパスの顧客セグメント・課題・独自価値、ソリューション)
・その初期事業アイデアを軸に、顧客へのインタビューや行動観察などによる仮説検証、ブラッシュアップや、より強い課題・ニーズの発見を繰り返していく必要がある。
・このアプローチの場合、事業アイデアが、社内技術やリソース上 具現化が不可能であることが、次のフェーズ以降で判明することもあるので注意。

私見顧客課題や市場を起点に検討する際、社内技術やリソース制約により実現不可能となることは少ない。むしろ、事業アイデア創出段階で、自社プロダクトや業界常識を超えるソリューション案を考えることができないことや、観点の鋭い未解決課題を見いだせないことの方が、問題が大きい。

【パターン②:自社技術シーズ起点に構想する】
・自社技術シーズを起点に、事業アイデア創出する場合、社内保有技術シーズや資産がどのような優位性や独自性を有するか正確に把握し、技術や資産を用いて提供できる独自の提供価値・具体的な機能やソリューションを仮設で構築する。(リーンキャンパスの圧倒的優位性、独自価値・ソリューション)その上で、検討したソリューションで解決しうる課題やニーズがどういうもので、それは誰が抱える課題か、を探る。
・解決しうる課題・ニーズは、なかなか見つかず、多くの時間やリソースを要することが多い。探索した結果、解決し得る強い課題・ニーズが見つからな場合は、そのアイデアの事業化は断念せざるを得ない。
・強い課題・ニーズを見つけられた場合は、既存の他社ソリューションより圧倒的に優位な解決策を提供できるか、既存市場でない場合は販路やプロモーション、顧客から見て自社から買う魅力があるかなど、事業アイデアの段階で検討すべき項目は多い。
・技術シーズ起点の事業開発は、優位性のある技術やアセットを保有する企業においては、顧客が誰で抱える課題を解決できるか探索・検証を徹底するプロセスを怠りさえしなければ、十分に有効なアプローチになり得る。

私見技術シーズ起点の事業開発の流れに異論はない。ただ、この流れでの新規事業創出の成功率は5%もない(95%以上は失敗)のではないか。日本の研究開発投資効率は悪化の一途(悪化する企業の研究開発投資効率|どうすれば良いか、研究開発と新規事業創出 )とのことで、この方法をとる場合、プロジェクト的な新事業開発(単発のアドホック的対応)では難しく、R&Dと歩調を合わせる常設の新規事業部門を設置し、常時社外とのコネクションを広げる必要があると考える。
(ただし、既存販路が使える場合は上記の限りでなく、既存市場・顧客向けの新商品開発はあると思います。)

このアプローチの成功事例は富士フィルム社(独創技術に裏打ちされた、顧客共創による富士フィルムイノベーション創出 )だが、普通の優良大手メーカーが真似をすると失敗するのは間違いない。(2兆円越え売上と1500億円前後の営業利益、長きにわたり1500億円の研究開発投資を続け、世界4社のみの写真フィルムメーカー関連技術の特殊性、2000年頃から続く事業転換と他社協業・現場に根ざした変革気質があってこそ、現状成功状態に至れていると思われる。)

【パターン③:社内に眠る事業アイデアやプランを見つけて活用する】
・社内に眠る事業アイデアやプランを見つけて活用するアプローチの場合、新規事業創出プログラムやビジネスコンテストなどアイデア公募型のプログラムが多い。

私見このようなプログラムは、個人的には否定派。新事業はほぼできないし、新事業開発の未経験者が事務局を担当してしまうと悲惨。組織観点ならば、実際の新事業立上げ・立上げ事業参画に勝る経験はない。残念ながら、新事業プログラム・オープンイノベーション支援会社 "だけ" が儲かる仕組みになってしまっている。

CA社は10年やり続けて新規事業は生まれず(社内事業コンテストは必ず失敗する (藤田晋氏ブログ)|日本経済新聞 )。
リクルート社は35年やり続け、圧倒的にヒト・モノ・カネをかけ続けるから新事業が生まれ得る。黒字化率は0.3%で 630件応募のうち黒字化に至るのは2件弱(
新規事業生む組織とは? リクルート名物制度の秘密 )。
アクセラレーター支援会社の人も「ベンチャーとの共創は事業インパクトは期待できない」と言及(
オープンイノベーションでベンチャーと組む意識 )。

 

■事業プランを適切に評価・検証できない課題 に対して

・事業プランやアイデアを適切に評価/検証できない課題の要因は、大きく3つに分かれる。①評価すべき観点や項目がわからない・検証すべき仮説を設計できない。「顧客とその顧客の課題」と「解決策の提供価値や有効性」の2分類。②適切に評価・検証するための方法がわからない。③実行するリソースや体制が社内にない。
・不確実性が高い新規事業開発では、リソースを事前調査/分析や計画に投下するより、検証を実行するプロセスに投下する方が成功確率を高める、つまり失敗の確率を下げることに繋がる。
・新規事業開発では「アイデアの質やユニークさ」より「アイデアの有用性や事業性を適切に評価/検証すること」が重要。

【要因①:評価すべき観点や項目がわからない】
・事業アイデアの骨格は、誰の・どんな問題を解決することを目指すか「顧客とその顧客の課題」と、その課題解決にどのような価値提供するプロダクト開発するか「解決策の提供価値や有効性」の観点の2分類。
・優先されるべきは「顧客と課題」の検証。
・検証の観点は、顧客と課題の広さ × 課題発生頻度 × 課題の深さ。
 ー顧客と課題の広さ:顧客は誰で、同様の課題を抱える人や企業はどのくらいか。
 ー課題発生頻度:どのくらいの頻度で、課題・困りごとが発生しているか。
 ー課題の深さ:発生する課題はどの程度深刻か。
・この3つの観点は、全ての観点で高ければ良いという単純なものでなく、ケースバイケースで柔軟に判断する姿勢が必要。

・検証は、顧客と課題の質に対する「影響度が高くて不確かなもの」から優先的に検証を進める必要がある。
・想定する顧客セグメントへのインタビューや行動観察などを通じて、よりリアルに、より正確に顧客の課題を理解することで、顧客と課題の解像度を高めていく。
・「顧客とその顧客の課題」の質を確認・明確化した後に、事業プランの「解決策の提供価値や有効性」の検証にすすむ。

私見顧客の課題は、上記に加え、その課題の背景や業界常識と照らして「なぜそれは現在も未解決のままであるか」という理由と、その課題向けの既存他社プロダクトも捉えたい。
よくある失敗は「顧客の課題」ではなく、「自社の課題・業界の課題」を洗い出してしまうこと。全く目線が異なるため、注意したい。

【要因②:適切に評価・検証する方法がわからない】
・「顧客と課題」の評価・検証は、定量調査・定性調査で。
・「解決策の機能やサービス案」検証は、プロトタイプ・試作品や、解決策のコンセプトが伝わるようなシートを活用し、実際に想定顧客に提示・提案することで、検証を進めるのが有効。
・事業ターゲットにアポを取りテストセールスしたり、クラウドファンディングでテストマーケティングしたりも。

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【要因③:実行するリソースや体制が社内にない】
・アイデア評価/検証のために、検証すべき仮説を選定し、その内容に応じた適切な検証方法やアプローチを選択できたとしても、肝心の検証活動そのものを行うリソースや体制がなければ進めることはできない。しかし、新規事業開発の現場では、この問題が頻繁に発生する。
・サラリーマンの大半は既存事業に関する仕事経験しかなく、既存事業のクセで調査・企画段階に多くのリソースを偏在させてしまう。
・そうではなく、不確実性が高い新規事業開発では、調査・企画段階にリソース投下するのでなく、検証を実行するプロセスにリソースを偏在させなければならない。

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・アイデア創出段階の調査・企画は、なるべく少数の体制で時間やコストをかけ過ぎずに「顧客と課題の発見」と「解決策=サービスや機能の案」の仮説を素早く構築し、その上で、アイデアの評価・検証を行うために十分なリソースとノウハウを有した体制を確保する必要がある。

私見イデア創出の調査・企画(つまり机上の空論)以上に、アイデアの評価・検証(実ユーザーヒアリングや観察など)が重要であることは、同意見。ただし、"アイデアの評価・検証" に重心を置くのは異論あり。

ほぼ同等のリソース・期間をかける方が良く、調査・企画を担当した体制が、そのまま評価・検証フェーズも行うのが良いと、個人的には思う。特に顧客・課題発掘には、力を入れるべき。それを経て、例えば、"アイデア創出の調査・企画" を10〜20案作り、経営トップ・新事業部トップ・現場の会議体にて、"アイデアの評価・検証" に進めるものを 2〜4案まで絞る。
絞る基準は、企業理念や会社長期戦略との親和性、経営トップの好みや興味関心領域、既存事業から見た意味合い、期待されうる事業規模インパクト、新事業担当者の思い入れなど。
絞った事業アイデア案を、評価・検証し、実際の事業開発に進めるか・事業化断念するか判断するのが良いのではないか。

事業アイデア評価は、「顧客と課題」を重視するのが良い。実際の事業化作業に進まない限り、どういうソリューション案が顧客に受け入れられるか、正直なところわからないし、情報や気づきが得られることもない。ソリューション案は何度も変わりうる。

参考:ピボットピラミッドの下層の方がより重要となる。

https://miro.medium.com/max/635/1*vvFuk2_ih9WnvPt1T4ciMQ.png

参考:ピボットピラミッドは、上段での変更(解決策内容など)は、基本的には下層への影響はありません。逆に、下層での変更は上段の全ての決定に影響を与えます。下層が崩れるとこうなる ↓ 

https://500startups.jp/wp-content/uploads/2016/06/tower.gif

 

■③事業プランをうまく実行・遂行できない課題 に対して

・新規事業開発というと、事業アイデアのユニークさに気を取られがちですが、新規事業開発の現場にて最も頻出する課題で、かつ取り組む企業が頭を抱えるのが、実行=エグゼキューションに関する課題。
・実行・具現化できない戦略やアイデアは何の価値も生まず、実行能力が高い企業ほど様々な戦略やアイデアを採用でき、柔軟に方向性の転換(ピボット)もでき、その結果として、不確実性の高い新規事業開発における成功確率が高まる。

・事業プランやアイデアを適切に評価/検証できない課題の要因は、大きく3つに分かれる。①事業プランを実行する指針となるKPIが適切に設計・設定されない。②KPIを正しく計測・可視化して関係者が把握できる状態になっていない。③KPI改善・向上のための仮説・施策の検討や実行ノウハウやリソースがない。
・新規事業開発は、どれだけ事前に検証活動を重ねても、いざ事業化に向け実行するフェーズに入ると、必ず想定しない結果や反応に次々と遭遇することになる。それに対応する仮説検証や改善アプローチ活動は延々と続いてく。

【要因①:KPIが適切に設計・設定されない】
・新規事業開発の目的やゴールを定義し、その達成に向けたプロセスを測るKPI候補を因数分解して網羅する。
・目的・ゴール(定性的目標)、KGI(定量的目標)、KPI(因数分解した指標)を整理することで、なぜ取り組み、何を実現・達成し、どうやってか、というストーリーが生まれ、プロジェクト全体で共通認識を持って推進しやすくなる。
・網羅的なKPI候補の中から、事業の成否に直結する重要指標に絞りKPIとして設定する。新規事業開発では、基本的に少ない予算や体制で進めるため、全ての指標を向上させようとするのは困難かつ非効率。どのKPIを重要KPIと設定し、そこにリソース集中させるかは重要な意思決定。(何を重視するか決めるのは、何を重視・実施実施しないか決めることと同意)
・主要KPIは新規事業により異なるが、汎用的には、新規顧客獲得(顧客の受容性・欲しいと思われるか)、獲得顧客の定着(継続利用してくれるか)、顧客の拡大と収益化(拡大して収益が出るか)の3つの観点は必ず必要になる。

※要因②、③は、新規事業開発に限らない、一般的なマーケティング内容だったため割愛。 

私見新規事業の具現化は、私は販売開始前までの「サービスや製品と周辺業務などの具現化」と、販売開始後の「マーケPRと事業運営、プロダクト改良」の2つに分けて捉えている。この記事には、前者についての言及はない。

前者は、ウェブサイトを作るだけなら単純だが、新規事業の内容によって、かなり多岐に渡る。外部パートナーとの提携交渉や調達先の選定、提供サービス内容の定義と修正、製品仕様検討と業務やルール整備、プライシングや原価計算、販売方法や経路、認知獲得のための作戦検討など。
社内も、事業成長を見越した、関連しそうな部門との緩やかな連携と調整が多く必要。新規事業は、最初は新規事業部での独立採算としても、どういう状態になったら・どういうタイミングで既存事業部に引き渡すかの調整も、新プロダクトの販売開始前にある程度行っておきたい。
販売するプロダクトも、最初から100点満点を目指すのは非現実的。いくら時間があっても足りず、実際に販売して顧客の利用・フィードバックがないと、分からない部分も多いのが現実である。

このフェーズは、会社として事業開発の投資決定がなされた後であり、体制がある程度増強しているのが一般的。新規事業の初期から担当する数名と、この段階で合流するメンバーの間の認識のズレが発生しやすいため、新事業プロジェクト責任者は、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションに時間を使うことになる時期でもある。

販売開始後は、マーケ/PR・営業観点は、記事内容に異論はない。加えて、販売後に実際に顧客に購入され・使用される状態になり、現実の様々な情報が初めて得られうる状態になる。"売る" だけに集中せず、"顧客の声の収集・プロダクトの改良"を担当する人も設置し、新プロダクトがブラッシュアップされ続ける状態を作りたいところ。 

https://bizzine.jp/article/corner/152

 

■コンサルファームに新規事業開発支援はできない

コンサルティングファームに、新規事業開発支援はできない。
・コンサルファームの支援は、外部の立場や視点から「戦略立案」などの特定の機能を提供するに留まる。しかし不確実性の高い新規事業開発は、事業戦略や企画立案だけでなく、事業性や仮説検証のためのテストマーケティング・セールス、プロダクト・サービス開発・改修など、泥臭い実行を高いレベルで行えるかどうかが成否を分ける。
・更にそれを外部の視点だけでなく、経営者や事業責任者としての当事者意識を持って強力にチームをマネジメントしながら事業を推進していく必要がある。そのため、外部からの部分的なコンサルティングや支援では、できることは限らる。

コンサルタントや支援会社の多くは「新規事業開発の責任者やリーダー実務経験に乏しく、事業や人を実際に動かす難しさを知らない」ことが多いのが実情。

・企画を実行するには、メンバーに説明して共感を得ることや他社との連携など、現場にしか見えない苦労もたくさん存在する。それらに寄り添えず、地図を描くだけの第三者では、新規事業を成功に導けない。
・これまで「コンサルタント」と「事業責任者」の双方を経験し、その視点を取り入れ、再現性の高い「新規事業開発と支援の在り方」を模索してきた。

・事業開発の手法や理論がいくら進化しても、事業の成否はそれを担う人材やチームの力に依存している部分が大きい。
・新規事業やイノベーション創出に適した志向や資質を持った、イノベーター人材のポテンシャルを最大限引き出し、発揮しやすい環境や関係性を構築することが必要不可欠。
・大企業の従業員の中で、新規事業やイノベーション創出に適した志向性や資質を兼ね備え、かつ既に何かしらの挑戦や行動を起こしている「イノベーター人材」は2〜2.5%。志向性や資質を備えながらも、これまで行動を起こしていないが、条件や環境が整えば行動につながる可能性が高い「イノベーター候補人材」は5〜7%存在する。
・そうではない90%以上の人材に対し、いきなり「新規事業のアイデアを出せ」「新規事業を立上げろ」といっても、極めて難しいと言わざるを得ない。社内外の数少ない10%未満のイノベーター人材/イノベーター候補人材を適切にマネジメントすることが、新規事業開発やオープンイノベーションを推進する鍵になる。

私見コンサルファームに新規事業開発支援ができないは、同意。企画立案のみならず仮説検証や実行が重要で、コンサルが得意とする市場分析からの新事業企画は大抵うまくいかない(起業界隈では、"コンサルっぽい事業プラン"とは、ダメな案を揶揄する言い方)。
コンサル会社には、当事者として新事業開発の経験者がほぼおらず、コンサル会社の典型的な思考回路(ロジカル思考、MBA的経営セオリー、MECEなど分析思考)は、新事業開発で必要とされる発想の真逆。
新規事業に向く志向性の人材は合計10%未満くらいというのは、個人的な肌感覚でもその通りで、その社内人材を発掘し、新規事業を担当させる方が良い。この10%未満の人は、いわゆる"優秀"・"エース"と社内評価される人材ではなく、傍流事業部にいて、独創的な視点を持ち、社内評価よりも新事業創出したいと思う人(社内では、面倒者扱いされ、左遷されたと思われているような人材)。
補足:
新規事業 向いている人の見分け方|大企業の社内新規事業 担当者の選び方

 

■■■「イノベーションのジレンマ」の大誤解(ゼロワンブースター)

■既存企業から新規事業が生まれない理由・「イノベーション=技術革新」という誤認識

・多くの成熟企業は、バブル崩壊後に本業集中・効率化に注力した結果、イノベーションのジレンマで指摘される課題を"教科書通り"に抱え、新規事業創出・イノベーションを起こせない状態になってしまった。
・「イノベーション」の本質的な意味合いは「市場のルールを変えてしまうもの」である。文化の変化、常識の変化、市場のルール変化など。技術革新がそれを引き起こすこともある。

私見詳しくは書籍要約【要約】イノベーションのジレンマ

 

■エース級人材は新規事業を作れない

・成熟企業の新規事業開発の場で、典型的に発生するのが、ほとんどの新事業アイデアは、"新事業開発"ではなく、"新商品・サービス開発"の域を超えない、という問題。無意識にそうなっていく。
・もっと言えば、"業務改善プラン"であったり、"要素技術の説明" な場合も多いのが現実。("要素技術の説明"をビジネスプランと思ってしまう誤解は、R&D部門に多い。)
・成熟企業が、新規事業や革新的イノベーションを生もうとすることを「社内だけ」で実施することは、本当に難易度が高いと認識する必要がある。

・成熟企業の社員は、会社の資源を最適化するよう課題を与えられ、“答えを探す活動”が習慣化しており、自ら社会課題を発見することには慣れていない。
・多くの社員は、ここ30年ずっと不況下におり、既存事業のコスト抑制習慣が染み込んでおり、リスクをとって投資する経験も習慣もない。他社資源を使うような投資は、「抵抗を感じる」というより、やったことがないので「分からない」という感覚。

・起業では当たり前なのがが、事業を起こす時には、自分が個人として「いったい何を成し遂げたいのか」、自分が個人として「どんな社会を作りたいのか」という、強い信念が必要。そこに覚悟や執念が生まれる。
・社内の新規事業開発では、社内から抵抗され、評価されにくいこともあり、個人の信念や執念がなければ続けられない。新規事業の担当になっても「リスクやこれから待ち構えている激務、組織からの期待という重荷を背負ってまで達成したい覚悟や信念がない」ことに気づいていく人もいる。

私見既存業務のエース級人材・優秀と評される賢い人材は、新事業開発に向かない。失敗すること・低評価になることを恐れ、同僚や先輩から冷ややかな目で見られることに耐えられない場合がほとんどだから。
傍流事業部にいて、独創的な視点を持ち、社内評価をあまり気にせず、新事業創出したい動機が強い人が向く(Apple社のThink Differentキャンペーンを体現する人がいればベスト)。
新事業の信念や覚悟を、最初から持つサラリーマンは滅多にいない、というかほぼいない。多くの場合、顧客の課題などの理解を通じて、新事業検討の過程にて、なんとかしなければという気概を持つに至る。
補足:新規事業 向いている人の見分け方|大企業の社内新規事業 担当者の選び方

 

■新規事業が作れない組織的問題

・新規事業開発に取り組む際、「新規事業開発以前の問題」にぶつかることが大半。「市場」や「顧客」の話ではなく「社内の事情」。

【典型的な組織問題】
1既存事業部が抵抗する
→事業部が受け入れられる、下請け的なスモールビジネスになってしまう。
2役員、経営企画部門、財務部門から合理的で確実な成功シナリオが求められる
→チャレンジングな事業は、承認されない。
3高コスト構造にフィットする、大きな市場・ビジネスばかりに目がいく
→初めから大きいと見込めるマーケットなどないため、参入できない。
バブル崩壊後、コスト効率を追求し、社内アセットしか使っていない
→外部資源を活用できず、新規性のあるビジネス案は出てこない。
5社内コンセンサスを得て、承認プロセスをどう進めるかが一番の関心事
→資料収集や作成に時間を取られ、他社事例を非常に気にする。

・多くの企業の新規事業の担当者や経営陣は「イノベーションのジレンマ」を精読し、頭では理解をするが、それでも、イノベーションのジレンマにあるパターンに見事にはまり、変化できないのが深刻な問題。
・詳しくは書籍要約:【要約】イノベーションのジレンマ

【新規事業未経験者が、新規事業の判断をせざるを得ない状態】
・「新規事業やベンチャー企業の目利き力を社内で持ちたい」という要求を、多くの大手企業の事業開発担当者から求められる。
バブル崩壊後の30年、多くの成熟企業は、本業に集中し、不採算事業を切り捨て、効率化優先で業績を保ってきた。そのため、現在の部課長クラスは、ほとんど新規事業を経験する機会に恵まれていない。
・新規事業を未経験のため、当然に新規事業に対する目利きはできず、稀に社内にいるイノベーター人材が提案する新規事業提案を「評価できず」に不承認にすることに。正確には「評価できない」のでなく、「ダメなプランだと評価」してしまうか、イノベーションは離れた領域と頭でだけ理解した人が、自社に何の強みも無い飛び地領域を選んだりしてしまうことが頻発する。

【新規事業案は花形部署と粗探し勢力が潰す】
花形部署や粗探し勢力によるよくある反応。
・そんなこと、とっくに社内で検討している
 →検討しているが、実行していない。
・そんな小さなマーケットを狙ってどうするの
 →はじめから大きな市場はもうない。
・そんな技術は大したことない、社内技術はもっと先を行っている
→市場が求めていないレベルまで先に行っている。
→技術があるだけで、プロダクトにできていない。
・品質管理はどうするの?そのレベルの製品を出していいのか
→完璧なプロダクトになるまで上市を待って、市場の旬は過ぎている。

・新規事業開発は、既存事業部の価値基準やプロセスと隔離して実施する必要があるが、多くの企業ではそれがなされていない。
・既存事業部の下に配置したり、経営企画部にて事業企画から事業の実現可能性の調査・検討までされ、関連事業部に引き渡され、多くの場合はその新規事業案は事業部に潰される。

【新規事業は社内の評論家の格好の餌食になってしまう】
・新規事業は不確実で成功確率は圧倒的に低く、社内の評論家から“格好の餌食”となってしまう。経営企画部門や財務部門は経済合理性ないものを牽制する役割でもあり止むを得ないところもあるが、その役割でない社内の人たちも「評論家」と化して、新規事業の粗探しをしてしまう。
・多くの社内新規事業は、市場や顧客に向けた活動ではなく、社内の役員や財務部門を説得するプロセスにすり替わってしまう。問題は、それがおかしいことだと認識できないこと。
・社内で新規事業開発経験が少ない場合、社内の評価の方が、市場での評価よりもずっと大事になり、それゆえ新規事業開発の失敗率がなお高まる。

・奇跡的に社内起業家人材が現れても、既存事業部の抵抗、社内からの評論プレッシャーなどにより、やっているのがバカバカしくなり、辞めてしまうケースが多い。
・よく人事部が社員の事業開発教育をするが、社員に加え、価値基準やプロセスを含めた組織も一緒に変わる必要がある。ただし、組織を変えるのは本当に時間がかかり、難しい取り組み。

私見このような状態になるがゆえに、優秀なエース級・社内評価を気にする優秀人材は、新規事業の担当に向かない。こういうことを気にしない、傍流事業部にいて、独創的な視点を持ち、社内評価をあまり気にせず、新事業創出したい動機が強い人が向く。

 

■イノベーションの解を知らないフリをする認識の歪み

【成功した経営者の、破壊的イノベーションへの断固たる対応】
①破壊的技術を開発し、新しい"クリエーション"を商品化するプロジェクトを、それを必要とする新しい顧客を持つ組織に任せた。経営者が、破壊的技術を「適切な」新しい顧客に結びつける。
②破壊的技術・新しい"クリエーション"に関するプロジェクトを、市場規模に合わせ、小さな機会や小さな勝利にも前向きになれる、小さな組織に任せた。
③破壊的技術の市場を探る過程で、失敗を早い段階にわずかな犠牲でとどめるような計画を立てた。市場は、試行錯誤の繰り返しの中で形成されていくものであると、知っていた。
④破壊的技術に取り組むため、社内主流組織の資源の一部は利用するが、主流組織のプロセスや価値基準は利用しないように注意した。組織内に、破壊的技術に適した価値基準やコスト構造を持つ違ったやり方を作り出した
⑤破壊的技術を商品化する際は、既存市場の既存の延長線上の"改善"として売り出すのではなく、新しい"クリエーション"の特徴が評価される、新しい市場を見るけるか、新たに開拓した。

・ イノベーションの解が分かっても、直視しようとしない、典型的な3パターンの振舞いがある。

・1経営者は、イノベーション創出の方向性を受け入れようとしない人は多い。社内の価値基準や意思決定プロセスを優先しがちで、その方が評価される(株主などから褒められる)から。
参考:イノベーション創出は、経営者が"失敗・継続性"を認める価値観・哲学を持ち、それを実行に移す"勇気"を経営者が持っていることが必須
・2経営企画部は、リスク管理機能と、リスクをとる新規事業開発機能が並存する矛盾になりやすい。各事業部に、説明合理性を求める部署であり、根拠のない新規事業に自ら取り組みづらい。経営方針や中経取りまとめ部署でもあり、それに忠実になる必要があり、短期利益を生まない新規事業と相反する。
・3人材開発部門は、ビジネスプラン策定教育など研修しても新事業は作れないことはわかっているが、変化したくない、人事部門が社内人材でできないと言いたくない、などの理由から従来の事業開発系のHow-to研修を見直したくない。

 

■ゼロイチ型の新規事業に向く従業員をいかに発掘するか

・大手企業のサラリーマンは、主軸事業の価値観で物事を捉えるのが普通。「破壊型・逸脱型の新規事業で2−3年で20億の売上目標を100%達成」という目標が「大企業的な考え方」では設定されがち。これは、実際にするスタートアップ起業家の視点で見ると、そんなことができる人は“オリンピック選手並”。
・大手企業の中で既存事業の考え方が染みついた人材が、ゼロイチ型の新規事業に取り組む際であっても、無意識のうちに、既存事業と同じ価値観で新規事業を考えてしまうのは、間違っているのだが、当然そうなってしまうとも言える。

・社内に新規事業向きな素質を持つ人材はいるだろうが、発掘するのが難しい。また、鍛えられていない(未経験)が、大企業の既存事業ではゼロイチ能力は鍛えられない。
・素養ある人材も、新規事業を行う上で必要な多くの要素を持っていない。自己定義能力は「自分で決める」能力のことだが、社長以外は必ず誰かが決めてくれるので、この能力が極めて乏しい。全方位に留意し事業経営する能力も、社長以外求められない。必要な能力は、座学や研修では身につかず、実践という名の OJTでしか身につかない。

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私見新規事業に向くのは、素養あり、経験したことある人。新規事業やイノベーター素養あるのは、組織内の10%未満の人。新規事業も、他の全ての業務などと同じく、やるほど上手くなる。新規事業経験者に、新規事業を担当させるのが良い。
補足:
新規事業 向いている人の見分け方・担当者の選び方

 

■社内新規事業 成功への道筋

1新規事業担当者は、社内で必ずしも評価されていない
・新規事業担当は、社内で異端児扱いされる人が向く。
・新規事業の成功率は5%で、ほとんどが失敗する。社内でエース人材と評される優秀な社員ほど、自身の評価に対するリスクを取ってまで新規事業をやりたいと思わないのが、優秀で賢い人材の発想。

2「社外との接点」を活用して社外資源を調達する
・筋のいい新規事業担当者は、社外にもネットワークを広げ、社外の資源も使える視点を持ち、ビジネスプランの幅も広がる。
・しかしほとんどの場合、社外の資源を活用する新事業企画は検討されない。社内資源をどう活用するかという視点になり、自社リソースでできる、プロダクトアウトな新事業プランになりがち。

3社内評価より、自分の心の声に従っている
イノベーション創造は組織ルールを逸脱する傾向にあり、社内しがらみの中で推進するには、圧倒的な推進力が必要となる。それには担当社員個人の思いが必要。
・過度に本業との兼ね合いを意識すると画期的な新規事業プランにならず、既存事業の改善プランのような程度の低いものになりがち。特に会社に忠誠心が高い社員は、正義感もって既存事業の改善業務に向かいがち。
・社内で評価され出世したいモチベーションの社員は、既存事業と競合するプランを避ける傾向で、失敗のリスクあるプランは難しくなる。
・自分の心の声に忠実な社員ほど、新規事業の成功に近づいていく。

4支援してくれる一部の役員がおり、その役員に力がある
・上手く進む社内新規事業には、経営陣に応援者がいる傾向にある。会長や社長であれば理想だが、少なくとも取締役の誰かの応援は得ておきたい。
・新規事業担当者は、社内の応援者を集める活動が必要になる。社内のキーマンを味方につける力は、新規事業担当者には必要なスキルとなる。
・社内ハードルを突破する秘訣は、実は同じ思いを持つ経営層の共感者。

5事業アイデアより新規事業を担当する ”個” 人が重要
・強い自発的動機を持ち、自ら行動できる「個」がいることが何より大切。
・その新事業の企画実行者が、その動機を思う存分、実行できるような環境を用意したい。
・失敗に関しても寛容に、本気で取り組んだ失敗を評価することが大事。
・実務を進める秘訣は、部課長級の共感者、社内の既存部門の有志の共感者。既存部門の共感者が、既存部門との摩擦の潤滑油となり、必要なときに既存事業との連携をとるキーとなる。

6社内の価値基準や意思決定プロセスから隔離され、専任で活動できる
・できるだけ社内のしがらみや抵抗を受けない環境を作る必要がある。
・意思決定権限を整備しておきたい。(決裁の殆どを社長、新事業部長、担当者の3人で決めれるのが好ましい)
・活動するオフィスを社外に置くのも一つの方法。

7事業実行者に事業のオーナーシップを持たせる
・新事業の企画実行者に、精神的に事業オーナーシップを持たせるのは当然で、可能ならばストックオプション等による株式配分なども理想的。
・そのような特別扱いをしても、お釣りがくるぐらいに起業家人材は稀有で貴重。

8制度の柔軟性を持つ
・新規事業は合理的な制度から生まれず、制度からはみ出したところで非合理的に生まれる。
・人事制度や権限制度はできる限り柔軟で可変であるべき。

・上記1〜8は、社内の新規事業開発で、理想的な組織環境の状態(現実には、ここまで理想にならない場合がほとんど)。ここまでやっても、これは全て社内事情のことであり、新規事業の成功率はそもそも低く、必然的に多くのトライ&エラーが必要となる。

・バブル後、特に2000年代に、本業集中&効率化(各種効率化・不採算事業リストラ)に注力した成熟企業が多く、不確実性の高い投資を控え、オペレーション人材を評価し、2000年代・2010年代に過去最高益を出した会社も多い。
・ただそれは、戦後〜バブル期に会社が貯めてきた脂肪を削ぎ落としたにすぎず、不確実なものに挑戦する筋肉質の体にすることを怠ってきた成熟企業が多い。
・確かに脂肪を削ぎ落としたが、新規事業やイノベーション創出のための筋トレをしていないため、厳しい市場環境では戦えない「虚弱体質」になってしまっている。
・ほとんどの社員が過度に失敗を回避する思考回路になり、適切にオペレーションすることのみ美徳とされ、新しいイノベーションを生むための試行錯誤や失敗が全くできなくなっているのが、多くの日本の成熟企業の現実。

https://bizzine.jp/article/corner/96

 

■■■顧客開発とInnovation Pipeline(スティーブブランク)

■実行と探索を取り違えると、大手企業の新事業は必ず失敗する

・新規事業のやり方にて、過去とパラダイムが変わった3つの観点がある。
 1新たな企業戦略の考え方
 2社内でイノベーション起こす方法
 3プロダクト開発で失敗を減らす方法

【1新たな企業戦略の考え方】
・業界大手企業はイノベーターではなく、新しい外部からの参入企業がよりイノベーションが速い。そして大手リーダー企業は、長期的には存在が危うい。これは日米の大企業が愚かだからではなく、イノベーションを起こすプロセスがないから。

・かつてはコスト低減に注力したが、これからはイノベーションが大切。
・消えゆく市場のシェアをとるのではなく、市場を創ることが求められる。
・競争相手に勝つことに注力でなく、イノベーション創造に力を入れるべき。
・30年も40年も続く父親の代からの市場など期待できず、市場は激変を繰り返すと認識すべき。
・かつて顧客はベストな機能を買うと信じられ、他社より多く機能を盛り込もうと努めたが、今の顧客はそんなことは気にせず、顧客の問題を解決することが求められる。

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【2社内でイノベーション起こす方法】
・企業は必要とするのは長期的なイノベーション戦略である。
・CEOは効率一辺倒や実行偏重から、イノベーション重視へ変わらなければならない。
・社内の経営資源は限られ、機会を捉えたアジャイル=俊敏な資源配分が必要。
イノベーション創出に合った企業文化と報酬制度体系にしなければならない。
・破壊的イノベーションは、大手企業にはオモチャのように見えてしまうもの。既存事業が強い大手リーダー企業は、イノベーションを過小評価しがちである。

【3プロダクト開発で失敗を減らす方法】
・大手企業は、かつてはベンチャーを既存の事業の小さなものとみなしてきたが、この2つは全く違うもの。ベンチャーは“探索”し、大企業は"既存事業の実行”が主である。
・既存事業は分かっていることが多く、既存のプロセスを日々繰り返す。一方、スタートアップは分からないことだらけ、ビッグアイデアはなおさら分からない。
・いくつもの未知のことを解決し、正しい答えを探していく。そしてプロダクトと市場が合うか検証する。探索により軌道修正が必要だとわかれば、ピボット(事業転換)することになる。

・スタートアップは新たな事業創造を狙う探索が主題であり、すでに分かっている既存事業の実行が主の大企業のやり方をあてはめてはいけない。
・数値管理は、既存事業は従来型の会計数値を見ればよいが、スタートアップは、形式的な会計数値ではなく、顧客単価や顧客獲得コスト、バーンレートなど、探索の状況を把握するための指標を見るべき。
・セールス/マーケティングも、スタートアップは不確実であり経験が役に立つかわからない。どんな顧客か、どういうマーケティングすればいいかも分からず、過去のやり方や人脈が通用しない。
・開発は、大企業は既存市場の要求やスペック、機能が分かっているからウォーターフォールで開発できる。しかしスタートアップでは、推測が多く、仕様は不明瞭でまだ固まらず、アジャイル開発をせざるを得ない。学習しながら、MVP(実用最小限の製品)から徐々に開発していく。
・計画は、大企業は正式書類としてビジネスプランが作成される。過去の実績をベースに、過去の延長線上の計画をまとめる。業務プランを数値計画に落としたもので、実行するための計画だ。しかしスタートアップでは、”紙よりも学習が先”である。何を知らないか明らかにして探索し、ビジネスモデルを作っていく。従来型のビジネスプランが事業創造には合わない。

【大手企業での新事業開発の基本の心得】
・大手企業内での新事業開発でも、成功確率を上げるには、スタートアップに適した方法論で取り組まねばならない。
・スタートアップや新事業開発は、既存事業や大企業の小型版ではない。従来の見方を超えて、新たな捉え方をするべし。
・既存事業は、既に分かっていることを実行する。一方、新事業はまだ分からないビジネスモデルを探索する。実行と探索を取り違えると、新事業は必ず失敗する。

・新事業とは何か。それは、再現できるスケーラブルなビジネスモデルを探索するよう設計された、一時的な組織であると言える。大企業の新事業は、新しいプロダクトを開発するこじんまりしたチームと思われてきたが、そうではない。

・プロダクトではなく、“ビジネスモデル”が失敗の原因になる。スタートアップとは、プロダクト開発でなく、ビジネスモデルを探索するための組織である。
・新事業の組織がプロダクト開発に終始してしまうことあるが、そうではなく、事業全体、つまり再現性あるスケールアップする可能性あるビジネスモデルを創造することが求められる。

私見異論が何一つないほど、同じ意見である。

 

■顧客開発とリーンな新事業推進

・事業創造の方法論は、1ビジネスモデル、2顧客開発モデル、3アジャイル開発 の3つからなる。

【1ビジネスモデル】
・ビジネスモデルは、どうやってどんな価値を創造して顧客に届けるかを示すもの。
・スタートアップが悩まねばならないのは、プロダクトだけでなく、顧客、価値、マネー、パートナー、リソース、お金の使い方など9つの要素からなるビジネスモデル。
・ビジネスモデル・キャンバスはシンプルで非常に有用。顧客セグメント、顧客にもたらす価値、チャンネル(顧客との接点)、顧客との関係、リソース(人,モノ,金,知的資産)、主な活動、パートナー、売上、コストの9つの要素。
・ピボット(事業転換)とは、顧客や技術などビジネスモデル・キャンバスの要素の、1つか2つを大きく変えること。例えば、売上モデルをフリーミアムからサブスクリプションに変えることや、市場や事業環境などとマッチするか実験を重ね、ピボットをしてビジネスモデルを改良していく。

・仮説(hypothesis)という言葉はもっともらしいが、実際は推測(guess)のこと。推測をビジネスモデル・キャンバスに落とし込み、これを検証を通じて確かめて、段階的に事実に変えていく。このプロセスをどう進めるかが大切。
・スタートアップでは分からないことが次々と現れる。新事業の現場では、思い込みや直観がよく見受けられるが、それらはただの推測であり、ちゃんと検証しなければダメだということ。顧客と接触して、推測をテストしていくことが非常に重要。

【2顧客開発モデル】
・顧客開発モデルは、仮説(推測)の記述 → 仮説の検証と洗練 → 製品コンセプトの検証と洗練 → 確認 のサイクルを回していくこと。
・大企業の新規事業やベンチャーは、顧客/ユーザーのことを意外なほど分かっていないことが多い。良かれと思って開発したものが的外れという、同じ過ちが繰り返されている。顧客開発モデルは、この過ちを避けることを可能にする。

・顧客開発モデルの実践には、まず仮説(推測)をきちんと書き出すこと。
・次に、自分は分かっていると勘違いせず、白紙の気持ちで顧客と接触すること。顧客を知るには、対話だけでなく製品使用シーンの観察など工夫もしたい。
・顧客の声やリアクション、データなどから意味を読み取り、知恵とイマジネーションを使ってインサイトを引き出したい。

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【3アジャイル開発】
・ビジネスモデル作成したら、顧客開発というテストプロセスで検証し、アジャイル開発で段階的にプロダクトを作りあげる。ビジネスモデルを改善しながら、プロダクト開発するアプローチだ。
・スタートアップでは推測が多く、仕様は固まらない。プロダクトをインタラクティブに開発していく。仕様は未定であり、探索しながら仮説の検証を繰り返し、フィードバックから学びながら段々と開発を進める。学習しながらMVP(実用最小限の製品)から徐々に開発していく。必要ならばピボットすることもある。

・新事業では、従来型から脱皮してリーン型を実践すべし。
・従来型はビジネスプランの実行が主だが、リーン型は仮説検証を進めてビジネスモデルを探索する。
・従来型はプロダクト開発が主だが、リーン型は顧客開発に注力し、会社の外に出て仮説をテストする。
・製品開発マネジメントは、従来型は必要な仕様が分かっていて何をやるか確定しているが、リーン型は顧客開発により顧客ニーズの理解につれ段階的に開発するアジャイル方式をとる。
・従来型は当初から営業担当VPなど経験あるシニア人材が担当するが、リーン型では顧客開発をやるチームが仮説を検証してビジネスモデルを作ってから、実行に移るときに必要な人材をアサインする。
・数値管理は、従来型はBS、PLなどの会計指標で管理するが、リーン型は顧客獲得ほかビジネスモデルを検証し改善するための指標に注目する。
・従来型は売上が良くなければ営業担当VPを替えて、、失敗から失敗に堂々巡りするようなものだが、リーン型では小刻みな失敗からすばやく修正する。
・スピードは、従来型はデータが揃ってから意思決定するが、リーン型では意思決定するに足るデータがあれば待たずに前進する。

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私見異論が何一つないほど、同じ意見である。

 

■ 新事業には「アントレプレナー」と「イノベーター」の組合せが重要

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・大企業のイノベーション事例の多くは、個人が地下室のような人目につかない場所に集まって仲間意識を持ち、何かを考え出し、それを会社として上市するため、関係各所と戦いながら行なっている。
・そのイノベーションを生み出した人々による成功は1回限りのことが多く、彼らは成功後でも非常にフラストレーションを抱えている事例が多い。つまり、既存の仕組みの中でも新発想を得たという“ヒーローの逸話”は、既存企業内に存在しうるクリエイティブ人材を生かす、正式な方法はどこにもないということを意味する。

・こうなる理由は、エグゼキューション(Execution、既存の事業を遂行すること)とイノベーションという2種類の仕事を、企業が混同しているから。

・エグゼキューションは、既存事業で成功するためには非常に重要。大手企業は既存ビジネスモデル遂行するに適した形になっており、書類仕事や手続き、顧客やチャネル、価格設定や競合を知っている。実行のための計画や予算、KPIやマニュアル、財務や人事など、業務を効率的に進めるあれこれがきちんと整っている。これらは全てエグゼキューションのためにある。

・しかしそれは全て、体系的に手順が整った継続的な仕事に役立つものであり、イノベーションには役立たない。
イノベーションは全く違う発想が必要になる。大手企業も、イノベーションを生み出すプロセスを持つ必要がある。

・新事業には「アントレプレナー」と「イノベーター」の組合せが重要。アントレプレナーとイノベーターの組合せによってイノベーションは起こる。
・「イノベーター」は、研究所・研究開発部門などで、新しいテクノロジー機械学習コードを発明する人。セールス部門で、違う地域に行けば新しいことが起こせそうと考えるような、新しいものを生み出すタイプの人もイノベーターである。
・科学者やテクノロジストは、良いテクノロジーさえあればいいと思っており、イノベーターだけでは新しい製品・サービスを生み出せない。イノベーターはアントレプレナーとセットで活動する必要がある。
・「アントレプレナー」は、様々なルールを破るが、なぜか他の社員や会社に愛され、様々な人間関係の構築がうまく、話すべき人を心得てその人たちを説得し、プロジェクト進行するよう推進する力を持っているような人。

・エグゼキューションとイノベーション、イノベーターとアントレプレナーをきちんと把握した上で、企業はイノベーションに向かう必要がある。

 

■大手企業のイノベーション創出は単発ひらめきでなくInnovation Pipelineを

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・大企業は、会社が潰れたり、市場シェアが落ちたり、CEOの解雇があったりするまでは、従業員は過去と同じことをやり続けるものである。良くない未来が見えているときでさえ、同じことを継続する。
・だから、大企業に根本的な変化をもたらすのに必要なのは、新たなテクノロジーではなく、新たな組織文化や新たな経営層である。

・新事業創出は、顧客開発とリーンな新事業推進をすべし。スタートアップは創業=単一の新事業のためこれで良い。しかし大手企業となると、単発の新事業でなく、継続的で緊迫感のある、市場変化に対してスピーディーな新事業創出の一貫した活動群が必要。
・大手企業がイノベーション創出するには、イノベーションの源の探索から、その情報の整理、課題を見出し、優先順位をつけ、顧客テストを実施して、研ぎ澄まして統合し、チームを作り、製品を作りどう顧客に届けるかまで、イノベーション創出のための全てに渡るプロセス(Innovation Pipeline)が必要。

・最初に行うのは、イノベーションの源を探すこと。イノベーションの源流は様々な場所にあり、R&Dや大学の研究など、企業内外を問わず様々な活動が源になりうる。セールス部隊からアイデアがくるかもしれない。イノベーションの源を集め、課題を理解して優先順位をつける。
1技術や人材、新しい知的財産や顧客課題等、イノベーションのタネ探しから始まる。
2タネの中でどれが企業にとって重要かを優先順位をつける。
3その際、一緒に働くチームを作る。正式プロジェクトを作り、業務時間のいくらかを費やして良いと認め、数人を雇い入れるだけの少しのお金・リソース・メンターシップを与え、プロダクトマーケットフィットを目指す。

イノベーションは思いつきで行なうものではない。イノベーション創出には、体系化されたプロセスを使い、データを活用し、検証を繰り返す。
・市場の変化は企業を待ってくれない。少なくともスタートアップの持つスピード感で進めることが、大企業に求められる。

・このプロセス構築は、エグゼキューション部門に関する組織の反発が出る。組織文化やプロセスを考え直す必要が出る。
・企業の経営層が、エグゼキューション(既存事業)とイノベーション(新事業創出)では全く違うプロセスや手順が必要だと理解し、サポートすることが必要。
・計画や事業モニタリングの財務指標や、開発部門や営業も変化が求められる。従業員全員の仕事が変わる変化ではないが、少なくとも一部ではこのような変化が伴う。

イノベーション創出の試みは実験と同じようなもの。エグゼキューションとは異なる。イノベーションに失敗はつきものだ。イノベーションでの失敗を責めない文化づくり、新しいことに取り組み学びを促進する文化が必要。
・破壊的なアイデアを試すには、組織と計画・予算と権限の独立性が必要。そのような新事業は、既存事業の事業部長や営業部長が欲するはずがない。
・破壊的アイデア新事業は、既存から独立したスペース(組織と計画・予算と権限)が必要。うまく行けば、既存部署に移管も、新事業として新部署にしても、既存事業とシナジーなければ外部の資金を得てスピンアウトもできる。

 

■■■変化を嫌う大手企業でいかに新事業を育てるか

■既存の仕組みを変えようとせず、「一点突破」で前例を作り、それをルールにしてしまう

・大手企業で新規事業に携わる方のよくある悩みは、経営陣への説明に時間を取られプロダクト開発にリソースが割けない、「もっと精緻なプランを出せ」と言われてずっと企画が通らない、など。
・日本の大企業は、未経験の分野の成果物を外に出すのが苦手。外に出すことで既存事業に悪影響があったらどうしようと言う、当然の不安から来る。
・だから、良いプランでも結局ローンチできず終わる、半年リサーチしている間に旬が過ぎ去る、ということがよく起きる。
・新規事業担当者からすると、顧客とやり取りしたいのに、何であの上司を説得するのに労力と情熱を使っているんだ?ということになりやすい。

・この問題に対して、既存事業とルールや制度が異なる、出島を作ることを提案している。社内に作れなければ、完全に社外で。

・大企業で新規事業を作るのが大変なのは、あらゆる仕組みが既存事業に最適化されているから。そのような組織の中では、新規事業はイレギュラーなエラーみたいな存在にすぎない。
・新規事業でやるべきことは、既存の仕組みを変えようとするのでなく、一点突破を目指すこと。(例えば、ある会社での障壁は、プロトタイプ段階で世に出すチャネルが一つもないこと。こういう時に「経営企画と話してプロトタイプを世に出す仕組みを作りましょう」というアプローチを選ぶと、ものすごく時間と労力がかかる。前例がないから。
・物事を進めるには、正攻法で経営企画などと調整するのでなく、個別に論点を絞り、法務や後方から言質を取って、世に出してしまう。出せば反響があります。このような一点突破は大企業では非常に重要。つまり前例を作るということ。

・前例を作れたら、早い段階で仕組み化するのが次に必要なこと。例えば、新規事業のフェーズのゴールそのものを「出展」に設定するようなイメージです。そうすると、それはルールになるので止められない。

・ビジネスデザインは、次の3つをそれぞれ、領域を横断しながら行き来する。
 1素人発想・玄人実行
 2鳥瞰・虫瞰
 3ユーザー目線・企業/経営視点

【1素人発想・玄人実行】
・「玄人」はある分野の技術や実績に精通し、経験則で判断がちです。ビジネスデザイナーは、そのような経験則に囚われず「素人発想」をすべき。
・そしてチーム全体が、なるべく単純に、素直に、自由に発想できるように手助けする。
・自由な発想を、新規事業の「玄人」として実行するフェーズに移る。異なる専門領域の人たちと意思疎通しながら、それぞれのプロの力を引き出し実行する。

【2鳥瞰・虫瞰】
・中長期視点でビジネスがスケールするシナリオを描きつつ、具体的なオペレーション設計や、企業内の関連部署との調整も進める。

【3ユーザー目線・企業/経営視点】
・ユーザー目線と企業・経営視点を行き来する。
・良いプロダクトはユーザーと対話しながら作ることに尽きるが、強い既存事業を持つ企業の場合は、企業の強みや資産をどう生かすかも大事な視点になる。いかに経営に寄与するかも考える。

 

■大手企業で新規事業を進めるいくつかのテクニック

・新規事業開発の撤退基準は、いくつかゲートを設け、ゲートごとに撤退基準を決めている。例えば、ゲート1はプロトタイプ作ってユーザーからフィードバックもらうまで、ゲート2は一部の人に売ってみるまで、ゲート3はローンチする、という具合に。それぞれのゲートで「こうだったらやめよう」を撤退基準を決めておく。(クライアントとの協働事業や、成果報酬型の場合)

・大企業では、何かする際にうまくいかない場合を想定してないため、失敗に対して極めて不寛容。既存事業は当然それで良い。しかし、“新規事業は失敗する”を前提に考える必要がある。失敗の際にどうアクションするか、予め設定しておくことが大切。
・スタートアップではピボットは頻繁に起こるが、大企業では非常に大変。「変更になる理由をロジカルに説明せよ」と言われる。だから、最初から新規事業開発の流れにピボットを組込んでおく必要がある。
・また一度決定した方針を変更することに抵抗が大きいため、テクニック論として「これはあくまで一時的な方向性で、検証を重ねて修正していく」と何度も強調するなど、言葉の選び方にも、大企業の修正を理解した上でのテクニック論が求められる。

・大企業内で新規事業を進めるテクニックとして、過去の新規事業担当者に、過去にローンチできなかった新規事業企画の例を聞くのは良い方法。みな悔しい記憶があるから、その企業内でのつまづきやすいポイントを、凄く喋ってくれる。逆に成功例を聞くのも良い、どうすると話が通りやすいか見えてくる。

・新規事業は、事前予測・分析では何も分からないのが、大前提としてある。事後対応型でやるしかない。そのため事前に考えたり相談せず、どんどんやっちゃうのが一番の近道だと思う。
・よく、承認の手順を踏むくらいなら、怒られたほうが早いという。クライアントにに、そういうプロセスを踏み越える人がいる時の方が、遥かに新規事業の成功率が高い。
・「聞いちゃいけない問題」という類が、大手企業内にある。つまり、聞かれたら聞かれた方は立場上「ノー」としか言えない内容のもの。それは聞いてはいけない。事前に「やっていいですか?」と聞いたら、絶対にダメと言われるのだから。

・外部の新規事業開発会社との契約自体がハードルの場合は、研修の枠組みでやるのは一つのやり方。要するに、その会社の既存の予算とルール上で大丈夫な枠と範囲で始める。
・研修といいつつ、内容はガチでやり、「こんないい案が出た」と繋げるストーリーとか。

 

■■■新規事業の“デジタル・ゲームチェンジ”(WHITE)

■新規事業開発のデジタルゲームチェンジ 鍵となる3つの型

・企業の新規事業がうまくいかないのは、大きく3つの要因があると考える。
1デジタルが引き起こす新規事業・サービス開発のゲーム・チェンジ
2生活者も認識していない新しい価値、潜在的な欲求の発見
3未知の領域に対して企業内での意思決定で求められる確実性

「1デジタルが引き起こす新規事業・サービス開発のゲーム・チェンジ」は、新規事業の三類型(課題解決型・課題再定義型・価値創造型)。

【課題解決型】
・「課題解決型」は、“顕在化している課題” を解決する事業。課題が顕在化しているため、先行企業がおりレッドオーシャンになっている場合が多い。
・市場自体が成長している場合は新規参入しても良いが、そうでなければ避けるべき。
・しかし、技術イノベーションなどにより、既存企業に対して圧倒的優位がつくれるタイミング、直接的に儲けなくて良いビジネスモデル(他で儲ける)を構築することができれば、レッドオーシャン市場を、積極的に取り組むべき課題に転換できる。

・課題解決型で考えるべきデジタル視点:
 ー既存プロセスのデジタル化により圧倒的な優位性を作れるか?
 ーデータ保有により自社の圧倒的優位性につながるリアル情報はないか?

【課題再定義型】
・「課題再定義型」は、現在見えている課題を再定義して、解決策を実現する事業。
・現在の産業構造を前提としつつ、顕在化している課題を捉え直すことで未知の課題を発見する。
・デジタル化や社会変化が起因となり、解決すべき課題と既存事業・サービスが解決している課題のギャップが実は発生している場合も多くなっている。
・課題の再定義には、まずは生活者の変化や新しい文化の兆しを察知することが重要。その変化が、既存製品・サービスの前提を覆す可能性があり、かつ不可逆なトレンドとなる可能性があるかどうかの見極めが重要。

・デジタル化の例は、例えば昔は、消費者に広い商品バリエーションを提示することが良しとされた。インターネット登場により、商品バリエーション量が爆発し、消費者は選びきれなくなった。またスマホ登場により、小さい画面では更に選ぶのが面倒に(情報収集コストの増大)。
・社会変化の例は、例えば昔は、色々選ぶ楽しみが求められた。しかし口コミやレコメンドなどにより、商品選択で失敗したくない心理が強まる傾向になってきている。(生活者の無気力化)
→一昔前は、データベース量で勝負しユーザーの能動的な動きを前提としたが、上記変化により、キュレーションされた商品や、コンシェルジュ商品提案型のサービスが登場。

・課題再定義型で考えるべきデジタル視点:
 ー現状解決すべき課題と既存プロダクトが解決する課題のギャップがないか?
 ー既存事業の前提を覆すような生活者の変化、新文化形成の兆しはないか?

【価値創造型】
・「価値創造型」は、新しい課題・機会を発見し提案していく事業。現在の産業構造を超えて新しい価値をつくり提案する。
・この類型の新事業は、情報のみでは「何がよいのか」がわかりにくいことも多く、企業内にて意思決定者に上申する際に苦労し、実現の難易度が非常に高くなる。
・価値創造型の新事業実現は、極めて難易度が高いが、あえてポイントを挙げるならば、個人のバイアスを破壊し、現在の「産業構造を超えた視点」で考えるということ。
・例えばAirbnbのようなサービスは、既存の「宿泊ホテル産業」の視点では、絶対に生まれない。

・既存産業構造を超える視点の持ち方は、様々なパターンがあり非常に難易度が高い思考が必要。無意識に既存産業で考えてしまうバイアスを破壊するために、無理やり別視点のバイアスを作って、その前提に立って考える必要がある。

 

■無意識のバイアスを壊し、ずらした市場での検討法

・新規事業では「異なる視点」を持つ必要があるが、そのため自分自身の無意識のバイアスを認識し、それを突破する必要がある(リフレーミング)。
・無意識のバイアスを認識し、突破するのは普通できず、強制的に通常と異なるフレームで考える必要がある(下のフレーム)。

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・新規事業を検討する市場にて、何をインタビュー・観察するかの「問いの定義」をするために既存バイアスを壊す必要がある。新規事業のリサーチは、何を調査するか曖昧で、やもすると検討市場のみの狭い範囲になりがち。新しい気づきや異なる視点の発見のためにも必要。

 

■デジタルゲームチェンジの初期仮説を構築する

新規事業開発の既存市場・サービス分析のステップ。
1新規事業の検討市場のリフレーミング
2既存市場・サービスの競争要因と競争優位性の把握
3競争優位性を破壊するデジタル視点を検討する
4方程式で初期仮説を設計する

【2既存市場・サービスの競争要因と競争優位性の把握】
・ 検討すべき市場をある程度絞った後、その市場の競争要因と競争優位性を明らかにする。
・戦略キャンバスを用いて、当該市場の競争要因を調べる。
・競争要因ごとに、競争優位性を考える。希少性、模倣困難性、組織、利用ハードルの観点。

【3競争優位性を破壊するデジタル視点を検討する・4方程式で初期仮説を設計する】
・競争要因や優位性を、デジタル技術活用により圧倒的に強化、もしくは削除できないか検討する。

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■新規事業では未来視点で問いを定義する必要あり

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・新規事業開発・イノベーション創出の多くは成果に繋げられていないが、大きなの要因の一つは、新規事業開発で取扱う「問いが枯渇」していること。
・新規事業開発で最も重要なのは、問の定義。社会・個人のどのような「課題」を解決していくべきか?を考えること。
・しかし、現在はあらゆる課題が解決され、取扱う課題がない時代になっている。企業が新規事業として取扱うには、一定以上の規模で、儲かり、解決可能なこと条件となるが、そのような課題は既にレッドオーシャンとなっている可能性が高い。

・独自性の高い「問いの定義」をするポイントは「未来視点」であろう。その理由4点。
1未来には解決されていない社会課題が潤沢にある
2未来において利益を創出しつづけられる新規事業が考えられる
3今までは察知できなかった「未来の兆し」が感じられる
4ビジョンドリブンな新規事業開発できる

・未来視点の事業開発ステップ。
ービジョンメイキング
ーテーマ決定未来リサーチ
ー未来の要因のマッピングと構造化
ーシナリオ作成&キーワード抽出
ー独自性の高い問いの定義

私見この考え方には、反対。まず、現在解決されていない課題や不満は "山ほどある" 。それに気づくか、気づかないか。
"未来視点の新規事業"は響きは良いが、現実には、人々や会社の既存の課題から目を逸らし、妄想で新規事業を考えることだと思う。(成功する確率はかなり下がるが、新規事業担当者としては楽しい作業になる。妄想で色々進められるため)
また未来視点であることは、それで新規事業案を検討するというより、当然に持つべき視点の1つに過ぎない。人口動態は、確実に到来する未来を予見できる指標。未来視点の諸々は、賢い学者の本を2-3冊読めば、大きな方向性はあまりブレない。難しいのは、その状況に至るのが5年後か20年後かということ。

 

■未来視点から新規事業の「問い」を定義するシナリオプランニング

・新規事業の問いや提供価値の定義は、1.把握する、2.抽象化する、3.構造化する、4.言語化する、の4つプロセスで検討する。

【1.把握する】
・新規事業を検討する市場を、産業の壁を超えて把握する。
・顧客を目線に、機能的な目的と市場、意味的な目的な市場を洗い出す。検討市場の代表的なプロダクトを複数選び、顧客が期待する直接的効果は何かを検討する。顧客になりきり、少しでも多くの目的を考える。
・次に、目的達成のために検討しうる別市場のプロダクトを具体的に考える。
・次に、機能的な目的ごとに、意味的な目的を考える。
・次に、その市場の代表的なプロダクト・スタートアップ・メガトレンドを大まかに把握する。その市場の人口構成・社会の変化、技術の変化、不可逆な目がトレンド、法改正などをパソコンで調査する。

【2.抽象化する】
・未来につながる重要な要因を抽出する。
・調査内容から、未来を変化させる要因を抽出し、不確実性と市場影響度の観点から評価する。
・未来要員の抽出は、要因は100個程度必要。事象から、起きる可能性がある要因を作り出すのも重要。
・それを、不確実性と市場影響度の観点から評価する。評価はあくまで個人の感覚でなされる。評価をしたら、未来における重要要因を、個人の興味・関心で4つ選択する。

【3.構造化する】
・未来の要因を関係性から深く理解する。
・4つの重要な要因を起点に、それに関係する要因をマッピングする。繋がらない場合は、つなげるための未来要因を考える。

【4.言語化する】
・新しい前提条件となる未来を創り出す。
・4つの重要な要員の構造化したものが完成したら、新しい前提条件となる未来を4つ創造する。
・その4つの未来の具体的な特徴を検討する。その未来世界の大きな特徴、生活者の価値観や行動の変化、遣唐使上の状況の3点を意識して。
・4つの世界がどうなっているか文章化(未来シナリオ作成)する。文章化することで、世界の解像度が高まる。未来シナリオは「未来までに起きている世の中の潮流」「未来における市場の状況」「市場に対する機会・脅威」の3段落で構成する。
・4つの未来シナリオから、未来の人や企業が抱える課題や欲求を作り出し、新規事業として取り扱う独自性の高い「問いを定義」する。
・「問いの定義」とは「未来シナリオにおいて、自分(自社)がやりたいことを決める」こと。

・「問いの定義」ができたら、事業・サービスコンセプトを検討するが、ここから先は一般的なアイデア創出のフレームワークやワークショップなどを活用する。前提条件の異なる未来の「問いを定義」しているため、解決策での独自性は必要ない。

私見この考え方には、反対。同意することは一つもない。
初期仮説+顧客の観察やインタビューを通じて、顧客の不満や耐え難い苦痛などを「見出す」「発見する」のが起点だと考えるが、この上記やり方には、顧客や顧客の課題はどこにも出てこない。
未来視点というが、全てただの妄想・会議室で生まれる机上の空論で、なぜそれを起点に新事業を作ろうと思えるのか、全く理解に苦しむ。(ただ、新規事業担当者としては、楽しい作業になる。どうせ失敗するなら、妄想で色々やれる方が楽しいのかもしれない。)

新規事業の起点として、独創的な問い・未解決課題を見出すことが必要。当記事には「課題解決視点の新規事業は、なぜ“息詰まる”のか?」とあるが、顧客や市場の現状を捉える視点や観点が、間違っているのだと思う。既存と異なる視点や観点で見ることで、息がつまることは、全くない。
「発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目を持つことだ。」という名言があるそうだが、顧客の課題発見は、まさにこの通りだと思う。

なお、シナリオプランニング ・バックキャスティングという手法は、会社(全社)の10年20年先の事業領域定義や全社ポートフォリオの構想、新しい事業領域拡張(損保の介護進出・デジタル踏み込み、海外大手の買収)の検討や、基礎研究や数十年単位の研究、法人向けの重い事業(エネルギー事業など)には、有用な手法の一つだと思う。
この手法自体がダメということではなく、単一の新規事業の検討をするには、ほぼ役に立たない検討フレームだと思う。

https://bizzine.jp/article/corner/142

 

■■■連続的に事業を生み出す組織作り(アーキタイプ

■事業開発ステップごとの課題と対策法

【新規事業創出の手段の選択肢】

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【新規事業開発のステップ】

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各ステップで発生する典型的な課題は次の通り。

【1テーマ設定】
・新事業開発時には、検討する一定の事業テーマ・領域を定義することになる。
【課題】新規事業に取組む理由や検討領域の定義が、曖昧になることが散見される。
・テーマや範囲が曖昧だと、後々の判断にブレが生じ、事業開発が失敗する原因になりやすい。この時点でテーマを明確に絞り込むことは難しい。広すぎず狭すぎないテーマ設定が求められる。
・新規事業創出の目的、事業領域の定義、社内における位置づけや事業スコープは、最初に整理しておきたい。

【2コンセプトアイディエーション】
・テーマ設定後、事業コンセプトのアイデア出しを行う。
【課題】インパクトのアイデアが出にくいという課題がある。
・新規事業立上げ経験が乏しくアイデアが出ない、部門間を柔軟に立ち回り活用可能なアセットや知見を引き出せる人材が新規事業担当にいないことなどの原因がある。ビジネスモデル起点で、ユーザーニーズが考慮されていないことも発生しがちな失敗例。
・ユーザー調査などで潜在ニーズを引き出す、経営陣がコミットして組織間に横串を通す、エース級人材や外部人材登用するなどの施策が求められる。

【3コンセプトバリデーション】
・複数の有望事業コンセプトが出たら、各事業コンセプトの事業性を検証するステップに移る。
【課題】このステップに時間をかけ過ぎるケースが多い。特にパソコンでの調査や定量データ分析に時間をかけてしまう失敗が多い。
・新規事業が成功することを保証するデータは、世の中にない。早い段階でユーザーの声を聞くことが重要。
【課題】各事業コンセプトを一発必中で必ず成功する前提で検討を進めるケースも見られる。
・各事業開発責任者は必ず成功させる熱意を持って取り組むことは大前提だが、新規事業に取り組む企業の態度としては、そもそも新事業開発の成功率は低い事実を受けて、多産多死を前提とするスキーム設計をする必要がある。

参考:新規事業の成功率は10%未満 ◉ 新規事業 成功確率アップに大切なこと

【4中間評価】
・事業コンセプトがある程度検証できた段階で、実際に事業開発・創出を進めるか・止めるか意思決定が必要になる。
【課題】意思決定者である経営層・マネージャー層に、新事業開発経験が乏しく、既存事業と同じ視点で評価してしまい、良い判断ができない問題が発生する。
【課題】多方面からの指摘などにより、当初尖っていた事業コンセプトが、無難な内容に落ち着いてしまうこともある。
・VCや起業家など外部知見者の目線を入れたり、少額の開発費用を幅広く提供しプロトタイプ開発までは多くの事業コンセプトを残すよう設計する対応が求められる。

【5プロトタイプ開発/フィジビリティ検証/事業計画作成】
・事業開発承認を受けた事業コンセプトは、プロトタイプ開発し、顧客フィードバックを得ながら事業性を検証するステップに進む。
【課題】自社内開発リソース確保できない、外部の開発会社とクイックに開発・検証が進められない課題が発生しやすい。
・一部企業では、自社内にプロトタイプ開発、顧客検証できる組織を持っているケースもある。自由に動ける開発組織を社内に持つという選択肢も考えられる。

【6事業化判断/MVP開発/組織制度設計】
・フィジビリティ検証で良い結果が得られた事業コンセプトは、いよいよ事業化の判断がなされ、顧客に価値提供する最小限製品(MVP)を開発することになる。
【課題】このステップの課題は、目的・ゴールの変更、大企業特有の説明コストの高さがある。「新事業の事業規模が小さすぎる」「不確実性が高すぎる」などの理由で、否決されてしまうことがある。
・課題回避のために、新規事業立上げを判断する意思決定基準を設計し、その基準について経営層の共通認識とすることが重要。
【課題】事業化にあたり、事業の受け皿となる事業部がないという課題も発生する。大半の新規事業創出部門には、事業を推進するに十分なリソース(人員)はない。既存事業部への引き渡しか、新部門立上げが必要となるが、うまく進まず新事業の居場所が不明確になり停滞する問題が発生する。
・事業化判断する段階で、推進体制・組織設計し、必要リソース確保も含めて承認を得たいところ。

【7グロース】
・プロダクトの市場投入・販売開始後、プロダクトマーケットフィットが見えてきたら、グロース段階に入ることに。新事業にどこまでガバナンスを効かせか、つまりヒト・モノ・カネの決定裁量権を、新事業担当部門にどの程度与えるのかは重要な判断。
【課題】ヒト・カネが、既存事業部同様に人事・財務経理部門の管理下になると、予算承認のための多大な説明コストがかかり、グロースのために必要な人材も採用/アサインできない状況となり、事業成長が非常に困難になってしまう。
・グロースの実現には、しばらくの間は既存事業とは別ルールで裁量権を与え、社外リソース含めを新規事業側で自由に獲得できるようにすることが重要。 

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私見おおよそ同意だが、コンセプト創出と中間判断では、アイデアよりも、「誰の、どんな課題や困りごとを解決するのか?」が最優先の検討事項。視点の鋭い未解決課題に対して、解決策(ソリューションやプロダクト)は複数検討しうる。プロトタイプ開発やフィジビリティでは、ソリューションのブラッシュアップを行いたい。

 

■米国老舗企業に学ぶ、新規事業を継続的に創出する仕組み

・新事業創出のフレームワークは色々ある(デザイン思考、SPRINT、グロースピラミッド、リーンスタートアップなど)が、基本的なステップは同じ。
・課題を定義し、解決策のアイディア創出し、プロトタイプを作り、顧客検証を行い、プロダクトローンチし、うまくいった場合成長フェーズに移行する(Define・Ideate、Prototype・Test・Growth)という共通プロセス。

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・ Define・Ideate・Prototypeの段階では、「事業テーマやスコープが曖昧」「社内人材は事業創出経験に乏しく、インパクトあるアイデアが生み出せない」「ビジネスモデル起点で検討してしまいユーザーニーズが置き去り」などの問題が頻繁に発生する。

シスコシステムズ:パートナー企業との共創】
・シスコの事業規模は、およそ年商5兆円、営業利益1.5兆円、研究開発投資7000億円。
バリューチェーンを形成するパートナー企業や顧客を巻き込んだ共創。複数の大企業のエグゼクティブクラスが集まり、2日間の新規事業開発ブートキャンプ形式。
・ブートキャンプの最後に、シスコや参加企業の経営層が「その場」で投資の可否を判断する。

私見大企業×スタートアップのようなお遊びでなく、エグゼクティブ層が"参加者"として議論し、その場で投資可否判断をするから、事業創出につながる。
営業利益1.5兆円でITインフラ事業をするシスコだからできるやり方。
日本で近しい動きをするのは富士ゼロックス
独創技術に裏打ちされた、顧客共創によるイノベーション創出 。おそらく日本で真似できるのは トヨタ、NTT、NTTドコモKDDIソフトバンクJR東海・東日本くらいでは。

【AT&T:ボトムアップの新事業アイデア創出】
AT&Tの事業規模は、およそ年商17兆円、営業利益3兆円弱。
・社外向け:AT&T Foundryは世界6拠点、シスコやインテルなども出資して1億ドル資本。IoT関連領域にて外部企業とコラボし、数十の新製品・サービスが2011年以降生み出された。
・社内向け:社員向けアイディアプログラムは、社員が新プロダクトアイデアを提出でき、これまで5万件以上のアイデアが投稿され、50億円以上の資金が投資された。

私見外部企業との投資と協業は、通信会社ならでは。IoTやVRプロダクトが作られるほど、通信が使われて儲かるから、投資をして育てる明確な意味がある。日本だと、NTTドコモKDDIがやっている。
社内向けをずっとやっているのはリクルート
新規事業生む組織 リクルート名物制度の秘密 。1982年から35年やり続け、うまく行く理由は ヒト・モノ・カネ を圧倒的にかけ続けているから。日本で真似できる会社は、おそらくない。 

メットライフ:テーマ絞り込みアクセラプログラム】
メットライフの事業規模は、およそ年商6.5兆円、営業利益4000億円。
・Lumen Labは、「保険業界に存在する様々な課題を解決するための道のりを照らす」というミッション、「保険業界で、テクノロジーやデータを活用して新しい製品・サービスを構築する」ことを目的とする組織。
アクセラレータープログラムでは、テーマを非常に具体的に設定し、世界からスタートアップ募集。採択・マッチング後は協業・事業開発につなげやすい。
・例えば、商品開発の領域のテーマ設定は「ビッグデータを利用し保険商品の価格設定を可能にする技術」。セールスや、バックオフィス業務改善領域でも、同様に具体的なテーマ設定され、スタートアップを募集。

私見スタートアップ向けアクセラレータープログラムで、唯一うまくいくやり方である「技術購買」に特化している。この目的は、既存業務のテクノロジーを用いた改善、既存ビジネスにおける課題解決目的。("オープンイノベーションで新事業共創" のような、ゆるふわな甘ったれたことは、当然できるわけもない)
技術購買に特化し、スタートアップにお金を払う(発注する)つもりが明確にあれば、どの大企業でも行うことができる。(新規事業が創出できるかも、などといった勘違いしてはならない)

 

■海外企業に学ぶ、ボトムアップの新規事業開発

・Test・Growthの段階では、「自社内開発リソースが確保できない」「外部の開発会社と連携した開発・検証がクイックに進められない」「事業の引受先となる組織がない」「予算獲得や人材採用に多大な説明コストがかかる」などの原因により事業化が進まない状況がよく発生する。
・その解決策の一つとして「スタートアップスタジオ」を取り入れる大企業がある。 「スタートアップスタジオ」は、同時多発的に複数のプロダクトや事業を産むために必要な機能をスタジオ内に保有し、次々に新事業を生みだすことを目的とする組織。

【AXA:コーポレートスタートアップスタジオ】
・AXAの事業規模は、およそ年商13兆円、調整後利益8000億円。
・120億円の投資にてKamet Venturesは設立され、インシュアテックに特化した新規事業開発を行うコーポレートスタートアップスタジオ。パリ、ロンドン、テルアビブの3拠点で合計140人以上の起業経験者・専門家が働く。
・Kamet Ventures CEOは、AXA入社前に、2つのInsurtechスタートアップを創業したシリアルアントレプレナー
・6ヵ月ごとに40アイディア創出、有望8テーマを採択し、各テーマに起業家経験者とスタッフをアサイン(Kametには起業家経験者、デザイナー、マーケター、ビジネス、ファイナンス、法務、人事と様々な領域のスペシャリストが在籍。新規事業立上げに必要機能はスタジオ内で確保できる体制となっている)。
・事業創出ステージを、invent・incubate・build・scaleの4段階で定義。
 ーinvent:上述の8テーマ採択まで。
 ーincubate:リーンにプロトタイプ開発まで。
 ーbuild:ビジネスモデル設計をし、6ヵ月後に事業継続の審査を受ける。
   審査にて継続する4テーマを選別。
   継続テーマに6〜7億円の事業開発の追加資金で、6〜8ヵ月の事業継続。
 ーscale:各テーマ主導で事業開発。直接の人材採用なども。
・buildフェーズ以降に必要な、プロダクト・事業開発人材を予めスタジオ内に確保することで、スムーズに事業開発が進む環境が担保されている点が特徴。
・事業継続審査の時点で6~7億円ほどの事業開発資金を提供し、その後のプロダクト・事業開発や人材採用を含む意思決定権を、テーマ責任者に与えていることも特徴的。個別の意思決定の説明コストが下がり、迅速な事業創出が可能となっている。

私見スタートアップスタジオではないが、近しい動きはSOMPOホールディングス。デジタル責任者を外部招聘し、東京・シリコンバレー・テルアビブにラボがあり、2年で新商品10件(うち革新的事業創出は1件のみ)。DeNAとカーシェア事業を運営し、駐車場シェアを関連会社化、シリコンバレーPalantirの日本合弁企業設立など、保険会社の枠を超えたデジタル新事業の展開を強めている。

サムスン
サムスンの事業規模は、およそ年商22兆円、営業利益2.7兆円。
・コーポレートスタジオC-labは、社員から集めたアイディアを育てて事業化するプログラム運営。韓国、インド、北京、ウクライナに拠点。
・C-labはイノベーション創出の小さな組織作りを掲げ「チャレンジ精神」「高速な実装」「失敗を賞賛し、そこから学ぶ文化」を重要視。
・累計900人以上が参加、C-lab所属期間は既存の人事評価基準から完全に外れる。外部人材の採用権限も持つ。
・2017年時点で228プロジェクトが実行され、うち45%がサムスン既存事業部門に移管、20%はスピンアウトして独立企業として運営されている。
・スピンアウト時、サムソン出資比率は20%程度が多い。

https://bizzine.jp/article/corner/179

 

■大企業の事業開発スピードと成功率を上げる方法 (QUANTUM)

■スタートアップ創出の新たな仕組み スタートアップスタジオ

・スタートアップ創出の新たな仕組みとして、スタートアップスタジオという形態がある。2007年創業の米国betaworksがその代表格。
・スタートアップ立上げに必要な経験・スキルを持つメンバーを揃え、ツールを開発し、ノウハウを蓄積し、それらリソースを活用して、複数の新事業・スタートアップを並行して立ち上げて成功確率を高める組織的な方法論。

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https://bizzine.jp/article/corner/81

 

■■■インダストリーX.0とは何か?(アクセンチュア

■インダストリーX.0 未来のプロダクトは今あるモノとは“完全に異なる”

・製造業の付加価値創造プロセスは、過去は、価格に対して「製品価値=性能×品質」で勝負するもので、製造オペレーション効率化がルールであった。
・一方、デジタル時代は顧客接点がカギになる。
・正しいデジタル技術の組合せと、それらを「ビジネスデザイン」する力が勝負を分かつ。

・自前主義を捨て、デジタル・バリューチェーン上でのエコシステムパートナーとの関係構築も重要になってくる。
・小さな規模でスタートして、トライ&ラーン(学ぶ)を繰り返し、ベータ版で良いので市場に出し、顧客起点でより良いものにしていくというように、これまでの前提や発想を転換する必要がある。

・インダストリーX.0における、DXの6つのアジェンダ

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■デジタル時代の製造業の「ビジネスデザイン」

・デジタル技術とスピーディな社会変化により、不確実性はさらに高まっていく。その環境変化の中で、製造業はモノづくり力・技術力だけでなく、顧客起点で提供価値を再定義する力が競争の源泉になりつつある。
・製造業のデジタル化検討は、デジタル主導の新しい売り方やアフターサービスの「顧客経験軸」、もしくは既存業務や社内オペレーションの「効率化軸」のどちらかが多かった。
・しかし本質的な価値創出を狙うには、両軸を合わせた新しいビジネスモデル創出に「ビジネスデザイン」のアプローチが重要となる。
・①市場を大きく捉え、②ビジネスインパクトを見極め、③デジタル技術を活用するアプローチ。
・GEは、航空機エンジンの製造・販売という製造メーカーの枠を超え、デジタル技術活用した予防保全や航空機全体の整備を含め、航空機全体メンテナンスや運航計画最適化する、収益最大化を実現するサービス事業へとポジショニングを転換した。

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■日本の製造業がビジネス転換するために必要な考え方

・インタストリーX.0の世界観は、究極的には企業中心のプッシュ型「ものづくり」ビジネスモデルから、人間中心のプル型サービスビジネスモデルへの変革を言う。
・デジタル活用する新規ビジネスの推進体制は、通常、顧客視点から新サービスを企画し各役割担当者に指示を出す「イノベーション企画プランナー」、組織横断してサービス提供に必要業務プロセスの変革をデザイン・調整する「業務プロセス・デザイナー」、サービスの意思決定を支える「データサイエンティスト」など必要となる。

・伝統的な日本企業は、プル型サービスビジネスモデルへ変革していく投資戦略として、ワイズピボット戦略を取るべきだろう。ワイズピボット戦略とは3つの投資戦略を組合せながら、今ある事業ビジネスモデルから新たな事業ビジネスモデルへの変革を実現するアプローチ。
・1TRANSFORM THE COREは、既存中核事業の変革を行って投資余力を創出し、自社リソースの稼働余力を創出する投資モデル。
・2GROW THE COREは、既存中核事業を成長維持の手段としてスケールさせる投資。
・3SCALE THE NEWは、新規事業を創出し、拡大する投資モデル。

・モノに着目するのでなく、顧客起点(自社製品の使われるシーン)での付加価値を捉え、既存の自社の強みを再評価する視点を持てば、いろいろな可能性が見えてくるだろう。

私見この連載の著者は、ご自身が "当事者となり" 新規事業を企画〜立上げした経験は、おそらくないのでは? US本社のパワポ資料を英訳したままの内容も多い?
ワイズピボットというのも、そんなこと百も承知の内容で、3SCALE THE NEW をするのが、組織力学として大変で(参考:【要約】イノベーションのジレンマ )、また新規事業の成功率10%未満の現実(参考:新規事業の成功率は10%未満 ◉ 新規事業 成功確率アップに大切なこと )を、どう乗り越えるかが新規事業の現場であるのに。

https://bizzine.jp/article/corner/129

 

■補足:研究を窒息させている日本の大企業 - Togetter

とある大企業の話。
「カッターは使えないんですよ。というより、ない。ケガするから」
→『え?まさか?ちょっと切るだけなのに?じゃあ研究材料を切断するにはどうしたらいいの?』
「カッター使える部屋があるので、その部屋で作業してよいか申込書を作成。許可を得たらその部屋で、安全手袋してカッターで切る」
→『え?これをちょっと切るだけですよ?書類を作成し、提出しなければいけないの?』
「ええ、労災ゼロを目指していますから」

・すでに「正解」が分かっていて、何をどうすべきか明確な業務なら、こういう面倒な手続きでよいかもしれない。
しかし研究は正解が分からない。細かな微調整や、大胆な改変を、迅速に行えるかどうかが研究の質と内容を大きく変える。
労災を予防するのは研究でも同じだが、研究は自由な発想をどれだけ迅速に検討するかで、創造的な成果を出せるか決まる。カッターひとつ使用で許可が要るようでは、研究を窒息させてしまうようなもの。

・日本企業から革新的な商品が出なくなっている主原因のひとつは、工場など「正解のある世界」のルールを、研究にまで適用し、研究を窒息させているためだろう。事故は起きないが、研究成果も出ない。(研究開発部門に、製造工程管理と同様の管理手法を持ち込みたい勢力の人がいる)

私見新規事業立上げの現場に、既存成熟事業のルールや制度を無意識のうちに当てはめようとしてしまう典型的な傾向は、おそらく上記と同じなのでしょうね。

 

■■■大企業向け 失敗しない新規事業立ち上げ方(SEEDATA)

■新規事業の進め方

・大企業が新規事業で失敗する3パターン
 1何十億、何百億という過大な目標を掲げ、小規模だからとやめてしまう。
 2「こんな品質では外に出せない」と永遠に外に出せないで終わる。
 3社内に経験者がおらず、評価する立場の人も、適切に評価できない。
・新規事業部・制度では、新しい市場への挑戦(飛び地)がオススメ。社内の誰もやっていない未踏領域なら、口出しもされず取り組みやすいメリット。まず組織や人を育てる意味合いで飛び地で始め、やりやすい環境づくりを第一に考えるべき。

・新規事業を行う場合、アイデアも人材も経験豊富な外部の人間を入れて新規事業を回していくべき。
・外部人材は、顧問より実際に手を動かしてくれる人が有効。顧問をつけても実際には何も動かない。新規事業立上げ経験者を連れてきて、実際に動いてもらうことに時間とお金を使った方がいい。アドバイスではなく、動いてもらうことが重要。
・例えば、自社の管理職1人、担当者2人、あとは経験者の外部で固める、という体制が良い。逆にダメなのは、自社未経験者5人+週1アドバイス外部顧問。動き方がわからないため、うまくいかない。

・新規事業は少なくとも5年はかけて育てるつもりで。新規事業立上げにはスピード感が必要だが、事業を大きく育てるには時間がかかる。

■新規事業と新商品・新サービス開発の違い

・新規事業は大きくは2パターンに分かれる。
 1新商品・サービス開発:既存ビジネスの上に新しいサービスや商品を乗せる
 2ビジネスモデル創造:自社にとって新しいビジネスモデルの事業

・既存ビジネスに新商品・サービスを乗せる場合、調査に時間をかけすぎず、アイデアを磨く時間を多く取る。定量データではなく、実際にお金を払う顧客がいるかどうかを確かめる。
・企画3ヶ月ならば、次のようなスケジュール。
 ・最初2週間まで:情報収集
 ・最初の1ヶ月:アイデアを出し切る
 ・次の1ヶ月:想定顧客に当ててアイデアを磨く(試作品を見せて、話を聞く)
 ・最後の1ヶ月:磨いたアイデアにお金払う人が実際存在するか、実証する
 ・並行して、技術的に可能か製造部門と話しておく

・自社にとって新しいビジネスモデルで作るのが新規事業。つまりお金をもらう仕組みを変える必要ある場合。
・新規事業は、アイデアが売れ続ける仕組みになるか確かめる必要もある。消費者に届くまでの道筋を全て作る必要があり、組織新設が必要な場合も。
・最初は10〜20の事業アイデアを出す。市場調査をし、プロトタイプを消費者に見せ、実際に売り込み、サービスをブラッシュアップし、実際にお金がもらえるか検証をする。ここまで半年〜1年はかかる。この検証まで行うと、当初20あった案は2、3案くらいに絞られる。その案をどうビジネスモデル創造に繋げるかが難しいところ。
・新規事業はビジネスモデルを固めるのに3年程度かかる。
・自社の部署でやるもの、出島で外部でやるもの、外と組んでやるものと分けていくつか作り、KPIをクリアできるものを残していく。

・大企業の新規事業は自社リソース活用すべきだが、最初の0→1(つまり最初の1年くらい)は外部と組んで新規事業部で行い、1を10にする際にやっと会社リソースが使えるように。

■新規事業の予算の考え方

・新規事業は、いきなり大きな数字を目指すのではなく、小さく生んで大きく育てるという予算の考え方が必要。
・既存事業の発想で「100億の新事業を作ろう」と考えがちだが、100%失敗する。
・群戦略の形が良い。数年で3〜5億位に到達するような新規事業の事業計画を10~20個立上げ、それぞれの新事業を伸ばして、最終的に数十億のものが2つ生き残るような、群=群れで作り上げる新規事業群。

・新規事業部の費用は、自社の新規事業部員(社員)の人件費、外注する費用や調査費用など企画開発費、事業を生み育てるための投資予算、の3つに分かれる。

・自社の管理職1人、担当者2人、あとは経験者の外部で固める、という体制が良い。
・管理職は、会社経営や海外赴任の経験、または自社のメイン以外の事業を畳んだ経験などイレギュラーな経験をした人が向いている。優秀エース社員は向いていない。
・担当者は、イントレプレナーに興味あり、好奇心旺盛で学習意欲がある人が向く。
・場所は、外に出て行かざるを得ない形がよく、コワーキングなど社外に場所を持つ方が良い。
・企画業務は、一度新規事業を回してみて撤退する可能性もあるため、最初は外注のほうが良い。

・事業を作るときの費用は、まずMVPを作り、ユーザーにとって価値があるか半年くらいの時間をかけて検証する。
・次に、そのサービスやプロダクト仕様で、実際にお金が取れるのかというビジネスモデルのプロトタイプを回す。これも6ヶ月くらいの時間がかかる。
・この2種類のプロトタイプを通じて検証を行う。この部分を怠ると失敗しやすいため、お金をかけてでも必ずやることを念頭に、初めから予算をとっておく必要がある。

・3〜5億円くらいの事業を目指し、3000〜5000万円くらいの資本金でスタートする。1〜2年目の売上がなくとも、損失も3000〜5000万円くらいで住むような事業計画にする。
・いきなり数億かけるような事業計画にはせず、無理してでも限られたコストで回そうと考えることが大事。

https://seedata.co.jp/blog/biz-dev/95/

 

■Relic(新規事業支援)
・2015年創業、従業員100人
・新規事業開発領域に特化し、①SaaS事業(社内ベンチャー制度管理、MT&CRM、イノベーター診断など)、②新規事業コンサル(ハンズオン型、社内ベンチャー制度・オープンイノベ事務局)、③新規事業運営受託やJV・投資など。
・コンサルはハンズオンの形。企画・実行・実装・運用まで一気通貫にできる。
・事業性の仮説検証やテストマーケティングに力を入れ、失敗確率を下げる進め方をするのが特徴。BtoCはクラウドファンディング利用、BtoBは検証用プロトタイプとアポ取ってテスト営業もして、検証しながら進める。
・新規事業プラン募集の事務局は、目的定義の経営との握り・メンタリング実務に加え、募集告知からインセンティブ設計・組織座組み検討なども。
・社長が、新規事業を当事者として立上げた経験が多数ある。

■ゼロワンブースター(アクセラレータープログラム支援)
・2012年創業、従業員20人くらい?
・企業内&行政アクセラレータープログラム支援が中心で、その他に社内新事業プログラム支援、事業開発研修、ベンチャー出資など。
・大手企業出身者が多く、大手企業で新事業を作るときの組織的なジレンマの理解が深い。

■quantum(新規事業支援)
博報堂の子会社、2016年設立、従業員40人くらい。
・「未来のビジネスを生む」を標榜し、自社事業立上げ、クライアントとの共同事業開発、新事業創出プログラム支援をする。
・サービスリリースや初期ユーザー獲得まではQUANTUMが主導し、その後をクライアント企業が引き継ぐやり方が多い。合弁会社を作ることや、QUANTUMの事業としてローンチすることも。ユーザーの反応を得たり、数値的な結果が出てから、クライアントに事業売却するケースが多い。

■WHITE(新規事業支援)
博報堂の孫会社、2015年設立、従業員40人くらい。
・サービスデザインメソッドで90日で新事業実現(900万円〜/3ヶ月、担当3人 30%稼働)、伴走型PM支援(450万円〜/3ヶ月、PM1人 30%稼働)など。
・新事業実現は、初期仮説設計>生活者把握>コンセプト設計>ビジネスモデル構築>UX設計と検証>グロースハック。伴走型PM支援は、新規事業開発のフレームワーク提供、アイデア創出や選定ワークショップのファシリやアドバイス。週1回の定例会ベースに、クライアント企業が新規事業開発を進める。
・顧客の"課題"を捉えるより、顧客の"インサイト"中心に考えたり、未来妄想をベースに新規事業を考えるが好みのようである。

アーキタイプアクセラレータープログラム支援)
アクセラレータープログラム支援、技術シーズ起点の事業開発支援。 

■i.lab https://ilab-inc.jp/about/
イノベーション教育プログラム i.schoolは、0→1を「新しい製品やビジネスモデルのアイデアを出すところまで」として、0→1の創出機会提供している(アイデアから市場投入までを、1→10と定義している模様)

 

SEEDATA

守屋、麻生、田所

アドライト アクセラ

デロイトトーマツベンチャーサポート アクセラレータープログラム支援など。

プライマル株式会社

BCG Digital Ventures https://www.executive-link.co.jp/column/1434/

モンスターラボ、ZEPPELIN、Sun Asterisk

【シリコンバレー式 最高のイノベーション 要約】大企業の新規事業に役立つ内容や観点

シリコンバレーの著名アクセラレーター代表による、シリコンバレー流のイノベーションの生まれ方の書籍。スタートアップと成熟企業の新規事業では違いもあるため、成熟企業の新規事業に関係しそうなところを要約します。
アメリカ人が書いた書籍であり、激しい自己主張が普通のアメリカ人と、和を以て貴し集団思考の日本人では、やや解釈を変える部分もあると思われます)

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■1イノベーションのカギは多様性と模倣

■テクノロジーの罠にハマってはいけない

シリコンバレーの成功の秘訣は、テクノロジーではない。テクノロジーは重要だが、成功したスタートアップのほとんどは、起業した時点で独自のテクノロジーを持っていなかった。
・成功したスタートアップが利用するテクノロジーは、大抵既存のものかオープンソース。独自テクノロジーを開発したわけでなく、既存テクノロジーを、これまでにないやり方で応用しながら、ビジネスモデルとデザインのイノベーションに力を注いだ。

・独自のテクノロジーを持っていてもユーザーを理解できていないスタートアップは、何も持たずに仮説から始めたスタートアップと比べて、価値を生み出せずに苦労する。解決策から始めて、問題を探すからだ。
・独自テクノロジーがあっても、ビジネスチャンスがはっきり見えていない企業は、テクノロジーに合うソリューションを考えがちになる(テクノロジーの罠)。そんなソリューションは大抵の場合、そもそもありもしない問題を解決するようなものでしかない。
シリコンバレーは流行に流されがちで、魅力的な新しいテクノロジーが出現すると、みんな惚れ込んでしまうが、酔いはすぐ覚める。

・大企業もまた、テクノロジーの事業化が得意ではない(パロアルト研究所は顕著な例。様々な技術や発明は、ゼロックスの利益に貢献せず、ゼロックスの凋落を止めもしなかった)。

・テクノロジーの罠にはまらず、世界とその問題に目を向け、既存テクノロジーを利用し、その目的に合うよう仕様を変えて、需要があるか市場で試してみよう。そこから、その事業機会を深掘りする方が良い。

 

■違う考え方をする、反骨精神と異質性

シリコンバレーは、世間の除け者、ハッカー、ヒッピー、芸術家、技術者の集まりから始まった。シリコンバレーで創造性が爆発したのは、MBAと芸術家とオタクと科学者とクスリでイカれたヒッピーたちが、同じ場所でアイデアをぶつけ合ったから(1960年代70年代)。

シリコンバレーの人たちは、違う考え方をする(Think different)。反抗的であることを楽しみ、逆境を跳ね返し、現状に疑問を唱え、人の行かない道を行く。
イノベーションとは、新しい何かを創り出すこと。誰も見たことのない何か、誰も試したことのない何かを生み出すこと。

・世界のほとんどの地域と違い、シリコンバレーでは権威を無条件に尊重することはない。誰もが何かに貢献できるし、誰でも意見を言う権利がある、という文化。
・反骨精神と異質性がシリコンバレーの強みであり、人種と文化の多様性、移民への開放性、違いを受け入れる精神が、シリコンバレーの大きな競争優位性。
・アジアには優秀な人材も多いが、現状を変えようとする熱意、文化的多様性、非伝統的なアイデアやものの見方を受け入れる姿勢が、アジア人にはない。

・大きな飛躍はいつも、異分野のコラボレーションによって引き起こされる。
・同質の教育や人の集まりから、イノベーションは生まれない。

 

■パクリは賢い戦略

・成功したスタートアップの多くは、基本的に先人をパクリ、その上にイノベーションを積み重ねている。
・全てのイノベーションは、過去の何かのパクリから始まる。そしてパクるだけでなく、自分のものにする。

 

■2小さく、少なく始める

■小さなアイデアで始める

イノベーションを起こすには、大きなことを考えねばならないと思っている人が多いが、それは真実からほど遠い。多額の予算、大人数のチームのプロジェクトは、大抵失敗に終わる。
・本物のイノベーションを起こすには、大きく考えてはいけない。小さく考えなければいけない。大抵いちばん小さなアイデアが産業を変える力を持つ。
・3人のスタートアップでも、3万人の多国籍企業でも、イノベーションのプロセスはほぼ同じ。チームが小さく考えられるような環境と構造を創り出さねばならない。

 

■少ない人数で始める

・理想的なチーム規模は、大企業なら2人から8人。人数が少ない方が、お互いに協力し、意思を通わせうまく親密に仕事ができるから。少人数なら全員が親しくなり、お互いの長所と短所を理解し、より深い関係を築くことができ、チームワークは良くなりがっつり組んで仕事ができるようになる。
・チーム成功の鍵は、全てのメンバーが全力でプロセスに貢献できる構造になっているかどうか。少人数の方が動きが早く、逆に人数が10人を超えると仕事のスピードが下がる。
・全員が積極的にイノベーションのプロセスに貢献でき、意思決定に参加できるようなチームが良い。

・理想的なチームに必要なのは、ハスラーハッカー、ヒップスター、ホットショット。大企業ならこれに加えて、政治家とオーガナイザーが必要。
ハスラー:"ビジネス","顧客","市場"を深く理解している人。企業のビジョンとプロダクトを世界に売り込むリーダー。
ハッカー:テクノロジーに精通し、それを使って事業を変える人。テクノロジーオタク。
ヒップスター:クリエイティブ面のリーダー、デザイン思考はとても大切。
ホットショット:高度に専門的ことに挑戦する場合には、その専門家が必要。その領域や問題の仔細を深く理解する人。博士号を持つ研究者など。
政治家:大組織の中でプロジェクト支援し、リソース確保し、部署間の調整をする人。
オーガナイザー:プロジェクトへの支持を取り付け、プロジェクトを管理し、日々の経費に目配りをする人。

・ハングリーで野心があり、心が開かれていて、企業の伝統に挑戦し、限界を広げて、その途中で失敗することも厭わないような人。

 

■少ない予算で始める

・チームが多額の予算を要求する場合、その費用を正当化する提案や計画が必要。会社がその提案を認めると、チームはその計画を実行しなければならなくなる。そして、新しい道を自由に模索できなくなる。
イノベーションは模索そのものなのに、詳細な計画を出した時点で計画に縛られる。現実には、それが正しい計画かどうかわからないし、計画通りに実行できるかもわからないのに。新しい可能性を開くどころか、可能性を閉ざしてしまう。
・大きな予算のもう1つの欠点は、チームが大人数になってしまうこと。大きくなるほど、方向性の修正が億劫になってしまう。発見と実験、素早い方向転換こそ、イノベーションの真髄なのに。

・予算が限られていると、イノベーティブな考え方が生まれやすくなる。お金もリソースもないからこそ、野心的な起業家ならば、過激なアイデアを思いつくことがある。他の人が見落としたことや、無理だと思ったことに挑戦する。お金がなければ常識外のことを考える。
・お金ではなく、頭を使えば、何かいい方法を思いつくものだ。制約があると、工夫せざるを得なくなる。

・既存技術とサービスを組み合わせて、新しい何かを創りだせば、自分たちで開発するより安く早く市場に提供できるようになる。
・既存のテクノロジーは、新しいものよりも早く広く普及しやすい利点がある。既に検証され、ユーザーにも馴染みがあるため。
・お金がないことで、自前主義の呪縛から逃れられることもあるし、それが刺激となりより速く製品開発されたり、新しいアイデアが生まれたり、創造性が花開くことも多い。

 

■小さな範囲で始める

・成功するスタートアップは大抵、はじめは比較的小さな問題に取り組んでいる。
・1つのカテゴリに狙いを絞り、集中する。コアの機能から初めて、1つのことが本当にうまくできるようになったら、そこから外側に広げるべき。MVP開発のコツは、コアの価値だけに集中して、他に何もしないこと。
・本物の革新的プロダクトは、最初から完璧ということはない。何度も繰り返し修正を重ねるのが普通。

イノベーションは難しい。最初から全てをシンプルに留めることは欠かせない。ユーザーが本当に欲しいものを1つ見つけること。それだけでビジネスが成り立たねば、初めからやり直した方が良い。機能を増やしても、絶対うまくいかない。
・ほとんどの場合、イノベーションとは、斬新なアイデアを思いつくことではなく、むしろユーザーがプロダクトやサービスに求めているものを正確に把握することにある。

イノベーションが成熟するには時間がかかる。大きく考えながらも、小さく始めることが成功につながる。その逆ではない。

 

■3イノベーションのコツを知る

■自分たちの思い込みを疑う

・アイデアを思いつく一つのやり方は、自分たちの考え方・思い込みを疑うこと。
・思い込みを検証する方法は、自ビジネスについて真実だと思っていることを全て書き出し、項目の一つ一つに疑問を投げかけること。これは一人でやるのでなく、チームでやるのが良く、外部の意見も必要。
・刷り込みを覆すのは難しく、外部メンターが助言と分析と批判的な思考を提供し、これまでのやり方に異を唱えさせる。

 

■スタートアップは、うまくいかなくても失うものはない

・スタートアップにとって美味しい市場は「スタートアップには失うものが何もなく、既存企業には失うものばかりの市場」。
・破壊的ビジネスモデルでスタートアップが参入すれば、既存企業は価格を下げる他に対抗手段はなく、ゆっくり死んでいく。大企業は現状にあぐらをかき、自分たちが一番ではない世界を思い描けない。

・大企業の中でイノベーションを起こそうとしているなら、スタートアップのように考え始めた方が良い。自社事業とのカニバライズを心配する余裕はない。自社でやらなければ、誰かがそれをやるだけである。
・勝ちたかったら、自社の顧客を自分たちで奪うしかない。たとえそれが、短期的な損失につながったとしても。

 

■大切なのはテクノロジーよりデザイン力

・技術のイノベーションより、デザインのイノベーションから価値が生み出されている。
・デザインの本質は、そのプロダクトを使うとき、人はどう感じるか? 重要なのは体験であり、機能ではない。些細なことを見過ごしてはいけない。

・解決すべき本物の問題があるかは、既存プロダクトのどこがどうダメなのか、理解することがカギになる。
・これから10年、デザインにより数多くのプロダクトが作り変えられるだろう。デザインには莫大な費用が必要なく、ユーザーがプロダクトやサービスに何を求めているか見通せる、非凡な才能を持つ人たちがいればいいから。

 

■ビジネスモデルのルールを書き換える

・ビジネスモデルのイノベーションは、ルールを研究し、それを破ること。
・例えばクレイグズリストは、無料のクラシファイド広告から始まった。伝統的な紙媒体のルールを無視するやり方だった。

・1つのビジネスモデルがうまくいかない時は、別のモデルを試す方が良い。プロダクトと、ビジネスモデルを車の車輪と考え、どちらも同時にイノベーションを起こさなければならない。

 

■開発者の罠に気をつけろ

・初日からプロダクト作りに取り掛かってはいけない。時間の無駄なだけでなく、間違った方向に行き、失敗の可能性を高めることになる。
・数ヶ月もプロダクト開発に時間を費やすと、チームはそのプロダクトに執着するようになる。必死で努力したことを、諦めて捨てたい人はいない。
・失敗プロダクトに時間とリソースを注ぎ込むほど、真実を直視できなくなる。たとえユーザーがそのプロダクトを必要としていないと証明されても、チームにはそれが認められず、今あるものをどう改善しようかと考えてしまう。

・開発者の罠を避けるのに一番効くのは、簡単なプロトタイプを作ってみること。簡易プロダクトは、作るのに時間も労力もかからないが、そのビジネス案の基本的な前提が正しいかどうか検証するのに役に立つ。

・消費者がそれを買うかどうかを検証したければ、半日でウェブページを作り、ウェブ広告を使ってターゲット層を誘導し、注文を取る。そうすれば、人々があなたのプロダクトにお金を払うかどうか、手っ取り早く検証できる。
・ある会社が靴販売サイト立上げた時、その案を検証するために、まず簡単なウェブページを作り、靴の画像に地元の靴店の販売価格をつけて掲載した。そのサイトで注文を取り、自分で地元の靴店でその靴を買い、ユーザーに発送していた。そうすることで、時間もお金もかけずに市場を検証できた。サプライチェーンを築いたり、倉庫を借りたり、在庫を持つ必要もなく、検証できた。その後、社名をザッポスと変更した。
・ある会社が、レストラン厨房をシェアするサービスを思いついた。本格的な開発に取り組む前に、簡単なウェブページを作り、レストランオーナーと料理人に電話し、営業時間外に厨房をシェアする/借りれるサービスに興味あるか聞いてみた。すると、問題が多すぎるとわかり、このビジネスは到底うまくいきそうもないとわかり、時間とお金を無駄にせずに済んだ。

・簡易プロダクトタイプは、プロダクトではなく、実験プロセスである。何がうまくいくか、いかないかを学ぶために行う。
・「新しい仮説」→「簡易プロトタイプ作成」→「仮説検証(顧客提示とヒアリング)」→「結果の確認と、仮説の微修正」の循環を繰り返す。
・プロトタイプは、ハードウェアもソフトウェアも使わない簡易プロトタイプが最も役立つこともある。データを集め、検証できれば、どんなものでもいい。
・早い段階からたびたびユーザーを巻き込むことがカギになり、ユーザー相手にアイデアを試し、検証と修正を行う。プロトタイプを作り直し、他のものを試す。ユーザーとか変わる度にチームは何かを学び、解決すべき問題をより深く理解できるようになる。

 

■4ユーザーを観察し、顧客データを集めて、価値を提供する

■コアの強みを活かして優位性を広げる

・自社に、世界的な流通網や独占的な販売チャネル、名のあるブランドや成熟した生態系があるなら、それを活用する方が良い。専門性や競争力のない分野、自社の優位性の外で成功することは難しい。
・成熟企業は、コアの強みの外で勝負する場合、コア事業と100%方向性が同じでない事業で失敗が続くと、ほとんどの会社は耐えられなくなる。
・コアの外で勝負するときは、自社の進みたい道だとはっきりさせておく方が良い。失敗が続き、時間を失い、費用が膨らむことを覚悟しておく必要がある。コア競争優位の外で成功することがどれほど難しいかは、理解しておく必要がある。

・新たなコアコンピテンシーを獲得することは誰にとっても難しい。だから、ほとんどの企業にとっては、コア事業に近い領域でイノベーションを起こす方が良い。
・コア事業から周辺領域に拡大した時に、利益と継続的な成長が生まれやすい。
・最高のイノベーターは、コア事業の強みの上に新たな優位性を築き、それ自体が新しいカテゴリーとなるような製品やサービスを周辺市場に持ち込んでいる。

 

■ユーザーは最高の情報源

・スタートアップに必ず聞くのは「ユーザーは誰か?」ということと、「ユーザーとどのくらい時間を過ごしたか?」。
・スタートアップの大半が軌道に乗れない理由の1つは、最初の段階でユーザーと時間を過ごしておらず、ユーザーを十分に引きつけていないこと。

・オフィスを出て、ユーザーの現場に入る必要がある。ユーザーの不満がイノベーションのチャンス。ユーザーが普段はあまり口にしない「満たされない欲求」を理解しなければ、何もデザインできないし、創れない。
・ユーザーの元に行き、ユーザーと話し、ユーザーが毎日何をしているか学ぶことに、できるだけ多くの時間を費やすべき。自分の直接の経験が何より役に立つ。その手のインサイトは、本や会議やアンケートでは生まれない。現場にいて初めて出てくるもの。

・ユーザーに欲しいものを聞くのは、改善アイデアには役立つが、革新的なイノベーションや新規事業となると話は別。

・何を質問するかと同じくらい、どう質問するかが重要。ユーザーに「何が欲しいか」聞いてはならない。「何に困っているか」「製品に何をして欲しいか」「なぜそうして欲しいか」「それがどう役立つと思うか」問う必要がある。
・どう質問するか以上に重要なのは、誰に質問するか。自社の得意客にフィードバックを求める企業は多いが、そのフィードバックは、ユーザーの大半にとってどうでもいい場合が多い。
・ユーザーを巻き込むのは大切だが、本当に有効なのは、適切な人たちに、適切な質問した場合だけ。

 

■ユーザーを観察して、学ぶ

・ユーザーを観察するのに一番良い方法は、彼らがプロダクトを初めて使うのを、何も言わずに肩越しに眺めること。
・ユーザーに知識を見せ付けようとするな。口を閉じて黙り、相手に話を続けさせる必要がある。あなたのプロダクトをどう使うか、どこに不満を感じるか、注意深く見よう。
・自分たちのソリューションが正しいという確証を得ることに必死になってしまい、観察も学習もできなくなると最悪だ。
イノベーションとは、あっというアイデアを思いつくことではない。探求であり、証拠集めであり、ユーザーへの聞き取りであり、隠れた真実を表に出すことだ。

・大抵の場合、チームの最初の思い込みやアイデアは間違っている。自分たちの無知を認め、発見し続けることに力を入れよう。観察と質問が大切。
・優秀な人は次から次への仕事を処理し、作業の生産性という点ではそれでいい。しかし、「学び」の点では悪害でしかない。観察は、急いではいけない。
・観察するということは、正しい人に、正しい問いを投げ、聞くだけではない。どのように質問するか、どう観察するかも重要になる。さりげなく、アドリブのように自然な形で重要な質問をすると、バイアスが減る。
・観察をしたら、チームで振り返りのプロセスが必要。時間を取り、細かいことをあれこれ思い返すことで、人々の発言や行動の背後にある隠れた意味が理解できることが多い。

 

■データを集める

・プロトタイプ的作業を通じて、特定の顧客データを早期に集めることが、最も効率的なプロダクト開発法。
・キーワード検索、グーグルトレンド、ユーザーへのインタビュー、SNS、競合サービスの情報。ランディングページで注文を取る、事前注文ページ、動画説明、簡易プロトタイプ、フェイクMVP(ホームページだけあり、裏側の業務は全て手作業)など。
・プロトタイプ施策やホームページ作成前に、早いうちに集めるデータほど役に立つ。そのプロダクトを開発しない方が良いことがわかったり、競合が見つけていない手法を確認できるかもしれない。
・データがビジネスプランの土台になる。「僕はこう思う」じゃなく、「証拠をお見せします」と言えれば勝てる。データの裏付けがなければ、アイデアが創造性に富んでいても、意味がない。

 

■5不安要素を取り去る

■「恐れ」との戦いに勝ち、失敗を汚点としない組織文化に変える必要がある

・人間は不確実性を好まない。ほとんどの人が、不確実な結果より確実な結果を選ぶ。大抵の人は、本能的にリスクや失敗を避けたくなるもの。
・VCが出資するスタートアップの大半はいずれ消え去る。企業内のイノベーションプロジェクトも大半は失敗する。イノベーティブであるほど失敗する確率は高い。

・科学者が失敗と向き合う姿勢には、学ぶところがある。科学者は仮説を立て、一連の実験を行い、ダメな場合は次の実験に向かう。科学とは、何度も試して何度も失敗することに他ならない。実験の結果が仮説と違っていても、それはプロセスの一部だ。

・成熟企業では、イノベーション成功から得られる見返りより、失敗で受ける罰の方がはるかに大きい。そのような組織構造の中にいれば、創造的な人材でさえ、リスクをとって革新的なプロジェクトに参加することが、バカバカしいことはすぐわかる。

・研究開発部の科学者だけでなく、社内の全ての改装でイノベーションを起こすためには、失敗をありがたく受け止め、それを汚点としないような組織を築くことが必要。
・ほとんど全てのイノベーションは、失敗からの学習によって生まれてきた。失敗が学びと反復と適応につながる。

・失敗の恐れを取り除かなければ、組織はいつまでたっても段階的なカイゼンに留まる。社員はカイゼンに精を出し、これまでにないものを生み出すことはない。シェア維持はできるが、市場を作り替えたり、生み出すことはできない。

 

■新しいものを受け入れる文化を創る

・まず、受容の文化を創り出すこと。受け入れるのは失敗だけでなく、バカバカしいアイデアも、つまらない失敗も、矛盾する考え方も、金のムダ遣いに見えることも。
・チームメンバーのアイデアが、どれほど突拍子なく、とんでもないものに思えても、アイデアを出した人を批判してはならない。歴史を少しでも振り返れば、突拍子もなく現実味もないアイデアが、未来を創ってきた。

・大きく飛躍したいなら、周りに染まらない変人が必要になる。先を読む目を持った人材を外に追い出さないために、伝統に逆らうような意見や、口に出せない考え方を、安心して発言できるような企業文化がなければならない。
・イノベーティブな企業と、そうでない企業を分ける一番の要因は、組織文化。

【イノベーティブな企業文化6点】
・価値観:企業の価値観を決めるのは、経営トップやリーダーの行動。言葉ではなく、行動。創造性の育成や、新しい起業家的プロジェクト立ち上げに投資している。
・振る舞い:経営者が意図的に自社の既存事業を破壊し、聖域を排除し、顧客に耳を傾けていること。それが重要。
・環境:学習を育み、社員同士の信頼を築き、独立した思考を促すような心理的安全な環境。
・リソース:イノベーションの先頭に立てるような人材、資本やプロジェクト。
・プロセス:アイデア提案し、検証し、それを実現する、イノベーションプロセスが確立されている。
・成功:仕事に対する評価の仕方。

 

■失敗を褒める文化を作る

集団思考や同調欲求は、イノベーションの的である。先人のやり方に従うと安心し、他の人が信じることを自分も信じる方が簡単で、一般的に真実とされることに歯向かうより信じる方が簡単だ。
・しかし、組織の中の人の考え方を変えるには、既成概念を疑わなければならない。

・フォーシーズンでは、企業文化を変えるため、「失敗」「間違い」といった言葉を禁止し、「不具合」と言うことにした。言葉を変えるつまらない方法と思うだろうが、それが問題の核心である。言葉が変われば、考え方や行動が変わる。
・グーグルXでは、失敗を褒めており、早めに失敗したチームにはボーナスや休暇を与えている。早めに失敗することを目標にすれば、安上がりで、成功の可能性のある他のことに挑戦できる。最後に失敗すると高くつく。自由に新しいことに挑戦できる道が開かれる。

・誰もが現状を打破するように励まされ、新しい発想を奨励されるような、寛容で開かれた文化を創ることがカギになる。
・不可能を可能にできると考える人たちが、受け入れられるような環境を作らなければならない。

 

■学びに集中して、不安を払拭する

・プロジェクトが失敗するたびに、学びの価値が生まれる。チームがプロジェクトの経験から、学ぶことの中に価値がある。
イノベーションチームの取り組みを全て分析し、顧客や市場、プロセスなどの学びを社内に共有できたら、それは失敗ではなく、前進になる。
・過去の失敗から得たデータや知見が、次の大きなブレークスルーに繋がることは多い。失敗が大きいほど、学びも多い。
イノベーションチームは、自分たちが経験して学んでいることを、逐一社内に伝えなければならない。

・個々のプロジェクトの成功や失敗より、学習のプロセスの方が大切。イノベーションチームは学びのプロセスに集中して、その発見を社内に伝えることに力を注ぐ必要がある。
・学びを制度化するには、チームで毎週、最新の失敗を教え合い、どうしてそうなったのかと説明すると良い。みなの目が失敗ではなく、新しい知見の獲得のプロセスに向くようになる。グループとして学び、事業のあらゆる側面を問い直せるようにしたい。
・失敗にはいくつもの理由があり、わざと失敗する人はいない。失敗を責めても問題は解決せず、悪化させるだけだ。問題を正しく認識し、正しい質問をする方がはるかに役に立つ。

 

■成熟企業でイノベーションを進める8つのルール

・成熟企業では、社内政治が関わってくるのは間違いない。どの部門の管理職も、本社の管理部門は新規事業チームの手綱を握っていたいと考え、事業部門は自分の縄張りが荒らされ、権力が弱まることを嫌がる。しかしそれではうまくいかない。
イノベーションチームが特殊であることを、社内の全ての部門に知らしめる必要がある。イノベーションチームは、既存事業の部門と同じルールは当てはまらない。

・社内イノベーションの道を開くことを助ける8つのルール。

イノベーションを最優先する
イノベーションの重要性を社員全員に認識させ、イノベーションの列車に乗るか、そうでなければチームの邪魔をしないように、社内に周知徹底しよう。

2協力体制を敷く
既存事業部門の管理職とイノペーターの協力体制を築こう。イノベーターを仕切りに囲い入むと、全社にその恩恵が行きわたらない。全ての人が参加する必要がある。

3ビジョンを掲げる
未来へのビジョンがなければ、チームの支えがない。明確で説得力あるビジョンを土台に、使命を築き、プロジェクトを立ち上げると良い。

4志願者を募る
優れた志願者は社内にいる。彼らがプロジェクトに志願するのは、そのビジョンと使命を信じるから。それが会社の未来だと信じ、その実現に貢献したいと思っている。彼らに協力する手段を与え、障害を乗り越える助けや、問題解決の手助けをしてもらおう。

5新しい道を開く
既存事業の厳格な手続き・命令系統とは別に、イノベーションチームのための道を作る必要がある。イノベーターに裁量を与え、禁じられた領域を横切る権限を、彼らに与えなければならない。

6現実的な目標を定める
イノベーションは視界不良で苦しい旅だ。道標となる小さな目標を設定して進歩を測り、チームで学びを共有しよう。チームに短距離走を走らせ、仮説を検証する。カギになる社内の参加者と、発見を共有しよう。成功も失敗も組織全体の学習機会として捉え、賞賛しなければならない。

7最後まで諦めない
最初は勢いのあったプロジェクトも、数ヶ月もすると勢いがなくりがち。しかし、そうさせてはならない。CEO以下の全員に、旅の最後まで参加してもらわなければならない。

8変化をありがたがる
これらが実現されるには、企業が劇的に変わらなければならない。長く続いた伝統を覆し、確立された手続きを書き直す。その途中で、多くの人を怒らせることになる。しかし、それがイノベーションの本質である。

 

■おじさん悲観論者がイノベーションを殺す

・成熟企業でのイノベーションの取り組みや、若手社員を自由に独立スタートアップのように活躍させる考え方は、机上では、魅力的に見える。
・しかし、誰かが現状を変えようとすると必ず、否定的な意見が出る。特に20代30代の若手が変えようとすれば、否定的な意見が出る。変化を嫌い、嫉妬の炎を燃やすのは、大抵おじさん悲観論者(上層部や50代60代)。
・人は誰しも縄張り意識を持ち、自分の縄張りを支配したがる。若い人が来て変化を起こし、何かを要求されたり、計画を混ぜ返されて、嬉しい人はいない。しかしそれが、イノベーションチームの仕事である。

・悲観論者はイノベーションを殺す。そのような姿勢を許してはならない。

イノベーションチームにあった組織構造や独自の評価過程を設置しなければ、失敗は避けされない。おじさん悲観論者のかっこうの餌食になる。
・法務部が障害になり、プロジェクトを殺すこともある。法務部や社内弁護士の目的は、本社を守ることと、クビにならないこと。イノベーションチームが社内弁護士を迂回できるような計らいが必要になる。
・広報が障害になることも。本社のプロダクトと区別できるよう、別ブランドなどが求められる。

・スタートアップには、大企業のような制約はない。いつも危険と隣り合わせで、行き止まりで戻ったり、フェンスをよじ登ったり、フェンスの下に無理やりトンネルを掘ったりする。成熟企業のイノベーションチームにも、同じ自由を与えなければ成長できないし、物事を最後まで成し遂げられない。 

 

■6大きなリスクを取って大胆に挑戦する

イノベーションは速さが命

イノベーションは速さが極めて重要。スタートアップが置かれる環境は、半年ごとに変わる。たった数ヶ月で時代遅れになるスタートアップも少なくない。
・小回りの効くスタートアップは、そのスピード感を心得ている。成熟企業のイノベーションにも同じスピードが求められる。重荷がなく、しがらみがない方が良い。完了手続きを取り除き、加速させなければならない。

・いつも新製品やサービスをいち早く市場に出し続けている企業は、リーダーとみなされる。ブランドイメージへの影響は大きく、消費者はパクリ品ではなくイノベーターの製品を買いたがる。

・スピードは、大企業は不利だ。社員の大半はそれほど必死に働きたがらないし、リスクも取りたがらない。大企業の社員は、スタートアップのようなプレッシャーはなく、何をしなくても給料をもらえるので、スピードより注意深さを優先する。

・極めて重要なことは、挑戦に背中を押されるような人だけをイノベーションチームに入れよう。評価やボーナスを気にする人はダメだ。怠けのもはダメだ。タダ乗りしようとする人もダメだ。口先だけの人間もいらない。
・正しいDNAを持つチームができたら、追越車線を設ける必要がある。そして誰にも邪魔させてはいけない。
・承認に数日以上かけてはいけない。数日以内に承認か否認されなければ、自動的に青信号とすれば良い。他の部署でやっている書類の処理は免除されるべき。必要な物を購入する権限が与えられ、説明や清算は事後で良い。信頼できるリーダーがいることは、欠かせない。
イノベーションチームは、他部署の縄張りに入ったり、ルールを破ったりする特権を与えられなければならない。
・競合を手を組む必要があるなら、そうする権限を持ち、外部のデザイン会社を社内の倍の値段で発注する必要あるなら、それが許されるべきである。
・追越車線は必要だとしても、イノベーションを既存事業部門と完全に切り離してはいけない。心理的な分断が起こり、自分には関係ないし、チームに参加も協力もしなくていいと思われてしまう。

・高速化のもう一つの方法は外注。自分たちが最高で最速でなければ、最高最速の誰かと探す方が良い。自前主義は、追越車線に置かれた信号のようなもので、渋滞を引き起こす。

 

■素早く失敗し、反復検証する

・速さを極めるということは、反復検証改善サイクル数を増やすということ。プロダクトを繰り返し検証し、変更し、変更箇所をまた検証することで、初めて進歩できる。
・新製品のほとんどは失敗する。しかも大ゴケする。プロダクトを市場に出せるかどうかは、それほど重要ではない。学習スピードが重要。
・学習と発見のプロセスを加速させるためには、反復スピードに注目すべき。反復サイクルは毎回、チームの前提を検証する機会であり、何がうまくいって何がうまくいかないかを発見する機会。

・スピードとは、例えばプロトタイプ制作とか、自分たちの勝手な目標やスケジュールのことではない。その事業についての深い知見を得られなければ意味がない。
・大切なのは、そのビジネスの隠れた真実を見つけ出すことであり、ユーザーがプロダクトに何を望み、何が爆発的なリターンにつながるかを理解すること。
・不格好でもプロダクトを世に出して、すぐに学習を始める方が良い。時間をかけて開発しても、どうせユーザーの望むことはできないから時間のムダ。
・ユーザーの手にプロダクトを委ねないと、本当の反復プロセスは始まらない。調査やプロトタイプでは、ユーザーの欲しいものはぼんやりとしかわからない。口ではなんとも言えるが、本当の学びが始まるのは、ユーザーがプロダクトをどう使うか見たときである。

・例えばネットフリックスは、進みながら色々作っていく。予測してもバイアスがかかるだけ。うまくいくものは残して、うまくいかないものは捨てる。試したものの9割はうまくいかない。
・グーグルも同様で、例えば1週間の試作で5〜10個のアイデアを試しても、1つしかうまくいかない。だからアイデア検証期間をできるだけ短くし、多くのアイデアを素早く検証している。
・素早く失敗することは、シリコンバレーの常識として受け入れられている。

・ある新事業アイデアが軌道に乗らないとわかった時は、さっさと諦めた方が良いか、挑戦を止めてはいけないということ。後戻りしていると感じても、新しい道を切り開き続けなければならない。
・リリースしたプロダクトがうまくいかない場合も、ユーザーの行動を注意深く観察しよう。特に予想外の行動をするユーザーがいたら、そこを深掘りする。気づいていなかった、新しい機会を発見できることもある。
・プロダクトの価値がどこにあるかは、顧客に教えてもらう。

 

■大企業に必要なイノベーション人材

・他人と違う考え方が必要なら、変わった人を雇わなければならない。賛成する人のいないアイデアや意見を持ち、変化のきっかけを作るのは、そうした人たちである。
イノベーションチームには、トップの優秀な人材だけを暑得てはいけない。変わった人こそチームに必要。
・大企業のイノベーションチームに必要なのは、ハスラーハッカー、ヒップスター、ホットショット、政治家とオーガナイザーだが、何より大切なのは、コアメンバーの中に、中途半端な気持ちで取り組む人がいないこと。
・チームが非常にうまくいっていて、目覚ましい結果を出しているなら、口を出してはいけない。勝利の方程式を見つけたら、勝手にメンバー変更しないほうがいい。

 

■新しいアイデアの生まれ方

・新しいアイデアは、突然どこからともなく現れるものではない。あなたが学んだこと、経験したこと全てが意識によって関連づけられ、一つになってそこから新しいアイデアは生まれる。組み合わせの妙からアイデアは生まれる。
イノベーションの多くは、ある分野の既存事業アイデアを借りてきて、別の分野の事業にに当てはめることから生まれている。古いアイデアを掘り出して、新しい問題に応用する。例えばIDEOはこの方法を使っている。
・起業家はビジネス書ばかり読んではいけない。普段あまり関わりない分野の情報、多様な情報源から新しいことを発見し学ぶことが、実は最も価値がある。自分が知らない情報だからだ。
・ある分野からアイデアを借りてきて、別の分野に当てはめることでイノベーションが生まれる。

 

■大当たりが1つだけ出ればいい
・世の中にはビジネスモデルは2つしかない。ユーザーが金を払うか、広告主が金を払うか。それ以外にはない。
・ユーザーが支払う場合、それぞれのユーザーが生涯に渡りたくさんの小額取引をするか、数回の多額の取引をするかどちらか。
・広告モデルで儲けるには、莫大なユーザー参加が必要。アクティブユーザーが100万人かそれ以上の規模に達しない場合、広告モデルは成り立たない。
・ビジネスモデルは複雑だと誰もが思っているが、そんなことはない。これ以外の方法でお金を儲けている会社はない。
・新しい事業が倍々ゲームでのビルには、ライバルを寄せ付けないような参入障壁、不当な優位性が必要だ。かなりの不当な優位性がなければ、価格競争に陥る。

 

【新規事業の実践論 要約】新規事業の立上げ方

リクルート社にて新規事業立上げて子会社社長を務め、その後新規事業開発室長による、新規事業の実践論(新規事業立上げ手引書)の内容を要約します。

およそ5年強の間に、同社で1500件の新規事業支援、300社の起業家の卵の支援、独立後は大企業の25社500新事業の支援をした著者。
単純計算すると、1年間に450件ほど新規事業支援をしているとのことで、一つ一つ中身の深い支援やプロダクト販売開始前後の支援は非現実的と思われ、おそらく新規事業プランコンテストや企画支援の色が強めの内容だと想像します。

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■1章:日本人は「社内起業」が向いている

・日本の大企業311社の中で、その94.2%が中長期で取り組む重点テーマとして「新規事業」を掲げている。ただ、昨今の日本企業からイノベーションが生まれていないと言われて久しい。
・日本企業がイノベーションを生めなくなったのは、ここ20〜30年の話。1980年代までは、日本企業が世界で最もイノベーティブだった。
・ここ20〜30年、イノベーションが生めなくなった理由は、単に、新規事業をやらなくなった・新規事業に投資をしなくなったから。

・投資余力を持つ大企業がすべきことは、自らの社員への、社内プロジェクトへの新規事業投資である。
リクルート社は、1兆円を超える借金を返し終わった2000年代半ばから、膨大な金額が新規事業に投資され続けた。
リクルート社は新規事業が特別得意な会社だから、と言われるが、そうではなく、社内の新規事業に、大量の投資をし続けただけ。

・大企業で新規事業が生み出せるかどうかは、新規事業に取り組んでいるかどうか、新規事業に投資をし続けているかどうか、に尽きる。

私見著者は「全てのサラリーマンは、社内起業家として覚醒できる」と主張するが、私の見解は違う。
著者が接した人は、リクルート社で新規事業提案をするような人、起業家の卵、大企業の新規事業提案するような人。つまり、野心的な人を採用するので有名なリクルート社の中で新事業提案をするような人、自ら起業するような人、大企業で新規事業提案をするような人であり、その時点で普通のサラリーマンと随分違う。
一方、新規事業に適する志向性・素養を持つ人は、どの企業にも7〜9%くらい存在するらしい。私の考えは「サラリーマンの7〜9%くらいは、全て社内起業家として覚醒できる」というもの。その7〜9%は社内のエース級・優秀社員とは、やや異なる思考回路や物事の捉え方をする人が多い。
参考:成熟企業内で、新規事業に向く人の見分け方・選び方

 

■2章:社内起業家に覚醒するWILLの作り方

・普通のサラリーマンが社内起業家になるために、最初にやるべきはWILL(意志)の形成。
・WILLとは、①誰の、②どんな課題を、③なぜあなたが、解決するのか、について、あなたが力強い回答を持てる状態に至ること。
・①誰の、②どんな課題をは「取り組む領域の明確さ」であり、③なぜあなたがは「使命感や圧倒的当事者意識」である。

・WILLは後天的に形成することができる。「ゲンバ」と「ホンバ」に行くことで、それを私がなんとかしなければならない、という圧倒的当事者意識・内から湧き出るWILLが形成される。
・「ゲンバ」とは、課題の根深い現場のこと。「困っている人や現場を見てしまったら、放っておけない」という責任感を起点とするWILL形成方法。困っている現場は日本には溢れている。
・「やりたいことはどう見つけたらいいか」と言う人ほど、ゲンバに全く足を運んでいないことがほとんど。単に「見ていないから、知らない」ということ。
・「ホンバ」とは、新規事業開発の最前線のこと。ホンバの人や環境に触れ、刺激を受けることはWILL形成を大きく助けてくれる。

 

■3章:最初にして最大の課題「創業メンバーの選び方」

・新規事業リーダーの最初の課題が「創業メンバーを選ぶ」という意思決定。
・重要な観点は、人数と、役割の2つ。WILLが同じで、役割の異なる、少人数を選ぶのが王道。
・人数は3人までが良い。新事業開発では、メンバー間のコミュニケーションのスピードと濃度が極めて重要。事業立上げ時のコミュニケーションはリアルタイムが原則。メンバーの数が増えるほど、コミュニケーションのスピードと濃度を阻害する。
・新事業立上げは、チームとしての精神的回復力が求められる。失敗ばかりで、社内から否定に次ぐ否定があり、極めてストレスが大きいのが新事業開発。「絶対うまくいかない」と否定される状況が続くと、1人だと簡単に折れて挫けてしまう。
・過去の経験から、チーム人数は2人がベストだという感覚。それほどまでに、新事業開発ではコミュニケーションスピードは重要。
・4人を超えるチームはほぼ機能しない。それほどまでに新規事業の立上げ期に置いて情報共有は重要。

【新事業立上げチームに必要な3つの力】
・全ての新事業立上げチームに必要な3つの力は、異分野を繋ぎネットワークする力、あらゆる業務を圧倒的に実行しやり切る力、深く広い教養と知識。
・「異分野を繋ぎネットワークする力」昨今の世界では、新しい価値創造は「これまで交わらなかった組織・産業・セクターの "間"」で起こるケース増えている。
・産業の垣根の融解する部分こそ、ビジネスチャンスであり、新規事業が狙うべき領域。・産業の垣根を融解させる事業を立ち上げるために必要な力がネットワーク。
・「あらゆる業務を圧倒的に実行しやり切る力」どれだけ大きなビジョンを語り、魅力的な事業アイディアを考えても、それを形にする過程は、「あらゆる細かな作業」と「局地戦での勝利」の積み上げに他ならない。
・業務を圧倒的に実行し、やりきる力なくして、新規事業が形になることはありえない。
・「深く広い教養と知識」自分・自組織が「これまで手がけたことのない領域」にて何かを生み出す活動である新規事業開発は、「無知の知」つまり自分が「何を知らないのかを知る」ことができる力が重要となる。

 

■4章:新規事業 6つのステージ

・新規事業開発には、適切な手順・ステージがある。
・新規事業立上げでは、ステージによりやるべきことは完全に切り変わり、事業に対する判断基準も完全に異なる。
・そのステージでやるべきこと「のみ」やり、他のステージでやるべきことを、決してそのステージではやってはいけない。また、各ステージで目指すべきは「次のステージへの昇格」。そこには飛び級もなければ、近道もない。

新規事業の実践論 新規事業6ステージ

■1エントリー期
・このステージで目指すべきは「検証可能な事業仮説を構築する」こと。
・「事業仮説」とは、「顧客」「課題」「ソリューション仮説」「検証方法」の4点セット。

・「顧客」は、顧客は誰か、確かにそういう人や企業は存在するか。
・顧客は誰か。現実に存在する、その「誰か」を定義することが、全ての新規事業の出発点。雑な定義ではなく、具体的な人や企業の顔が見えるレベルの細やかな粒度であるべき。

・「課題」は、課題は何か、確かにそういう課題はあるか、どれほど根深いか。
・顧客候補が、お金を払ってでも解決したいと願う、根深い課題を捉えなければならない。
・「ソリューション仮説」は、その顧客のその課題はその方法で解決できるか、確かに解決できそうか、代替手段はないのか。
・顧客の課題を解決できるソリューション仮説を捻り出す。・解決策の検討時に、やってしまいがちな失敗は、「自社リソースでできること」を考えてしまうこと。エントリー期に大切なのは、実現可能性ではなく、「それをやったら本当に課題が解決できるのか」である。

現代社会では既に便利なサービスが豊富で、そんな中で、まだ解決されずに残っている課題は「すぐにできそうなことでは、決して解決されない課題」のはず。
・「検証方法」は、顧客・課題・ソリューション仮説が成立するための検証方法は何か、検証は期間・予算内でできそうか。
・仮説定義した「顧客の課題と、その課題を解決するソリューション仮説」のセットを、検証するためのプランを提示する。エントリー期の事業仮説は、極端なところ、ただの妄想や空想で構わない(顧客の観察やヒアリングをしていなくても構わない)。

・次のステージであるMVP期にて、その妄想や空想を、検証を通じて確証と現実に変える必要がある。
・検証方法の検討にあたり、予算と期間という制約条件をクリアしている必要がある。エントリー期には、検証そのものは不要だが、検証方法の方向性が見えていることは求められる。

【MVP期への昇格基準】
・「顧客」「課題」「ソリューション仮説」「検証方法」の4点セットの「事業仮説」が揃うこと。
・決裁者が質問しがちな、市場や競合、実現可能性、事業計画、収益性などの要素は、一切必要ない。これらは次ステージ移行で加えるべき内容。

私見このステージは顧客と課題を見出すのが大変。ソリューション仮説は、既存ビジネスと異なるモデルのソリューション案を大半の人が考えられないことを、どう乗り越えるかがキモ。この段階では、完全に机上の空論で、単なる妄想で構わない。
ただ現実には、顧客か、技術か、対応領域の方向性か、何かしらが多少なりとも具現化イメージが持てる状態にないと、4つセットの事業仮説自体が作れない。

 

■2MVP期
・MVP期は、事業性を伴う魅力的な事業計画の提示を目指す段階
・MVP期でやるべきことは2つ。1つは「エントリー期の事業仮説を実証すること」、もう1つは「事業計画として成立させること」。
・MVPとは、Minimum Viable Productの頭文字で、検証可能な最小限の製品という意味合い。このステージではプロトタイプ(試作品)を作り、仮説検証を行う。

【事業仮説を実証する】
・エントリー期に構築した事業仮説は、どれほど検討されたものでも、ただの「妄想かつ空想」である。
・事業仮説の実証のためにやるべきことは2つ。1つは、課題を持つ顧客を実際に見つけてくること、もう1つは、その人や企業に対してソリューション仮説の検証をさせてもらうこと。

・エントリー期に考えた事業仮説が正しいならば、どこかにその課題を持つ顧客が存在する。MVP期では、その顧客が確かにいると証明(事実として存在すると実証)しなければならない(=存在しないならば、ただの妄想に過ぎなかったとわかる)。
・見つけた顧客に、ソリューション仮説の検証をさせてもらい、検証を通して、確かにそのソリューションにより課題が解決され、お金が支払われるかどうかを検証する。

【事業計画として成立させる】
・事業仮説の実証に加えて行うべきは、実証した事業仮説が、投資可能であり将来的には儲かる構造を持つものだと証明すること。つまり事業計画の作成。
・具体的には ①売り方の設定と値付け、②コスト構造の見積もり、③時間軸を入れて数値計算シミュレーションをする、の3つ。

・①売り方の設定と値付けは、顧客へのヒアリング・検証を通じて明らかにする。
・②コスト構造の見積もりは、そのソリューション提供のためにかかる費用構造。変動費と固定費、原価と販管費など明らかにし、値付けとのバランスが成立するか見極める。
・③時間軸を入れて数値計算シミュレーションは、どのくらいの顧客数になったら固定費をまかなえるか、利益が出始めるか、その顧客数は到達可能かなどをシミュレーションする。

【昇格基準】
・事業仮説が実証され、投資可能な事業計画が成立すれば、次のステージに進む。
・「顧客・課題・ソリューション仮説」が、確からしいと実証され、「顧客がソリューションに支払う金額が、コストより大きく、顧客数を拡大できれば利益を生み出せる」というシミュレーションが成立するかどうか。

私見このステージは、顧客と課題の定義(検証・実証)と、MVP作成と事業計画作成は、別ステージとして捉える方が良いと思う。
ほとんどの人は、顧客と課題の発見ならびに定義を、軽くみすぎる傾向にある。またソリューション検討は楽しいので、顧客と課題よりも解決策を考えたくなる人が極めて多い。その当然の帰結として、課題のない顧客に対して、ソリューションを作るから、売れないものが作られてしまう失敗が量産される。
上記の典型的すぎる失敗を回避するために、顧客と課題の定義を、敢えて別ステージに分ける方が良いと思う。

また、顧客と課題の定義期・MVP期は、実証されない(例:そんな顧客や課題は存在しない)場合や、プロダクト作る目処が立たない(例:現在の技術レベルでは実現不能)、事業計画が成立しない(例:原価超過で計画上でもずっと赤字)場合には、検討ストップの判断がなされ、振り出しに戻ったり、前ステージに戻ることも多いことは、織り込んでおく方が良い。

 

■3シード期
・シード期は、商用レベルでの事業の成立と成長ドライバーの発見を目指す段階。
・シード期でやるべきは、大きく分けて2つ。実際に商売を成立させること、グロースドライバーを発見すること。

【製品を開発し、販売開始し、商売を成立させる】
・実際にサービス・製品を開発し、新規事業として世の中にリリースし、販売を開始しましょう。
・MVP期に事業成立すると判断したものでも、いざ売り始めたら「買ってもらえない」「課題が解決されない」という事態に幾度となく直面する。
・感覚としては、MVP期を経て、シード期にてプロダクト販売を開始し、事業として成立しないとわかるものは、およそ半分ほど。
・販売開始後に直面した課題に対処したり、サービスや計画を修正して事業成立まで持っていけるケースもあれば、あえなく撤退となるケースもある。

・「どう提えるか」の問題だが、著者は、MVP期にて確かな実証を行い、シード期で撤退となったチームには、心からの賞賛を贈ってよいと思う。
・実際の販売開始に至る前に終わるケースが多い中で、「実際に販売開始し、そして成立しないと判明した」フェーズまで至ったことは、それ自体が大きな学びで、その後の会社の資産にもなり、その段階まで事業仮説を磨き上げたチームは人材として育っているため。

・シード期にたどり着き、プロダクトを作り、販売開始し、顧客から売上が立ち、商売として成立させられること。この段階が、新規事業開発6ステージの「中間ゴール」である。

【グロースドライバーを発見する】
・実際に商売を成立させられた事業には、実際に販売されているプロダクト、初期の顧客、初期の売上があるはず。次に目指すべきは顧客数の拡大。
・より具体的には、「顧客を拡大するための方法=グロースドライバー」を見いだすこと。

・営業や広告宣伝を行う形だが、重要なのは「LTV>CAC」が成立する方法を見つけ出すこと。(LTV:顧客の生涯価値、CAC:顧客の獲得単価)
・最初期の顧客は、CACや採算度外視で買ってくれるだけで非常に大きな価値があるため、それでよい。しかしそれ以降は、CACを考慮して顧客を獲得していく必要がある。
・新規事業では、よほどの高単価・低原価率の製品でない限り、「LTV>CAC」が成立せず、営業や広告宣伝においても、何かしらの「発明」が必要になるケースが多い。
・ここまでは、新規事業とは「顧客・課題・·ソリューション」のセットを成立させることに集中してきたが、シード期以降は「営業・広告宣伝手法の考案」も加わる。
・製品やサービスと同じかそれ以上に、営業・広告宣伝手法にもユニークさが求められることも少なくない。

【昇格基準】
・実際に商売が成立し、グロースドライバー(成長のための拡大方法)が発見できていること。
・販売開始された製品やサービスが存在し、少数でも確かにお金を払った顧客が存在し、小さくとも売上が立っていて、それを拡大するための営業、広告宣伝手法が考案できていること。この基準をクリアすれば、大きな事業投資に踏み込む判断ができる。

私見このステージは、プロダクト開発&販売開始と、シード期は、別ステージとして捉える方が良いと思う。
プロダクト開発は確かに「一旦やるだけ」ではあるが、事前の見積もりの甘さから、発売開始で求める品質水準から「開発期間が異常に伸びる」「開発期間が以上に伸びる」「開発が途中で頓挫する」という失敗に陥りやすい。このステージで頓挫すると、精神的なダメージが大きくなるため注意したい。

成熟企業において難しい判断となるのは、リリース販売開始時点のプロダクトに、どこまでの品質と機能を盛り込むか(どこまで機能を外して、スピード重視でやれるか)。また、企業の考え方に加え、新規事業責任者の価値観や哲学が反映されるのが、どのレベルまで攻めるか・自制するか。画期的な事業であるほど、その線引きの判断は個人の哲学に依存するように思います。
余談ながら、スタートアップあるあるは、システム開発者が蒸発してしまいリリースが遅れる。

販売開始後は、幸いにして売れ始めると、問題が噴出するのが一般的。その問題を淡々と処理して進め、プロダクトや体制にフィードバックすることで、良い製品・サービスに変容なっていく。(売れないと、問題も噴出しない。)
発生する問題は多種多様で、プロダクトの品質に限らず、製造・提供体制、サポートや提供プロセス、システム不具合や使い勝手の悪さ、契約面や事務面の整備漏れなど、想像しうる以上の問題が発生する。(新規事業の経験者は、この辺りの勘所と不確実性への対処が強い。)

販売開始すると、当初想定してなかった顧客が、想定しない用途で使うことがわかることも少なくない。それを経て、もしくはそのサイクルが落ち着きはじめてから、ようやくLTVやCACなどを考えられる状態になっていく。

 

■4アルファ期
・アルファ期は、実際に大きく資金を投下して、顧客と売上・利益の拡大を実現することを目指すステージ。
・「LTV>CAC」が成立する手法に、資金投下すれば顧客拡大し、売上と利益が積み重なるはず。ためらわず資金投下し、ひたすら顧客数を拡大しよう。

・ただし注意すべき点が3つある。1つは、CACの悪化。顧客拡大につれて、CACが悪化するのが通常。
・2つ目は、組織の疲弊・成長痛。シード期はメンバー数は1桁だが、アルファ期には30人くらいになるだろう。組織の成長痛が起こるため、情報共有やマニュアル整備など、業務フローや機能を型化していくことが求められる。
・3つ目は、競合の出現。CACの悪化や計画の事業計画の前提が覆されることもあり、リスク察知とスピーディーな計画修正・意思決定ができる状態にしておくこと。

【昇格基準】
・事業が成長状態に入ったか、組織戦略と対競合戦略が現実的か。

 

■5ベータ期
・成長率を落とさず成長を続け、既存事業と比較議論できる最小規模に到達し、既存事業と遜色ないガバナンスをの構築を目指す段階。

【昇格基準】
成長率を落とさず成長状態が続くか、既存事業と遜色ないガバナンスか

■6イグジット期
・新規事業の枠組みを卒業し、成長投資を獲得し、企業戦略の一部となることを目指す段階。

【昇格基準】
・社内での位置づけ整理、IR方針、既存事業を凌駕する規模への投資戦略。

私見アルファ期を乗り越えてベータ期に至れるのは、おそらく1〜3%くらい (100立上げ中 1〜3回)と思うため、 最初から考えておく必要がない。 残念なほどに、このステージまで到達しない。もし到達できたら、諸手を挙げて喜べる。

 

■5章:新規事業の立上げ方(エントリー〜MVP期)

・エントリー〜MVP期は、とにかく重要なのは「顧客起点」であること。
・アイデアでも、ビジネスモデルでも、技術でもなく、「顧客」を中心に据えて進められるかどうかが、全てを決める。

【優秀な人ほどやってしまう、間違った新規事業開発作業】
・優秀な人ほどやってしまうのが「確認・事例・調査・会議・資料」を「社内・上司・先輩・競合」に対して行う。
・単語「確認・事例・調査・会議・資料」と、単語「社内・上司・先輩・競合」を結ぶと、無限に作業が生まれる。これをやると、一生新規事業は生まれない。
・既存事業では、これらこそが大事だが、新規事業開発の立上げ期では、これらは1つもやってはいけないことである。

【新規事業立上げ期にやるべき、仮説と顧客】
・仮説を顧客のところに持っていき、顧客の反応に応じて仮説を修正する。修正仮説を顧客のところに持っていき、再び仮説を修正する。そして再修正仮説を顧客に持っていき・・・。このサイクルをひたすらやるのが、エントリー〜MVP期にやるべき唯一のこと。
・「仮説を顧客に持っていく」を、300回やると、立ち上がる新規事業案が出来上がる。「300回 顧客のところに行け」。
・仮に与えられる期間が半年の場合、1ヶ月で50回顧客に会う必要があり(300÷6ヶ月=50回)、1日あたりでは2.5回(50回÷20営業日=2.5回)。これが、新規事業が立ち上げられるチームが目指すべき、平均的なペース。
・1日2.5回顧客に会い続けようと思ったら、上司と会議したり、競合を調べる暇などない。

・仮説と顧客サイクルを300回やると、導かれた新規事業案は、ほとんどの場合は、最初の事業仮説からは、原型を留めないほどに変化した案になっている。それが正しい進め方である。
・そのため、新規事業開発プロセスでは、手段(ソリューションやプロダクト)が固定されてしまうと、立ち上げられる確率は下がる。手段ではなく、顧客と顧客課題に対して強いWILLを形成できれば、WILLの範囲内で大きな仮説変更を繰り返していける。

【プロトタイプの6つのレベル】
・仮説検証では、MVP(検証可能な最小限の製品)に限定して作り、顧客にぶつけて検証する。
・仮説が緩い最初の段階ほど、高速かつラフなプロトタイプを作り、仮説が検証されるにつれ徐々に作り込んでいく。MVPにも6つのレベルがある。

レベル1:ペーパー
・「コンセプトを表した30文字の言葉」にして、想定顧客にぶつける。
・少し作り込む場合でも、画面を手書きで紙に書いたものなど。この段階では、とにかく高速で作れる形にこだわるべき。

レベル2:アナログ
・手作業で課題解決をしてみる段階。大切なのは、プロトタイプと言いつつ何も作らないこと。
・想定顧客を人力で集めて、課題に対するソリューション作業を全て手作業で行う。これにより、そのサービスが本当に価値があるか擬似的に検証できる。

レベル3:コンビネーション
・ありものを組み合わせてプロタイピングする。この段階でも自分では何も作らない。
・ありものとは、現存する他社製品で、FacebookやLINE、ブログなど。それらを組み合わせるだけで立派なサービスになります。

レベル4:ビジュアル
・レベル3のありものの組み合わせに、表面上のデザインをオリジナルにして提供してみる。ホームページのトップページだけ、デザインしたチラシを使って提供してみる。
・顧客からすると、最終プロダクトに近いイメージで捉えてもらえる一方で、裏側は人力やありものの組み合わせの段階。

レベル5:プロトタイプ
・この段階で、ようやく一般にイメージする「試作品」に近いものを作る。
・ただこの段階でも、できるだけ作らず済む方法を模索する。ワードプレスやペライチなど作成サービスを使い最低限のものを作る。かけて良い時間は、せいぜい3日ほど。

レベル6:MVP(ミニマムバイアブルプロダクト)
・ここまで検証が進んだら、ようやく必要機能を揃える開発を初めて良い。
・それでも、「検証すべき項目を検証するため」に限定した開発にし、できるだけ作らず済む方法を模索する。

・プロトタイプといっても、段階がある。
・日本の新規事業を担当する人のほとんどは、顧客ー検証の回転速度があまりにも遅い。一つ一つの検証に、あまりにも時間をかけ過ぎている。
・いかに作らず、いかに高速に検証することが、新規事業立上げの初期ステージの要諦である。

【顧客へのヒアリング】
・顧客に会うとき、次に会うべき顧客を見つける力が求められる。ヒアリングを通じて、より課題を持っている対象顧客を見つけることもある。
・目の前の人の課題についてヒアリングすると共に、その課題の発生する構造や関係者が誰かも合わせて聞き出すことで、課題の理解をより深く進められる。
・対象関係者を広げるには、当事者の周囲を洗い出すのは有効。例えば、介護なら、介護当事者の周囲には、配偶者や家族、介護施設の経営者・職員・納入業者、薬剤師・医師、介護関係当局などがいる。

ヒアリングでは、相手の深い情報を引き出す。仮説を押し付けたり、相手を説得するのは厳禁。
・プロトタイプを見せ、反応をじっと見る。

私見優秀な人ほど「確認・事例・調査・会議・資料」を「社内・上司・先輩・競合」をやってしまうのは納得。優秀な人ほど業界ルールを深く知り、社内ルールをきちんと守る傾向にあるため、既存と異なる事業案が出ず、推進スピードが遅くなりがち。
また優秀な人ほど、考えを否定されること・邪険にされることに心理的拒否反応を示してしまいがち。

 

■6章:新規事業の立上げ方(シード期)

・シード期は、実際に商売を成立させ、グロースドライバーの発見を目指すステージ。サービスを開発し、実際に販売し、顧客に価値を届けていく。
・シード期に陥りがちな罠で、最も気をつけるべきは「サービスの販売開始しただけの段階で、成果を上げたと勘違いしてしまうこと」。

・販売開始直後は、マーケティング投資に力を入れてはならず、プロダクトをブラッシュアップし、LTVを高めなければならない。
・販売開始直後の新規事業が向き合うべきは、Primary Customer Success(最初の顧客の成功)である。プロダクトを修正し、一番最初の顧客が「買ってよかった」と感じる体験を作り上げること。

・Primary Customerは、他に誰も顧客がいない段階で、お金を払い、製品を購入し、顧客となってくれた、兆候リスクで何もわからない状態のものに手を出す、ある種クレイジーな方である。
・Primary Customerは、次の条件を満たさなければならない。身内や関係者でなく、初めてその商品を知り、正規料金で購入し、購入後に使用し、使った結果「支払ってよかった」と満足してくれること。

・新規事業リーダーが肝に銘じるべきは、販売開始直後の新規事業に対して「世間は驚くほどにネガティブ、もしくは無反応である」ということ。そういうものである。 

 

■7章:社内会議という悪魔を攻略する

【社内会議の意義と、そのための準備】
・そもそも「新規事業案を正しく評価する」ことは、誰にもできない。経営陣も投資家も、立ち上がっていない新規事業を正しく評価するなんて芸当はできない。
・自分たちが確信している可能性が「そのまま全て伝わることはあり得ない」という腹づもりで、社内会議に臨むのが良い。
・立ち上がっていない新規事業を評価できる唯一の存在は、経営陣ではなく「顧客」である。経営会議や事業化審査会の場には「顧客」はいないはず。だから正しく評価されることはあり得ない。
・社内会議には、社内会議を攻略するための準備が必要。新事業プランが良くて、社内会議が通らない場合は、ほぼ100%提案する側の準備不足が原因。
・新規事業が、投資を仰ぐための重要な決裁の場である社内会議には、これ以上ないほど入念な準備をして臨むべき。

・社内会議とは、重箱の隅をつつく会議である。
・多くのサラリーマンは、社内会議とは「よい提案をすると、それが評価され、決議される場」と、勘違いしている。社内会議の構造や位置付けを理解していなさすぎる。
・重要な会議にかけられる案が良いことは「当たり前」である、というのが前提。そのため「その案が良いかどうか」の質問は、当然出てこない。
・その案が「本当に良いのか」について質疑が少ないということは、その良さに対する疑義が少ないということ。むしろ、サービスモデルや顧客価値の質疑が多発する場合は、社内会議の前提である「提案の内容が良いこと」に疑義が生じている状態である。

・社内会議とは、何を議論する場であり、どんな基準で決議されるのか。それは 「決議したことを、上司に説明できること」である。
・会社とは「所属する全ての人に、上司が存在する」という組織形態。社内会議の決裁者にも、必ず上司が存在し、その上のレイヤーの意思決定機関が存在する。だから全ての決裁者は常に「自分が決議した案件を、上司に説明できるか」を念頭に置いて決議を行う。経営会議や取締役会、社長でも同じである(オーナー社長除き)。
・上位レイヤーの会議になると「議事録」が存在するから、なおやっかい。審議内容に対して、誰がどう発言し、どう決議されたか議事録が残ってしまう。だから「重箱の隅をつつく」わけである。
・社内会議の「重箱の隅をつつくような質疑」は、質問する方も「本当はそんな重要じゃないかもとわかっていても、聞かざるを得ない」ことも多い。
・これら質問に対して重要なのは、明確に回答できること、そのための準備が万全であること。「誰にでも説明可能である」という状態が作れれば決議されるもの、それが社内会議。

 

【社内会議を通すための準備6点セット】
・特に、MVP期とシード期の境目で設けられる「事業化判断を行う審査会議」において機能する6点セット。

1数値口ジック
・重箱の隅をつつこうとする人にとって、もっとも指摘しやすい材料が「数字」。
・数字とは、事業案や顧客の中身がわからずとも、誰でも指摘が可能なものである。質問に対する回答が不明瞭なら、それだけで「通さない理由」となるほど強力。だからまず、数値ロジックを入念に準備する必要がある。
・立上げから数年の損益計算を作っているはずだが、用意すべきはその数値自体ではなく、「その計画を作った数値ロジック」。
・「数値ロジック」とは、全項目の数字の理由。「なぜその数字なのか?」という質問に「〜〜だから」と答えられる日本語を用意しておくこと。
・具体的には「売上の根拠は?」「人員計画の根拠は?」「家賃はどういう数字か?」「広告宣伝の内訳は?」などの質問に答えられること。
・最も汎用的で有効なのは、数値を分解しておくこと。例えば売上について聞かれたら「売上は、顧客単価と顧客数に分けてシミュレーションしている」「顧客単価は、基本料金とオプション課金から構成される「顧客数は、店舗当たり来店者数と店舗数から構成している」と答える。
・数字に関する「重箱の隅をつつく」質問に対しては、きちんと考えていること自体を示すのが有効。きちんと考えていることを印象を与えるのに「分解という数字ロジック」は有効。
・数字の分解は最終的には「非常に細かい現場の数字」に行き着く。細かい数字に質疑を持ち込めれば、実証実験で得た顧客インサイトの話になり、事業の本質に関わる議論に持ち込むことができる。
・作り上げた事業計画の、全数値項目を分解して説明できるようにしておく必要がある。エクセル参照せず、把握していることを見せることも、安心材料になる。

2顧客の生の声
・立ち上がっていない新規事業を正しく評価できるのは、顧客だけ。顧客では内情長や経営陣が「実感が持てない」のも当然。
・上長側も、実はツライ。なんとなく理解でき、信じてあげたい気持ちもあるが、自分は詳しくない領域だから、実感が持てない。納得がいっていないものを決議するわけにもいかない。納得してないのに決議したなんて、上司に説明できないから。
・この状況で有効なのは「顧客の生の声」。
・映像や手紙で顧客から応援メッセージをもらうなど、「顧客の生の声」をプレゼンに持ち込むべき。

3リスクシナリオと撤退ライン
・事業進捗の計画スケジュールはきちんと作る上で、その上で、「それでも遅れたらこうなる」というケースをシミュレーションしておくと良い。
・「遅れないから大丈夫」とアピールするのではなく、「遅れた場合の策も想定している」と示せることが重要。

4関連諸法規の提示
・新規事業の場合、会社にとって新しいことのため、過去事例が参考にならず、商習慣や法規制などに関する知識も不足する。「不足している」状態自体が「説明できない」に繋がり、却下の理由になる。
・自主調査、社内法務部、社外の専門家にアドバイスもらうの3段階で、新事業が抵触する可能性のある法律や規制を調べる必要がある。
・これら調査内容は、そのままプレゼンの添付資料に加える。量が多ければ良く、「必要十分なだけ、ちゃんと調べている」と伝わることが社内会議攻略上は重要。

5社内キーマン・社外権威者のコメント
・出島や別組織で新事業を進める際、「既存事業の事情を考慮しなくて良い」わけではない。
・関連する既存事業部があれば、その事業部長には事前に話をしに行くべき。応援されることも、妨害されることもある。
・それをそのまま「社内キーマンコメント」として、プレゼンに加えるべき。既存事業を無視しておらず、やりとりしていると伝わることが重要。
・実際には、社内キーマンはネガティブな反応を示すことも多い。その状態を考慮し、社外権威者のコメントも得ておきたい。社内の閉じた話でなく、会社を超えた社会的な動きを捉えて意思決定するために、気持ち的に材料になる。

6空気を読んだ戦略図
・「その新事業を自社でやる意義」に答える為に、会社の戦略的な意味合いとの連動が求められる。
・事前に、戦略部門や経営企画メンバーと議論し、自社の全社戦略や長期ビジョンと、新事業のどういう点が強い意味合いを感じるシナリオにできそうか、議論をしてプレゼンに加えたい。

 

■8章:経営陣がするべきこと、してはいけないこと

【画期的な新事業は、経営陣には判別できない】
・新規事業創出には、新規事業の担当者の頑張りと同じか、それ以上に重要なのは、新規事業が生まれる気運に対して、経営陣が呼応し、適切に判断を行い、仕組みを作っていくこと。
・経営陣がなすべきことをなされなければ、社員が可能性あふれる新規事業を提示し、立ち上げようとしても、それを形にしていくことはできない。
・新規事業アイデアは、画期的であるほど理解できない。
・そもそも、世界にまだない画期的なアイディアを、「説明できる」と思っていること自体が大きな間違い。実際に、世界を変えた画期的事業の多くは、世界を変える前には、ほぼ事業内容は理解されない。
・「画期的なアイデア」は、画期的なほど、そのアイデアは理解されない。しかし、その画期的かもしれないアイデアが「世界を変える前」に、「画期的だと評価してくれる人」が1人だけ存在する。それが初期顧客である。
・世界の誰も解決してくれない課題を抱えた顧客だけは、そのアイデアを素晴らしいと評価してくれる。
・上司も、会社も、同僚も、チームメンパーも、もしかしたら新事業リーダー自身でさえ、半信半疑でしっくりこないそのアイデアの価値を、顧客だけは「画期的で価値がある」と評価してくれる。

【経営陣は、事業アイデアを評価しないでほしい】
・画期的なアイデアは幻想に過ぎず、説明も評価もできないものであるにも関わらず、未だに根強く存在するのが「立ち上がっていない事業アイデアを良し悪しを、経営陣が評価してしまう」という問題。絶対やめてほしい。
・立ち上がっていない新事業の価値を、適切に評価できる唯一の存在は、顧客である。顧客ではない経営陣には、評価できなくて当然なので、評価できるフリをして、それらしい質問をして、「評価したつもりになる」のをやめてほしい。
・別の観点では、「顧客のところに300回行く」中で、アイディアは顧客との対話を通じて見る影もなく形を変えていくものである。だから、最初のアイデアを評価をしても、そもそも意味がない。
・最初段階の新規事業プランで評価すべきは、アイデアではなく「人と領域の相性」である。

【決裁権限を降ろしてほしい】
・経営陣にとっていつもの「社内会議」を新規事業開発プロセスに持ち込むことは、「本質的でない非常に大きな負荷」を、現場に押し付けることになる。
・新規事業開発における決裁権限を、できる限り、経営会議からその下に降ろしてほしい。事業化判断や追加投資決裁といった大きな意思決定にまつわることだけでなく、事業化判断後も絶え間無く訪れる予算執行・契約締結・採用や評価・広報や会計ルール策定など、事業を立ち上げて運営するために必要なあらゆる事柄に関する権限。
・決裁権限を降ろすポイントは、個人決裁権限として降ろすということ。できる限り「新規事業担当役員」か「新規事業開発部長」の個人決裁権限として降ろすこと。
・決裁権限を降ろす単位とタイミングは、個々のプロジェクトに対してではなく、新規事業開発部全体に対する形が良い。

【新規事業に規模を問わないでほしい】
・巨大な事業を営む大企業にとって、新規事業とは、単体では小さくて当然の活動なのである。・例えば「日本で新規事業を最も成功させた企業たち」と言えるマザーズ上場企業群を見ると、「創業から上場までは12.3年」「上場直前期の売上46億円」「上場直前期の営業利益は3.3億円」。
・つまり、全く新しいビジネスをゼロから立ち上げ、10年強かかって、ようやく年間3億円ほどの営業利益。これが、日本で最も成功した新規事業の水準。

 

【イノベーションパス 要約】成果を出すイノベーションプロジェクトの進め方

イノベーション教育・研究を行う東京大学i.schoolによる、イノベーションイデア創出するプロジェクトの進め方を要約します。東大の先生らしく多くのセオリーが引用されています。 

「成果を出す」とありますが、同社では「アイデア創出を0→1と定義」している(実現して市場投入までは 1→10)そうで、i.school・i.labではアイデア創出までを支援しているそう。アイデア創出に特化した書籍内容であることは、留意して読み進めるべきでしょう。

 

https://cdnshop.nikkeibp.co.jp/0000/catalog/255450/255450_thumb_pc.jpg

 

■1イノベーションの新潮流

イノベーション創出には、目的意識を持った創造性と、多様な協調性が鍵になる。
・創造的な活動の際、どのような社会を作り出したいか、どういう動機で自分やチーム、会社は頑張ろうとするかという、創造的努力の向かう先(目的意識を持った創造性)を設定することは、とても大切。

イノベーションとは「新結合」であり、必ずしも「技術の発明」ではない。
・しかし、特に大手メーカーは、高度成長期からのものづくり分野の「技術革新」での成功体験を引きずり、人間中心アプローチを軽視しがち。

・デザインシンキングは、ざっくり言えば「技術から発想するのではなく、まずはフィールド観察に出かけて、ユーザーを観察しよう。ユーザーへの共感からアイデアを生み出そう」というもの。「ユーザーへの共感」という、シンプルながら強力なもの。
・技術中心、人間中心のどちらが優劣か、という議論ではなく、技術中心で考えてきた新製品・サービス創出の取り組みに対し、イノベーションの意味合いに立ち返り、人や社会の洞察にも注力する捉え方が必要になってきている。

・技術中心に対する、人間中心の方法論の特徴は、次の表の通り。

https://businessecosystem.unisys.co.jp/wp-content/uploads/2017/02/re-5-2.jpg

イノベーション創出プロセスでは、実際の製品開発より上流工程の「コンセプト」創出が必要。しかし日本メーカーの弱点は、新しい市場創出するような「コンセプト」に踏み出せないところ。
・今の日本の大手企業に求められるのは、新しいコンセプトの事業を世界へ提案すること。

 

■2イノベーションを起こす人材に育つ・育てる

イノベーションの道のりは、アイデア創出:0→1、実現して市場投入:1→10、市場投入から普及:10→100と定義しており、東大i.schoolの教育は、アイデア創出:0→1を対象にしている。
・東大i.schoolでは、人間中心イノベーションを重視し、理解フェーズではフィールド観察などを行い、人々の行動や価値観、社会変化などに対する洞察を、アイデア創出や実現に生かすアプローチをとっている。
イノベーション人材の持つ能力は「価値発見力」が高い。挑戦する力、観察する力、関連づける力、人と繋がる力、捨てる力、試す力、おかしいと思う力が、平均的なビジネスマンと比べて高い能力を持つ。

私見この方の組織では、アイデア創出:0→1と定義しているが、私の定義では、アイデア創出からローンチ・プロダクトが売れ始めるまでを0→1と定義している。
私の定義の0→1と、この方の組織でいう0→15くらいまでが、同じフェーズを意味していると思われる。

 

■3既存事業とはコンセプトの異なるアイデアを生み出すには

■4つのアイデア創出アプローチ

・アイデア創出アプローチは4つあり、技術起点、市場起点、社会起点、人間起点。それぞれ一長一短ある。

【技術起点】
こういう技術があるから、そこからアイデアを考えようというもの。大企業メーカーでよく見られる、研究開発の文脈に合わせる形の新事業開発。エンジニア主導で検討する場合、概ねこの思考パターンになる。
メリット:技術的な優位性を確保しやすい。また、当たるとでかい。
デメリット:社会潮流やユーザーニーズを軽視しがちで、失敗する場合が多い。

【市場起点】
この市場がホットだからそこで何か考えようというもの。その市場が熱いですね、何かアイデアないですか?という言葉がお決まりパターン。戦略コンサルの得意方法で、経営企画系が主導する新事業開発の場合、概ねこの思考パターンになる。
メリット:事業性の見極めを早期に行う点は優れている。
デメリット:議論が抽象的すぎる場合が多く、いつまで経っても具体的な事業案にならない。
特徴:経営層には受ける。経営層が気にする規模感や市場トレンド中心の議論なので。(ただし、何も具体的なアイデアにつながらない)

【社会起点】
社会トレンドや社会課題にまず注目する思考パターン。これまでは行政やNPOの人の思考パターンだったが、最近ではグローバル企業の次期経営層が好む思考パターンでもある。
メリット:共感や市場性は早期に確認できる。
デメリット:その課題が複雑で解決しづらいから、社会課題として認知されているわけで、そうそう具体的なアイデアが出せない。

【人間起点】
ユーザーインタビューなどから、これまでの見方と異なる洞察を得て、アイデア創出につなげようとする思考パターン。ユーザーの潜在ニーズ発見を目的とすることが多い。デザインコンサル会社が得意とする方法。
メリット:最初からユーザー起点で考えるため、ユーザーにとって魅力的なアイデアが出るのが優れた点。
デメリット:ユーザー視点のため、特定企業でそのプロダクトを実現する必然性がない場合も多い。ユーザー調査から洞察を得る場合、デザインや使い勝手が良い既存プロダクトの改善アイデアになりがちで、既存と異なる潜在的な機会領域の中での新事業を見いだすのは不得意。

■アイデア創出する範囲の枠組み

・製品やサービスのアイデアは、目的と手段の関係性として存在する。
・例えば「目的:洋服の汚れを落とす」に対して、「手段:水と洗剤で洗い落とす」を取り、具体的な「製品アイデア:洗濯機」。仮に「手段:空気で洗い落とす」にすると「製品:空気オゾンで洗浄するエアウォッシャー」となる。
・アイデアに新しさを求めると、目的と手段のいずれか、もしくは両方が新しい必要がある。アイデア創出は、この「目的」と「手段」の情報を収集・分析・ぶつけあうことで、新しい結合「アイデア」を生み出す枠組み。

私見イデア創出は「目的」「手段」のいずれかが新しい必要があるという主張は、私とは考え方が異なる。「顧客・顧客の課題」が新しい必要がある。未解決な課題、捉えようとする範囲を変化・拡張する、など。

・アイデア創出する「機会領域」を設けるのは実務上有効である。アイデア創出時、いきなり具体的な事業アイデアを考えるより、「この辺り」と思考の方向性を指し示す「機会領域」を設定すると良い。
・「機会領域」を設定するメリットは複数あり、まずプロジェクトメンバーの意識の方向性、アイデア創出の方向性や範囲が揃いやすくなる。
・「機会領域」は、最終的な事業アイデアと異なり、論理的な事実の積み上げ・分析的な思考でも説明が可能。そこまで経営陣に説明して、機会領域を理解・共感しておいてもらうことを1つの中間ゴールに設定すると、その後も進みやすい。

■よく知られるアイデア創出方法論

1人間起点:エクストリームインタビュー
2未来起点:シナリオプランニング 、未来洞察、社会シフト
3市場起点:ブルーオーシャン、ブレイクザバイアス
4技術起点:先端技術の新たな価値を探索するテクノロジーシフト

私見未来起点の考え方は、私は反対派。未来を予見できる情報は人口動態だけ、とはよく知られるところ。また、専門家ほど未来予測を大きく外すのが、過去の実例(例:1980年代に、2000年のアメリカ携帯電話需要を90万台と予測したマッキンゼー。実際には、2000年の携帯契約件数は1億強)。
未来予測系の情報は関連書籍を2〜3つ読めば十分。また経営陣や中期計画を取りまとめる経営企画部には、事業周辺環境の将来見通しに関する情報はあるもので、それに目を通せば十分。

 

■4アイデアを収束させ、品質を高めるには

イノベーション創出プロジェクトでは、機会領域の検討、アイデア創出、アイデア品質向上の際は、常に「発散」と「収束」を繰り返す。
・収束プロセスは、本質的にとても創造的で、アイデア品質や実現性を大きく飛躍させるプロセスでもあり、アイデア発散よりも収束プロセスの方が難易度が高い。

【アイデアを選抜する】
・まず客観的観点で絞り込み、その中から主観的観点で絞るのが一般的。
・定番となる客観的観点は、新規性、有効性、実現可能性、賛否両論ある議論の発生、強い価値感の内包など。
・忘れてはならないのは、真に客観的な評価はあり得ないと理解しておくこと。評価の観点は客観的に設定されても、その観点での評価は極めて主観的にならざるを得ない。
・よくあるパターンは、プロジェクトメンバのお気に入りのアイデアが評価を得ず、無難だと思っていたアイデアが評価を得るケース。意思決定者の評価に依存する。
・主観的な観点は、メンバーの思い入れそのもの。

【アイデアを精錬する】
・最初のアイデアは、コンセプチュアルで具体的に欠けるものがほとんど。アイデアの具体性を高める作業を通じて、アイデア品質を高める。
・アイデアの早い段階で、プロトタイプにして形に見えるようにするのが良い。プロトタイプを、製品だけでなく、サービスやビジネスも拡張して利用する。

■プロトタイピングの4つの観点

・プロトタイピングは、ヒト(ユーザー像)、コト(利用シーン、体験)、モノ(製品・サービス内容)、ビジネス(モデル、関係や、規模感)の4つの観点。
・「ヒト」プロトタイプは、アーリーユーザー像、ユーザーの課題認識、アイデア利用でユーザーの感じる価値、ユーザーの行動や価値観の変化、を具体的に妄想する。
・「モノ」プロトタイプは、拘り出せばキリがない。ユーザーから手にとって目で見て解釈できる、実用最小限のプロトタイプに留めるべき。
・「コト」プロトタイプは、ユーザーがそのアイデアを、どのようなシーンで、どう利用し、どのような関係者で、その利用体験がどのような流れかを、可能な限り具体的に書き出す。

・プロトタイプができたら、想定アーリーユーザーにインタビューを行う。プロトタイプは、仮説アイデアという名の単なる妄想の塊。ユーザーから様々なフィードバックを得ることがインタビューの目的。
・インタビュー対象者は、プロジェクトメンバーが直接探すべき。調査会社などに丸投げすべきではない。

・「ビジネス」プロトタイプは、ビジネスモデルキャンパスは使い勝手が良い。
・ビジネスプロトタイプの検証は、社内の専門家やキーマンへのインタビューや相談となる。

■意思決定者への上申

・経営層は、本来は10年以上先を見据えた会社の持続的成長に責任を持つ立場だが、現実には、無意識のうちに既存事業や比較的短気に成果創出が見込めるプロジェクトを優先しがちになる。
・経営層にプレゼンする際は、事業の経済的規模感や見通しに関して「経営層が自分自身の肯定的な意思決定を後押しできる理屈を提示する」というやり方は、テクニック的に有効な場合がある。
・人は必ずしも合理的な理由の積み上げで意思決定するのではなく、意思決定後に、それをサポートする合理的な理由を探す場合も結構ある(つまり、自分の意思決定は正しいものだと、後から思い込みたい)。

・イノベーティブな新事業が、本質的に不確実なことは当然としても、それでも、経営上の意思決定の際には、定量的な議論は避けて通れない。
・期待市場規模と、期待売上は推計しておきたい。仮説の精度や数字は粗くなるが、精度よりも、「自分自身を納得させられる理屈を見つけてもらう」ことも意識したい。

 

■5イノベーションプロジェクトの設計

・i.labは、東大ischool教授によるコンサル会社。一般的な経営コンサル会社は、課題解決のプロジェクト設計とマネジメントをするが、i.labはアイデア創出も範囲とする。プロジェクトごとにプロセスを個別設計せず、アイデアを成果物として提案することを得意とする。
・i.labプロジェクトで多いのは、新市場・新カテゴリーを生み出すような新コンセプトを持つ製品・サービス・ビジネスのアイデア創出を狙うもの。

三菱重工グループでの事例

・「未来の都市生活において循環型で高効率のエネルギーライフを実現する製品やサービスを考え出す」ことを目標に、30代中盤社員がリーダーの、8ヶ月プロジェクト。
・生活者視点と、技術視点の評価を並行して行い、新事業アイデアを創出。

【課題の洗い出しと、機会領域の判断】
・生活者調査では、国内4カ所と海外3都市でフィールド調査し、生活者視点から未来の都市生活の課題を洗い出した。
・技術視点調査では、社内外の先端技術・製品を300品目ほど分析。プロジェクトで注目した技術テーマに関連する先端技術・製品を人間側から見た価値と、それを実現している機能・形状の概念に分解・分析した。
・技術や製品分析は、後続の創造作業に使えるよう、1つの技術・製品につき写真やシステム図・キーワードからなるカードとして整理を実施。その思考作業を通じて、技術や製品の本質的価値が頭の中に体系的に整理された状態で、後続フェーズのアイデア創出に臨むことができた。
・人間側、技術側から調査するプロセスを通じて、最も有望な機会領域は「未来の新興国都市部の急速な人口過密化に伴う種々の課題」と判断した。

【ビジネスアイデア創出】
・生活者視点と技術視点の調査と分析を行い、具体的な未来の都市生活像と活用可能な技術の掛け合わせで事業アイデアを発想した。
・起業の成功率「千三つ」にちなみ、1000個アイデアを考え出せば3つは成功するはずだと考え、1040個のの事業アイデアを創出し、40人の社内部門のレビューを経て、先に設定した機会領域「未来の新興国都市部の急速な人口過密化に伴う種々の課題」は、「成長および縮退する都市における小規模分散型のフレキシブルなインフラ」という表現に、発展的に精錬された。
・日本の地方都市のような所には「縮められるインフラみたいなものがあると便利」となった。逆にジャカルタなど人口急増地域は「増えたら増えただけ増設できるインフラ」が良いとなり、より具体的に考えてみることになった。

【ビジネスモデル構築】
・絞り込まれた事業アイデアの中の1つは、都市部における数千人規模以上のビル・宅地を対象にした、民間事業会社による未来型上下水道インフラ。
・アイデア作り込みの最終局面でも、そのアイデアによって人々の考え方や行動をどのように変え、社会にどのようなポジティブな変化が起こるのか、その変化を実現する具体的製品やビジネスの仕組み、事業戦略が何かを複合的に考えて洗練させていく。
・事業アイデア2つに対して、国内で20件の特許出願を行い、15件の権利化が確定している。
・プロジェクトはメンバーは延べ32人、レビューは40人に実施し、多くの社員が関わった。社内広報活動を積極的に行った。プロジェクト規模感を小さくするとスピード感は出るが、組織としてのモメンタムはいつまでたっても大きくならないため。

 

 

■6イノベーションプロジェクトで成果を出すために

■必要な権限とリソースを、事業責任者に十分与えるべき

経産省による大手企業向けの新事業調査(2012年)によると、「新事業創造の推進体制」は、「社長直轄で推進:20.6%」、「経営層の責任下で推進:54.5%」、「事業部長クラスの責任下で推進:13.9%」とのこと。
・新事業創出の取り組みに対し、トップマネジメントである社長がコミットしている割合が少なすぎ。わずか2割の企業のみ。
・新事業創出を任せた人材に与える権限は、「社長に提案できる:78.5%」、「プロジェクトや業務への担当者の配置・割当をする権限:50%未満」「社外の協力者と協働する権限:50%未満」。わかりやすく解釈すれば、社長としては「とりあえずアイデアは持ってきていいよ」ということかと。

【著者はこのように解釈する】
・ほぼ全ての社長は「イノベーションが大事」と発信するものの、ほとんどの社長は自分ではコミットせずに他の経営層に任せている。
・他経営層は社長にアイデアを持っていく「権限」が与えられるも、プロジェクト実施に必要となる充分な権限が与えられているわけではない。
・他経営層は責任はあるが権限がないので、同様に部下に「イノベーションは大事。いいアイデアが出たら持ってきて」というメッセージを発するか、自分の権限の範勝で少しだけ着手してみる。
・結果として、「アイデアを提案できる権限」だけが連鎖し、現場社員から「いいアイデア」が上がってくるのを待ち続け、組織としての新事業創出の仕組みはいつまでたってもできない。

→ 経営トップの責任下で新事業創出に取り組むか、他の経営層に任せるならば、アイデアを提案する権限だけではなく、プロジェクト立上げや人材配置、社外協力者と共同するための権限とリソースを配分すべき。

■新事業創出のための組織・ルール・体制・プロセス

・既存企業と新規事業開発のマネジメントは根本的に異なっており、別組織を作ってでも、別にマネジメントする方が良い。

・ただし組織が別なだけではダメで、よくある失敗は、新事業開発組織を新設して優秀な社員を集めたものの、何をすれば良いか分からず、立ち往生してしまう。
・組織だけ先にできて、配属された人が充分モチベーションが見出されてない状況では、あまり良い結果を期待できない。社長もしくは経営層がリソースとともにコミットする形で、まずはプロジェクト型の取り組みを立ち上げると良い。
・そのプロジェクト実績と経験を基にして、徐々に組織体制を構築するアプローチが適当ではないか。初めは、モチベーションやマインドが適切水準にある人材が、まずは既存業務の兼務として集まり、組織的モメンタムが生まれた結果として、正式部署として本格スタートを切るのも遅くはないだろう。

私見プロジェクト的な兼務で集まって始める形は、私は異論あり。このような取り組みは、楽しいだろうが、いつまで経っても成果(新事業の立上げ)は生まれない。
どの企業にもイノベーター人材(新規事業に適した志向性で、かつ何かしら挑戦を起こしている人)は 100人中2人ほどいる。その2%の人材を、できれば2〜3人以上、新事業部門に異動させたい。加えて、イノベーター候補人材(新規事業の資質はあるが、未経験者)は 社内の5〜7%くらいを占めるので、その人たちを新事業部門に異動させたい。
逆に言えば、新事業に向かない90%以上の人を、誤って新規事業部門に異動させると、本人とチームのモチベーションを下げてしまい、失敗のリスク要因となる。
参考:成熟企業内で、新規事業に向く人の見分け方・選び方

 

【イノベーション5つの原則 要約】顧客が欲するものの生み出し方

世界最高峰の研究機関SRIが生み出した、イノベーションの実践理論を要約します。

原著の副題「The Five Disciplines for Creating What Customers Want」の通り、"顧客が欲するものの生み出し方" 5つの原則です。決して "技術革新" などではありません。

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(原著の出版は2006年であり、事例にはインターネットやモバイルなど、21世紀に起こっていることがほとんどありません。時代背景が少なくとも15年以上異なることを考慮して、読み解く必要があります。)

 

■はじめに

イノベーションを生み出す5つの原則。
①顧客と市場にとって重要なニーズに取り組む
②有用なッールを活用し、顧客価値を迅速に生み出す
イノベーションを率いる「チャンピオン」となって、価値創出プロセスを推進する
④多様な分野の専門家を集めた混成チームによって、天才に負けない集合知を実現する
⑤チームの方向性を定め、価値の高いイノベーションを体系的に生み出す

 

■何年にもわたる統合プロセスを駆動させる「ストーリー」
・統合プロセスを駆動するのは「ストーリー」。イノベーションのカギを握るのは多様性」ではない。その後にくる「統合」にこそ、イノベーション·マネジメントの本質がある。
・アイデア創出を受けて市場化し、市場で成果を出すまで何年もの時間をかけて、多くの有能な人材が助け合いながら働かなければならない。ランダムに生まれるアイデアを、市場での具体的な成果に向けて統合することこそ、イノベーションに突きつけられた課題である。

イノベーションの責任者は、客観的な物差しのない世界で、自分なりの基準で物事を判断するセンスが求められ、つまりは直感や好みに根ざすが、それだけでは人々は動かないし、プロセスを駆動できない。
・そこで不可欠になるのが、未来の顧客価値を想定した「ストーリー」。責任者は、アイデアが様々な活動と組み合わさり、それがどのように消費者に受け入れられ、世の中を変えるに至るのかというストーリーを構想する。このストーリーが、イノベーションに関わる全ての人々の共有される事によって、統合のプロセスが動き出す。

 

イノベーションとはアイデアを顧客価値に変換すること。顧客に焦点を当てるべき
・何がイノベーションを成功に導くのか、多くの人が誤解をしている。イノペーションというのは「技術的に優れたガジェットの発明」などではない。「発明」だけでは不十分。「発明を世に出すこと」に成功して初めて、イノベーションは成立する。
・言い方を換えれば、イノベーションとは「アイデアを顧客価値に変換すること」であり、それが結果として、継続的な利益を企業にもたらすものである。
・「改善」「改良」レベルのイノベーションもあれば、物事を一気に様変わりさせてしまうようなイノベーションもある。いずれにせよ、「市場に新しい顧客価値をもたらすこと」こそが「イノベーション」である。

・新製品や新サービスの80-90%が1年ほどで失敗に至っている。これらの失敗の原因は、技術やリソースの問題ではない。失敗の主因は、顧客の欲しいものを提供できなかったから。企業が、顧客ニーズを把握できていなかったのだ。
・顧客に焦点を定めた上で、顧客価値を把握するための言語とツールを共有し、価値を生み出すための体系的なプロセスを確立した企業は、顧客価値の創出に成功し、大きな成果を出す。「イノベーション5つの原則」は、こうした望ましい状態をチームや企業で実現するための方法論。

 

イノベーションの本質を知る

イノベーションとは
イノベーションとは、新たな顧客価値を創り出し、市場に送り届けるプロセスである。
・何かを発明したとしても、顧客にとって新たな価値を創出し、実際の市場に導入しなければイノベーションとは言えない。
イノベーションが成功するには、新しい顧客価値の創出が実現可能であり、継続的に利益が計上できることが必要だ。画期的な新製品の考案者は大勢いる。だが、市場導入に成功した人は少ない。
・影響度の大小にかかわらず、イノベーションは常に、新たな顧客価値を生み出している。

■価値提案(NABC)の重要性
イノベーションの価値提案は、この4点を簡単な言葉で説明できる必要がある。
①市場のニーズは何か?(Need)
②そのニーズに応えるために、どうアプローチするか? (Approach)
③そのアプローチの費用対効果は? (Benefits per cost)
④その費用対効果は競合と比べてどうか? (Competiton)

イノベーション5つの原則
イノベーション創出の際、いつも通りは通用しない。顧客価値にフォーカスするとき、次のような重要な問いへの答えを見出す必要がある。
・顧客は誰か?
・顧客にどのような価値を提供できるか?
・迅速かつ効率的、体系的に新しい顧客価値を創り出すために、どういう方法をとるべきか?

この重要な問いへの具体的な考え方が、イノベーション5つの原則
①真の顧客ニーズ:自分がおもしろいと感じることだけでなく、顧客と市場にとって重要な ニーズに取り組む
②価値創出:価値創出のツールを活用して、顧客価値を迅速に生み出す
③チャンピオンになる:「イノベーションを率いるチャンピオン」になって、価値創出プロセスを推進する
イノベーションチームの構築:様々な分野の専門家を集めた混成チームにより、天才レベルの集合知を実現する
⑤組織の方向づけ: あなたのチームを組織全体の方向性に合致させ、価値の高いイノベーションを体系的に生み出す

成功するには、5つすべてを満たす必要があり、それぞれに相乗効果がある。つまり「成功=ニーズ × 価値創造 × チャンピオン × チーム × 組織化」となる。

 

イノベーションか、死か

イノベーションとは、新しいコンセプトが顧客価値と企業価値の双方を徐々に高め、新しい顧客価値(新製品・サービス)として市場に送り出すプロセス。市場投入に至るまでに必要なのが価値提案であり、次の基本的質問に答えることで明確になる。
①まだ満たされていない重要な顧客ニーズ、市場ニーズは何か ? 
②そのニーズに応えるためにどのようなアプローチをとるか?
③そのアプローチの費用対効果は?
④その費用対効果が競合より優位なのはなぜか?

・価値提案は「新しいコンセプト創出」から「新製品・サービスの市場投入」へと向かうあらゆる段階で役に立つ。それは新たな顧客価値の創出に向けた事業活動の核となる。
・「技術主導型」や「結果は後からついてくる」的アプローチは、単に新製品を開発するものであり、顧客ニーズに対する理解が欠如しているため、こうした手法がうまくいくことは滅多にない。
・素晴らしい技術的発明を数多く成し遂げたが、最終的に顧客ニーズを満たせなかった失敗事例は、顧客ニーズの軽視と非体系的なイノベーション創出手法が、失敗と企業の崩壊を招いた。

■新製品・新サービスイノベーションの起こり方
・魅力的で新しい顧客価値を体系的に創出する方法は、"市場・顧客ニーズ”と"新しいアイデア"の源に相互作用を起こすこと。
・常に市場と接して "満たされていない重要な顧客ニーズ・市場ニーズ" を把握し、その市場環境・競争環境への理解を深めることが必要で、同時に新技術や新ビジネスの "新しいアイデアの源" にも継続的に接して、何が可能かを見極め、新しいイノベーションのコンセプトを開発するのだ。
・新しい顧客価値は、種々様々な方法から誕生する。たとえば、革新的な技術やスマートな製品デザインが、新製品やサービスの元になることもある。だが、イノベーションの多くは、新しいビジネスモデルから生まれている。

■指数関数的な進化を生み出す、4つの必要条件
・指数関数的な進化を生み出すために、次の4点が大切となる。
1重要度の高い顧客ニーズ・市場ニーズに取り組む。
2新しいアイデアを多数収集し、段階ごとに最大限の改良を施す。
3責任者「チャンピョン」とチームによる循環的な増殖プロセス。
4予算や人員など適切なリソースを調達して、プロセスを推進する。

 

■原則1:真の顧客ニーズ

■おもしろさとニーズ
・「イノベーション五つの原則」の1つ目「自分がおもしろいと感じることだけでなく、顧客と市場にとって重要な ニーズ」に取り組む。
・市場で長く利益を生み出し続けられるようなイノベ ーションにつなげるためには、重要度の高い顧客ニーズと市場ニーズに焦点をあてることが不可欠。

・未解決の課題は巻にあふれている。その中で、満たされていない顧客と市場のニーズを適切なタイミングで選び出すことが、全ての起点となる。
・その上で、そのコンセプトが実現可能か、必要インフラは整備されているか、必要なリソースが確保できるか、が問われる。

■重要度の高いニーズに取り組む
・新しい市場機会を開拓する際に留意すべき重要性は、顧客と市場のニーズに照準を合わせることの他に、あと2つ基準がある。市場の進化に飲み込まれないものであること、実現可能であることだ。
イノベーションは、製品やサービスの他に、インフラや必要な技術、リソースが揃って初めて可能になる。いつの時代でも、チャンスやアイデアはあっても実現しなかったアイデアは数多く存在する。

・重要プロジェクトの選別は、次の3点を考慮する。
①そのプロジェクトは、顧客に明らかな価値をもたらすものか?
②そのプロジェクトは、自社の目標と合致しているか?
③本気でそのプロジェクトに取り組みたいと思っているか?
・プロジェクトや発明に本気で取り組むつもりがなければ、イノベーションは生み出せない。天才的ひらめきを得ることは簡単だ。むしろ何年も全力で取り組み、イノベーションを実現させることのほうが格段に難しい。

■顧客価値を決めるのは「あなた」ではなく「顧客」である
・顧客価値を考えるとき、胸に刻むべき教訓は、価値を決めるのは「あなた」ではなく「顧客」だということ。
・顧客があなたの製品やサービスにお金を払うかどうかで、あなたの成功が決まる。顧客の行動によって、あなたが価値を創出しているかどうかわかる。

・顧客に、ニーズが満たされているかどうかを聞きもせず、顧客のニーズを誤解している人は多い。
・顧客を特定し、顧客のニーズを捉えることが、顧客価値創出の第一歩であり、最も重要なステップである。

■あなたの唯一の仕事は、顧客価値の創出
・企業は様々な価値を提供しようとするが、まず顧客価値が最重要。顧客ニーズを理解し、顧客にとって魅力的なプロダクトを開発しない限り、他の価値(企業価値、株主価値、従業員価値、社会価値)は生み出しようがない。
・CEOが株主価値を高めることばかり話しても、どうすれば良いかを社員に伝えたことにならない。CEOはじめ従業員全員が、顧客に、そして顧客ニーズに注力すべき。
・ただし、顧客価値の高いプロダクトを作っても、そのプロダクトが損失を出し続けては成り立たない。新製品発売時は、顧客にとっての価値と、自社にとっての価値が、少なくともなければならない。

 

■原則2:価値創出

■価値提案の「NABC」
イノベーションの目指すところは、競合や既存手段より明らかに優れた顧客価値を創り出し、市場に届けることにある。
・新たな顧客価値を構築するには、次の4つの基本的ポイントに答える価値提案からスタートする必要がある。
 ーN:重要な顧客と市場のニーズ(Needs)や課題はどんなものか?
 ーA:そのニーズに応えるための独自のアプローチ(Approach)は?
 ーB:そのアプローチの費用対効果(Benefits per costs)はどうなのか?
 ーC:費用対効果は、競合(Competition)や代替品と比べてどのくらい優れているか?

・大切なのは4つ全て網羅することであり、目指すべきは、競合や代替品より優れた顧客価値ー費用対効果ーを提供する独自アプローチをとること。
イノベーション検討の初めのうちは、4つのポイントのどれもよくわからず、4つは互いに作用し合っている。他の人の意見や顧客の声を得ながら何度も見直すという「反復サイクル」を繰り返して、説得力ある価値提案を完成させなければならない。

■担当者と経営陣の目線を揃える
・価値提案の構築が難しい理由の一つは、誰もが自分の「アプローチ」を話したがり、他の要素を置き去りにしてしまうこと。「アプローチ」ばかりで、「顧客とニーズ」「費用対効果」「競合や代替品」はほぼ検討されないのが、よくある失敗例。誰もが、常にアプローチで頭がいっぱいだ。
・そうではなく、価値提案の開発に着手する際、重視すべきは「顧客とニーズ」「競合や代替品」である。まず顧客と競合の状況、つまり市場のエコシステムに対する理解が最初にあるべき。その後に新しいアプローチ構築・練り直しによって、競合に対して優位な費用対効果がもたらされる。

イノベーションのことになると、担当者と上層部は、文字通り言葉が通じなくなる。
・スタッフは「アプローチ」で頭がいっぱいだ。ニーズや費用対効果、競合は眼中にない。
・しかし、上層部がまず関心を示すのは「顧客とニーズ」「競合」である。未開拓の顧客ニーズを満たし、競合に競り勝ちたいのだ。ニーズと競合さえ理解できれば、あとは担当者が、アプローチや費用対効果を何とかしてくれるものと考えている。
・これを解決するには、「顧客とニーズ」「競合」→「アプローチ「費用対効果」の顧客価値という統一言語を共有すること。

■価値提案は複数が必要とされる

・価値提案は2つ以上必要になる。 
・1つは将来の想定顧客に提示するもの、彼らにとって重要な尺度は費用対効果で、それが競合や代替品より凄く優れているか。2つめは投資決定者(経営陣や上級マネージャー)に提示するもの、この場合の成功尺度は、市場規模や利益、増収率や投資収益率など。
・多くの場合、3つ以上の価値提案が必要になり、ビジネスパートナーも関わってくる。彼らの顧客に対する費用対効果や、事業の市場規模や利益などが魅力的でない限り、彼らの関心を得られない。

・価値提案の例

イノベーションの価値提案NABC

■優れたNABC作成のために
・優れた価値提案は、具体的かつ明確で、数値化される方が良く、物語がある。
・顧客とニーズに関して、見込み顧客の話を聞こう。市場に対する理解を深めること。
・アプローチは、できれなプロトタイプを作り、少なくともイラストやモックアップは必須。
・そのプロトタイプを使用する見込み客を、よく観察する。
・見込み客と話すまでは、どんなディスカッションやアイデアも、机上の空論に過ぎない。
・競合は、競合状況を把握し、あらゆる代替品を把握する。将来を見据えた新たな競合も想定する。
・反復が必要。いち早く成功するには、なんども失敗を繰り返す。

・多くの場合、何をすべきか判断するには、短い価値提案で十分である。価値提案のNABCのプレゼンテーションは1分〜4分に限定する。
・ただし、新規事業など多くのリソースを投入する判断の場合は、最終的には価値提案はイノベーションプランのあらゆる要素を網羅する必要がある。

■アイデアを集めて、価値提案をブラッシュアップする
・NABCは、改良プロセスを進める間は、新しい考え方や変更に対してオープンであること。最初に考え出したアプローチを、完全に断念する可能性も排除しないことが大切。
・顧客の話を繰り返し聞き、競争状況について十分に理解し、独自アプローチを練り上げなければ、優れた価値提案は生まれない。
・アプローチを説明する際は、イラストや絵、趣味レーションやプロトタイプを用意すると良い。そうすれば価値提案を、相手に瞬時に把握してもらえる。

・価値提案を、同僚や友人に見せて、アイデアの追加や練り直しに協力してもらおう。興味を示すポイントは人によって異なり、多様な視点を得ることは意味がある。ほとんどの人は、喜んで知恵を出してくれる。(その際、くれぐれもアプローチばかり主張しないように注意されたい)
・自前主義はやめよう。素晴らしいアイデアは、自組織から生まれないことの方が多い。

■顧客を観察し、顧客に質問し、顧客に話を聞く
・オフィスを出なければならない。価値提案が正しい方向に向かっているか教えてくれるのは、見込み顧客やパートナーである。あなたの妄想ではない。
・顧客を観察しよう。言葉を鵜呑みにするより、実際に現場で観察することだ。買い物カートを作りたいなら、スーパーに行って買い物客の行動を観察する。医療処理方法の改良を目指すなら、病院に行って患者を自分の目で確かめる。顧客のあらゆる体験を、自分の目で実際に観察すること。

・顧客に会う目的は、あなたが知らないことを教えてもらうこと。質問し、真剣に聞いて、理解しようとしよう。
・顧客への接触は、早ければ早いほど良い。市場と顧客のニーズについて、重要な情報を提供してもらえるから。将来の顧客とパートナーを巻き込んで、一緒に繰り返し価値提案を練り直そう。

■初期の価値提案NABCは、大抵間違っていて間違いもある
・初期の価値提案は、不完全で間違いもあるもの。成功への道のりは、まっすぐである方が珍しい。
・早く成功したいなら、何度も間違いを繰り返す必要がある。成功するイノベーションに必要なのは探求の旅で、市場の声を深く聞いて、それに応えなければならない。
・初期の失敗は避けられず、避けれると期待してもいけない。
・価値提案の修正は、一度や二度の見直しではなく、何度も繰り返し改良を続けるべきもの。修正回数の不十分、不十分なスピード、顧客やパートナーの声の軽視によって、本格的に失敗して潰れてしまう。

■エレベーターピッチで経営者の注目を得る

・新規事業推進で成功するには、アイデアの明瞭さと価値の高さで抜きん出て、社内で注目を得るしかない。
・プロジェクトを完成に導くには、社長や役員に、優れたアイデアを持つことを納得してもらわなくてはならない。明瞭で簡潔なプレゼンテーションで一線を画す必要がある。

・エレベーター·ピッチとは、1〜2分で伝えることができる「価値提案の核心部分」のこと。見込み顧客やパートナー、経営陣や上司の興味をかき立て、聞いた人の印象に残り、もっと知りたいと思ってもらえれば大成功。
・メッセージはできる限り短くすべき。提案は簡潔なものにしよう。核心部分を探し出し、聞いている人が忘れられないポイントを見つけ出すことが大切である。
・説得力あるエレベーターピッチができるということは、市場で価値創造するために対処すべき課題を把握していることの証で、そのビジョンを経営陣や投資家だけでなく、顧客や社員にも説明できる証明でもある。

・ある使い捨て補聴器の会社の、見込み客に対するエレベーターピッチ。
「聞こえづらいのは、あなただけではありません。
何千万もの人が難聴に苦しみ、補聴器の値段の高さに疑問を持っています。
世界で初めて、使い捨ての補聴器ができました。
この使い捨て補聴器は、1日あたりのコストが1ドル。最高のデジタル音質を提供するだけでなく、使用開始から1カ月後には処分するので、柔らかい素材でできています。
装着も快適かつ安心で、外からは見えません。ドラッグストアでお求めになれます。
本格的な補聴器は数千ドルするうえ、医師に調整してもらう必要があります。高価なものであるだけに、素材は耐久性があって丈夫ですが、耳に違和感が残り、フィット感もありませんし、音質も損なわれます。
使い捨て補聴器をご覧になってはいかがでしょうか?」

■エレベーター·ピッチは「つかみ」「核心」「結び」の3パート
・「つかみ」で相手の注意をかき立て、「核心」で数値を交えながら価値提案(NABC)のストーリーを語り、「結び」で次のステップへのアクションを投げかける。
・経営陣や投資家は、長くて複雑な議論を覚えていられない。
・エレベーターピッチを聞いた後、彼らがプロジェクトを支援する理由を簡潔かつ明瞭に言えなければ、それは失敗を意味する。

・相手の重視することと、アイデアをつなぐ「つかみ」は重要。好奇心や関心を掻き立てるか否か、つかみが左右する。
「聞こえづらいのは、あなただけではありません」
「毎年、薬の深刻な副作用で10万人が亡くなっています」
「特許を取得したネズミ取りは2000件を超えますが、実際に利用されているのは2種類だけです」

■エレベーターピッチの先
・エレベーターピッチを終え、イノベーションプランを精織化するフェーズに移ると、新製品や新サービスの価値を感覚的に伝える必要がある。イラストやサンプルを使い、顧客に提示しよう。新製品イラストやサンプルを用意しないプレゼンなどあり得ない。
イノベーション·プランができ、資金を確保できても、製品やサービスを市場に導入するまでの道のりはまだ遠い。プロセスのいずれにおいても、価値提案が重要なツールであることに変わりはない。

 

■原則3:イノベーションをリードするチャンピョン

■まずはチャンピオンが必要
・価値創造NABCは、顧客の立場に立って先を見据え、イノベーションが直面する資金・社内政治・人材・技術などの課題に対応していく「チャンピオン」の存在が必要不可欠。
・どんなイノベーションプロジェクトにも、プロジェクトを成功に導くスキルと決意、強固な意志を持つチャンピョンが必要。ビジョンを掲げ、チームメンバーやパートナーを触発し、全責任を負ってやり遂げる。
・チャンピオンとチームは、重要な顧客ニーズを特定することから始まる価値創出のプロセスに従って、成功に至る。価値提案の改良を続け、想定外の問題にも対応し、継続的に見込み顧客に接触し、プロジェクトを通じて得られる新しい情報を、価値提案に盛り込む。チャンピォンには、目の前の問題に真正面から取り組むと同時に、長期的ビジョンをしっかり見据える二つの視点が必要。
・チャンピオンは、組織の責任を負う。彼らは、組織のミッションにも忠実で、自らのアイデアと勝ち得た信頼と熱意を伝染させる力によって、組織から責任や支援を引き出す人物。

■チャンピオンへのアドバイス
・耳を傾け、そして学ぶこと。
・いち早く成功するには、何度となく失敗すること。アイデアを早めに何度もテストしよう。
・リソースを求める前に、アイデアを募ること。コストは引き下げ、関心を引き上げよう。
・熱意ある有志を集めること。熱意と好奇心、価値観で人を選ぼう。
・ビジネスモデルと財務モデルを早期に作成しつつ、懐疑的でいること。数値化はまずは見当をつけるところから始めよう。
・考える人に感謝し、参加者を賞替賛すること。功績は共有し、人の貢献に感謝しよう。
・プロセスを信じること、何度もプランを練り直そう。

 

■原則4:イノベーションチームの構築

■コラボレーションを促進するイノベーションチーム

・指数関数的な進化は、次の4条件が必要。①重要度の高いニーズに対応すること、②新しいアイデアがあること、③積み重なるな価値創出プロセスがあること、④人材や資金など必要リソースが入手可能であること。
・新しい技術やプロジェクト、ビジネス開発に必要なのは、新しいビジョンとビジネスモデル、そして型にはまらない解決策である。

イノベーションを進めるのに、コラボレーションは欠かせない。その基本的要素は、戦略ビジョンの共有、スキルの相互補完、報酬の共有。この3つが全て揃って初めて、人は手を取って協力する。
・第一に、プロジェクトのビジーンやゴールや目的が理解され、賛同されるべき。
・第二に、自分の役割と貢献がプロジェクトの成功に必要不可欠だということが明らかでなければならない。
・第三に、チームのメンバーとして受けるべき報酬がはっきりしていることが必要。
・さらに、相手に対する敬意あるコミュニケーションを続けることで、コラボレーションが成り立つ。

【戦略ビジョンの共有】
・チャンピオンとしてチームを集め目標の達成に向かうには、メンバーを一体化する明快なビジョンが必要。志は、高く掲げよう。
・チームのビジョンは、全社的なミッションやビジョンと整合しなければ、革新的なプロジェクトを進められない。また明快で説得力あるものでなければならな い。
・お金は、ビジョンにならない。成功したイノベーターは、金銭についてほとんど口にしない。彼らは高い志を抱き、世の中に大きな影響を与えるイノベーションを実現したいと考えている。

【スキルの相互補完】
・ジム·コリンズはこう語る「優れた人材を集め、そぐわない人材は排除し、適材適所を確実に実現することだ」。
・独自スキルを持ち、それを互いに補い合いながらコラボレーションできる人だけが、チームに参加するべき。
・各メンバーに重要な役割を与え、安心してもらうこと。各メンバーの役割を暖味にしておくと、成功に必要なコミットメントやコラボレーションを妨げてしまう。
イノベーションチームの原動力はメンバーの集合知で、メンバーが価値創出する反復プロセスをチームとして実践すれば、個人の数十倍、数百倍の顧客価値を生み出すことができる。
イノベーション開発では、アイデアは多くの人から積極的に集めるべきだが、チームは最小限のサイズにとどめておくべき。チームのコミュニケーションコストを最小限に抑えること。

【報酬の共有】
イノベーションチームのメンバーは皆、自らの貢献が報われるものと期待している。
・報酬には様々な形態があるが、最大の報酬は素晴らしい同僚とともに素晴らしいプロジェクトに取り組むチャンスが与えられることだ。

イノベーションの壁を乗り越える
イノベーションチームが信頼を築くために必要不可欠な要素は、他者への敬意、誠実さ、寛容さといった姿勢や態度。こうした資質がなければ信頼関係は生まれない。

■変化に対する抵抗
・変化は抵抗を生む。人が新しいビジョンに向かおうとすると、お馴染みの習性:懐疑的な態度と恐れ・不安・疑い、そして誤解 が顔を出す。
・チャンピオンは、ある程度の懐疑論や反発があるものだと、予め覚悟しておかなければならない。
・懐疑的な態度を示す人は当然現れるし、そうした懐疑論は必要不可欠だ。そのおかげで対処すべき課題を特定できる。懸念材料に対する対処法のカギとなる。
・チャンピオンは、チームの憂慮する声を積極的に聞き、人間関係を管理し、各メンバーの貢献を明確にし、結果として得られる恩恵を明らかにしなければならない。

・大きな変化に直面すると、恐れ・不安・疑いがよぎる。恐れ・不安・疑いに襲われると、それに怯え、ネガティブな発言をするようになる。
・反発がくすぶるのは、成功に至るプロセスの自然な成り行きであり、成功へのヒントがもたらされるとチャンピョンは認識すべき。
・表面的な言葉の裏を見抜き、問題を解くカギに変えていくこと。恐れ・不安・疑いと向き合い、発想を転換するところから始め、本人と話し合おう。
・人の懸念に対応するときは、常に感覚を研ぎ澄まし、じっくり耳を傾け、その人の支えとなり、理解する気持ちを持つこと。チャンピョンは、感情の爆発、挑戦的な態度、消極的な抵抗に、常に敏感でいることが必要。そして敬意を込めて、率直に人と向き合うことこそ、成功に至る唯一の道だと肝に銘じよう。

■許されざる行為
イノベーションプランの遂行の際、容認できない行為が存在する。批判的態度、消極的抵抗、陰口、告げ口といったもの(懐疑的態度、恐れ・不安・疑い、誤解 とは別のもの)。
・「批判的な態度」に直面したら、原因を特定(批判をばらまく個人)し、公にし、正面から対処すること。皮肉たっぷりの批判は、新たな取り組みに水を差し、無視していると成長して革新的アイデアを例外なく潰してしまう。
・シニカルな批判の問題は、あたかもそれが正しいかのように見えてしまうこと。
・「批判的抵抗」「陰口」「告げ口」は、本人と話して対処する必要があるが、チームを潰したかったり、イノベーションチーム構築に取り組む気がないならば、立ち去ってもらうべきである。

イノベーションの動機は金ではない
・優れた社員は誰しも、仕事を通じて何らかの形で社会に貢献したいと考えている。
イノベーションは、根源的な欲求が動機として機能することにより生まれる。根源的欲求は達成・権限・関与の3つ。
・人は仕事にポジティブな貢献をして価値を生み、「有意義な目標を達成したい」と考えている。重要度の高い顧客・市場ニーズに焦点を当てることで、チームは貢献を果たす。
・人は仕事上の自由が必要で、社員が抱く最大の不満は「事細かに管理されている」こと。チャンピョンは、「何を」すべきか明確にしたら、あとはメンバーの裁量に任せ「どうするか」を考えさせると良い。メンバーに責任と権限を与え、サポートすること。
・人は、自分に影響を及ぼす意思決定に関わりたいという強い欲求を持つ。メンバーに関わる意思決定の場に、彼らを関与させないのは極めて危険な行為。メンバーを巻き込めば、そのようなリスク回避できるだけでなく、ほぼ確実に良い解決策が生まれる。

■チャンピョンが注意すべき、チームマネジメントのポイント
チャンピョンが犯してしまいがちな、組織運営失敗の法則。注意したい。
・誰にも相談せずに、壮大なビジョンを持ち込む。
・影響を受ける人に話をせずに、何を変革するのかをいきなり発表する。
・上役とばかり話をして、一般社員をないがしろにする。
・「変革」のメリットしか見ようとせず、デメリットには触れない。
・象徴的で大きな変更だけ行う。例: 人員整理、組織再編、企業ロゴの変更
・抵抗する社員を異端者と決めつけ、動機を疑う。
・プランの各要素について個々の社員と協議・修正・検討する機会を持とうとしない。
・「支持者」とだけ話をして、「敵対陣営」は避ける。
・抵抗が生じたら、ミーティングを開かなくなる。

チャンピオンとして成功するには、チームの全員を巻き込み、メンバーからアイデアを集め、彼らからサポートを得ること。イノベーションを推進する、これほど確実な原則はない。

 

■原則5:組織の方向づけ

イノベーションチームに導入·展開されるべき「五つの原則」
1重要な顧客ニーズと市場ニーズにフォーカスすること。 
 理解度を簡単にチェックする方法は、自分たちの顧客は誰で、顧客のニーズは何か、チームメンバーに書き出してもらう。次に、顧客にも同じことをやってもらう。両者の食い違いの大きさを見れば一目瞭然。
2価値創出ツールを使って顧客価値を創造すること。
3各イノベーションプロジェクトに、チームを動機づけ、前進させ続ける「チャンピオン」を確保すること。
チャンピオンはプロジェクト全体に責任を負うことが大切である。
4適切なメンバーを選び、全面的にプロジェクトに関与してもらい、噴出する懸念を解決し、前進させていくこと。意欲的で献身的なチームの存在が何より大切。
5成功に向けてチームを結束させること。
そして成果が出始めたら、顧客価値を中心に全ての業務が回るよう、その考え方をチームの外にも少しずつ広めること。

イノベーションプロジェクトを妨げる障壁
・様々な障壁が成功を妨げる。例えば、部署内の既存製品と競合する新規プロジェクトは頓挫しかねない。組織内の利害対立は、プロジェクトの足を引っ張り、プロジェクトをつぶしてしまうこともある。
・新規プロジェクトのために、別組織を作ることが成功につながることもある。新会社設立が最善な場合もある。当初は組織内で育成し、イノベーションプランが完成し、必要リソースを確保できた時点で新会社としてスピンアウトする場合もある。
・当然ながら、チームの方向づけを阻害する要因は無数にある。大事なのは、それらを速やかに見つけ、必要に応じて組織的に取り除くこと。
・チームや組織の足を引っ張る自己防衛的な「障壁」だと思い込んでいるものの大半は、誤解に基づくものだ。・オススメなのは、気がついた障壁を残らず書き出し、プロジェクトの一環として、関係者とのディスカッション時に提示すること。障壁が明らかになれば、ほとんどの関係者は、それを取り除くことに協力してくれる。
・何かを不可能だと、勝手に決めつけてはいけない。やるべきことをしてから、聞いてみることだ。

・多くの企業は、新しいアイデアを導入する際に、組織カルチャーを変えなければならないと話す。しかしカルチャーの変化は、新しいスキルを開発したり、成果を上げたときに生じる副産物であり、「イノベーション五つの原則」によって最初に目指すべき目標ではない。
・目指すべきは、目覚ましい成果を上げることである。

 

 

【ナイキ 厚底シューズ イノベーション】常識を覆すイノベーション創出秘話

ランニング・マラソン界を席巻する、ナイキの厚底シューズ「ズーム ヴェイパーフライ4%」。

「靴」というアナログ商品に、圧倒的なイノベーションをもたらしたナイキの厚底シューズ。
ナイキの厚底シューズ開発秘話は、大企業がイノベーション創出するために何が必要か、参考になるでしょう。

 

■世界記録・日本記録を連発するナイキの厚底シューズ

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「ナイキの厚底シューズを履いた選手が、物凄い記録を出している。あのシューズはなんなんだ?」

2017年・2018年にケニアの選手が世界最高記録を更新し、日本では2018年2月に設楽選手が、10月に大迫選手が日本記録を更新。
それらの選手が履いていたのが、ナイキの「ズーム ヴェイパーフライ4%」という、ランニングシューズの常識を覆す厚底シューズ。

ランニングシューズの過去の常識の延長線上では、絶対に生まれない厚底シューズ。日本トップ選手が、自らの走り方を変えるリスクを冒してまで選んだナイキのシューズ。

それまでの常識を覆す、破壊的イノベーションの「ズーム ヴェイパーフライ4%」は、いかにナイキで生まれたのでしょうか?

 

■ズーム ヴェイパーフライ4%の常識はずれの特徴

ナイキ 厚底シューズ イノベーション
・レース用シューズなのに、厚い部分は約4センチもある超厚底。クッション性が高く足への衝撃が少ない。
(従来は、1グラムでも軽くて薄いシューズが常識だった)

・厚いソールには航空宇宙産業の特殊樹脂素材(多孔質ソール)が使われ、中に大きなスプーン状のカーボンファイバー製プレートを挟み反発・推進力アップ。
(同社で過去に使用したことのない素材を使用)

・選手が履くズーム ヴェイパーフライ4%は、市販されているモデルと全く同じ。
(トップ選手は契約メーカーの別注モデルを履くことが多かった)

・耐用距離はたった160キロ。
(かつては耐用性のある安価なシューズが支持され、耐用距離500-600キロが一般的)

https://images.wsj.net/im-122188?width=1260&size=1.5

 従来のシューズは「クッション性があるか」「薄くて反発があるか」のトレードオフだった。
しかしズーム ヴェイパーフライ4%は、「クッション性がありつつも、反発力がある」という従来の常識を覆す性能を実現した。

普通に考えれば、厚底になれば重要が増す。その問題を克服したのが、厚底の中に挟み込まれたカーボンファイバープレートと航空宇宙産業の発泡体フォーム素材。軽さとクッション性の両立を実現させ、プレートがバネのように屈曲し、それが脚を前に押し進めるエネルギーを生み出す。

コロラド大学の調査によると、当時のナイキ最速シューズなどと比較して、ヴェイパーフライを履いた選手のランニングエコノミーは4%強ほど改善した。

 

■厚底シューズ 開発秘話

【顧客の課題とニーズから始める】
・ズーム ヴェイパーフライ4%の開発のきっかけは、アフリカトップ選手の言葉。クッショニングがしっかり装備されたシューズが欲しいと要望があった。
・アフリカ勢は未舗装の道でトレーニングを積んでおり、薄底シューズだと足へのダメージが大きく、路面の硬いロードを嫌う。そのためクッション性を持ちつつ推進力もある、既存の常識はずれの "新発想のシューズ" 開発が始まった

【無謀な目標設定】
・ナイキ研究所(スポーツリサーチラボ)の研究員は、当初ランニングエコノミーの3%改善という、無謀な目標を設定していた。
・研究を行う中で、既存の延長線上で改善するのではなく、限界を破る必要性に迫られた

【常識に立ち向かい、既存常識を捨てる】
・軽さを出すと、薄くなる。薄くなると、足へのダメージが大きくなる。でも軽いシューズで走りたい。そんな矛盾する要望を実現するために、既存の常識の真逆である、厚底シューズの発想が生まれた
・レース用シューズは1グラムでも軽く、が従来の常識だった。しかしズーム ヴェイパーフライ4%は全く逆のアプローチ。シューズは薄い方がいいとの概念を捨てた

長年の技術の蓄積と新技術の融合
・その発想を具現化するために、軽くて柔らかく、反発性の高い素材探しが始まった。素材探索の結果、これまで業界で使われたことのない、航空宇宙産業で使われる素材に行き着いた。
・ナイキは過去に、カーボンファイバーを使用したシューズを出したことがあるが、うまくいかなかった。(その時の挑戦と失敗から、可能性と超えるべき課題をある程度掴んでいた可能性がある)
・カーボンファイバープレートと航空宇宙産業の発泡体フォーム素材の研究を続ける中、とある日の研究データが4%改善を示しており、研究者は間違いだと疑った。そのくらい、研究者の常識を覆すものだった。

【顧客との共創】
・アフリカ選手以外のトップアスリートも、数年にわたり開発段階から関与。クッション性やフィット感なども"アスリートが試行錯誤を繰り返した”ようだ。
・2016年のリオ五輪本番で、ナイキ契約選手がズーム ヴェイパーフライ4%の"プロトタイプ"を使用。

・従来の延長線上にない新たな形にたどり着き、耐久性は犠牲になるが、アフリカ選手の要望に応えたものが完成した。

 

 

【大企業の新規事業】スタートアップの失敗理由から学ぶ、新規事業の成功率を上げる方法

新規事業はほとんど失敗し、新規事業の成功率は10%未満です。
新規事業立上げの試みは、10回中、少なくとも9回は失敗するのが普通です。

成功する新規事業は、その成功要因は様々です。
それに対して、失敗した新規事業は、失敗する理由は典型的なパターンがあります。大別すると「顧客・市場」に関する社外のもの、「組織・人・お金」に関する社内のもの。

成熟企業の新規事業の失敗事例は、あまり公開されませんが、
スタートアップの失敗事例は、共有・分析されるものも多く、特に米国では統計情報と共にまとめられています。

スタートアップの失敗理由から学ぶ、新規事業の成功率を上げる方法をまとめます。
(このブログエントリーは、前半は 米国cbinsightsの"The Top 20 Reasons Startups Fail"から、後者はスタートアップ支援の専門家 田所氏のインタビュー内容などをまとめます。田所氏は日米で起業や投資を経験した、スタートアップ支援のプロ。)

 

■スタートアップ(新規事業)が失敗する原因TOP5

米国cbinsightsの "The Top 20 Reasons Startups Fail"から、失敗理由トップ5を紹介します。
また、スタートアップ失敗理由の中で、成熟企業の新規事業と共通する点、違うだろう点も後述します。

新規事業 失敗理由トップ10

1市場ニーズがなかった
失敗理由ダントツ1位は「誰も買わないものを、作ってしまった」。
「顧客が実際に欲しがるものを作る」には、顧客と顧客の問題から始めるしかありません。「こんなものあったらいいよね」という、顧客不在のアイデアで、うまくいく確率は滅多にありません。

大企業の新規事業でも同じこと。顧客と顧客の課題にフォーカスせずして、新規事業がうまくいくはずがありません。「あったらいいよね」は、売れません。

2資金が切れた
スタートアップの失敗理由2位は、お金がなくなった。

大企業の新規事業は、幸いなことに、この理由で失敗することはありません。大企業では、新規事業の企画やプロトタイプ検証などの際も、会社から給料が支払われます。仮に事業立上げできずに失敗しても、毎月給料が支払われますので安心です。
(ちなみにスタートアップでは、立上げ時はCEOは給与ゼロから数万円のことも普通で、立上げ時は口座残高は減り続けます。社外への支払いが滞れば、自分で借金をして支払う必要があります。)

3チームが良くなかった
起業には3タイプの人間が必要と言われます。ハスラーハッカー、デザイナー。1タイプでも欠けると、難しい。
ハッカーは、テクノロジーに精通するプロダクト開発・技術者。
ハスラーは、ビジネス・顧客・市場を理解し、ビジョンを語り人間関係を作り、ビジョンとプロダクトを世界に売り込む人。
・デザイナーは、サービスの見た目や使いやすさ、顧客体験・満足度に心を注ぐ人。

大企業の新規事業では、この3タイプに加えて、社内政治家、オーガナイザーが必要と言われる。社内政治家は、社内の上層部や部署間調整をし、予算や人材リソースを確保し、大企業内で新規事業プロジェクトが支援されるよう振る舞う人。オーガナイザーは、現場レベルでプロジェクトへの支持を取り付け、事務管理面を引き受ける人。

大企業の新規事業の場合、上記の「スキルや経験」の観点と別に、不確実性に向く「素養・特性」を持つ人が取り組まないとうまくいきません。
参考:大企業の社内新規事業向いている人の見分け方・担当者の選び方

4競合に負けた
アメリカや中国はスタートアップ間の競争が激しく、競合に負けて失敗するケースもあります。

日本にて、大企業の新規事業の場合、スタートアップのパクリサービスを後発でやる場合は、注意が必要です。日本において、スタートアップと大企業の新規事業が競合すると、ほとんどの場合、大企業側が負けて事業撤退する結果になります。
パクリ新規事業をやる場合は、スタートアップが真似できない資金量・圧倒的な物量や人海戦術で、スタートアップを圧倒する必要があります(PayPay100億円キャンペーンが好例です)。

5価格設定の問題
過去にないプロダクト創出時、プライシングは極めて難しいポイントの1つです。

なお、既に競合プロダクトがある場合や、事業が成立しているビジネスを始める場合は、プライシング問題はありません。

https://www.cbinsights.com/research/startup-failure-reasons-top/

 

■スタートアップ・新規事業の失敗の90%を避ける方法

スタートアップ支援の専門家 田所氏のインタビュー内容などをまとめます。

・スタートアップが死ぬ理由は一つ、カスタマーが欲しがるものを作らないから。
・現金が尽きる前に、顧客が欲しがるプロダクトが提供できる状態(PMF:プロダクトマーケットフィット)に至れないと、会社が潰れる(スタートアップの93%は死ぬ)。

・失敗スタートアップは ①思い込みを信じて、②プロダクトを作り、ローンチ後に③見たいものを計測し、当然のように失敗する。
・「こういうプロダクトがあったらいいよね」という思い込みで、顧客が欲しがるかどうかを考えておらず、顧客にも会っていない。当然失敗する。

・スタートアップは「学習」にフォーカスする必要ある。
・やるべきは ①初期仮説構築し、②一次情報ヒアリングし、③仮説検証と修正。②と③を繰り返し、顧客の課題やペインポイントを捉える。
・これは、創業者メンバー全員でやるべきで、組織を分断してはならない。スケールする前は小さいチームが良い、学習が加速できるから。
・顧客の課題発見と検証を十分する前に、プロダクト開発に進んで失敗するケース多数。PMF前に、組織拡大して失敗するケース多数。

https://newspicks.com/news/3537922/body/

PMFは、顧客が欲しがる、マーケットにフィットするプロダクトを作ろうということ。
・ただ大企業は、人が欲しがるものではなく、会社が作れるものを作りがち(プロダクトカンパニーフィット)。その方が楽だし、社内コンセンサスも取りやすい。それで、誰も買わないものを作ってしまい、失敗する。

・顧客が欲しがるものを作るときに、加えて注意すべきは、立上げ時点のユーザーに最適化し過ぎてしまわないこと。それでは市場創造できない。未来がどんな世界かは断片的にしかわからないが、仮説によって紡ぎ、修正を繰り返しながら進むのが良い。

・大事なのは、自分たちの最初のターゲットとなるユーザーを明らかにすること。ユーザーはどういう不安や不満、不便の感情があるか。
・顧客が欲しがるものを作る必要があるが、ユーザーは潜在的ニーズを自分で顕在化して表現できない。顧客の声を聞くのはしんどいが、欲しいものがわかっていない顧客の声を聞くのは更にしんどい。それをやりきり、ユーザーインサイトを発見する必要がある。

・急成長型の新規事業を狙うなら、市場を創造する必要がある。
・市場を育てる観点ではなく、市場をクリエイトする観点。自分で市場を作り、事業が伸びつつ、市場全体が伸びるような状態が好ましい。

・新規事業の意思決定者が、起案者にPLを書かせようとするが、まだ存在しない市場を創造しようとする段階ではPLを書けない。
・ただ市場を俯瞰することはでき、大事なのは、まずどこを攻めるかというエントリー市場を選ぶこと。
・スタートアップの場合、小さな市場でいいので独占する。まだ存在しないけど、実はポテンシャルが高いのに誰にも気づかれていない市場を狙うと良い。そこで市場が創造できれば、大きく成長する見込みがある。

 

■スタートアップサイエンス 20ステップ

・成功するスタートアップを作るのはアートだが、失敗を避けるのはサイエンスである。失敗回避のための型がスタートアップサイエンス。この20ステップは万能ではなく、この20ステップは「守・破・離」でいう「守」の基本的な型。

・スタートアップサイエンス5つのステージ、20のステップ。
1Idea Verification:アイデアの創出と検証
2Customer Problem Fit:本当に問題が存在するのか?
3Product Solution Fit :問題に対してソリューションは適切か?
4Product Market Fit:ソリューション(プロダクト)に市場は存在するか?
5Transition to Scale:スケールするために

スタートアップの失敗を避ける方法

20steps https://www.unicornfarm.jp/startup-science

・5つのステージ毎に、チェックすべきこと。

失敗しないスタートアップ

5stages checkpoints https://www.unicornfarm.jp/startup-science

https://www.unicornfarm.jp/startup-science